新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

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龍のはなし なぜ天皇は龍を忌避したのか

2024年01月01日 | 読書
年越しそばを食べながらお神酒をいただいて、目が覚めると、23時過ぎでした。


年明けまでは積読だった荒川紘『龍の起源』(角川ソフィア文庫)を読んで過ごしました。


日付が変わるのを待って、『マギアレコード』にログインしました。新春ログインストーリーにひめなちゃん登場。お、今年の新春キャラはひめなちゃん?


……ではありませんでした。


でも、この子だれ?



『竜城明日香(たつきあすか) 新春龍神ver. 』でした。


辰年の龍つながりで、「竜真流」薙刀術師範代の竜城明日香(たつきあすか)というわけでした。

この可能性も、脳裏をよぎったのですが、イベントがどういう展開になるのか予想もつかず、候補からは外してしまいました。まさかこう来るとは。完全に予想の斜め上でした。


マギレコの新年キャラは、年が変わった瞬間に実装されるのですが、年末にはリーク情報もあったんだとか。仕事が忙しくて、ツイッターを見ていなくてよかったです。


明日香は蒼樹うめ先生デザインのキャラでありながら、メインストーリーでもイベントでもずっとサブ扱いでした。7年目に入って、ようやく報われました。




新春ログイン画面に登場したのは、左から広江ちはる、時女静香(ときめしずか)、竜城明日香、土岐すなお、環いろはの五人です。


静香・ちはる・すなおの三人は時女一族に属する魔法少女で、それぞれトラ・トリ・カメに扮しています。


このトラ・トリ・カメは、同じく魔法少女の双葉さなの描いた絵本のキャラクターたちです。


静香は時女一族のリーダーでありながら、湯国市における魔法少女に対する一般人からの迫害を知って、魔法少女至上主義を掲げるネオマギウスに転向してしまいます。しかしちはるとすなおの二人とともに、絵本の世界に入り、本当の悪はなにかを知り、ネオマギウスを脱けるというストーリーでした。


このトラ・トリ・カメの着ぐるみ衣装が妙にデザインが凝っていて、気にはなっていたのです。このお正月イベントで衣装配布がようやく決まったようです。

明日香がお正月に見た夢のお告げで、竜城家に伝わる、「正しき者」だけが行える「鏡開き」の儀式のことを知り、その復活をめざすというのが、新春のイベントストーリーです。この儀式には、龍を祖先とする伝承を持つ竜城家のみならず、過去には時女一族も関係していたようです。

なるほど!

トラ・トリ・カメの三人に、「竜」城明日香が加わることで、青龍・朱雀・白虎・玄武が完成するわけですね。

2024年のお正月キャラとイベントストーリーを見越しての、2部終盤のあのストーリーと衣装設定だったのでしょう。2年越しの遠大なる伏線回収です。マギレコくん、おみそれしました。


さて、前置きが長くなりましたが、『龍の起源』の読書メモなど。


日本の元号に「龍」の字を用いたものがないというのは、興味深い指摘でした。龍は「元号」の本家である中国では、皇帝の象徴であるにもかかわらずです。

天皇の朝服の文様も、桐、竹、鳳凰であり、その後、麒麟が加わりますが、龍は使われることがなかったそうです。即位式の礼服には龍の文様も加わるものの、日、月、星辰、雉、虎、猿、水藻、粉末、黻(フツ:亞の形)など、さまざまある文様のうちのワンオブゼムです。


しかし天皇の本質は、農耕王であり、日和見王です。日和見王として、民のために雨を呼ぶには龍を頼らねばなりません。

古代から雨を祈願するのは、水神である貴船神社や丹生川上神社でした。平安京造営に際して、都の辰巳(東南)には龍の棲む神泉苑が設けられたのもそのためです。

しかし天皇家は宮中に龍を入れることはありませんでした。これは中国の紫禁城、琉球の首里城が「龍の城」だったのとは大きな違いです。


天皇のシンボルとして「龍」が避けられた理由には、天皇制が成立した当時の東アジア情勢と、国内情勢を背景に考える必要があるようです。

京都御所と首里城の違いは、日本の皇室と琉球の王朝の中国に対する関係の差によるものでしょう。琉球は中国の皇帝に朝貢を行い、その見返りに皇帝から国王に任命された冊封国(従属国)でした。


その点、日本は「独立国」です(遣唐使の時代には、唐からは冊封国と扱われていたようですが)。白村江の敗戦(663年)で国家存亡の危機に陥った倭国は、敵国の唐をモデルに「近代化」を推し進めます。そして、ミニ唐帝国ともいうべき「日本」を創建し、倭王はミニ皇帝である「天皇」を名乗るようになったのでした。

日本は多くの点で中国を模倣しながら、天皇支配の正当性と独自性を主張するために、中国そのものである「龍」は避けなければならなかったのでしょう。


記紀の神話にも、「大蛇」(オロチ)は出てきても、中国の皇帝の象徴である龍は出てきません。ヤマタノオロチ伝説が伝えるのは、ヤマトの元々の支配者がオロチを信仰した出雲系の勢力だったという歴史です。龍は旧勢力が崇拝したオロチのイメージにもつながり、天皇がこれを忌避したであろうことは、十分に考えられることです。


毎週通っている摩耶山も、龍の化身とされ、摩耶山から湧き出た水は「龍神水」といわれるそうです。


摩耶山の名の由来は、天竺の法道仙人が開山し、空海が創建した天上寺が、釈迦の生母・摩耶夫人(まやふにん)を祀っているところから来ています。山頂近くの「産湯の井」には、釈迦の産湯に使われたのは、龍がこの井戸から飲んで天竺に降らせた雨の水だという伝説が伝わります。


しかし天竺の龍なら、中国のロンでなく、インドのナーガだったはずです。


日本ではあまりインドのナーガを図像の形で見かける機会はあまりありません。私も『龍の起源』に引用された『弘法大師行状絵詞』の雨乞いの儀式を描いた絵で、初めて見ました。そこに描かれているのは、ごく普通の蛇ですが、ナーガはもともとインドに棲息するコブラの神です。ナーガには二本の角も髭も、鋭い爪も、四本の足もありません。

コブラからの変形は、頭が七つあるとか、



ラオスの公園の像。ナーガに守られたブッダ。


あるいは、人間の顔を持つ、擬人化された姿で表されるということです。



https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=153083による

うーむ。どちらもいやなやつだなあ。

中国人は仏教説話に出てくるナーガを土着のロンと解釈しました。

中国では、大阪大学豊中キャンパスで発見された全長7メートルもの巨大ワニ・マチカネワニの近縁種が、数百年前まで棲息していたそうです。この巨大ワニが空想上の動物のロンのモデルになったという説があります。

英語の論文ですが、自動翻訳等でご覧ください。


同じ爬虫類とはいえ、中国のロンとインドのナーガの外見が全く異なるのも、片やモデルがワニ、片やコブラがモデルだからと考えたら、説得的です。

しかしロンもナーガも、水の神であり、豊穣のシンボルである点では共通しています。

ところで、漢字のロンに関していえば、「竜」は「龍」の略字と思っていましたが、「竜」のほうが、甲骨文字直系のオリジナルの字体なのだそうです。龍の旁(つくり)の部分は躍動飛行するさまを示すものだそうです。時代を下ることに、この装飾の部分が誇張されていき、別の漢字となったのが「龍」だということです。いわば「竜」は長男、「龍」は二男の関係です。


『龍の起源』の「河童は人間化した龍である」という指摘も、おもしろい発見でした。河童は夏のうちは里で暮らし、冬になると山に行き天狗になるという伝承があります。なるほど、河童にも天狗にもくちばしがありますね。

摩耶山の山頂には、修験者が天狗を封じ込めたという天狗岩が祀られています。天狗は畏怖の対象であると同時に、水源地である山の守り神だったということです。

風水によると、大地の起伏とそれに伴う「気」の流れは、龍の体に擬して「龍脈」と称されたそうです。山脈のはじまるところは「起龍」、突出した小高い丘は「龍脳」、ゆるやかな窪地は「龍穴」と呼ばれ、この「龍穴」にはもっとも「気」が集中するのだとか。そのため、この「龍穴」は、人間の居住するにも死者の埋葬にも最適の地と見られ、宮殿や寺院や墓がつくられたのだ、と。

風水が重視したのは、龍が休み、水を飲むための水の流れでした。背後に山を控え、前方は水に囲まれたところが人間の居住に適した空間だということです。

京都が都になったのも、この風水の考えからでしょうか。今は淀競馬場の池に面影を残すだけですが、京都盆地の中央には、巨大な巨椋池が広がっていたわけですからね。

山を背後に控え、前面に海が広がる神戸も、龍が棲むには好条件です。今年も愛娘とともに、摩耶詣でをこころゆくまで楽しみたいと思います。

そういえば、マギレコの竜城明日香役の声優さんは、アニメ『ちはやふる』の千早役なんですね。『ちはやふる』は原作オンリーで、アニメも実写も見ていないのですが。お正月といえばかるた。一年前の記事にリンクします。



『ちはやふる』そして『かぐや様は告らせたい』完結

「『ちはやふる、連載終わっちゃったんだよね』あれは、熊野寮に近いペルシャ料理店でランチを大先輩にごちそうになり、京都国際マンガミュージアムに『大乙嫁物語展』に行ったときだった......



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