
『労働組合入門』より
血を流して勝ち取った8時間労働と有給休暇
今では「8時間労働」は社会の常識になりつつありますが、同志マルクスやエンゲルスが生きていた19世紀には革命的な要求でした。
当時は1日14〜15時間の長時間労働が当たり前だったのです。
1886年5月1日、アメリカの労働者は、8時間労働制を要求して20万人が一斉にストライキに入りました。5月3日にはストライキを行っていた労働者4名が警官により射殺され、5月4日、シカゴのヘイマーケット広場での抗議集会では、一部の参加者は権力への報復として爆弾闘争を行い、警察側7人、労働者側4人の死者が出ました。この事件では、9人のアナキスト(無政府主義者)が逮捕・起訴され、4人が処刑されています。容疑者の多くは、えん罪だったといわれます。
1889年に創立された第2インターナショナルは、このアメリカ労働者のたたかいを記念して、この日を「メーデー」(May Day)として労働者の統一行動日としました。8時間労働制が世界的に確立するのは、1917年のロシア革命を経て、1919年のILO1号条約においてです。
年次有給休暇は、フランスの地下鉄労働者が1900年に最初に獲得したものです。いつも朝から夜まで地下で働いているので、平日にも太陽が見たいという希望から始まったのです。有給休暇を法制化させたのは、フランスでは、1936年の人民戦線(ファシズムに対抗してできた社・共・急進社会党による左翼連立政権)のブルム内閣のときで、このときは、2週間の休暇でした。
ちなみに、メーデーは、ヨーロッパでは春を祝う「五月祭」で、その前日がブロッケン山に魔女が集う「ワルプルギスの夜」です。世界に光と太陽が戻ることを祝う古代からの「五月祭」は、今では労働者の祭典になっています。そこには、8時間労働や有給休暇を要求し、希望を求めてたたかい続けた人々の血と涙と汗が刻まれていることを、忘れてはならないでしょう。
最近は「働き方改革」が進んでいます。有給休暇の取得義務化など、これまでより進歩・改善された面もありましたが、「多様で柔軟な働き方」を名目として、「企画業務型裁量労働制」の適用範囲を拡大するという、「残業ゼロ法案」「定額働かせ放題法案」という批判を受けるものでした。
政府も経済界も、長労働時間を厳しく規制した近代労働法制を改悪したくて仕方ないのです。今まで当たり前のことになっている諸権利を維持し、守り抜いていくためにも、労働組合による不断の闘争が必要なのです。
日本の労働組合は、「第二総務部」「御用組合」と批判されたり、いわゆる正社員のための利権集団と見なされたりすることがあります。
一般労働者の問題からかけ離れた「労働貴族」「ダラ幹」(だらしない幹部)がこの世に多数存在するのは事実です。この列島社会最大の労組のナショナルセンターの連合は共産党に対する反共攻撃を強め、自民党のような保守反動政党にすり寄る始末です。
正社員だけ、組合員だけ生き残れたらいいのか。そんなことはありません。労働運動は自らの権利を守るばかりでなく、「踏みにじられた万人の解放を目的とするものであることを、全世界に納得させ」るべく、時には流血も辞さず反動勢力や裏切り者に実力で立ち向かってきました。
いま世界では、ガザではイスラエルによるジェノサイドが続き、地球上から戦火と暴力が消えることはなく、差別と分断が進み、人びとは憎しみ合い、この世のどこにも希望も救いもないように見えます。しかし、この救いのない世界から共に力のかぎり立ち上がりましょう。いまこそ、労動者が主人公の世界の実現に向かって、労働者は立ち上がり、団結を拡大していこうではありませんか。
メーデーを迎えるにあたり、若きマルクスとエンゲルスのManifest der Kommunistischen Partei(『共産主義者宣言』、いわゆる『共産党宣言』)の結びのことばを引用したいと思います。日本語訳は、ドイツ語原文からの私の超訳。原文のgewaltsamen(暴力的)を隠蔽して、無難な訳語を当てている、英訳にも日本語訳には、あまり感心しませんね。
Die Kommunisten verschmähen es, ihre Ansichten und Absichten zu verheimlichen. Sie erklären es offen, daß ihre Zwecke nur erreicht werden können durch den gewaltsamen Umsturz aller bisherigen Gesellschaftsordnung. Mögen die herrschenden Klassen vor einer kommunistischen Revolution zittern. Die Proletarier haben nichts in ihr zu verlieren als ihre Ketten. Sie haben eine Welt zu gewinnen.
Proletarier aller Länder, vereinigt euch!
おれたち共産主義者は、自分たちの本音や考えを隠しておけるほど、お上品じゃないんだ。おれたちは、うそをが苦手でね。おれたちは目的を達成するためなら、これまでの社会秩序なんか、なにもかも暴力的に転覆させてやるまでさ!
支配階級は、共産主義革命の前に震え上がるがいい。おれたちプロレタリアは、革命によって失うものは鎖のほかに何もない。おれたちは、この全世界を獲得する。
全世界のプロレタリアよ、団結せよ!