KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

風雪の皇海山

2020年03月24日 | その他の山登り

日程:2020年3月23日(月)~24日(火)一泊二日
行動:テント泊・単独

 さて今回は栃木と群馬の国境、足尾山塊の皇海山(すかいさん)へ。言わずと知れた百名山の一峰である。
 当初はこの時期、ベトナム旅行へ行くはずが世界的な新型コロナウィルスにより中止、代わりにいくつか他の計画も考えたが何もできないままズルズルと縮小し、たまたまこの日程で天気が良さそうな近場に落ち着いた次第。

 百名山にはこれといって強い興味は無いが、皇海山は名前のカッコよさもあって何となく学生の頃からいつか行ってみたいと思っていた山だ。
 近年は群馬県の林道側から手軽にアプローチできるルートもあるようだが、やはりここは昔からの栃木県側、庚申山-鋸山経由の修験道ルートを辿ってみたい。
 (群馬県側の林道からのショートルートは前年秋の台風の影響でこの時点で通行不可。今後、復旧の見込みも無い?とか。)
 
一日目 天候: 
行程:横浜-銀山平9:20-一の鳥居10:15-庚申山荘11:40-庚申山13:30-御岳山14:00-薬師岳15:25-鋸山16:50-鋸山下コル(テン場)17:30

 月曜の朝、横浜発。
 今回はアルパインでもないからまったく緊張もなく、朝から寝坊する。
 登山口までのルートも適当にカーナビ任せにしていたら渋滞に掴まったりして、思いのほか時間がかかってしまう。
 皇海山は関越道と東北道に挟まれた位置にあり、横浜からだとなかなか遠い。(それでも関越高崎IC-北関東道経由が一番効率的のようだ。)

 そんなわけで登山口の銀山平にようやく到着。
 ある程度予想していたが、雪が無い。
 一応、まだ三月なのでそれなりの冬山装備を整えてきたが、雰囲気は小春日和の陽だまりハイクだ。
 アイゼン、ピッケルなど不要と思いつつも一応ザックに括り付け、出発。

 平日なので誰もいないかと思ったが、それでも林道ゲート前に二台ほど。
 しかし、この後、登山者と会うことはなかった。

 

 単調な林道をタラタラと歩き、一時間ほどで一の鳥居に到着。赤い小さな鳥居をくぐって、ここから山道に入る。
 しばらくは小さな渓流沿いの遊歩道のような道が続く。
 深い落葉の中をラッセルのようにして歩く所もあり、ここまで来てもまったく雪は無い。
 たまには静かな山歩きもいいかもしれないが、いつもクライミングなどをしているとやはり単調なのは刺激が無くて、どこか物足りない。
 ザックもけっこう重いし、次第に飽きてきて帰りたくなってきた。

 

 それでも登りがやや急になってくると「夫婦蛙岩」など巨岩、奇岩が現れ、少しは道程に変化が出てくる。
 猿田彦神社跡でようやく少し雪が現れ、そこからすぐ庚申山荘に到着。ずいぶん大きくて立派な小屋だ。
 現在も営業はしているようだが、平日の今日はさすがに人の気配が無い。小休止後は中を覗くこともせず、さっさと庚申山の登りに取り掛かる。

 

 ここから登りも本格的になり、氷柱の垂れさがった岩壁の間を縫って高度を上げていく。
 途中から雪が出てきてアイゼン装着。
 直前が三連休だったのでそれなりにトレースらしきものが残っていたが、途中で消えたりしていて人間のものなのか不明。
 山荘から庚申山までは地図上で見るとすぐかと思ったが、けっこうキツい登りだった。

 

 

 庚申山~鋸山までは「鋸山十一峰」と呼ばれ、小さなピークのアップダウンが連続する。
 自分が持っている昭文社のエアリアマップは1989年版で今から31年も前のもの。今回行くルートは全て破線で示され、この十一峰の箇所には「危」の文字が記されている。
 
 前半はそれほど大したことはなかったが、後半はやや悪い鎖場やトラロープが設置されたガレ場がいくつか続く。
 たしかに一歩足を踏み外したら助からないポイントもあったが、今回は適度な積雪にアイゼンを効かせて登れたので、返って無雪期のガレた状態よりは安心できたかもしれない。
 もちろん所々で固く凍った箇所があり慎重に歩いたが、ルート的には見晴らしが利いて道をはずす心配は無いので、冬の両神山赤岩尾根よりは楽に感じた。
 庚申山、御岳山、駒掛山、渓雲岳、地蔵岳、薬師岳、白山、蔵王岳、熊野岳、剣ノ山、鋸山と続くが、ピークに小さな標識があって自分で認識できたのは半分くらいか。

 

 ジャンクションとなる鋸山山頂へ到着。 
 登山口に二台ほど車があったので、もしかしたら先行者がいるかもと思ったが、やはり気のせいでここまでずっと一人きり。
 夕方になり気温はグッと下がってきたが、良い天気で展望も利いた。

 

 日光方面の山々を見ながら小休止。今日はここまでとし、明日向かう皇海山への急な下りを少し偵察した後、テン場を探す。

 鋸山山頂付近は風が強いため、六林班峠方面へ少し下り、最初のコル辺りの平坦地にライズ1を張る。
 餅を入れたカップポタージュとサバ缶の簡単な夕食を摂ると、疲れと寒さであとはサッサとシュラフの中に潜り込んだ。

二日目 天候: 
行程:起床4:00-テン場5:30-鋸山-皇海山7:30~45-鋸山-六林班峠11:15-庚申山荘15:35-銀山平17:35
 
 夜中、サーッという音で目が覚める。横殴りの風が雪をテントに吹き付ける音だ。
 事前の天気予報では両日ともに晴れだったのに・・・。まぁ朝にはやむだろう。あまり深く考えず、再び眠りに入る。

 4時起床。テントの入口を開けてみると、外はまだ暗く星が見えない。
 餅入りキムチラーメンの朝食を摂り準備を進めるが、結局、太陽は出ず、やや強い風の中に雪が舞っている。

 まったく初めてのエリアだし、視界もトレースも不明瞭。
 特にルーファイが悪い自分は、ここは無理せず敗退かと一瞬思ったが、時間はあるし、行ける所まで行ってみようと判断する。
 荷物をまとめテントはそのまま。ザックに行動食とテルモスだけ納めて皇海山へ向かう。

 鋸山へ登り返し、皇海山への最初の下りはちょっと急で細く、右側に落ちたらまず助からないが、シャクナゲの枝を頼りにトラバース。
 さらに続くFIXロープ箇所は昨夜からの雪でほとんど埋まってしまい、後ろ向きのダガーポジションで慎重に下る。

 最低コルから皇海山への樹林帯の道は雪が積もってわかりにくいが、間隔を置いて小さな標識や赤布があって随分助けられた。
 2~3回道を失いつつも群馬県側からの道との分岐点に到着。何とここからまた新しいトレース跡が繋がっていた。
 群馬県側からのルートは現在閉鎖されているはずなのに・・・不思議だ。

 

 そこから皇海山山頂まではすぐかと思ったが、まだまだ登りは続く。やはり百名山、ダテじゃない。
 ルーファイに手間取り、結局、鋸山~皇海山まで登山地図のコースタイムを上回り、2時間近くかかってしまう。

 皇海山到着。百名山コレクターではないが、やはり何とかここまで来れて嬉しい。
 誰もおらず電波も届かない雪の山頂で一人小休止。さて、ここからまた帰るまで大変だと気を引き締める。

 

 下りは自分のトレースが残っているうちはまだ安心できた。しかし、吹き曝しの箇所では早くも雪に埋もれてしまった。
 風雪の中で見上げる鋸山の登り返しは何ともおどろおどろしい形で聳えていた。
 FIXロープは雪で完全に埋まってしまい、緩い雪壁となった斜面をピッケルとアイゼンの前爪を効かせてシャカシャカと登り返す。

 

 鋸山を越え、テン場に帰着。すぐに撤収し、六林班峠へ。
 この先それほど危険はないが、細いリッジや雪庇があり、慎重に進む。

 

 鋸山~六林班峠間のルーファイが今回の核心となる。
 進路は概ね南だが、所々に支尾根があり、5~6回はルートミスをした。
 木々の枝に付けられた標識や赤テープが頼りだが、100m進んで次のものが見つからなかったら、まずルートを外れている。
 すぐに最後に確認した標識まで引き返し、コンパスを頼りに軌道修正。
 
 これまで冬山の単独行は何度も実践し、それなりの修羅場も味わっているので平静な気持ちを保てるが、ここは自分を過信せず、慎重に行動しなければ。
 いざとなったら、少し危険度があるかもしれないが、昨日登ってきた鋸山から庚申山へダイレクトへ下ればいい。
 しかし、そう考えているうちにまた次の目印が見つかり、運良く六林班峠に到着する。

 

 事前に見たネットの記録では、六林班峠~庚申山への道程も所々笹薮に被われ、ルートミスしやすいと書いてあった。
 しかし一番心配だったこのパートは、意外にも笹薮が雪に埋もれてかえってルートがわかりやすくなっていた。
 基本的には沢筋に下りないよう高巻きのトラバース道が延々と続く。
 ただ、今回靴の中敷きを忘れたので、途中から右足の底に水泡となる大きな豆ができてしまい、激痛に耐えながらの遅い足取りになってしまった。

            

 庚申山荘にたどり着き、ホッと一息。最後の気力で銀山平へ。
 残業になるギリギリの時間で何とか下山。昨日は陽だまりハイク?と軽く見ていたが、たかが百名山、されど百名山。体力的にはなかなかハードな山行だった。


丹沢・表尾根ボッカトレ

2019年04月20日 | その他の山登り
日時:2019年4月20日(土) 日帰り
天候:
行程:大倉9:00-(三ノ塔尾根)-三ノ塔11:50-(表尾根)-塔ノ岳14:5015:30-(大倉尾根)-大倉17:30
同行:ヒロイ(我が社の山岳部)
 
 さて本日は来たるGWの大プロジェクトに向け、直前対策としてボッカトレ。今さらの感があるが、まぁやって損はないだろう。
 天気予報では好天とされていたが、電車が登山口の渋沢駅に近づく頃にはどんよりとした空模様で、今にも雨が降ってきそう。
 しかし、土曜日とあって相変わらず表丹沢は凄い登山者の数だ。
 
 丹沢、しかも沢登りでなくフツウの山登りで、ここ大倉に来るのも随分久し振りだ。
 もうかれこれ40年以上親しんできた地だが、変わったような変わらないような。何だか懐かしの母校を訪れたような気分。
 
 本日は来週からの本番に備え、一応ザックは20kgを想定して準備。自分はクライミングロープ2本に鉄アレイ5kgなどを加え調整した。
 大倉尾根は混んでいるだろうとあえて三ノ塔尾根を選択。
 大きな橋を渡って水無川の対岸へ。山岳スポーツセンターの前を通って登り始める。
 
 
 
 三ノ塔尾根は前回登った時はトレイルランナーの練習場と化していたが、本日は人もまばら。
 植林が進み、並行する林道が随分上まで延びているのにはビックリした。このまま進んだら稜線まで林道が延びてしまうのではないだろうか。
 相方は相変わらず元気で、私がザックに鉄アレイを忍ばせているのを知るや自らを反省し、その鉄アレイを寄越せと言う。ま、ほどほどにしておいた方がいいと思うけど。
 
 けっこうフウフウ言いながら三ノ塔に到着。
 昔は吹き抜けの東屋だったものが、今は立派な休憩小屋になっていてこれもビックリ。
 三ノ塔の東屋は中3の時、吹雪の一夜を過ごした我が山人生の原点となる場所であり、いずれ歳を取ったらまたこの地に帰ってくるんだろうと思うと感慨深い。


 
 
 一つ先の烏尾山まで進んで一本取る。
 相方はここで漬物石大の岩を5個ほど調達、ザックの中に詰める。推定25kgほどか。周りの登山者からは今どきボッカトレと珍しがられる。

 
 
 そのまま表尾根を進むが、本日は晴れのはずなのにけっこう風が強く、本気で寒い。
 丹沢という気楽さからかあまりペースを気にせずに歩いていたら、塔ノ岳への到着はけっこういい時間になってしまった。
 塔ノ岳の頂上はガスと冷たい風に吹かれ、とてものんびり休憩できそうにない。
 尊仏山荘の裏手に回り風を避け、そそくさとコーヒーを沸かし、カップ焼きそばの遅い昼食を摂る。


 
 
 下山は大倉尾根を一直線。
 昔は土が剥き出しで一旦大雨が降ると水の轍で随分歩きにくくなったものだが、今はかなり木段が整備され、またそれに合わせて植生も変わってしまったような気がする。
 普段はクライミングで腕や肩がダルいが、久々の山歩きで膝や腿に疲労感を感じる。
 
 下山後は渋沢駅前のケンタッキーで来週からのプロジェクトの行程、装備など最終打ち合わせ。とりあえず食糧計画はお任せ。
 人事を尽くして、後は天命を待つのみ。 

中ア・木曽駒ケ岳-宝剣岳

2019年04月13日 | その他の山登り
日時:2019年4月13日(土) 夜行日帰り
天候:
行程:千畳敷ロープウェイ駅9:10-中岳10:20~40-木曽駒ケ岳11:30~12:00-中岳-宝剣岳14:00~10-ロープウェイ駅15:30
同行:キタムラ(我が社の山岳部)
 
 本日は部の初級雪山勉強会。キタムラさんとは2月の八ヶ岳・阿弥陀岳北稜以来、二度目の雪山訪問となる。
 ついでに言うと、自分は木曽駒は実に29年振り。前回は正月明けに単独テント泊でやはり木曽駒と宝剣岳を登ったが、手元の温度計で夜半は-25度まで下がり、一晩中シュラフの中で震えていた辛い思い出がある。
 
 今回の計画は土曜に千畳敷から木曽駒を登り、途中の小屋脇にテント泊。翌日曜に初級バリエーションのサギダル尾根から宝剣岳を考えていたが、出発日が近づくにつれ天気予報が怪しくなり、計画縮小となってしまった。
 
 前夜のうちに車で現地入り。神奈川からおよそ3時間で伊那市の萱の台バスセンター着。
 着いた時は深夜で駐車場の車も数えるほどだったが、朝起きてみるとものすごい車と登山者の数!
 交通費は少々高くつくが、それさえ目をつぶれば最も手軽に3,000m近くの山を楽しめるとあって、ここ中央アルプスの千畳敷は相変わらずの人気だ。
 
 朝二便目の臨時バスに乗り、高低差日本一を誇るロープウェイで一気に標高2,600mの千畳敷カールまで。
 一応、装備・服装とも完璧な冬山仕様で来たが、噂に聞く地元山岳遭難対策団体の門前チェックは無し。シーズン限定なのだろうか。
 事前の情報では、一時期あまりにチェックが厳しくて団体と登山者が揉め、そのため客足が遠のいてしまったため、最近はそれほど口うるさなくなったとか。まぁなかなか難しい問題です。
 
 既に純白のカールは登山者による蟻の行列。空は快晴。というより、青を通り越して紺に近いヒマラヤンブルーだ。
 で、我々もさっそく出発・・・と思ったら、何と自分のケースに入れたはずのサングラスが無い!
 おかしい!一体どこへ忘れてきたんだ。いや、先週、上越の大源太へ行って車の中のザックはそのままにしていたはずなのだが。
 改めてザックの中を探したが、結局見つからず。よく覚えていないが、おそらく先週下山の際に藪か何かに引っ掛けて山の中で落としてしまったのだろう。
 せっかくここまで来たのにサングラス一つで引き返すこともできず、まぁ何とかなるかと甘い考えで出発。
 
 今シーズンは1~2月と雪が少な目だったものの、3~4月でけっこう降ったため、ここ千畳敷カールも残雪豊富で純白の世界。
 とりあえず重いグサグサ雪で、雪崩の心配は無さそうだ。

  
 
 一列に延びる蟻の行列に混じって、まずは中岳まで。
 春の強い陽光に早くも汗が流れる。
 
 しばらく登って後ろを振り向くと相方が付いてきていない。
 登ってくるのを待って聞いてみると、どうやら朝一にロープウェイで急に高度を上げたせいか身体が馴れていないらしい。
 年度始まりで仕事の疲れや寝不足などもあるかもしれない。


 
 
 深呼吸、そしてゆっくり歩くことに努めて登りを再開。ほどなくして中岳に到着。  
 木曽駒、宝剣岳、伊那前岳のジャンクションとなり、回りは360度の展望。南アルプスや北八ツ、木曽御岳も近くに見える。
 少し休んだら身体も落ち着いてきたようで、そのままタラタラした登りで木曽駒ケ岳に到着。
 天気も良いのですごい人の数だ。

 

 
 
 頂上で記念撮影などするが、こういう時、満足できる写真を撮るのは実はなかなか難しい。
 自分はなるべく三脚を使ってあまり他人に面倒を掛けないようにしているが、それでもカメラ設置の関係でどうしても人に頼んだ方が早い時がある。
 そういう時はなるべく失敗の無いよう、いかにも日頃写真を撮っていそうな方にお願いしたりする。

 で、たまたま近くに居合わせた何とも高価そうな一眼レフと大口径レンズを携えたヒゲのプロフェッショナル風オヤジを見つけてロックオン!
 「すみません、シャッターを・・・。」とお願いしたところ「はい、いいですよ!」とニコニコ顔で快諾し、撮ってもらった。
 自分のカメラがボロく、陽が眩しくてカメラのファインダーがよく確認できなかったせいもあるが、撮ってもらった写真がコレだ。
 
 ・・・・・・・・・・。(大きな溜息)

 こちらはフツーのスマホ女性に撮ってもらった写真

 結局、今はi-phoneを使いこなしているインスタ女子の方が、高価な一眼レフを持った見せかけのオヤジより「きれいな」写真を撮ってしまうのではないだろうか。
 気を取り直して往路を引き返し、宝剣岳へ。
 
 さて宝剣岳だが、木曽駒や伊那前岳と違って短いながらも雪の時期は一般登山者には推奨されていない。
 この日も少し登ったところでトレースは途絶えて、これだけ登山者が多くても本日は中岳側から誰も登っていないようだ。
 たしかに単独だとちょいとイヤらしい感じの雪稜で、ここは2ピッチほどロープを出す。すると反対側から来たパーティーと出くわし、そこが宝剣岳の頂上だった。


 
 
 この先、極楽平までミックス帯のアップダウンが続き、初級バリエーションとして少しは楽しめそうだ。
 相方も行きたそうだったが、残念ながら時間的にはギリギリ。
 帰りのロープウェイに間に合わないのはまずいので、本日のところは断念して往路を引き返すことにした。
 
 下りは宝剣岳の頂上から20mだけ大事をとって懸垂下降。
 後はグサグサ雪の千畳敷カールを歩いて降りる。
 体力的にも十分余裕があり、やや物足りない気もしたが、天気も良く気持ちよい雪山が楽しめたので結果良し!
 
 下山後は麓の「こまくさの湯」で汗を流し、名物店「明治亭」のソースかつ丼で〆。

 
 
 だが、人生楽ありゃ苦もあるさで、その後が大変だった。
 帰りの運転中から目に異常を感じ、家に着く頃には涙ボロボロ。
 完全な雪目状態で、帰宅後は猛烈な痛みで目を開けることができず、翌夕方までほぼ失明状態だった。
 
 月曜に仕事を休んで医者に行ったところ何とか大事に至らなかったが、改めて雪山で目や皮膚を保護することの大切さを痛感。
 登るのは簡単でも、山をナメてはいけません。

金時山スノーハイク

2018年02月04日 | その他の山登り
日程:2018年2月4日(日)日帰り
天候:のち
行程:御殿場線「足柄」駅8:33-金時山11:30-明神ケ岳-明星ケ岳-宮ノ下18:00
同行:ヒロイさん(我が社の山岳部)
 
 金曜に横浜でも雪が降ったため、この週末は岩はお休み。
 昨日はジムでお茶を濁し、一夜明けて本日は新雪の低山散歩。
 自分にとって冬の定番となっているいつもの金時連山縦走に出かける。昨日に引き続きヒロイ嬢がお伴。
 
 昨日はジムでそれほど登ってないのだが、やはり日頃の仕事の疲れが残っているのかボォ-として一本電車に乗り遅れてしまった。
 集合の足柄駅でお伴を40分近く待たせてしまい、たいへん申し訳なし。
 駅に着くや早速歩き始めるが、天気予報は晴れなのになぜか小雪というか霰が降っていて不穏な天気。何だかなぁ。
 ちょっと心が折れそうになったが、しばらくして霰は止み、雲の切れ間から晴れ間が覗くようになり、登山続行。
 
 住宅街はそれほど積もっていなかったが、山に入ると次第に雪が出てくる。
 今回行くのは足柄峠経由ではなく、ゴルフ場経由の金時山頂まで3時間のコース。
 自分はいつもこのコースだが、距離が長いせいかあまり登っている人を見かけない。それでも昨日のトレースが残っていた。
 しかし、トレースがあるものの登るにつれ足首くらいまで潜るようになる。ずっとヒロイさんに先に登ってもらったが、けっこうキツかったんじゃないだろうか。
 自分はこの時点でけっこう息が上がっていてヘロヘロ。

 
 
 金時山頂に到着。
 今日もそこそこの賑わい。少し雲がかかっているが、それでも新雪の富士山が美しい。
 時間的にはランチタイムだが、この周辺のベンチを勝手に使うと金時オババが怒るのを二人とも知っている。
 (ベンチにはご丁寧に「ガス使用禁止」の表示もあり)
 今回の目的は「雪の低山でカップ麺を味わう」というのが一つのテーマだが、残念ながらここではそれも叶いそうにない。
 
 そうこうしているうちに何とも目立つ恰好のオッサンが登ってきた。
 晴れてはいるもののこの冬景色の中、短パン姿で太腿を露わにしている。見た感じ自分より年配のようだが、足の筋肉が只者ではない。
 ここ金時山には何千回と登ってる"金時信者"がいて、この人もそういう達人の一人なのだろうか。
 つい話を聞いてみたくなって「寒くないですか?」と話しかけてみた。すると「・・・冬なんだから寒いに決まってんだろっ!」とツレない返事。
 何なんだ、このオッサン。いきなり喧嘩腰かよ。あぁ、そうですか、話しかけたこっちが悪かった。
 まったく、こういう偏屈なオヤジにはなりたくないよなぁ。

 

 
 
 金時山から明神ケ岳、さらに箱根湯本に行くコースになると、グッと登山者の姿も少なくなるが、この日は時折、反対側からトレイルランナーが走ってくる。
 あの先ほどのオヤジもあんなストロングスタイルだったから当然箱根まで縦走するのかと思ったが、その後、姿を現さない。結局ただのパフォーマンスだったか? 
 
 少し下りた矢倉沢峠が次の休憩ポイントだったが、ここのベンチも先客に取られ、しかたなくさらに縦走を続ける。
 そこから次ののピーク明神ケ岳が知ってはいるがけっこう長い。
 次第にシャリバテになりながらも黙々と歩く。金時山の山頂を過ぎてから二人とも軽アイゼンを付けたが、それでも雪が重いせいか少しずつ時間が食われている感じだ。

 
 今日の自分は何だか疲れてしまって途中から下りることを考え始めていたが、お伴のヒロイさんはいたって元気。
 途中で先頭を交替したら、小走りでサッサと行ってしまう。マジで速い。
 ヘロヘロになって明神ケ岳に到着。しかし無情にも風が強い。
 残念ながらカップ麺を諦め、行動食でその場を凌ぎ、さらに歩き続ける。
 
 

 
 
 明星ケ岳に到着。
 時間的にはこのまま箱根湯本に抜けるにはギリギリといった感じだが、ヒロイさんは「ここまで来たら行きましょう。」との返事。
 で、そのまま進んでいくと、先ほど前を歩いていた単独の人がなぜか引き返してきた。
 (・・・何だ?忘れ物でもしたのか。)
 そう思って進んでいくとその先は、笹薮の上に雪が覆い被さって、とてもじゃないが進めない状態になっていた。
 何じゃ、こりゃ!

 
 
 これまで上越の沢登りなどでそれなりに厳しい藪漕ぎは経験してきたが、この明星ケ岳の雪藪はもはや通行不能。
 今まで何度も歩いてきたコースなのに、こんなにヒドイ状態は初めてだ。
 それにしても先ほど引き返してきた人も、わかっているなら教えてくれてもいいのに。
 他人の行動に口を挟まないようにしただけかもしれないが、さっきの短パンオヤジにしても何かツレないなぁ。
 
 しかし、これで潔く途中下山を決定。自然の猛威(本日は雪藪)を前にしては、所詮無力なのだ。
 明星ケ岳の分岐からけっこう急な藪のトンネルを抜けながら箱根・宮ノ下の一画に到着。
 しかし、ここから箱根登山鉄道の駅に着くまでがまた難関で、次第に薄暗くなる中、道を訪ねる人も無く、川沿いの道を彷徨してしまう。
 一体ここはどこなんだ?
 
 箱根の温泉街の裏道でまさかの道迷い遭難?にまで追い込まれたが、何とか切り抜け、箱根駅伝のコースともなっている国道1号にたどり着いた。畏るべし、天下の劍。
 今回はいたってお気楽登山のつもりが、なぜかいろいろと疲れることが多い山行だった。
 頼りになるヒロイさんに感謝。  

冬富士2016(敗退)

2016年12月18日 | その他の山登り

日程:2016年12月18日(日)夜行日帰り
天候:
行程:御殿場口太郎坊0:00-長田尾根・標高3,500m付近8:15(強風のため撤退)-御殿場口太郎坊13:25
行動:単独

 冬山シーズンに入る前に恒例?の富士山自主トレ。
 山での心・技・体の調整を図るには、うってつけの「道場」。
 これまで何回もトライして、冬の剣ケ峰まで到達できたのは「
2002年1月」と「2015年2月」と二回だけ。

 前日の土曜は家の所用で忙しく、夕方から現地入り。
 季節がら職場で風邪が流行っており、自分も一年の疲れがドッと出て少し扁桃腺が腫れている状態。調子はイマイチだ。
 しかし、特にやめる理由も見つからず、いつものように御殿場口太郎坊に車を停め、日曜午前0時に出発。

 前回2月の時は出だしからラッセルでどうなることかと思ったが、今回はまだ12月とあって雪は少ない。
 結局、二ツ塚と宝永火口の間、標高2,300mぐらいまでは雪は無し。アイゼン不要で到達する。
 その分歩きやすくスピードアップできたかのように思ったが、火山灰が固く凍ってヘンにビブラムとの相性が悪く、それほどペースは上がらなかった。

 幸い今日は月明りで、夜半でもヘッデンが要らないくらい。
 光と音の無い世界を一人で黙々と歩いていると歩いているのか眠っているのかわからなくなってくるが、それでも時折、巨大な尾を引いたホウキ星が夜空をブワッと掠め、ハッと目が覚める。

 宝永火口が近づいた辺りで、アイゼン装着。
 今回は使い込んで爪が丸くなったBDのサイボーグではなく、つい最近ヤフオクでGetした新品同様のPETZLバサックをチョイス。
 やはりギンギンに尖った爪は安心できる。
 
 朝方になると気温もグッと冷え込み、登山靴の中の爪先が痛くなってくる。
 やがて待望の夜明け。太陽の光が一気に元気を与えてくれる。



 しかし、やがて無情の風が吹き下ろしてくる。
 今回、事前の天気予報(tenki.jp「山の天気」)では北西の風、風力は標高4,200mで18m/sとギリギリの選択だった。
 自分の目安として、冬富士で安心して突っ込めるのはせいぜい15m/s未満。できれば10m/s以下が望ましいが、そんな日と休日が重なることは滅多に無い。

 体調不良もありペースも上がらず、長田尾根の標高3,500m辺りで上からの吹き下ろしに掴まり、思案の末、今回はここまで。
 せめて頂上の縁まで行って「コップのフチ子」ならぬフチおじさんになりたかったが、結局その後、風はますます強くなり、ヘンな色気を出してたら、危うく退却のタイミングを逃すところだった。

 ガチガチのアイスバーンというほどではなかったが、下りは一部、後ろ向きのダガーポジションで降りてくる始末。
 やはり富士山は甘くない。
 まぁいいトレーニングになりました。

 で、今回のもう一つの目的として、先日買ったアクションカメラ"SJ4000"がどれだけ冬山の厳しい条件下で使えるか。
 私は普段の山では、デジカメをザックの左側ショルダーベルトに固定した
ポーチに入れているが、冬山ではいくら防水耐寒仕様のものでもそのまま外気にさらしていれば、電源をONにした時点であっという間にバッテリーが消耗し使えなくなってしまう。
 ただでさえ小容量バッテリーのアクションカメラでこれは鬼門だったが、内側のウエアの内ポケットにホッカイロを貼り、そこからカメラを出し入れしたところ連続13時間行動でもほとんどバッテリーはフル充電表示のままだった。(むしろ頻繁に電源のON/OFFを繰り返したり、行動途中で映像チェックのため再生したりすると消耗を加速するようだ。


 ということで、製品テストはまずまずの成績で合格。
 適当に撮ったスナップ動画を繋ぎ、新春話題の山岳映画「MERU/メルー」をパクって、映画予告編・風に仕上げたのがコチラ。

 ←大画面、大音量で見てやってください。
 自分ではけっこうイイと思ってるんですが、いかがでしょう?



高度順化@富士山 2016年#2

2016年07月03日 | その他の山登り

日程:201673日(日) 前日発日帰り
天候:のち暴風のち
行程:富士宮口五合目335-九合目530630-九合五勺-富士宮口頂上730820-七合目(怪我人搬送)六合目-宝永山1250-富士山五合目1350 単独

 この夏のプチ遠征に向けた富士山トレ二回目。
 前回は二週間前に須走口から登ったが、その後また左膝の調子が少しだけ悪くなる。
 歩行困難まではいかないが、ちょっとした動作の合間にピリッとした痛みが走り、思わず昨年来のあのイヤな記憶が蘇る。
 出発まで20日を切り、もう腹を括るしかないのだが・・・。

 土曜は現地の天気がイマイチ読めないので見送り。夕方から車で富士宮口の五合目へ上がり、車中泊とする。
 富士山の山開きは山梨県側の吉田口が7月1日、静岡県側の須走、御殿場、富士宮口は来週の7月10日から。
 つまり来週からはマイカー規制が始まり五合目までシャトル・バス代のほか、入山料(環境保全金)まで余計にかかってしまう。
 山小屋はまだほとんどが閉まっているが、安く登るには最後のチャンスなので、この週末の登山者はけっこう多い。

 午前3時頃に起き出し、サンドイッチを食べてから出発。
 夜半は風が強く、寝ている間も時折、車がユサユサ揺られるほどだったが、今はそうでもなく、気温もそれほど低くない。
 事前には頂上でテント泊も考えたが、昨夜の風ではやめておいて正解だった。
 ケータイでFacebookを見たら同じ職場の山岳部の女性が昨日、富士宮口からコソ練で登っていたようで、頂上までジャスト3時間の彼女のタイムを切ることを今日の目標とする。

   

  二週間前は軽登山靴だったが、今回はラクしてトレランシューズ。本当はトレーニングなら敢えて重登山靴にするべきだが、まぁいいでしょう。
 しかし靴を代えただけでも足取りはまったく違う。特に早く登ろうと思わなくても、本日は足が軽い!
 このところ三浦雄一郎氏を真似て、毎朝ではないが13kgほどのザックを背負って坂の多い近所の公園を散歩している。また一昨日のミウラBCでの低酸素トレも効いているのかもしれない。
 だが、ここで調子に乗るとまた膝を痛めてしまうので、若干抑え気味に行く。

 辺りは次第に明るくなってくるが、上空に浮かぶ巨大クラゲのような笠雲がちょっと不気味だ。
 明らかに荒天の兆しだが、今のところ天気は落ち着いている。嵐の前の静けさか? 

  

 順調なペースで息切れもなく七合目を通過。
 途中、トレランのニイちゃんと、「ホッホッホッ」と軽快に上がっていくスーパー爺さん(たぶん名のある実力者)には抜かれたが、後は順調に先行者を抜いて行く。
 しかし、この辺りから少しずつ風が強まり、八合目から上で本格的に厳しくなってくる。
 冬富士の突風とは少し違い一定した西風だが、耐風姿勢をとる回数が増え、ペースはガクンと落ちる。
 八合目から上は完全に暴風圏に入ったようで、視界も悪い。

 登山道に設置されている手摺のロープなども頼って、ほうほうの体で九合目着。ここの小屋陰で一時間ほど待機。
 これほどの風だと今日はもうやめて降りようかと思ったが、驚いたことにそれでも一人二人と後からしぶとく登ってくる。
 遠く離れた他県からやっとの思いで来た登山者も多いので、そう簡単に諦めるわけにもいかないのだろう。
 そんな人ばかりだからこちらもついつい下山する気持ちを堪えてしまった。

 風の合間を縫ってさらに匍匐前進のように登り続ける。
 九合五勺の九十九折りの一か所が特に風がひどく、ここで再び高さ50cmほどの岩に身を伏せて30分ほど避難。
 周りの小石がバチバチと風に飛ばされるほどになってきて、恐怖と後悔を感じる。
 それでもまだ登山者が視界の悪い暴風の中をジリジリと登ってきて、「みんな、根性座ってるなぁ。」とヘンに感心してしまう。

 風は休みなく西側から吹きつけているが、一瞬の隙をついて歩を進め、何とか富士宮口頂上に到着。
 既に何組かの登山者が山小屋の陰に退避中。
 ここから剣ケ峰方面へはさらにグレードアップした暴風がもろに吹き下ろしていてまともに進むことができない。

  

 数人の登山者たちとしばらく小屋の陰で待つが、天気はすぐに好転しそうもない。
 立ち止まっていると急激に身体が冷えてくる。ほとんどタッチ&ゴーで降りていく人もいて、自分も今日はこれ以上粘っても無駄だなと思い、本日は剣ケ峰を諦め下山開始。
 下りも風で倒されないよう、手摺のロープなど使えるもの存分に頼って慎重に下りていく 。

 高度を下げるにつれ、少しずつ暴風圏から逃れることができ、ホッと一息。
 しかし振り返ると、やはり頂上付近は厚い雲に覆われ、強い風が吹き荒れているのがわかる。

 七合目を通過しようしたところ、ふと見ると同じ職場の山岳部の坂本リーダーとバッタリ。向こうはいつもの山岳部とは別のグループで来ているようだ。
 「何してんの?」と尋ねると、どうやら下山中に怪我人と出会い、これから搬送するらしい。
 県警レスキューと携帯で連絡を取ったが、到着までに時間がかかるので何とか少しでも自力下山してほしいとのこと。

 坂本リーダーは使命感が強いからこういうのは黙って見過ごせないだろうなぁ。
 人数もいるみたいだし、お任せかなと思ったら、案の定、自分も手伝う流れに。
 
 怪我人はどうやら左足を骨折か脱臼している様子。
 肩を貸して片足付いて降りてもらうしかないかと思ったら、どうやらオンブで下ろすらしい。
 体重を聞いたら80kg超!マジか!大学山岳部の頃でもせいぜいキスリングで60kgぐらいだったぞ!

  

 結局、坂本リーダーが一番手でおぶり、そろりそろりと下山開始。以降、距離を短く刻んで交替しながら下る。
 自分は膝が悪いので大きな段差の無いなるべく平坦な部分で請け負ったが、怪我人にセットしたハーネスを両脇から二人が持ち上げてサポートしてくれたので、思ったほどの負荷ではなかった。
 怪我人も痛がるので小休止を頻繁に取りながらゆっくりと下り、ようやく六合目着。ここで下から上がってきた県警救助隊に怪我人を引き継いで御役御免となる。
 坂本リーダーはじめ、通りすがりの手伝ってくれた別パーティーの皆さん、お疲れさまでした!

 漫画だとここで怪我人に対して「また山においでよ。」などと爽やかな笑顔で言うのだろうが、敢えて言うなら「(もう少しカラダ作ってから)また山へおいでよ。」と言いたい。

 救助隊への引き継ぎは坂本パーティーに任せ、解放された私はまだ時間があるので一人、宝永山へ。
 こちら側から宝永山に登るのは初めてだったが、ちょっとしたトレッキングコースのようでなかなか新鮮だった。頂上まで行かなくても小さい子ども連れにはちょうどイイ。
 ただ、この日は宝永火口の稜線に出たとたん、またあの突風が吹き荒れ、上がってきた人はヒィヒィ言っていたが。

  

  

 とりあえず遠征前の富士山トレは今回で終了。下山後、膝がちょっと不安だったが、特に痛みは無く何とかなりそう。
 高所トレというよりは耐風及び救助訓練となってしまったが、良いトレーニングになった。


高度順化@富士山 2016年#1

2016年06月19日 | その他の山登り

日程:2016年6月18日(土)日帰り
天候:
行程:須走口五合目8:15-吉田口頂上12:45-御鉢廻り・剣ヶ峰-吉田口頂上15:30-須走口五合目17:56 (単独)

 今夏の個人遠征に向け、毎度恒例の富士山トレ。
 本当は「ゼロフジ」(海抜0m、つまり太平洋から3,776mの頂上まで)というのをやりたかったが、直前になって調べてみたら標準所要日程が三泊四日。
 それでも速い人は20時間を切るタイムで下山しているが、今の自分にはあまりにも準備不足。
 結局、ノーマルスタイルで土曜朝に出発することにする。

 朝の東名を走り、あざみラインで須走口の五合目へ。
 夏の山開きまであと少しだが、既に車はけっこう多い。
 今年は異常に雪が少ないとのことだが、それでも正面に見る富士山の上部にはまだ残雪がいくらかある。
 デイパックに適当に詰めて出発。

 参道のような経路を歩き始めると、土産物屋のおばちゃんからサービスの椎茸茶をいただく。
 五合目の店は営業しているが、さすがに山開き前なので環境保全の入山料(1,000円)を徴収する人はいなかった。
 おばちゃんの話では今日も既に多くの人が登っているとのこと。

  

 須走口は六合目までは樹林帯の道が続く。
 今回は慌てず騒がずなるべく腹式呼吸を意識して、ゆっくりだがその代わりに途中で休みを入れないようにしてみる。

 六合目を過ぎてから視界が広がる。
 ゆっくりなので途中で何人か後続の人に抜かれる。
 いつもなら対抗心で抜き返しにかかるのだが、今日はあくまでマイペース。ビスターリ、チョロチョロで行く。
 が、こちらは水分を取る時やウィンドブレーカーをザックから取り出す時以外、ゆっくりだがほとんど足を止めていないので、結果それほど大差は無い。

  

 ほとんど息は乱れることなく吉田口の頂上着。
 本日もグループ、単独、トレイルランナー、外人さん・・・といろいろな人がここ富士山の頂上に集まってきている。
 人の数はまだまだ少なくちょうどイイ感じ。

 いつもと逆に時計と反対回りに剣ヶ峰へ。
 途中の白山岳では単独で来ていたフランス人と片言の英会話で国際交流。去年シャモニーへ行った時の話などをする。
 彼は今回が初めての富士山。梅雨の合間にこんなクリアな青空に巡り合えるなんて・・・彼にとって今回の富士山は「アナザースカイ」になっただろうか。

   

   

 
その後、最高峰の剣ヶ峰でもゆっくり過ごす。
 人も少なく、「怒涛のシャッター押して攻撃」に遭わないのが心地良い。
 3,776mの空気を存分に味わってから下山開始。

  

  

 下りも特に問題はなかったが、最後の最後でやはり左膝に違和感を覚える。
 今年になってからフツーに山にも行けてるし、現時点でも痺れや痛みがあるわけではないのだが・・・やはり気になる。
 夏の遠征が終わるまで何とかもってくれたらいいが・・・。


 下山後はいつもの御殿場市温泉会館。そして道の駅「ふじおやま」で車中泊。
 翌日、墓参りをしてから横浜へ帰宅。


2016GWその1・上越敗退

2016年04月30日 | その他の山登り
日程:2016年4月29日(祝)~30日(土)朝発一泊二日
行程:西黒尾根から谷川岳経由、一ノ倉岳まで(往復)
行動:単独・テント泊
 
 さて2016年のGW。
 今年は雪が少ないのと混雑を理由に北アを避け、上越へ。
 谷川を起点に巻機-大水上山-平ヶ岳-尾瀬をぐるっと回るルートを行動5日、予備2日で行くつもりだった。
 しかし初日から予想外の吹雪、その他いろいろ問題があって敗退となってしまった。
 以下、その概要。
 
一日目 天候:のち
 
 横浜から電車に乗って出発。
 昔は谷川岳というと上野から夜行の上越線に乗って土合というパターンだったが、マイカー利用によってそれも随分前に廃れ、今時電車でアプローチする人なんているのかなと思うだろう。
 しかし調べてみると東海道線が沼津から高崎まで一本で繋がり、高崎-水上は在来線、水上からはバスでけっこう安く早く着けてしまうことがわかった。
 混み合う「さわやか〇〇号」だとかバカ高い「〇〇アルペンルート」などを使って北アへ行くよりよっぽどイイね。
 
 高崎までは晴れていたが、水上に着くと小雨。
 さらに谷川まで来ると、何と強風でロープウェイが運休中である。
 出だしは楽して天神尾根、初日に何とか谷川岳から蓬峠までという計画は早くも厳しくなってしまった。

  
 小雨模様の谷川ベースプラザ(左)と西黒尾根下部で見かけた食べられそう?なキノコ(右)
 
 しかたなく西黒尾根から登り始める。
 午前中の中途半端な時間のせいかスッキリしない天気のせいか、他に登山者の姿は無い。
 今年の寡雪はここ谷川岳も同じ。しばらくは落ち葉の積もった湿った泥道を進む。
 標高1,200m辺りからボチボチ雪が現れる。
 
 その後、小雨が降り出す。風も強くなり、アラレとなってやがて横殴りの雪となる。
 甘く見ていたわけではないが、直前のヤマレコの記録など見ると谷川の縦走路などすっかり地肌が現れて、水の確保の心配をしていたくらいなのに。
 それでもこの日のうちに少しでも進んでおきたいので、一人登り続ける。

  
 
 今回、ザックの重さは16kg。できる限り切り詰めたつもりだったが、やはり5日分+αの食料が重い。
 膝の故障からここ一年、重い荷を背負っての山行は避けており、また普段のランニングなどもまったくしていないので体力的に不安があったが、それでも地図のコースタイムより若干早く歩けている。
 お、意外とイケるかも。でも風の音が凄い!ちょっと怖くなるほどだ。
 ラクダのコブ、懺悔岩と越して谷川山頂へ。
 
 山頂はほぼホワイトアウト。
 大きなケルン型の指導標は確認したが、肩の小屋さえはっきり見えない。
 地形通りにトマの耳、オキの耳と通過するが、この辺りから吹雪で回りが見えなくなり、また疲れも出てきてペースがガクンと落ちてきた。
 歩きやすい方を選んで進んでいたらいつの間にか右手の一ノ倉沢側の雪庇に近づいていてアセる。

  
 ほとんど何も見えないトマの耳頂上(左)と雪に埋もれた一ノ倉岳避難小屋(右)
 
 それでも何とか一ノ倉岳へ。
 稜線上は西風がひどく、積雪は一晩で50cm以上となった。
 長年使っている簡易テントの「ライズ1」は1ヶ所ファスナーの不調で雪がどんどん吹き込んでくる。
 これには参った。
 
 これまで山では何度もキツい目に遭ってきたが、もしかしたら今回はワースト5に入るかもしれない。
 唯一の救いは気温が冬山ほどではないこと。経験上、これなら死ぬことはないと思ったが、少なくとも今回の山は中止、仕切り直しだなと思った。
 テントも破損し、初日のスケジュールのズレがこの先の悪天予報とカブってしまう。何より自分の気持ちが早々と折れてしまった。
 その夜、谷川岳は一晩中荒れた。
 
二日目 天候:のち
 
 朝になり天気は少し治まってきたようだが、それでも依然風の勢いは強く、相変わらずのホワイトアウト。
 一応、朝食を摂り荷物をまとめ、いつでもOKの態勢を整えるが、なかなか行動可能の状況にならない。
 計画を大幅に縮小し、せめて巻機までとも考えるが、昨夜の積雪で膝までのラッセルとなってしまい、単独ではキツいことが判った。
 
 朝8時過ぎになって、ようやく風で雪雲が吹き飛ばされ、青空がチラリと見え始めた。
 プロトレックの気圧計もぐんぐん上がってきているので、意を決して行動開始。
 一ノ倉岳から谷川岳への帰り道は、昨日の自分のトレースが完全に埋もれ、膝から多い所で腿ぐらいまでのラッセルとなる。

  
 
 幸い天気は次第に好転し、周りの山々も見え始める。
 昨夜は肩の小屋に泊まっていたのか谷川岳のトマの耳にも何人かの人影が見えた。
 それら多くの登山者と合流して、こちらもようやく一安心。

  
 
 山頂から改めて今回行こうとした山々を眺めるが、何とも長大なルートだ。
 分割でもいいから、ここは「老後の楽しみ」としてやはり一度は歩いてみたい。
 下山はまたいつ強風でロープウェイが運休となるかわからないので、往きと同じ西黒尾根とする。

  
 
 気が抜けたのかけっこうヘバって、下山ではところどころグズグズの雪に足を取られコケたりする。
 その結果、片方のアイゼンのジョイント部のネジが飛んだり、ザックの外ポケットに入れておいたテルモスをどこかで落としたり・・・。
 踏んだり蹴ったりだが、でもなぜかこういう不運は虫の知らせじゃないが、山の神が「今回は良くないことが起きるので、適当な所でやめておけ。」と暗に言ってくれているような気がする。
 テントのファスナーの件もそうだ。
 そう考えると腹も立たないし、悔しい思いを引きずることもない。まぁこれは自分の勝手な思い込みだが・・・。

  トマの耳に小さな点となって登山者が見える

  トマの耳から見
た東尾根
 
  西黒尾根途中から谷川岳を振り返る
 
 この悪天は当然、谷川だけでなく北アでも影響があったようで、今年もまたいくつかの遭難救助があったようだ。

春の鳳凰三山

2016年03月21日 | その他の山登り

日程:2016年3月20日(日)~21日(祝) 一泊二日・単独

一日目
天候:時々
行程:夜叉神登山口8:20-南御室小屋12:45-薬師小屋前(テント泊)14:50
 
 この冬は依然として左膝痛が続き、誘われていたアルパインの計画も全てキャンセル。
 しかし、三月に入り小康状態となってきたので、無理のない程度にリハビリ登山へ出かける。
 
 当初は谷川岳方面を考えていたが、直前になって天候がイマイチとなったため、二日間で南ア・鳳凰三山へ。
 無雪期には何度か行ったが、雪の時期は初めてである。
 
 日曜早朝に横浜の自宅を出発。
 天気予報では晴れだったが、行きの中央高速でけっこうな雨に見舞われる。
 そんな天気のせいかもしれないが、この日はなぜか朝から偏頭痛が続いている。
 虫の知らせじゃないが、こういう日は何かアクシデントが起きそうでいっそ中止にした方がいいような気もするが、結局やめる決定的な理由が見つからず、ズルズルと登山口まで来てしまった。
 
 夜叉神の登山口はガスに包まれハッキリしない天気だが、それでも既にかなりの車の数である。
 少し迷ったが、結局、入山者が多いという安心感に背中を押されて、自分も出発した。
 
 今年はどこの山も異常なほど雪が少ないが、ここ鳳凰三山も同じ。
 夜叉神峠への登りは雪がまったく無く、しばらくは落ち葉の急登が続く。

  
 
 小一時間で夜叉神峠。
 晴れていれば白根三山がいいアングルで望める展望地だが、あいにく今日は雲に隠れて見えない。
 引率付きの高校だか大学生のグループがいたが、どうやら一人が足を捻挫してしまったようで、上部から戻ってきた。
 
 小休止後、出発。
 樹林帯の道で日陰のせいか、積雪は少ないが固く凍ってところどころ滑り易くなっている。
 爪が減るのがもったいないので、しばらくはアイゼンを履かずソロリソロリと注意しながら行く。
 
 杖立峠からアイゼンを履く。
 本日は一番最後尾からのスタートだが、それでも途中で二人ほど抜いた。
 この時期、小屋がまだ営業していないためテント泊の大型ザックを背負っている組が多いが、最初から行ける所までと割り切っている軽装の日帰り組もいる。
 
 樹林帯の道をタラタラと登り詰め、南御室小屋へ。
 ほとんどのパーティーはここをベースにするようで、既にテント村が出来上がっていた。
 水場からチョロチョロ流れていたので、ガス節約のためここで水を補給。
 そのまま自分だけ続登する。

  
 
 さらにひと登りの急登で樹林帯を抜ける。
 薬師手前の砂払岳にはテントが一張り。西側に北岳が望める好適地で自分もそこらの岩陰に張りたかったが、他にいい場所がなく一段下がって薬師小屋前まで進む。
 薬師小屋前にはちょうど幕営した整地跡があったので、ありがたくそこを使わせてもらう。

  
 
 夕方までまだ少し時間があるので、空身で薬師岳へ。
 やはり雪が少なく、薬師山頂付近も半分ぐらい地肌の白ザレが見えていた。
 西側の北岳方面は残念ながら雲が湧き、姿が見えず。
 
 散歩が終わって、ベースに戻り早めの夕食。
 いつものようにレトルトの釜飯とサバ缶。温めたカップ梅酒でホッとする。

  
 

二日目
天候:一時
行程:起床4:00-出発5:00-薬師岳-観音岳6:20~50-地蔵岳7:40~8:10-観音岳9:30~45-薬師小屋10:30~11:00-夜叉神登山口14:40
 
 夜半は少し雲が出て小雪がパラついたようだが、その後、星空が広がった。
 朝飯は餅入りカップ麺にしたが、これは失敗。
 雪山だとお湯を入れて3分経つ間に冷えてしまい十分に煮えておらず、餅もやや固め。
 コッフェルを汚さずに済まそうとしたが、やはり手抜きをせず、冬山ではきちんとコッフェルでマルタイラーメンを作るのが正しい。
 
 メインの荷物をあらかたパッキングし、必要最低限のものだけサブザックに詰め、出発。
 昨日の夕方は多少雪が緩んでいたが、さすがに朝は雪が締まっていて歩きやすい。薬師岳を越え観音岳へ。
 右手、北東方面は雲海が広がり、左手は白根三山が薄暗がりの中、佇んでいる。
 何とも静かな朝の時間だ。

 
 
 写真を撮りながら進み、ふと振り返るといつの間にか単独の男性がすぐ後ろに近づいていた。
 自分より先に下の南御室小屋のベースから出発したようで、あっという間に抜かされる。早い!
 
 そのまま少し遅れて、一緒に観音岳へ。
 雲海の向うから朝陽が昇ってくる。これまで何度もいろいろな山で日の出を見てきたが、その度に信心深い気持ちになる。
 明日からは正しく生きようといつも思うが、もちろんあまり実践された試しはない。

 
 
 単独の男性は今回はここ観音岳まで。足も達者だし、まだ時間もあるのにもったいない。
 別れてそのまま一人で最後のピーク地蔵岳へ向かう。
 トレースが続いていてとても助かったが、ちょっとルートをはずれると股下まで潜る深雪で、冬の鳳凰三山も条件が悪いと意外と大変だなと感じた。
 
 
 トレースに導かれるまま地蔵岳のオベリスクへ。
 せっかくなので天辺まで登りたいと実は今回、クライミング・シューズ(ファイブテンのスパイア)も持ってきた。
 雪のあるギリギリのところまで冬靴で登り、そこで靴を履き替え取付くが、一昨年まではあった直下のクラックに垂れ下がっていた残置のスリング類はほぼ撤去されていた。
 
 あと残り7mほど。フリーソロでも何とか登れそうだが、ロープもスリングも持っていないので下りがちょっと怖い。
 夏と違って着ぶくれして動きも鈍いし、しばらく考えた後、やはり断念。
 一昨年に一回登っているので、まぁいいか。
 個人的には簡単に登れるようにしてあるよりも、なるべく自然のままの姿にしていた方がオベリスクの神々しさがあっていいと思った。

  
 (左)残置スリングが撤去されたオベリスク最上部のクラック (右)上部から見下ろしたところ
 
 少し遅れて何組かの登山者も地蔵岳へ到着。
 挨拶を交わして往路を引き返す。
 
 周辺のいくつかのピークは見えているが、相変わらず北東側の視界は雲海がびっしり。
 ここ鳳凰三山だけがスポット的に晴れているようで、今回このエリアを選んだ自分の運の良さを感じる。

 

    
 
 観音岳、薬師岳と雪の稜線歩きを楽しみ、薬師小屋前のテントを撤収。
 再び重くなったフル装備を担いで下山する。
 往きはそれほど思わなかったが、下りはけっこう長く感じた。
 それでも登り下りとも一人で冬山テン泊装備一式担いで登山地図の標準コースタイムよりも早い時間で歩き通せた。リハビリ山行としては十分満足な成果だ。
 今年の夏の海外遠征はハードルを下げようと思っていたが、当初の計画に戻そうかな。

 春の鳳凰三山
 
 
 帰りは麓の掛け流し温泉「天笑閣」(一般600円)、その後、いつもの「小作」でほうとうを食べて帰る。

  

金時山

2016年02月11日 | その他の山登り

日程:2016年2月10日(祝) 単独
天候:一時
行程:足柄駅8:40-金時山11:40~50-明神岳14:30~15:00-明星岳16:20-塔ノ峰-箱根湯本18:40

 年が明けてから膝もだいぶ良くなってきたのだが、調子に乗ってジムでボルダーなどやっていたら、またまた痛みがブリ返してしまった。
 そんなわけで当初、八ヶ岳だった計画を思いっきり下方修正して、金時山へのリハビリ登山とした。
 
 コースは御殿場線の「足柄」駅から。四季を通じてハイカーに人気の金時山だが、なぜか北側の足柄駅から登る者は少ない。
 本日もここから登るのは自分だけのようだ。(まぁ静かでいいけどね。)

   
 
 駅前の金太郎像に挨拶してから出発。
 しかし、本日は出だしから絶不調。電車に乗っている時は何ともなかったが、歩き始めると膝と腰がかなり痛い。
 
 しばらく立ち止まったりして、だましだまし進む。10分も歩かないうちに「今日はもうやめて帰ろうか」と思い始める。
 それでも何とか車道を歩き通し、登山道へ入っていく。
 幸い山道に入ってからは少しずつ足腰もほぐれてきて、徐々に痛みも引いていった。でもペースは上がらない。
 
 今シーズンは金時山も雪は少なく、夏のハイキングとそれほど大差ない。
 でも振り返れば背後の富士山は真っ白。
 本日は無風快晴、一片の雪煙も見えずくっきりと美しい。冬富士に登るには絶好のチャンスの日だ。
 ちょうど一年前の冬にはあの頂上まで一人で登ったというのに、今はその1/3ほどの高さの金時山で膝の痛みに苦しんでいるとは・・・。何とも情けない。

  
 
 登り始めて2時間ほどで足柄峠からの合流点に到着。そこからは他の登山者に混ざって、思い思いのペースで山頂を目指す。
 
 最後のキツい登りを終え、ようやく頂上へ。
 塔ノ岳の混雑が嫌でわざわざこちらを選んだのだが、やはりここ金時山も人は多い。既に腰を降ろせるスペースはほとんど無い。
 
 金時茶屋も盛況のようで、この前来た時にはやけに機嫌の悪かったオババの姿も今は見えない。
 とにかく落ち着く場所が無いので、さっさと頂上を後にする。        
 
   ← 金時山と金時父娘の説明(クリックして拡大)
 
 登ってきた北側斜面は所々凍っていたが、頂上を越え南面に出ると途端に道は泥のぬかるみとなった。
 ほとんどの登山者は金時山止まりでこの先、縦走者はグッと減る。
 
 鞍部へ下っていくと、道の前方になぜか山には不釣合いのビーチパラソルが。
 以前から無人の小屋があるのは知っていたが、いつの間にか地元の夫婦が営業をし始めたようである。
 でも、このビーチパラソル、何とかなりませんかね。かなり違和感が・・・(^^;)
 
 そこから明神岳へはタラタラとした登りがしつこく続く。
 雪の重みで両脇の笹がアーチ状に覆いかぶさっており、掻き分けて行くのに苦労する。小さいものはトラップとなって何度か足を引っかけて転びそうになった。

  

  
 
 時折、反対側から登山者がやってくる。
 やがてトレイルの延長のような長く伸びた明神岳の山頂に到着。
 そこから次の明星岳へ少し下った辺りは、相模湾が一望に望める絶景ポイント。
 午後の時間だと陽射しが眩しく海岸線も霞んでしまっているが、いつかここで一夜を過ごし夜景から日の出まで写真を撮ってみたいと思う。
 
 ふだん日帰りの山だと簡単な行動食だけで済ませてしまうが、今日はゆっくするつもりでわざわざEPIとカップ麺を持ってきた。
 右に箱根の山々、左に湘南の海を見下ろしながら食べるカップ麺はなかなか贅沢である。

  
 
 その後、明星岳へと進むが、やはり足が本調子ではなく、時間もけっこう押してきた。
 途中断念して宮城野方面へエスケープしてもよかったが、ここまで来たら何とか頑張って箱根湯本まで完歩したい。
 
 塔ノ峰から先で、ついに夕暮れとなり、ヘッデンを出す。
 これまで何度も日帰りで歩いているコースだが、ここまで遅くなったことはあっただろうか。
 やはり完全復活まではまだ遠い。
 
 

 

 
 
 辺りが暗くなってくると、たちまち周辺で猪が動き始める。
 至近距離の藪から荒い鼻息が聞こえるとかなり怖いが、こちらも犬の唸り声を真似して応戦。
 そんなことを繰り返し、何とか場を切り抜けて歩道に出た時はホッとした。
 
 すっかり暗くなって箱根湯本駅に到着。
 最後の下りは足腰に来てヘロヘロになってしまったが、とりあえず途中エスケープしないで何とか歩くことができたので満足。
 本格復帰はまだ先で、しばらくはこうしたハイキングと簡単な外岩でリハビリを続けていくつもりである。

日光白根・リハビリ登山

2016年01月10日 | その他の山登り

2016年1月9日(土)~10日(日)一泊二日/単独 

一日目
天候:
行程:湯元スキー場10:30-前白根山-五色沼避難小屋(泊)15:10
 
 長引いている左膝の不調だが、正月休みの間に近所の公園をウォーキング、そして超スローペースでのジョギングまでどうにか可能になってきた。
 岩の方は登っていて痛かったらすぐやめればいいのだが、山の方はどうにも不安でなかなか行く気になれない。荷物を背負うのがそもそも膝に負担がかかるし・・・。
 でもそろそろ大丈夫かなと、リハビリ登山に出かけることにした。場所は日光白根山。
 前回登ったのは2000年の2月だったので実に16年振り。岩を除いて山へ行くのも5か月振りである。
 
 アプローチは京急~東武快速で。
 浅草ではキリリと晴れた空の下でスカイツリーをしばし遠望。
 久々に味わう電車での山旅は何となく「テレ東的旅番組」風で悪くない。
 
 今冬はどこの山もかなり雪が少ないと聞いていたが、ここ日光の山もどうしちゃったの?と思うぐらいに少ない。
 駅前から見る女峰山も男体山も快晴の空の下、黒々としている。奥白根の方はそれでも雪雲に覆われているので少しは雪が期待できそうだが。
 
 バスに乗って1時間余。終点の湯元温泉で降りた登山者は、私ともう一人、外国人の男性だった。
 声を掛けてみると、意外にも流暢な日本語が返ってきた。フランスから来て日本にはもう3年住んでいるらしい。
 昨年、シャモニーへ行ったことなどこちらは英語で話してみるが、向うは日本語で返してくるので何とも変な感じ。
 「膝が悪いのでゆっくり行くよ。」と言って、その場で別れた。
 
 雪不足で営業していないスキー場の脇をゆっくりしたペースで歩き始める。
 昨日は外回りの仕事で、夕方になって少し膝が痛んだため、場合によっては今回の山行も見送ろうかと思ったが、今のところ大丈夫そうだ。
 
 スキー場のリフト上から樹林帯の中の急登が始まる。
 雪が少ないため、しばらくはアイゼンを履かずに行く。登りも膝の調子はまずまず。しばらく登っていない割には心肺機能もまぁ何とか。
 
 次第に登りにくくなってきたので急な登りの最後の方でアイゼンを着ける。平坦な尾根上に出ると先行パーティーに追い付いてきた。
 16年振りなので前回の様子をほとんど覚えてなく、コースも新鮮に感じる。

  

  
 
 前白根に着く辺りから西風が強くなり、冬山らしくなってくる。
 夕陽に照らされた奥白根はそこそこ雪が付いていて、威風堂々といった感じだ。
 久々に味わう冷たい風に、また冬山に来れたことに満足しながら鞍部へと下っていく。
 今回の山行で途中リタイアするようなら、もう本当に山は引退と考えていただけに、ここまで来れたことは素直に嬉しい。

 
 
  
 
 テントは持ってきていたが空いていたので、この日は避難小屋泊まりとする。
 例年だと積雪のため梯子を登って二階から出入りするのに、今年は一階の扉が完全に露出していた。
 
 この日の小屋は自分を含めて11人ほど。
 先に着いていた二人組に単独の外国人を見なかったかと尋ねたら、彼はツェルトか雪洞でこの辺り一帯のコースを全てトレースする計画のようだと言う。
 いくら雪が少ないと言っても人が入ってないエリアはそれなりにラッセルを要する深雪で、何とも物好きな男だと思った。
 
 その夜は各パーティー賑やかな晩餐となったが、いよいよ眠る段になったら突如、ウシガエルを思わせる大いびきの合唱が始まったのには参った。
 同じパーティーの人たちはもう慣れてしまったのだろうか。よくこのいびきの中で平気でいられるなと感心する。
 鉄骨造りの避難小屋は風は避けられるが冷蔵庫のように冷え、けっこう辛い夜だった。
 

二日目
天候:
行程:起床6:30-避難小屋発7:30-奥白根山頂上8:50~9:10-小屋9:45~10:30-湯元スキー場12:50-湯ノ湖西岸遊歩道-戦場ヶ原-赤沼14:50
 
 今朝は晴れていたら早出をして山頂で日の出を拝む予定だったが、5時前に起きてみると外はどんよりと暑い雲。
 小雪混じりの冷たい風が吹き、仕方なく二度寝して明るくなってから起き出す。
 昨日は快晴で、頑張れば何とか山頂まで行けたのだが。前回登った時も風雪の山頂だったので、ちょっと惜しいことをした。
 
 餅入りマルタイラーメンを食べてから本日二番手で出発。
 トレースと道標に導かれ、樹林帯の中を登っていく。

  
 
 やがて樹林が切れ岩が少し出てくると幅広い地形になってきて、視界が悪いのでトレースが無いと少々ルートがわかりにくい。
 そのトレースも所々風雪で消えかかっていて、こういう時、一人だとちょっと不安になる。
 目印となる岩の形を一つ一つ確認しながら歩を進めて行く。
 
 やがて傾斜が無くなり、冷たい風の中タラタラとトラバース道を進んでいくと、薄ぼんやりと奥日光神社の小さな祠が見えてきた。
 あれ、頂上ってこんな感じだったっけ?と、よく見たらそこから右に一登りした小高い所が頂上だった。
 鞍部の大きな岩陰では先行の二人組が風をよけて小休止していた。
 以前来た時は凍った雪壁のように感じた最後の登りも、今回は雪が少ないため適度に段差があり、特に問題なく山頂着。

  
 
 残念ながら何も見えず。
 低温のためたちまちバッテリーが消耗する中、何とか自撮りとセルフタイマーで記念写真を撮る。
 しばらく寒さを我慢して雲が切れるのを待つが、どうも今回は無理のようだ。
 全体がよくわからないが、頂上の一角からはけっこう切れ落ちていて深いルンゼになっている。マイナーだが、たしかバリエーション・ルートもいくつかあると聞いたような。
 今は一般コースでもここまで来れただけで満足だが、気持ちの上ではちょっと興味が湧いてしまうのは困ったものだ。 
 
 適当なところで切り上げ、下山開始。
 途中で後続の四人組と擦れ違ったりしたが、自分でも途中の岩など地形を覚えていたので、不安は無かった。

  
 
 下りは思いのほか早く感じ、避難小屋着。
 食料を少し消化し、ゆっくりパッキングし直してさらに下山。
 今日登ってくるパーティーと挨拶しながら湯元へ向かうが、けっこう下りも急で長く感じた。

 
下に降りてもまだ時間は十分にあるので、湯ノ湖西岸の遊歩道から戦場ヶ原を繋いで歩く。
 例年だとスノーシューまで使うこともあるはずなのに、本日は木道がすっかり露出し、戦場ヶ原は黄色い笹原である。

  
 
 ここまで歩けば今回は十分だが、明日も休みなので赤沼からバスに乗り二荒山神社へ。
 そのまま男体山に登るつもりだったが・・・。
 
 知らなかった! 
 何と、男体山は神社の御本山ということで、登れるのは5月5日~10月25日までの無雪期限定とのこと。
 そういえば以前そんな話をどこかで聞いた覚えもあるが、すっかり忘れていた。
 私が持っているエアリア・マップはかなり古い版のものだが、こういう情報はきちんと地図上に明記してもらいたいぞ。
 
 入山禁止の張紙の脇には「登山者の良識を信じます。」とまで書かれてしまっては、まさか禁を破ってまで登るわけにもいかない。
 さらにバスで移動して明日は女峰山という選択肢もあったが、地図のコースタイムを見ると登りだけで6時間と知ってウンザリ。
 仕方なく健康祈願の御守りだけ買って、その日のうちに帰ることにした。

  
 
 帰りの電車では居合わせた年配登山者の方と少し話をする。
 中禅寺湖畔の低山を登ってきたそうだが、歳をとるとやたら昔話や自慢話で上から目線の輩が多い中で、この人はとても謙虚で、落語家の立川談春のような雰囲気の人であった。
 とりあえず今回は途中リタイアせずに何とか歩けたし、最後に素敵な人に出会えたのがとても良かった。

高度順化二回目@富士山

2015年07月20日 | その他の山登り

日程:2015年7月20日(祝)日帰り
天候:
行程:須走口五合目7:00-須走口頂上11:40-剣ヶ峰12:50~13:20-須走口頂上13:50-須走口五合目16:15
同行:S師

 先週に引き続き、富士山。
 本当は日~月で頂上ビバークするつもりだったが、日曜もややはっきりしない天気。そんな時、S師から連絡があり日帰りなら一緒に行きましょうということになった。
 すっかりボルダラー化したS師と夏の富士山というのも妙な取り合わせだが、そもそも一緒に山へ行くのも久しぶりだ。

 未明にS師を拾って東名経由、須走へ。
 途中、天気予報を裏切って雨が降ったり、御殿場で降りた時点で富士山は厚い雲に隠れてまったく見えなかったりで、何とも天気が怪しい。
 せっかく来たのにこのまま引き返さなければならないのかと思ったが、須走まで行くと何とか雲が切れてきた。
 道の駅に車を停め、シャトルバスに乗って五合目まで。混み合う夏の富士山だが、それでも吉田口や富士宮口に較べれば、ここ須走口は何とも静か。
 環境保全協力金は例の缶バッヂを見せて「先週も払ったんだけど。」と控えめに言ったら、今回は許してもらえた。まぁ入山料ではなく、あくまで気持ちの問題なので。
 以下、ダイジェストで。

  

・須走口はもちろん初めてではないが、いつも残雪期に登っているので、けっこう新鮮に感じた。
 標高約2,000mの五合目から2,500mの六合目までは樹林帯の登りとなる。

・七合目と八合目はそれぞれ「新」と「本」で二つずつあり(新七合→本七合→新八合→本八合)、疲れている人にさらなる精神的ダメージを与えてくれる。
 今回、私は前半けっこうバテた。先週登っているのに一体どうしたことかと思ったら、何のことはない昨日ビールを飲み過ぎたせいだ。

・後半はビールも抜けて、まぁまぁ普通のペースで登る。ただ先週よりも左ヒザの痺れが出てくる。
 五合目から須走の頂上まで5時間は切ろうと決めていたが、何とかクリア。登山地図の標準タイム5時間30分のところを4時間40分。

  

・須走口頂上の久須志神社前ではF県から来た三人娘と会う。
 お揃いの富士山Tシャツを着て、一人が本日、誕生日とのこと。おめでとうございます!

 

・剣ヶ峰頂上ではフランスはシャモニーから来たナイス・カップルと会う。Nice to meet  you!
 今度シャモニーへ行くんだと言うと、「どこの山に登るんだ?」「セルバン(マッターホルン)は登ったことあるか。」など一通り話をする。
 彼らはこの後、京都、広島、石垣島と回るらしい。Have fun Japan!

  

   

・下りも足の痺れが出てちょっと辛かったが、走らなくても2時間半で下れたのでまぁヨシとしよう。
 でも往きに見かけた可愛い小学生の女の子が帰りのバスでまた一緒だったので、ちょっとショック。まぁこちらの方が長く頂上にいたんだろうけど。

 下山後は先週に引き続き「御殿場市温泉会館」、スパゲッティを食べてから帰る。


リハビリ・コソ練@富士山

2015年07月11日 | その他の山登り

日程:2015年7月11日(土)日帰り
天候:無風
行程:富士宮口五合目6:30-剣ヶ峰10:20~11:00-お鉢回り11:00~12:00-富士宮口五合目14:30
単独

 左ヒザを故障して早や二ケ月、そして夏の遠征まであと半月。
 本当はまだ気功の先生のお許しが出ていないけど、あまりに良い天気に辛抱堪らず、出かけてしまう。

 金曜午後から半休を取り、墓参りを済ませてから現地入り。
 今回行くのは剣ヶ峰まで最短お手軽の富士宮口だ。
 あいにく今日から夏山シーズンのマイカー規制が始まるとのこと。
 いつもオフシーズンしか登ってないので気にしてなかったが、この時期は駐車場代1,000円、シャトルバス往復1,500円、環境保全金1,000円と余計な出費が痛い。
 
 水ヶ塚駐車場で車中泊し、土曜日朝一のシャトルバスで富士宮口五合目へ。
 梅雨明けを思わせる雲一つない上天気だが、朝からバスを待つ列に横入りしてくる中年バカップルがいて、ちょっと気分を削がれる。
 (どうかあの二人に天罰が下りますように。

  
  
 (左)シーズン中、お中道コースには立入禁止のロープが。   (右)富士登山者は日の丸がお好き?

 富士山は季節を問わず数十回は行っているので、今回は詳細省略。
 主な内容としては、

・六合目手前から西側(時計回り)へのお中道コースは立入禁止となっていた。(このコースを取るなら人目の付かないシーズンオフに行くしかない。)

・フジサンといえば外国人登山者。今回はただ登るだけではななく、自らの英会話の勉強のため、あえてガイジンさんには声を掛けてみた。
 題して「Youは何しに日本へ」改め「Youはどこから富士山へ」。
 今回話したのは、順にフィンランド、フランス、オーストラリア、オランダ、オーストラリア、オーストラリア、イギリス、そしてイスラエルの計8組。
 日本にいると自分から向うの人にはなかなか声をかけにくいが、山で声を掛ければ、皆さん日本人よりよほどフレンドリー。
 オーストラリアが多いのは、向うではフジヤマ・ツアーがけっこうポピュラーなんだそうな。知らなかった。

・FBつながりのMさんも「硫黄臭い」と言ってたが、たしかに硫黄ぽい色した岩があちこちで見られる。
 特に富士宮口山頂の神社から剣ヶ峰への最後の登りは赤褐色ではなく、明らかに黄色ぽかった。
 近々噴火はあり得ないことではないように思う。
 でも、ヘルメット持参の登山者は全体から見ると一割もいなかった。(自分もだけど)

  
 (左)今年二度目の富士山頂                 (右)強面タトゥー・ガイもHave fun !
 
 

 

 とにかく今回は無理せず、登りもお鉢回りも下りもほぼ標準タイムで。
 痛みのブリ返しが怖いが、こんなイイ天気の日に家でくすぶっている方がよほど健康に良くないので、先生には許してもらおう。
 
 帰りは行きつけの「御殿場市温泉会館」へ。(3時間500円)
 晴れていれば、正面に銭湯の壁画ではなく「リアル富士山」が望めてオススメ。


春の白毛門

2015年03月22日 | その他の山登り

日程:2015年3月22日(日) 日帰り
天候:
行程:土合駅5:50-白毛門9:35~10:25-土合駅12:09
行動:単独

 谷川岳東尾根の翌日、白毛門へ。
 
 昨日よりも少し霞がかっているが、本日も良い天気。
 ウェアと食料を適当にサブザックに詰めて出かける。

 
(左)朝の土合駅                         (右)踏切を渡って登山口の土合橋へ

 土合橋から登山口となり、川を渡るといきなり急登が始まる。
 こちらも西黒尾根同様、これまでの登山者のトレースが深く刻まれ、雪の階段となっている。
 ラッセルすることもなく、樹林帯の中の雪道を一気に高度を上げていく。

 
樹林帯が切れてくると向かって右側(東側)に雪庇が大きく張り出してくる。
 それを縫うようにして登っていくと、西側の谷川岳方面の展望が開け、一ノ倉沢、マチガ沢などの絶景が広がる。

   

 やがて明るく開けた展望台のような小ピークに到着。

 おそらく白毛門までの中間地点辺りだろうが、ここから見る白毛門は豊富な雪のせいか、なかなか雄大でまだまだ遠くに見える。
 這松の陰にはオレンジ色のテントが一張り。
 大勢の人たちで賑わうミーハー的な谷川岳より、こういう所で静かに一晩過ごす山行にとても共感する。

 

 しばらく休んでいると、遠くでヘリの飛来音。
 見ると水上方面から飛んできて、低空飛行のまま一ノ倉沢へ入っていき、何やらスピーカーで呼びかけている。
 そのまま機体を見失い、またしばらくすると特に下に何も吊り下げていない状態で元の方角へ飛び去っていった。
 何か事故でもあったのだろうか?
 (翌日、自分が昨日登った一ノ沢で滑落事故があったことを知った。幸い、命は無事だったようだが。)

 

 再び出発。
 先行の一組に追いつくと同時に、もう一組と擦れ違い、一番先頭に出る。

 最後は白いドームとなった雪壁。
 傾斜はそこそこ急だが、ステップが深く刻まれているので、崩さないよう一気に登る。

 

 さらに雪稜とちょっとした岩場を登ると、白毛門着。
 結局、踏み固まったトレースに助けられ、ここまでノーアイゼンで登れてしまった。
 この時点では自分一人。静かだ。
 行く手に聳える笠ヶ岳や朝日岳、そしてそこに広がる真っ白い雪の斜面が険しい谷川当面の景色と好対照である。

 

 途中で追い抜いた男女ペアもほどなく到着。
 会話もテンション高めのお二人なので、面倒くさがりの私はちょっと距離を置いて、一段高い側の山頂でしばしまったり。

 

 しばらく休んでいると、一般登山者やら山スキーヤーやら続々と少しずつ上がってきた。
 写真も撮ったし、周りの景色も十分目に焼き付けた。快晴無風の中、小一時間も山頂でのんびり過ごした後、下山。
 下りは雪が腐ってきたので、急な下りでコケないようアイゼンを着ける。

 

 一気の下りは多少ヒザに堪えるが、次第に近づく土合駅を眺めながらガンガン下る。
 山はまだまだ雪深いが、下界はもうすっかり春の気配だ。

 土合駅は随分、綺麗(特にトイレ)になっていた。

 白毛門は華やかで厳しい谷川岳の陰に隠れた存在だが、残雪の季節は特に良い。
 そのうち巻機山、さらにその先の越後三山などの山をテントを持ってのんびり縦走してみたい。

 毎度の「湯テルメ谷川」に寄ってから帰る。


冬富士、13年振り二度目の登頂

2015年02月07日 | その他の山登り

天候:
行程:太郎坊洞門0:00-御殿場口新五合目(旧二合目)-八合目-剣ヶ峰10:25~55-太郎坊洞門16:30
単独

 もう何度目のトライになるかわからない冬の富士山。
 昨年は1月に来たが、地吹雪により七合目で敗退。
 これまで2002年1月に一回だけ剣ヶ峰まで登ることができたが、やはり条件が整わないと厳しい。 
 はたして今回は登れるかどうか。

 金曜の夕方、自宅で少し仮眠をとってから出発、23時頃に御殿場口の太郎坊洞門に到着する。
 駐車スペースには既に二台ほど。まだ動き出しておらず、仮眠中のようだ。

 いつものようにスタートは午前0時とする。
 冬だと御殿場口のコースは並のペースで登り約10時間、下り6時間はかかる。
 出発まで車の中で読みかけの「登頂 竹内洋岳」(塩野米松・著)を読む。
 歳と共に山や岩に対してビビッてしまっているので、そういう時は山岳ものでも漂流ものでも凄いことをやっている人の本を読む。
 そうすると、自分がこれからやろうとしていることが何ともちっぽけに思えて度胸が据わる(ような気がする)。

 で、いよいよスタート。
 トンネルの向こうにバイクで来た若い兄ちゃんがいる。やはりこれから登るようだ。
 「後でお会いしましょう。」と言って先に行く。

 まずは新五合目(旧二合目)まで。
 雪の少ないシーズンだと冬でも舗装路がむき出しになっているのだが、今回は一昨日に降ったばかりなので、全面深い雪。

 


 新五合目の鳥居からいよいよ登山道に入っていくが、この時点でヒザまでズボッと潜るラッセルとなる。

 今回、天気予報を見て冬型が緩み、風が穏やかになるのを計算に入れてきた。もちろん雪が多いことも予想していたが、ここまで潜るのは計算外だった。
 ワカンを付け、だましだまし進む。

 
しばらく行くと小屋のような所に出て、近道で追い付いてきた先ほどのバイクマンと再会。
 彼はほぼ毎月のように富士山に来ているようで、ルートにもやたら詳しい。
 今回は新調したスノーシューを試しに来たようだったが、それでも「ここでこんなに深いなら今回は頂上まで行けないかも。」と言っていた。
 自分もこのペースでは時間切れ敗退は目に見えているので、適当な引き際を考えていた。
 しかし、まだ登り始めたばかり。行けるところまで行ってみようと二人して登り続ける。

 「どうぞ、自分のトレース使ってください。」若いバイクマンが先行する。ありがたい。
 もちろん途中でラッセル交替するつもりだが、ついていくのがやっとでとてもこちらが前に出ることができない。
 歳のせいもあるが、やはりこういった状況でのスノーシューは強い。ワカンだと彼の踏み跡をたどっても少なからず潜ってしまい、けっこうロスがある。
 うーん、欲しいぞスノーシュー。(もちろんヤフオクで)

 

 西の空には満月が出ておりヘッデン無しでも歩ける。風も無静かだ。
 機械的に足を動かし、点々と続く杭を目印に広大な斜面を黙々と登る。

 途中で行動食をとり、斜面もようやく固くなってきたのでアイゼンに履き替える。
 五合目に無人の小屋があるはずだが、暗いからなのか雪の中に埋もれているのかよくわからない。
 ここからバイクマンは忠実に登山ルートをたどるべく右手の方へ、私は面倒なので宝永山の右裾をかすめるように直登を選ぶ。
 ほとんど徹夜の弾丸登山なので、途中からやたら眠くなってくる。足元がフワフワしてまったく力が入らない。

 やがて日の出。
 背後の空が横一直線にオレンジ色に染まり、その下に駿河湾や山中湖がうっすらと姿を現す。

 

 眠さもあってペースダウンし、バイクマンにはだいぶ離されてしまった。
 でも陽の光を浴びると体内時計がリセットされるようで、眠気も次第に治まり、再びペースを取り戻してきた。

 八合目辺りでそれまで先行していたバイクマンのスピードがガクンと落ちる。
 高度の影響が出たのか、それともここに至るまでペースが早過ぎたのか。
 トレースのお礼を言って、自分が前に出る。

 

 冬の御殿場口コースの最後の登りは、岩尾根の「長田尾根」と浅い谷状をジグザグに登る「大弛(おおだるみ?)」のどちらか。
 前者はかつての測候所員のためのルートで、前は強風の時にしがみつけるよう鉄柵があったが、今は撤去されてしまっている。
 後者は夏の通常ルートで尾根より風を避けられるメリットがあるが、ガチガチのアイスバーンとなっていることが多い。
 少し迷ったが、長田尾根は雪が少なく、飛ばされたらピッケル、アイゼンでどれだけ止められるかわからなかったので、谷沿いの大弛を行く。

 しかし、こちらの大弛もいよいよ冬富士の本領発揮。
 所々、恐怖のアイスバーンが現れる。アイゼンがまるで効かない!

 子猫の爪で引っ掛けるようにしてイヤラしい所をいくつか通過するが、このまま突っ込んでしまって大丈夫なのか???
 もし、帰りに風が強くなったら・・・と思うと気持ちが揺らぐ。
 ・・・しかし、ここまで来たら行くしかない!

 少し遅れてバイクマンも付いてきている。その向うには雲海が広がり、素晴らしい高度感だ。
 やはり冬富士は他の国内の山では味わえない快感がある。

 

 そして、やっとのことで御殿場口の頂上。
 鳥居をくぐり、最高峰の剣ヶ峰もロックオン。迷うことなく進む。

 剣ヶ峰の最後の登りはかなりの積雪で、立派なスノーリッジとなっていた。
 ラストは前半トレースを刻んでくれたバイクマンに先に頂上を譲ろうと思ってしばらく待つが、かなりペースが落ちてしんどそうなので、悪いが先に立たせてもらう。
 そして・・・
 
  冬富士、自己二回目の成功。

 

 しばらくしてバイクマンも到着。
 吉田口の方からは誰も登ってきておらず、頂上には二人きり。交互に写真を撮り合う。(バイクマンは教師のようで、卒業する教え子たちに向けて厳冬期富士山頂での自撮り動画を撮影していた。)

 頂上まで来れたという安堵感はあるものの、厳冬期に登れたという感激は不思議と無かった。
 昨年だけでも雪の残る時期に何回か登っていて、この噴火口の景色が目に焼き付いているからだろう。
 バイクマンは一通り写真を撮り終わるとサッサと下山開始。私は都合30分ほど頂上に残った。

 その後、後から二人ほど登ってきた。夜中に太郎坊の洞門の所に2台停まっていたので、その方たちだろう。
 挨拶を交わし、シャッターを押して差し上げた。

 幸い、この日は厳冬期にしては奇跡的な好天。まるで凪のように風が優しい。
 天気予報で十分読みを働かせてきたわけだが、やはりここは富士山の神様が微笑んでくれたということにしておこう。

 例のアイスバーンも無事に通過する。
 もし、ここでふいに突風に吹かれたらフィギュアの羽生くん並の四回転をし(でも着地できず)、そのまま白い斜面をボロ雑巾のように滑っていくだろう。さすがに慎重になって雪面を選んで行く。

 そこからひたすら長い下り。

 夏だと砂走りで思いのほか早い時間で下れたりするが、冬富士だとそうはいかない。
 右手に見える宝永火口、さらにその下に見える二ツ塚は、下っても下ってもなかなか近づかず、ウンザリする。

 

 最後は少し風とガスも出てきて、道に迷いかけたり、登り以上のモナカ雪地獄に苦しめられたりする。
 さすが冬富士。そう簡単には許してくれない。
 
 休憩込みだが、日帰り16時間半の行動はさすがにキツかった。


[メモ]
冬富士はとにかく天気(風)を事前に読むことが大事。
今は気象衛星の精度の高さとインターネットのおかげで、以前より情報をかなり容易に掴むことができる。

私が参考にしているのはこちら。山ごとに週間予報、標高ごとの風予測が出ている。
「山の天気」 http://www.tenki.jp/mountain/
「てんきとくらす」 http://tenkura.n-kishou.co.jp/tk/kanko/ka_type.html?type=15

 富士山の場合、冬だと標高4,000m超の風予測は大抵風速20m/s以上(台風の定義が17m/s)が多いが、ごくまれに10m/s近くまで凪ぐことがある。
 それが土・日の休日にピッタリ合うタイミングはなかなか無いが、少なくとも4,000m超の風予測が15m/sを切ったら自分ならGo!
 「時は来た!」(by 橋本真也。蝶野、失笑!)ということになる。
 もちろん装備、体調、基本的な技術は万全に。後は自己責任でお願いしますね。