新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

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天使が消えた名画 フェルメールと17世紀オランダ絵画展

2022年08月27日 | アート/ミュージアム
こんにちは! れんです。夏休みはぃかがぉ過ごしでしたか?

大阪市立美術館で開催中の『フェルメールと17世紀オランダ絵画展』を観に行ってきました!

チケットはネットで予約制でした。ぉ盆休み中だったので混雑が心配でしたが、開館直後でなければ予約なしでも入れたよぅです…はぃ。

全7章の展示の見どころを書いていたら、とても長くなってしまぃました…。
記事は展示順になってぃます。メインの《窓辺で手紙を読む女》については、最初の「はじめに」と、最後の「第7章」で取り上げてぃます。他の作品に興味のない方は、途中は飛ばして読んでくださいね。



(はじめに)消されたキュービッドの謎

この展覧会の注目作品が、17世紀のオランダ絵画の巨匠ヨハネス・フェルメールさんの《窓辺で手紙を読む女》です。窓から差し込む光の表現、室内で手紙を読む女性像など、フェルメールさんが自身のスタイルを確立したといわれる初期の傑作です。

1979年のⅩ線調査の結果、この作品は、女性が立つ部屋の壁面に、キューピッドの描かれた画中画が飾られていたことが、わかりました。上から絵具で塗りつぶされてぃたのです。ただし、このキュービッドの消去は、フェルメールさん自身の手によるものだと考えられてきました。

しかし、2017年の調査により、フェルメールさん以外の人物により消されたことが新たに分かり、翌年から画中画の上塗り層を取り除く修復が開始されたのです!

フェルメールさんの《窓辺で手紙を読む女》は、修復後は所蔵館のドレスデン国立古典絵画館以外では世界初公開なんですよ…はぃ!

ぁ、ぉ父さん、これ見て! このポスター、見る角度によって修復前と修復後の画像に切り替わるんだって! 


修復前の絵です。今まで知られてきた《窓辺で手紙を読む女》ですね。



修復後です! 天使さんの絵が見えたのがわかりますか?

レンチキュラー印刷…とぃうのだそうです。友だちの塁ちゃんにもらった、カミケのおみやげのうちわも、このポスターと同じ仕掛けでしたよ? うちわを煽ぐとね、 『スパイス・ファミリー』のニャーニャちゃんの優しい「はは」のヤミさんが、完璧無欠の殺し屋のトゲトゲ姫にチェンジするのです!

それでは、展覧会に出発です。

最初は修復プロジェクトの過程を紹介する映像コーナーでした。
上塗りされた絵具層を顕微鏡で覗きながら解剖メスで慎重に取り除き、徐々にキュービッドが姿を現していく修復の過程が紹介されます。


ヨハネス・フェルメール《窓辺で手紙を読む女》(修復前)
1657-59年頃 ドレスデン国立古典絵画館




ヨハネス・フェルメール《窓辺で手紙を読む女》(修復後)
1657-59年頃 ドレスデン国立古典絵画館

              
ヨハネス・フェルメール《窓辺で手紙を読む女》(修復中)
徐々に現れるキューピッドの画中画 ※2019年5月発表時点


先ほどぉ話したとぉり、キュービッドの絵を消したのがフェルメールさん本人でないことが判明したのは、2017年の修復作業のときでした。汚れが積もったニスを除去する作業中、ニスを溶かす溶剤が、オリジナルの絵の部分と、キュービッドを塗りつぶした上塗りの部分で異なる反応を示したのです。
調査すると、キュービッドを塗りつぶした部分の上塗り用の絵の具は、周囲の古くなったニスの茶色がかった黄色に合わせた色味に調合されていたことがわかりました。そのことで、1658年頃の絵画の完成と上塗りの間には少なくとも数十年の歳月の隔たりがあることが証明されたのです。


   
修復作業の様子

              
修復作業の様子 

顕微鏡で拡大しながら、解剖メスで上塗りの絵具層を少しずつ除去していく、細かくて根気の要る作業です。1日に1平方センチメートルしか進まなかったのだとか!
若い頃は美術館の仕事をしてぃた父は、この修復作業に興味を惹かれたようで、映像を熱心に見てぃました。



第1章「レイデンの画家──ザクセン選帝侯たちが愛した作品」

この展覧会では、フェルメールさんだけでなく、ドレスデン国立古典絵画館が誇るレンブラントさん、メツーさん、ファン・ライスダールさんなど、17世紀オランダ絵画の黄金時代を代表する画家たちの名品約70点もあわせて出展されてぃました。

展示コーナーは、テーマごとに分かれてぃます。第1章は「レイデンの画家──ザクセン選帝侯たちが愛した作品」と第され、ドレスデン国立古典絵画館が所蔵する、オランダのライデン(レイデン)出身の画家たちのコレクションでした。

ザクセン選帝侯領は、神聖ローマ帝国の領邦国家です(後のザクセン王国です。1918年のヴァイマル共和国の樹立によって消滅しました。首都がドレスデン国立古典絵画館のあるドレスデンでした)。
このコレクションは、フェルメールさんの《窓辺で手紙を読む女》ととても密接な関係を持ってぃます。とぃぅのも、1742年、フランスのカリニャー公のオランダやフランドルの絵画コレクション30点がザクセン選帝侯アウグスト2世に譲渡されたとき、追加料金なしで「レンブラントの作品」とぃぅ触れ込みで贈られたのが《窓辺で手紙を読む女》だったのです。フェルメールさんの絵がどんな絵と一緒に購入されたのか、当時オランダではどんな絵が描かれ流行っていたのかがわかる導入編でした。

たとえば、このボルフさんの《白繻子のドレスをまとう女》をご覧ください。


ヘラルト・テル・ボルフ《白繻子のドレスをまとう女》
1654年頃または以前 ドレスデン国立古典絵画館

後ろ向きで身支度をする女性の絵です…はぃ。白繻子のドレスがうっとりするほどきれぃ…
この女性は振り返ったらどんな顔をしてぃて、ぃまテーブルの上の鏡に向かってどんな表情を見せてぃるのでしょうか…? この絵には少しホラーチックなところもあるかも。
鏡には「虚栄」「世のむなしさ」の寓意もぁるんだそうです。彼女は豊かで恵まれてぃても、幸福とはぃえない寂しい女性なのかもしれません…はぃ。
鑑賞者の視線を意識しないで、自分の世界に没入する若い女性のいる家庭的情景を描いたこの作品は、フェルメールさんの《窓辺で手紙を読む女》(1657〜1659年)を先取りするものだったとぃうことです。



             
ハブリエル・メツー《レースを編む女》
1661-64年頃 ドレスデン国立古典絵画館


糸紡ぎや織物、レースづくり、刺繍などの針仕事に従事する高潔な女性を描くことは、17世紀半ばのオランダの風俗画家たちの間で人気のあるモチーフだったとぃぅことです。
しかしこの作品を見た父は、苦笑ぃしながらつぶやきました。
「人畜無害そうな顔をしているが、数え切れないほどの男を殺している、というやつだね」
女性の左側に注目です。風俗画に女性と猫が一緒に出てきたら要注意だとぃうことです。なぜなら、当時は家庭内に猫がいることは不名誉なこととされてぃたからです。猫は官能や性的誘惑の象徴とされてぃたのです。
また、猫が乗っかっているオランダの主婦にとって欠かせない日用品だった足温器も、マイナスのイメージを伴うものでした。当時広く普及していた寓意図像集では、足温器は「女性の潜在的な恋人」とされ、女性の好意を得たければ、足温器と同じように女性の足元に身を投じ、彼女に忠実に仕えねばならない、と書かれてぃたそうです。なんだか女性を見下してぃます…はぃ。変なの!
当時の風俗画は、絵そのものを楽しむというよりは、絵の中に暗喩や寓意を忍び込ませ、聖書の教えや道徳や教訓などを伝える役割を果たしてぃたようです。フェルメールさんの《窓辺で手紙を読む女》も、当時の風俗画の常識と無縁ではなかったことが、修復の結果わかったんですよ。


第2章 レンブラントとオランダの肖像画

第2章もフェルメールさんの《窓辺で手紙を読む女》が生まれた時代背景がよくわかる内容でした。
この章のタイトルにもなってぃるレンブラントさんの絵をご覧ください…!
              

レンブラント・ファン・レイン 《若きサスキアの肖像》
1633年 ドレスデン国立古典絵画館

レンブラントさんの妻、サスキアさんを描いた作品です。
絵画のジャンルとしては肖像画ではなく、「トローニー」と呼ばれるジャンルに属します。トローニーとは、人物の胸あたりから上を描いた作品のことです。 初めは習作の扱いでしたが、レンブラントさんの時代には完成作として流布するようになってぃました。
 この絵のサスキアさんは、口を開いて笑顔を浮かべています。彼女の笑みは恋人である画家に向けられているのでしょう。しかし当時の肖像画では、こうしたモデルの感情の動きを描くことは珍しく、また無作法なものだとされてぃたんだそうです。
レンブラントさんの作品にはたくさんのトローニーがあります。レンブラントさんは人の感情や内面まで豊かに描き出したトローニーで、人物画に革命を起こしたのかもしれません。フェルメールさんの描いたトローニー《真珠の耳飾りの少女》も、同時代に活躍したレンブラントさんの影響の下で生まれたのかもしれませんね…はぃ。


第3章 オランダの風景画

風景画にも面白い作品がたくさんぁりました。
話題性(?)では、この絵でしょうか…?


ヤン・ファン・ホイエン《冬の川景色》
1643年 ドレスデン国立古典絵画館

タイトルは「川景色」なのに、図録の解説は「湖」になっています。凍結した湖または川の上で遊ぶ人たちが描かれてぃます。図録の解説には「オーフェライセル地方のズワルテ・ワーテル川沿いのハッセルト」を描いた作品らしいとぁりますが、ハッセルトは、独立したベルギーのリンブルフ州の首都ではなぃのでしょうか? 絵が描かれた当時はオランダ領だったかもしれませんが、オランダは200年以上も経った今もベルギーの独立を認めてぃないのでしょうか……?
この作品には話題性がぁるとぃったのは、そのことではぁりません。この作品は第二次大戦中に行方不明になり、1974年にドレスデン国立古典絵画館に帰還したとぃぅ数奇な運命をたどりました。その間はある古物商のところにぁったのですが、その古物商のぉ連れ合ぃは価値ある芸術作品でぁるとは知らず、楕円形のこの絵を浴槽のふたに使かってぃたんだそぅです!



 ヤコープ・ファン・ライスダール《城山の前の滝》
1665-70年頃  ドレスデン国立古典絵画館

「オランダにこんな場所ぁるのかな?」と思って、気になった絵です。オランダは平地の国、国土の四分の一が海抜以下の低地の国と教わりましたから…。調べてみたら、オランダの最高峰は、オランダ南部にある ファールス山で、最高地点の高さは323 mなんだそぅです。
滝や急流のある風景画は、ファン・ライスダールさんの絵画で最も多い主題で、150点以上に達するんだとか…。ただし、この絵の着想を得たのは、自然からではなく、ぉ弟子さんが描いたスカンナヴィアの絵や、年長世代のフランドルの画家が描いたアルプスの絵だったとぃぅことです。
『ゆるキャン△』の「海なし県」(山梨県)に住むリンちゃんが海に憧れるのとちょうど反対で、「山なし国」のオランダの人は山に憧れるのでしょうか…?
「ふおおおおおっ!!山だぁーーーっ!!」ってなっちゃうのかな? なぁんちゃって。


あfろ《ゆるキャン△》5巻 第25話 大晦日のソロキャンガール


第4章 聖書の登場人物と市井の人々

このコーナーもおもしろかった!



ヤン・ステーン《ハガルの追放》
1655-1657年 ドレスデン国立古典絵画館

旧約聖書の物語ですが、服装や風俗などは17世紀当時に移し替えられてぃます。ハガルとイシュマエルの母子が砂漠に追放されるところですが、弓で遊ぶ少年イシュマエルの表情が、面白いと思いませんか? ぉ母さんは悲しみで泣きじゃっくてぃるのに、こっちを見る目は「どうかしたの?」と、やんちゃな感じで…。このイシュマエルは、ユダヤ教とイスラム教ではすべてのアラブ人の祖先になったとされてぃるのだそうです。


ヘンドリク・アーフェルカンプ《そりとスケートで遊ぶ人々》
1620年頃 ドレスデン国立古典絵画館

先ほどのホイエンさんの《冬の川景色》もそうでしたが、当時のヨーロッパは小氷期で、川や湖が凍結するほどの厳寒が続きました。最近、熱波でライン川の水位が低下してヨーロッパの物流に混乱が生じていると報じられたばかりですが、重要な交通手段である河川が凍結してしまうことは、鉄道や自動車のなかった当時はもっと大変だったはずです。
しかしそんな時代にあっても、人々は、富裕層も貧困層も、凍った川の上で、そりやスケート、ゴルフの原型となったコルフ、さまざまな娯楽を思い思いに楽しんでぃます。滑って転んでぃる人もぃて、一人ひとりに個性がぁって面白いです。



第5章 オランダの静物画とコレクターが愛したアイテム



ヤン・デ・ヘーム《花瓶と果物》
1670-72年頃  ドレスデン国立古典絵画館

見てください…! この華麗さ、豪華さ、リアルさ。この絵の前では多くの人たちが立ち止まり、「きれいねえ」って感嘆してぃました。
もちろん、私もです…! 花や葉の上には露のしずくが光り、プラムはつやつやすべすべで、ガラスの花瓶にはアトリエの窓が映り込んでぃます…! 
まるで写真のような超リアルな精密画でありながら、この絵は同時に現実にはありえない夢のような光景が描かれてぃます。ぉ花の名前が正確にわからなくて申し訳ないんですけど、バラ、チューリップ、ボタン、アサガオ、マーガレット、カーネーション、アザレア、ポピー、麦、ホオズキ、栗、ブドウ、ベリー、プラム、サクランボ、チョウにトンボに毛虫に蜘蛛にかたつむりと、季節の異なる花々や果物、生き物たちが同じ画面の中に同時に存在してぃるのですから…!
この絵では、チューリップに注目です。
1630年代のオランダでチューリップの球根への投機が過熱、いわゆるバブル経済が人々を混乱に陥れたのは有名な話です。右の黄色と赤のチューリップは、「アドミラル・ポッテバッケル」という、最も人気で高値のついた品種だったようです。この絵にはもう一点、センター部分に、白と紫が混じるチューリップがもう一輪描かれてぃます。
この絵の制作当時は、チューリップ・バブルが弾けて30年以上経ってぃました。さすがに値段は暴落していたはずですが、やはりオランダの豊かさを象徴する花だったのでしょうか。英蘭戦争でオランダ経済は大打撃を受け、この絵が描かれた頃にオランダの黄金時代は終焉を迎えます。チューリップは、オランダの黄金時代を象徴する「あだ花」だったとぃえるかもしれません。


《キジのパイがある静物》の謎

このコーナーで気になったのがピーテル・デ・リングさんの《キジのパイがある静物》です…はぃ。


ピーテル・デ・リング《キジのパイがある静物》
1652年 ドレスデン国立古典絵画館

この絵の前に立ったとき、父と一緒に首を傾げてしまいました。

「キジのパイ?」
「どこに?」

映像作品を上映中の講堂のロビーに置いてぁった図録でこの絵を確認して、解説文もじっくり読んで、また絵を見に行きましたが、要領を得ませんでした。
父は展覧会の図録を必ず買ぅ人ですが、この絵をじっくり調べるためにポストカードまで買ってしまぃましたよ。美術館から帰ってから、改めて二人でチェックしてしまぃました。

「うん。ここにキジがいるね。ロブスターも、牡蠣も、ブドウもレモンもある。でも、パイはどこだ?」

「英語のタイトルは、Still life with a pheasant……静物とキジ、だって。パイとは書いてなぃ…よ? だから、このキジはまだ調理してぃなくて、たんに食材として飾ってあるだけ?」 

「なるほど。でも、キジを捌いてパイが焼き上がるまでには時間がかかるよ?」

「そっか…ロブスターと牡蠣とブドウとレモンだけじゃ、ぉ腹空いちゃうね…。
ぁ! こんな作品がある。ほら、見て」



ピーター・クラーズ《七面鳥のパイのある静物》
1627年 アムステルダム国立美術館

「ほほう。この絵によく似ている。同じオランダの作品で、時代も17世紀の作品。キジではなく七面鳥だけれど」

「この作品のほうが有名なのかな?《キジのパイがある静物》で検索したら、この絵がヒットしたの。
この七面鳥さんを入れた籠のように見える部分が、パイなんじゃないかな? キジの絵もよく見ると、下の方がパイに見えない…? 鳥の頭と羽を飾っておくのは、ぉ造りのぉ皿にお魚の頭を置くのと一緒なのかな?」

「なるほど! そうだ、プラドの仕事をしたときに、ブリューゲルの絵に孔雀のパイが出てきたのを思い出したよ。
よし、私もスマホで検索するか。たしかタイトルは……味覚、聴覚、触覚だったな。最後にブリューゲル、っと。ほい、これだ」



味覚、聴覚、触覚、1618 プラド美術館
(Taste, Hearing and Touch, 1618 )
ヤン・ザ・エルダー・ブリューゲル
 
「パイのお皿に孔雀の頭と羽が飾ってぁる…! この絵だとわかりやすいね…!」

「この絵を最初見たときは、この孔雀は剥製の作り物かなと思ったんだ。しかし、どうやら当時の野鳥のパイは、何の鳥かわかるように頭や羽を飾る習慣があったんだろうね。
野生の鳥の羽毛にはノミやダニなどもいるから、衛生的には感心しないけど。ちゃんと消毒しているのかな?」

食いしん坊の私たちは、《ル・コンド・ブルー クッキング・テクニック》で、野鳥料理のページを見てみましたが、キジのパイは出てきませんでした。キジの肉は独特の風味がぁって食通好みだと書いてぁるだけでした。今は野鳥のパイだからとぃって、さすがに頭や羽を飾る習慣はないと思いたいです…はぃ。出てきたら、ちょっとぃやかも。


第6章 複製版画

ドレスデン国立古典絵画館の所蔵作品の複製版画が展示されたこのコーナーは、メインの《窓辺で手紙を読む女》のコーナーに先立って、いったんクールダウンするためのコーナーでしょうか。メインディッシュの前の口直しのような……。
ドレスデン国立古典絵画館の名声を高めたのが、版画技法(エッチング、エングレーヴィング、リトグラフ、スティール・エングレーヴィングなど)による所蔵作品の複製画集でした。代表作の大判の精巧な複製版画を収めた注釈付きの豪華な画集は非常に高価で、裕福な顧客しか購入することができませんでしたが、各ページのバラ売りは、それほど裕福でない美術愛好家や来館者も手にすることができました。
19世紀半ば以降になると、より多くの複製原画が画集としてまとめられ、さまざまな出版社から出版され、世界中に流通し、広まっていったのです。


複製版画 展示風景(写真は東京展のものです)


第7章 《窓辺で手紙を読む女》の調査と修復

さあ、お待ちかねのメイン会場にやってきました!
どうして《窓辺で手紙を読む女》のキュービッドの絵は消されてしまったのでしょうか? その謎に迫ります。


その前に、この絵がドレスデン国立古典絵画館にやってくるまでのぉ話をさせてください。

17世紀オランダで、存命中のフェルメールさんは高名な人気画家でした。金と同じほど高価だったラピスラズリを原料とするウルトラマリンを惜しげもなく絵に使用することができたのも、実家も裕福で、有力なパトロンにも恵まれ、商人としても経済的に成功してぃたからです。「ウルトラマリン」は「フェルメール・ブルー」として有名です…ね。


《真珠の耳飾りの少女》 
※今回のフェルメール展には出展されてぃません。


しかし18世紀に入ると、フェルメールさんは忘れられた画家になってしまぃます。19世紀半ばまで《窓辺で手紙を読む女》の作者も、誰であるかは一般には明らかではなかったんですよ…はぃ。

このドレスデン国立古典美術館の所蔵品となったのは1742年のことでした。それから一世紀近くが経った1838年、《603番》と呼ばれたこの作品は、入念に汚れを落とされ、数か所にわたる破損箇所が修復され、ニスが塗られました。このとき、「この絵は1838年以前にも修復家の手が加えられたことは明らかだ」と記録したメモが美術館に残されてぃます。


修復後


修復前

いつ、いったい誰が、どうしてキュービッドを消してしまったのでしょうか? 今回の修復で明らかになったとおり、キュービッドの絵に傷みや汚れはなく、損傷を隠すための保存上の理由でなかったことは明らかです。

フェルメールさんの作品には、背景に聖書の一場面や肖像画や風俗画、地図などの絵(画中画)が背景に描かれた作品が多数ぁります。そしてその画中画は、作品のテーマや制作意図を表すものでした。

《窓辺で手紙を読む女》のキュービッドは弓を持ち、地面に転がった仮面を足で踏みつけてぃます。これは当時の「寓意図像集」……標語(モットー)があり、つぎに木版の挿画、その下に数行の韻文が添えられる挿絵入りの注釈書です……から引用されたもので、この絵の意味するところは「誠実な愛は嘘や偽善に打ち勝つ」なんだそぅです。

1742年、《窓辺で手紙を読む少女》がドレスデンのコレクションに加わったとき、この作者はレンブラントさんとされていました。忘れられた画家のフェルメールさんと違って、レンブラントさんは当時も絶大な人気を誇ってぃました。
このコレクションの譲渡の取引の仲介に当たった人物は、当時のパリで有名な画家であり修復家であり、この人物が、この作品をレンブラント風に見せるためにキュービッドの画中画が隠された可能性が指摘されてぃます。
この絵の作者がフェルメールさんであると認められたのは、この絵がコレクションに加わった120年後の1862年のことでした。

みなさんは、今まで見慣れてきた修復前、キュービッドの絵が復元された修復後、どちらの作品が好きですか?

キュービッドの絵がないほうが、つまり絵の意味やテーマが固定されないほうが、手街を読む女性の表情からいろいろなドラマを想像できて、絵を見る楽しみは広がるかもしれません。キュービッドの絵を消した人も、同じことを考えたのかもしれません。映像作品である人が語ってぃましたが、キュービッドが塗りつぶされたこの何も描かれてぃない壁面は、見る人の心を映し出すキャンバスの役割を果たしてぃたのです。

しかし私は絵が修復されて、オリジナルの姿を取り戻せてよかったと思います。
17世紀には、絵は聖書の教えや道徳や教訓を伝えるための道具だったり、インテリアや装飾品だったりして、まだ独立した芸術作品とはぃえませんでした。フェルメールさんは当時の最先端技術カメラ・オブスキュラ(ピンホールカメラ)を用いて緻密でリアルな表現を追求した人でしたが、当時の風俗画家らしい、保守的で常識的な一面も持ち合わせてぃました。最先端で革新的なところも、保守的で常識的なところも、どちらもフェルメールさんだと思います。
それにフェルメールさんはもう忘れられた画家ではぁりません。有力諸侯のご機嫌をとるために、レンブラントさんの振りをする必要なんか、もうなぃのです。

ぉ父さんは修復前の《窓辺で手紙を読む女》も見たことがぁるんだよね? 両方見られるなんて、ぃいなぁ。長生きしただけ? 長生きしてぃると、見たくないぃやなものも、たくさん見る? 
ぅん、それはわかるけど…。
ぉ父さん夏生まれでしょ…? 公転周期が人の一生と同じ長さの辺境の惑星アルデランで、夏を二度迎えられた人と同じくらぃ、ぉ父さんは幸せ者だと思ぅよ…?

父はフェルメールさんとスピノザさんと芭蕉さんが同時代人であることを知って、考えることがぃろぃろぁったようです。また何か記事を書くこともぁるかもしれません。そのときは、またぉ付き合いください。ぉ酒をやめて、勉強する時間が増えて良かったね、ぉ父さん!


それでは、ここまで読んでくださり、本当にぁりがとうございました!

フェルメール展、夏休みのぃい思い出になりました!




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