KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

2017韓国の山旅 #1-インスボン・クラシック

2017年09月15日 | 海外
9/15 天候:
行程:インスボン・シュイナードB(5.8、6P)~インスAルート(5.8 4P)~インスボン(仁寿峰)
同行:Jeon Yonghak(ジョン・ヨンハク 韓国マウンテンガイド協会)
 
 朝6時起床。
 昨夜は緊張して寝付けないかと思ったら、仕事で疲れているのかよく眠れた。

 宿を出てすぐの所に「CU」というコンビニがあり、ここでカップ麺の朝食を摂り、昼の行動食やミネラルウォーターを購入。
 少々勝手がわからず戸惑っていると、ここでも店員が親切にいろいろ教えてくれた。
 それにしても、こちらはジュースやパンを買うだけで財布から千単位で札が飛んでいくので最初のうちはドキッとする。
 韓国の通貨ウォンは大体、日本円の1/10弱の価値。その感覚に慣れるまで貧乏性の自分は少し時間がかかった。

 約束の朝7時半。ガイドのジョンが4WDで迎えに来る。
 もちろん自分より若いが、それでも50歳ぐらいか。見た目は若々しく、何となく往年の西城秀樹風。
 「Nice to meet you.」挨拶を交わし、早速インスボンへ。

 ジョンは流暢ではないが日本語を話せるため、今回は非常に楽である。
 アポを取ってから今日までのやり取りはLINEでしてきたし、何とも手際が良い。
 車の中でいろいろ話をする。(もちろん日本語)
 日本のガイドH瀬さんとも仲が良く、ヨセミテやシャモニーはよく行く。高所ではパキスタン・フンザの六千m級の山で新ルートを登ったこともあるそうだ。

 渋滞する市街を抜け郊外へ。街中からもインスボンの特異な姿が見え始める。
 やがて幹線道路を西に折れ、山へのアプローチに入る。何となく道の雰囲気が湯河原幕岩へ向かう時と似た感じだ。
 本日は平日のため大丈夫だったが、休日ともなると登山口となる上の駐車場は一杯となり、下からタクシーでピストン輸送となるらしい。


 
北漢山(ブカンサン)登山口。インスボンの取付きまでは小1時間ぐらいか。

 登山口で用意を整え、さっそく登り始める。
 よく整備された石段の山道で、ここらの雰囲気は鳳来と似ている。
 30分ほど登り詰めると、レスキューが常駐する森の中のキャンプ地に到着。
 そこからさらに細い踏み跡のような道をクネクネと上がっていく。
 登山口から登り始めて小一時間ぐらいか。眼前に真っ白い剥き出しの岩山がドォーンと現れる。


 
 おーっ!これがインスボンか。 
 
 元々標高が低い山なのでここまで上がると頂上まで近いようにも見えてしまうが、その反面、上部の立ったクラックは遥か上のようにも見える。
 空気が澄んでいるせいか、距離感が掴めない。
 正面の大スラブから登り始めるパーティーもいるらしいが、ジョンはセオリーどおりスラブの裾を右へ回り込んで少し上がった正規の取付きまで行く。

 

 
 いよいよ、ここから「シュイナードB」のスタート。今回はガイド登山なので、リードは基本的に全てジョンである。
 
シュイナードB
(以下、グレードは現地グレード。ランナウトするスラブやナチュプロに慣れていないと、このグレードはあまりにも厳しいので御用心!)
 1P目 35m 5.7
 出だしは大きな弓型フレーク、いや鎌形フレークというべきか。
 下から見ると何とも緩い傾斜に見えて楽勝と思えるが、取付いてみると意外と傾斜があったりする。 
 ただフリクションはバチ利き。瑞牆の花崗岩をもっと目を粗くした感じでソールが吸い付くようである。
 左手でフレークの上を押さえ右手でクラックをアンダークリング。足はスメアで上がっていく。
 最後は1ポイント、細かいスラブを登ってピッチを切る。

 

 2P目 40m 5.8
 トポではこのルートの核心。細いフレーク状のクラックを斜上。
 とにかくスメアを信じることが大事。

 
 
 3P目 25m 5.7
 クラックをトラバースして、右側のカンテ状フレークに移る。
 一段クライムダウン気味にトラバースするところが次のスタンスが遠くてちょっと怖い。
 ネットで他の記録を検索したら、ここで敗退した白人パーティーもいたとか。
 カンテに移れば安心。
 上のビレイポイントに着いた所で油断したのか、ここで自分のビレイ器を落としてしまう。
 また天気は良いが、この辺りから風が強くなってきた。

 

 4P~5P目 40m 5.7
 左から岩が覆い被さってくるようなハーフパイプ状のチムニー。
 立体的なクライミングでアルパイン的。途中に抜けなくなった残置カムあり。
 トポでは途中20mで洞窟テラスというのがあり、そこでピッチを切るようにもなっているが、あまり覚えていないのでそのまま5ピッチ目も繋げたように思う。
 上部はWクラック。肩幅ぐらいで二本のクラックが並行して上に延びている。
 これはクロスで持つのか、それともガストン?
 ただクラックといってもジャミングを効かせるわけではなく、自分は掛かりの良い右側のクラックをフレークのようにしてレイバック風に登った。

  ハーフパイプ状チムニー

  Wクラック

 6P目 40m 5.7
 チムニー~クラック。あまりよく覚えていない。
 耳岩と呼ばれる顕著な岩塔の裾を左に上がって、まずはシュイナードBを終了。

 ここから懸垂下降で少し下り、さらにもう一本という所で私はまたしてもビレイ器を落としてしまう。今度はジョンから借りたヤツだ。
 あぁ、まったくなんてドジなんだ。情けない。
 自分が不器用なのが原因だが、あえて言い訳をさせてもらうと回転防止付きのカラビナはギアを付け外しする場面が多いマルチにはどうにも使いにくい。日々是勉強である。

 幸い、ジョンのビレイ器は下のオアシステラスで見つかった。ホッ!
 ここで昼食を兼ねて小休止。
 午後はインスAを登ることになった。

インスA(仁寿Aルート)
 1P目 40m 5.6
 広いクラック。クラックといっても中に入り込んでしまうと身動きとれない。
 上部は外に出てクラックを跨いでイグアナのように登る。

 

 2P 30m 5.8
 狭いチムニーというかジェードル。
 クラックはジャミングが効かず、足はスラブなので自然とバック&フットの登りとなる。
 ズリズリと上がるが、目の粗い岩質なので後で見たらザックの表面が擦り切れていた。恐るべし、インスボン!



 3P目 30m 5.7
 広いチムニー。ここもズリズリと登る。
 現地グレードでは5.7~8ということだが、下のピッチと併せてここもカムをセットしながらリードしたくないなぁ。

 4P目 30m 5.6
 チムニーから抜け出し、ホッとする。大きなV字の底のようなテラスに出る。
 背後にソウルの高層住宅街が米粒のように見える。
 インスAはこれで終了。

 それにしても、やはり韓国の山インスボン。グレードの割にはキムチのように辛い!
 小川山や瑞牆でスラブやNPに精通していればいざ知らず、ふだん短い間隔でボルトが整備されたショートルートしか登っていない11台前半くらいのクライマーが「10aもないんでしょ。」と甘い気持ちで取付くと、きっと涙目になるに違いない
。いや、ホントに。



 

 さらに2ピッチ、磨かれた掛かりの浅いクラックと、「狸の腹」と呼ばれる短いスラブを登ってインスボンの頂上へ。
 「狸の腹」はチッピングされているものの、多くの人が登っているのでスラブが磨かれている。
 途中支点もないので「ココガ、ケッコウ怖イデスネ~。」とジョンは笑っていた。

  クリックして拡大。がシュイナードB、がインスA。オレンジが翌日登るインスリッジ。

 インスボン頂上(810m)は遮るもののない絶景。
 谷を隔ててすぐの所にはこの辺り、北漢山(プカンサン)山域の最高峰「白雲台(ペグンデ)837m」が聳え、韓国国旗の立つ頂上は多くの登山者で賑わっている。 
 目を転じれば、ソウル中心部の町並みが細かいレゴブロックのように視界一杯に広がる。
 ソウルタワー、ロッテタワー、そして市街を南北に分ける大きな川「漢江」。北の方には道峰山(ドポンサン)も。
 ジョンが言うにはこんな素晴らしい青空の日はそうそう無く、今回来た私はとてもラッキーとのこと。

 インスボン(仁寿峰)頂上 810mより

 

 ゆっくり休んだ後、下降開始。
 ペグンデ側に向かってスラブをトラバース気味に進み、チェーンの繋がった部分を経由して懸垂ポイントへ。
 ここは南面のピディルギーキル(鳩ルート)とも重なり、懸垂支点がたくさんあるが、ジョンは上から見て左から2本目の支点がお薦めとのこと。
 ちなみにピディルギーキルはインスボンへ登るには一番簡単なルート(4P、5.7、A0)らしいが、見たところ全面ランナウト気味のスラブでそれほど簡単とも思えない。

 
南面の下降ルート(左)、インスボン東面を振り返る(右)

 帰りはシュイナードBの取付きまで戻り、自分の落としたビレイ器を探してみたが、結局見つからず。
 もう何年も使ったから、まぁいいか。
 朝登ってきた登山道を伝って、そのまま下山。

 ソウルの秋は東京より陽が長いのか、下山してもまだ明るい。
 三日目はジョンに別件があり、自分は一人でここから少し離れた道峰山へ行くつもりなのでそのことを話すと、今日のうちに道峰山の登山口まで車で案内してくれた。
 ここは有数の登山ショップ通りとなっていて、海外有名ブランドから国内バッタ物?まで幅広く登山用品店が並んでいる。
 安いウェアなら500~1,000円。日本では安売りしない有名メーカーの物でも常時3割引きといった感じだ。
 日本のH瀬ガイドの連れてくるおばちゃんクライマーたちは、インスボンで一本登るとクライミングもそこそこにショッピングに夢中になる、とジョンは笑っていた。
 とりあえず、ここでの買物はあさってじっくりするとしよう。

 
明るい雰囲気の道峰山登山用品店通り(左)と、問屋町風の東大門登山用品店街(右)

 帰りはジョンが宿まで車で送ってくれるが、明日のためにビレイ器を買っておこうと東大門(トンデムン)へ行ってもらう。
 東大門も有名な登山用品店街だが、実際には東大門の一つ隣「チョンオーガ」駅周辺にそれはある。
 道峰山と東大門の登山用品店街を簡単に説明すると、
 前者はウェア中心、通りの雰囲気はシャモニーかカナダのバンフ風。後者はギア中心、雰囲気はアメ横風といったところか。

 ジョンの先輩が社長を務める小さな店を紹介され、ここでグリベルのビレイ器とオーツンのクラック・グローブを購入。さらに別の店でグリベルのツインゲート・カラビナを追加。
 後で検索してみたらグリベルのビレイ器MasterProが日本4,320円→韓国2,850円、オーツンのグローブが日本で約6,700円→韓国3,750円(※韓国はお友だちプライスだけど)。ちなみにジョンはグリベルがスポンサーに付いているらしい。(ビレイ器はDMMのピボットを一押ししてたが。)

 道具好きの自分はジョンと別れた後もついつい登山用具店をフラフラ覗いてしまい、気が付くと外は真っ暗。
 またしても道に迷い、そのたびに優しいコリアンの人たちに助けられて、何とか歩いて宿にたどり着く。

 
宿への帰り道、怪しげなスポットに迷い込む(左)。韓国と言えば焼肉でしょう。(右)
 
 この日の夕食は近くの食堂で一人焼肉。
 ビール一本つけて約1,000円。日本よりは安いかな。キムチとかナスの甘辛炒めとかお代わり自由だし。
 けっこう疲れて、この日も爆睡。

動画はこちら

 6:57


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