門前の小僧になりたいくらげ

学究的な空気に憧れて専門家の周りに出没しては雑感を綴るブログ。化石鉱物系がやや多し、の予定。

2017.05.28 羽沢貝塚〜学芸員と歩くふるさとの大地「西濃編」その5〜

2017年09月17日 | 古生物学・地学

 2017.05.28 羽沢貝塚にて筆者撮影

 今回の岐阜県博物館講座もここが最後の地です。羽沢貝塚。現在の岐阜県海津市南濃町羽沢地区にある縄文時代中期後半(約4,500〜4,000年前)に形成され始めたとみられる貝塚です(貝層形成期は約2,500年前)。形成年代と貝塚の場所から、近隣の庭田貝塚※とともに6,000年前の最大海進時※から徐々に海が後退していく段階を示す遺跡と見なされています。大量のヤマトシジミをはじめとしてマガキ、ハマグリなどの汽水域の貝や、ウナギ、コイ、マイワシ、スズキなど魚の骨なども見つかっている主淡貝塚です。他に人骨や甕棺、土器や石器が見つかっています。考古学的に見るなら人骨や甕棺などの説明の方が多くなりそうですが、そこは地学ツアー、年代や地球全体の環境についてなど、かなりマクロな説明をしていただきました。

 実地を見た感想は・・・石碑の周辺に普通にヤマトシジミらしきものが散乱しています。とても数千年前の貝とは思えません。くらげびとが食べた貝だって庭先にほっておけば数ヶ月で白くなりますし(ハマグリとシジミで実証済み)、江戸時代に捨てられたものと言われてもうなずいてしまいそうです。なので見た目では年代を測定しづらい遺物でも年代を測定できる技術ってすごいなあ、と思います。

 最後に担当学芸員M氏のお言葉。

「この地学ツアーでは、地学というよりは考古学や日本史の分野である貝塚や堰堤、伝説故事ゆかりの地なども組み込まれています。地学は地層や鉱物など昔のことを知るためだけの学問ではなく、今の自分たちの生活にも密接に関わる、もっと言えば将来への指標ともなりうるダイナミックな学問であることを肌で感じていただきたいのです。」(すみません、表現が正確ではないかもしれません。)

本当にそのとおりだと思います。本ツアーに参加できてよかったです。

 岐阜県内唯一の海水産貝塚で貝層の形成は約5,000年前。扇状地の扇端部に位置している。県史跡。

 「最終氷期後の温暖化により大量の氷床が溶けて海面上昇が起き、日本では縄文時代前期にあたる約6,000年前にそのピークを迎えたとされ、これを縄文海進と呼んでいる。(中略)その最大時には濃尾平野地域では現在の大垣市付近まで海面が侵入した。(後略)」←講座配布資料より引用

羽沢貝塚

庭田貝塚

 

参考:学芸員と歩くふるさとの大地「西濃編」配布資料 May,2017 岐阜県博物館

   海津市公式HP内「羽沢貝塚」ならびに「庭田貝塚」



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