門前の小僧になりたいくらげ

学究的な空気に憧れて専門家の周りに出没しては雑感を綴るブログ。化石鉱物系がやや多し、の予定。

卵と玉子の違い・漢和辞典で引いてみると〜たまご話その5〜

2017年12月11日 | 生物

 国語辞典で調べても『卵』と『玉子』の違いがよくわからないのなら、それぞれの語源を調べてみたら?ということで、手元にある漢和辞典を引いてみました。すると『卵』は象形文字で「かえるの卵の形を表す。広くたまごを意味する。」とあり、字義として次の3つが挙げられています。

(1)たまご。はららご(魚のたまご)。

(2)そだてる。

(3)大きい。

  一方の『玉子』はというと。漢和辞典なので『玉』と『子』に分解して調べてみると『玉』の字義の中に「鶏の卵」の記載発見!凡例で確認すると日本での転義扱いの位置に記載されていたのでこの漢字の原義ではなさそうですが、「鳥」ではなく「鶏」と限定した表現で出てきました。また、『子』は象形文字で「手を動かしているこどもにかたどる。(中略)文字を作るには、年少に関することを示す意符として用いる。」のだそうで、字義としては大項目だけでも14項目も載っていたので大項目の初めの3つだけ挙げると

(1)

(2)。こども。

(3)むすめ。むすこ。

つまりこの漢和辞典の記述を根拠にすると『卵』は広くタマゴ全般を指し、『玉子』は「鶏の卵・鶏のこ」といった感じの定義になりそうです。

 また、他の漢和辞典には文字の使い分けとして食品としてのたまごは『玉子』と表記することが多い、と記されているものもありました。(この場合、タマゴは鶏と限定もされていないし、魚卵などを含むかどうかも記されていません。)

 何冊かの漢和辞典をもとに書くと『卵』と『玉子』の違いはこんな感じでしょうか?

『卵』は広くタマゴ全般を指し、『玉子』は食品としてのタマゴのうち特に鶏のタマゴを指すことが多い

・・・これまた手元にある漢和辞典にしかあたっていないので、異論が出てくるかも、な状態ではありますが。それにしても『卵』は字の成り立ちが「水生生物の卵塊」から来ているためか「はららご=魚のタマゴ」という説明が必ず入っています。これはこれで興味深いんですが、長くなるのでひとまずこの記事はここで終わります。(でもたまご話は続く。。。)

参考:貝塚茂樹・藤野岩友・小野忍編「漢和中辞典」 株式会社角川書店 刊

   鎌田正・米山寅太郎著「漢語林」新版 1994.4.1 株式会社大修館書店 刊

   赤塚忠・阿部良雄編「漢和辞典」改訂新版 1986.10.20 株式会社旺文社 刊

   藤堂明保編「例解学習漢字辞典」第8版 2014.11.24 株式会社小学館 刊

   小川環樹・西田太一郎・赤塚忠編「新字源」1968.1.5 株式会社角川書店 刊

 

 


卵と玉子の違い・国語辞書で引いてみると〜たまご話その4〜

2017年12月09日 | 生物

 前回の記事では主にネットで読んだ内容を書きましたが、そもそも国語辞典では『卵』と『玉子』はどう扱われているのでしょう?例えば手持ちの辞書を引いてみると、【卵・玉子】が同時に書いてあって、意味は

(1)食用にする、鳥や魚、特に鶏のたまご。けいらん。

とあります。う〜ん。用例を見ても『卵』と『玉子』を使い分ける基準がわかりません。それにタマゴ全体=食用に意味が限定されてますし。ならば食用以外のタマゴはひょっとしてランと呼ぶのか?と同じ辞書で卵の音読みであるランを引いてみると

(1)雌性の配偶子。特に精子に対応する生殖細胞(卵細胞)およびその付属物の総体。

と、生物学の学術用語としての『卵』の説明がなされていました。う〜ん。

 

 次に別の国語辞書でタマゴを引いてみると

(1)鳥・魚・昆虫などの雌の生殖細胞。

(2)鶏の卵。鶏卵。

(3)まだ一人前にならない修行中の人。

と記載されていますが、漢字表記は『卵』のみで『玉子』についての説明は一切ありません。ちなみにこの辞書でランを引くと

(1)たまご。虫・魚・鳥などのめすの生殖細胞で外側は殻に包まれた丸いもの。

(2)特に、鳥のたまご。

となっています。他の辞書も引いてみて、タマゴは「殻または膜に包まれた生殖細胞」を指す言葉であり、「鳥、殊に鶏の生殖細胞」を指す言葉でもある、という傾向は見えてきましたが、『卵』と『玉子』の使い分けはこうだ!という記述はありませんでした。というより、そもそも『玉子』についての説明がありませんでした。

 

 手元にある限られた数の辞書を引いただけなので保証はできませんが、とりあえずの自分の中での締めというか要点整理。

「国語辞典を引いても卵と玉子の違いは載っていない。」 

辞書などでドンピシャの記載を見つけられた方、ぜひご教示下さい。 

 

参考:新村出編「広辞苑」第4版 1955.5.25 株式会社岩波書店刊

   松村明・山口明穂・和田利政編「国語辞典」改訂新版 1965.2.10 株式会社旺文社刊

   西尾実・岩渕悦太郎・水谷静夫編「岩波国語辞典」第4版 1963.4.10 株式会社岩波書店刊

   甲斐睦朗監修「小学新国語辞典」改訂版 2002.1.10 光村教育図書株式会社刊


卵と玉子の違い・ネットで調べてみると〜たまご話その3〜

2017年12月08日 | 生物

 みなさまは卵と玉子の違いってご存知でしょうか?くらげびとは幼い頃友人に『有精卵』と『無精卵』の違いだと教わってから長い間そ〜なんだ、と思っていました。・・・なら、なんで『無精玉子』って書かないんだろう?とモヤモヤしながら。大人になるにつれていろんな使い分けがあることを知り、今のところくらげびとにとって卵と玉子の定義はこんな感じです。

「卵はタマゴ全般に用い、玉子はヒトが食用とみなすタマゴのうち、特に鳥のタマゴに用いる。」

 つまり鶏のタマゴは食品として扱われる時は<玉子>、繁殖や観察対象としてなど非食品として扱われる時は<卵>です。

 「玉子=家禽のタマゴ」に限定してしまってもよいのでは?とも思ったのですが、野鳥のタマゴを取って食べる場合はどうするんだろう、ということで、今のところグレーゾーンの<家禽以外の鳥>も含んでいます。グレーゾーンといえば、(ワニとか亀とか)鳥以外で硬い殻を持つタマゴを食用にする場合はどうなるのでしょう?食用なら玉子じゃないのかな〜とは思うのですが、身近に日本語での記載例を見たことがないので判断材料不足につき保留です。「特に鳥のタマゴに用いる。」・・・判断から逃げていますね、はい。でも、辞書を引いてもはっきり載っていないんですもん。 

 ちなみにネットで検索してみると他にも

A.調理の形態でタマゴを加熱するしないで区別したり(cf.卵かけご飯と玉子焼き)

B.調理の形態でタマゴの殻から出す出さないで判別したり(cf.ゆで卵と玉子とじ)

などの説があります。 ただ、これらの説の場合、スーパーのタマゴ(表記は大抵が『玉子』)はどう扱うのかな?と思い、くらげびととしては冒頭の説の採用にいたります。でもなんだかモヤモヤ。どなたか卵と玉子の境界線をはっきりご存知の方いらっしゃいませんか?ぜひお教えいただきたいです!(次記事に続きます。)

↑ここに挙げたどの説でも『玉子』な画像

 ご参考までに。二黄卵や検卵について教えてくださった養鶏場の方によると「鶏が産むのは卵、出荷するのが玉子」だそうです。

 


卵を透かして見ると〜たまご話その2〜

2017年12月06日 | 生物

 「検卵は光源に卵を透かして行う」と以前に養鶏場で聞いたことを子どもたちに話していると、

「じゃあ、やってみよう!」

ということになり、冷蔵庫にあった二黄玉子を見てみました。殻の薄くなっているところや罅(ひび)が入っているところは順光で見るより逆光(光にかざす)で見る方が確かにわかりやすいです。でも、自宅にあるLED灯ではさすがに卵の中までは見えませんでした。使うのがもっと強い光なのか特殊な光をあてるのか定かではありませんが、「玉子(食品)に使うのでレントゲンのようなものは使わず強い光で保護グラスをかけて検卵する」んだったと思うんですけれど。。。卵が加熱されてしまうので少なくとも白熱灯は使われていないでしょうし。。。いや、本当に記憶があやふやですみません。それにしても卵の中が見えなくて残念です。晴れた日に太陽に向かってかざせば今よりは見えるでしょうか?


二黄玉子はレアアイテム?〜たまご話その1〜

2017年12月05日 | 生物

 二黄玉子は一つの殻の中に二つの黄身が入っているもので、これにあたると縁起がいいそうです。茶柱が立つと縁起がいい、のノリですね。中国でも双黄卵と呼ばれ、やはり縁起がいいものとして扱われているようです。

 これを養鶏家さんの視点から見ると。。。二黄玉子はたいていは「産卵器官がまだ成熟しきっていない若い雌鶏が生む卵」だそうです。ホルモンバランスなどいろんな加減で成熟した鶏でも生むことはあるそうなのですが、確率的に若い鶏の大半と老いた鶏がたまに、ということが多いようです。二黄玉子のでき方をお聞きすると、そんなにレアではないような?それにしては市場であまり見かけません。あってもブランド的な販売がされていたりします。そもそも殻を割らずにどうやって単卵かそうでないか見分けるのでしょう?

 養鶏プロの言では「単卵かそうではないかは検卵時にわかる」そうで、以前伺ったことのあるその養鶏場では規格外品として格安で売っておられました。ちなみに検卵では殻にヒビが入っていないか、異物が入り込んでないか、など、多くのことを調べるのですが、この養鶏場では鶏の体内で卵に入り込んだ血も異物扱いでした。黄身やカラザ(黄身にくっついている白い筋みたいなの)に血がついていると嫌がる消費者が多いため、可能な限り外しているそうです。それこそ中身も割らずにどうやって調べるんだろう?とお尋ねしてみると、

「光源に透かしてチェックします。」

とのこと。手作業ですか!教えていただいたのはかなり前のことなので今はもっと便利な方法があるのかもしれませんが、びっくりしました。

 

↑1個の玉子で”目玉焼き”できます。相対的に白身の割合が少なくなるので玉子焼きも色よく仕上がるとか。