goo blog サービス終了のお知らせ 

KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

2019台湾の旅 #4-龍洞、九份、士林

2019年10月09日 | 海外
四日目(10/8)天候:
 行程:台北-基隆-龍洞岩場視察-九份-台北-士林夜市-北投温泉街-台北-桃園国際空港
 
 さて、いよいよ今回の旅の最終日。
 主たる目的の玉山登山は、無事に主峰、東峰、北峰と二日間で富士山より高い3峰を登ることができ満足だ。
 本日は観光と視察を兼ね、台北北部をぐるっと回ってみることにする。

 
朝の台北中心街(左)と港町・基隆
 
 台北のホテルを早朝チェックアウトし、まずはバスで北部の港町「基隆」へ向かう。
 ちなみに旅のガイドブック「地球の歩き方」では「キールン」とフリガナがあるが、実際これだと現地の人になかなか伝わらない。
 バスのアナウンスでも言っていたが「ジーロン」が正しい発音のようだ。
 まったく「地球の歩き方」め!などと一人毒づいていたら、バスの網ポケットにしっかりその本を残したまま下車してしまった。
 すまん!「地球の歩き方」。
 
 まぁ今やスマホがあれば、こうしたガイドブックは不要だが、自分の場合、画面が小さくアプリが限られているガラホなので、この先やや不安ではある。
 とにかく片言英語で現地の人に聞き回り、本来のバックパッカースタイルで臨むしかない。
 
 基隆はメイン通りで降りた目の前がもう港になっており、なかなか風情があった。
 自分が住む横浜も港町だが、ちょっと雰囲気が違う。行ったことはないが、ビートルズの聖地リバプールももしかしたらこんな感じかと思ったりした。
 
 残念ながら今回はここでゆっくりできない。
 今日の主な目的はここから再びバスに乗って40~50分ほど先の「龍洞(ロンドン)」である。
 そこは海に面したクライミングの岩場で高さは約50m?幅は約1km?南北にわたってスッキリとした岩壁が連なっている。
 最初よくわからず、また下車のベルを押したにも関わらず運転手にスルーされ、奥の南口の方まで進んでしまいバスを降りる。
 平日ということもあって特にクライマーらしき人たちの姿を見かけることもなく、岸壁沿いの遊歩道を歩いていく。
 城ケ崎のようでもあり、伊豆七島の式根島の海岸線のようである。「火曜サスペンス劇場」の舞台になりそうな断崖が続く。

 
 
 だいぶ歩いた所で下方にチラッと学校のような建物が見えたので適当に降りていくと、そこが北端の「校門口(School Gate)」だった。
 近くにいたダイバーに聞いて、さっそく岩場を視察。よく見るとゴーロの中にうっすらと赤ペンキで矢印があり、歩きやすい道を示している。

 

 で、最初に迎えてくれたのはなぜかヌーディスト集団!
 まだ20代らしき若い台湾女性がトップレスで二人、しかも一人はもう今にも産まれそうな巨大なお腹を抱えている。
 
 その他にはバスタオルを腰に巻いた男性が数名、そして岩場から落ちたのか腹に大きな傷を負い、血だらけになっている関取のような男。
 スタッフやカメラマンもいて、どうやらB級映画の撮影らしいが、ちょっとマジマジと見てしまった。w(さすがに写真は無し)
 
 その横では本来のいるべき人たち、クライマー集団がトップロープで講習をやっていた。
 今回、シューズ、ハーネスは持ってこなかったので登ることはできないが、リーダーらしきニイちゃんにエリアについていろいろ教えてもらう。
 そして昨夜のうちに台北の「登山友」でトポ「ROCK CLIMBIG TAIWAN」を買っておいたのだが、このトポは秀逸。
 写真が美しいし、初見にも関わらず、すぐにトポと現場が照合できてしまう。
 
 
 
 
 
 
 
 結局、この日は「Long Lane」「Music Hall」というエリアまでをつぶさに観察。
 岩は砂岩でスポートルートのボルトはケミカル、乾きは早そうでフリクションはバチ効きといった印象。
 「I'll be buck !」近い内、必ず戻ってくるぜと岩場を後にする。
 
 その後、たまたま見つけたタクシーで「九份(キューフン)」へ移動。
 
 

 日本人にはお馴染みの階段と赤提灯の観光地。あの宮崎駿に強くイマジネーションを与えた町並みだが、いつの間にか町の方が宮崎駿人気に預かってる気配が漂っていて、土産物にジブリキャラが目立つ。
 アンチ宮崎の自分としてはあまり面白くなく、また9年前来た時よりさらにメイン通りが「江ノ島」化してしまって、ちょっと残念である。
 チャーハンを食べて、台湾女子の営業スマイルに負けてお土産を買ったら、即退散。

 

 

 

 バスで台北へ戻り、登山用品店巡りの続き。
 patagoniaに寄り、オリジナルTシャツに期待したが、残念ながらメンズは売り切れ。
 台湾スタッフに「メンズ、ソールドアウト!ザンネン!」と片言の日本語で言われる。いや、そんな力強く言わなくても・・・。w

 
 
 さらにMRTで「士林(シーリン)」へ移動。
 ここも9年前に来たが、夜市で賑わう町だ。ここならではのローカルフードが満載で、人気の「小腸包大腸」を「西瓜ジュース」と共に買うが、それほど旨いものでもない。
 正直、台湾フードは味が薄く微妙な味わいで、同じアジアン・フードなら自分は断然「韓国」派である。
 お土産のパイナップルケーキ、干支の文字盤がシブい腕時計(700円・笑)など買って、次へ移動。

 

 

 MRTに乗り、市街北部にある「北投(ベイトー)温泉」へ。
 ここは温泉街で、一番安く手軽な露天風呂公園を目当てに行ったのだが、ここで一悶着。
 混浴なので水着着用となっており、わざわざ日本から持ってきたのだが、水着にも良し悪しがあっていわゆるトランクスタイプはダメとのこと。
 そんなの知らずに券売機でチケットを買い、入ったらオババが水着を見てコレはダメだから改めてダサいスクールっぽい水着をここで買えと、のたまう。
 あまりにも一方的な言い方にちょっとムッとし、「じゃあいいや、入らないからペイバック。」と言ったら一度払ったお金は返さないと言う。
 はぁ?ここで思わずブチ切れる!

 【要注意!】ピッタリしたスクール水着でないと不可。
 
 悲しいことに中国語で文句を言えないので、英語で悪態をついてその場を後にしたが、思い直してまた戻り、後から来た別の客に事情を話して買い取ってもらった。ボンビー・バックパッカーはただでは転ばないのだ。
 たかが日本円にして140円ほどの話だが、不条理は納得できない。とにかく男女ともにここはスクール水着のようなピチッとした水着でないとNG。派手なビキニはどうなのか、そこまでは確認できなかったので定かでない。
 最新版には書いてあるのかもしれないが、「地球の歩き方」はこういう情報こそしっかり書いてほしいよなぁと思った。(基隆のバスに忘れて、今はもう手元に無いが・・・。)
 
 最後は再び台北に戻り、ホテルから荷物を回収。
 昨夜と同じ食堂で激辛小籠包を食べる。
 今回は弾丸スケジュールのため時間が無かったが、台湾のFBフレンズがこちらを気にかけ、コメントを入れてくれたのはやはり嬉しい。
 まぁ、また近いうちに来るでしょう。

 
最後に食べた激辛小籠包(左)と、龍洞の岩場トポ(右)※台湾で買うと約2,450円(楽天で見たら4,920円!海外通販でも3,000円)
 
 最後は再び桃園国際空港でビバーク。
 フードコートの椅子を3つ並べて横になり、翌朝の便で無事帰国。
 お土産込みで総予算6~7万円ほど。3泊6日?のそれなりに濃い旅が終わった。

 
シンガポールのスクート航空。中国表記だと「酷航」。でも別に酷くはなかったよ。

2019台湾の旅 #3-玉山登頂(北峰)

2019年10月07日 | 海外
三日目(10/7)天候:
 行程:排雲山荘3:00-玉山主峰の肩4:30-北峰6:10~25-排雲山荘8:30~9:00-塔塔加登山口12:30-阿里山-高鐵・嘉義-台北

 さて、昨日のうちに主峰、東峰に登ってしまい、概ね目標達成となり今日はもう下山してもいいかなと思ったが、昨日より良い天気なので、再び登ることにする。

 玉山の通常の登山パターンはここ排雲山荘で午前2時に起床、朝食。3時には出発して5:40の日の出を頂上で迎えるというもの。
 ほとんどの者がそのタイムスケジュールに合わせて行動している。
 で、何となく自分もそれに合わせて出発。

 
この日の朝食は、肉まんとお粥だった。

 夏の富士山のように御来光目当ての登山者で渋滞するかもと懸念していたが、元々、排雲山荘の宿泊客が一日約100名と限られているので、適当に間が空き、それほどストレスは感じない。
 
 昨日までの頭の張りは朝食の後、すっかり消え、気分は上々。テーピングのおかげで左足首の痛みもまるで気にならない。
 しかし調子に乗って、また少しペースを上げるとすぐに息が切れる。四千m弱の高さはダテじゃない。
 前方を歩いていたカップルのうち、若い女性の方がいきなりうずくまり嘔吐するなど、やはりここはそれなりの高度なのだ。
 
 ロックシェイドを登り切った所が主峰と北峰の分岐点。
 大抵の者が主峰に行くので北峰へ行くのは自分くらいかと思ったら、それでもチラホラとそちらへ向かう者のヘッデンの明かりが見えた。
 
 北峰へは一度ザレた急斜面をガーッと下り、その後しばらく樹林帯の中の馬の背の斜面、そして最後に北峰への登り返しとなる。
 日の出を迎えたのはちょうどその登り返しの部分で、これまで外国の山も含めていくつものその瞬間を見てきた自分にとってそう目新しいものではなかったが、やはり感慨深い。

 
 
 北峰(3,858m)は頂上に立派な気象観測所があり、大きな建造物があって興覚めするかと思ったが、その展望台テラスから見る主峰と東峰はなかなか雄大で、これはこれで来てみて損は無かった。
 真の頂上は観測所の裏手にあり、ここから見る玉山北方の景観もまた見事。台湾の空はどこまでも青く広がっていた。
 十分満足して北峰を後にする。

 

 

 主峰から見た北峰
 
 主峰肩への登り返しはまたキツそうだったが、そうでもなかった。ようやく高度に馴れてきたのだろうか。
 排雲山荘に寄って最後の食事。どこかのブログでここで出る最後のラーメンが旨いと書いてあったような記憶があるが、本日の麺は薄味のフォー(ベトナム麺)みたいで、お代わりしたくなるほど旨くは感じなかった。
 またしても昨日からの二人組と会い、お互い天気に恵まれて良かったと喜び合う。

 下りは行き交う人たちと挨拶しながら進んでいく。
 見た目は同じ東洋人で変わりはないが、こちらが知っている中国語は「ニイハオ」と「シェシェ」ぐらい。
 何か言おうとして英語が出てしまうと途端に「どこから来ましたか?」と会話となり、交流が始まる。
 日本も来年オリンピックだが、このぐらい外国人とフレンドリーにならないとダメだよなぁ。(自分もそうだが)英語で話しかけられるとすぐ行き詰まって逃げるし・・・。

 

 

 

 途中でいろんな人たちと記念写真を撮ったりして、のんびり下るが、それでも予定していた時間より早く下山できた。
 東埔山荘でデポしておいた荷物を回収。
 阿里山、嘉義と往路とまったく同じ経路を取り、再び台北へ。登山用品店巡りをしてから予約していたホテルへ落ち着く。
 三日振りのシャワーで汗を流し、台湾ビールと焼肉麺で一人祝杯を上げた。

 
豪華なホテル前景。実はこの中にバックパッカー宿があって、素泊まりシャワー&wifi付きで798円/泊(笑)


2019台湾の旅 #2-玉山登頂(主峰・東峰)

2019年10月06日 | 海外
0日目(10/4)天候:
 仕事を午前中に切り上げ、午後から有休。
 これから台湾一人旅、三泊六日?の予定である。
 昨年は何かと忙しく、海外は二年振り。
 台湾は9年振り二度目だが、近場で日本と似ているとはいえ、やはり少しでも日常の世界から離れるとなるとイイ歳こいてワクワクしてしまう。
 
 夕方、成田空港着。
 横浜からだともちろん羽田の方が近くて便利だが、自分はこの成田までの距離が心の準備ができるというか、高揚感が湧いてきて好きである。
 今回利用するのはシンガポールのLCC「スクート航空」。
 今や時期によっては往復1万円も切る?ほどの台湾だが、今回は2万円+諸費用といったところ。北海道や沖縄へ行くより全然安い。

 
久々の成田空港。いつものように萌え系雷神さまが見送くられて出発。
 
 とりあえず台湾での必需品として、噂の台湾simカードを購入。
 1,000円ほどのプリペイド式で、スマホで付け替えれば通信は五日間向こうで使い放題。重くて嵩張るレンタルwifiはもう古い。
 とは言うものの自分が持っているのは二年前のガラホ(スマケー)で、実は設定が意外と大変だった。
 買ったはいいがなかなかうまくいかず、途中で諦めかけたほど。
 だが、あれこれやっているうちに何とかなるもので、向こうで突然繋がった時はちょっと感動してしまった。
 
 機は予定通り成田を20時30分に経ち、2時間ちょっとで台湾の桃園国際空港着。
 時差は台北の方がきっちり1時間遅れなので、現在23時過ぎ。面倒なので時計は日本時間のまま修正せずに過ごすことにした。
 
 着いたのが夜中なので、このまま空港でやり過ごす。
 何とか柔らかめのソファーの充電可能スペースを確保したが、冷房が効き過ぎてけっこう寒い。
 pataoniaのパフジャケットを着込み、冬山ビバーク体制で朝まで過ごす。
 

一日目(10/5)天候:
 行程:台北8:21-高鐵「嘉義」9:48~10:10-阿里山BT12:40~13:30-東埔山荘14:20
 
 本日は移動日。
 さっそく便利な「イージーカード」を自販機で購入。これは台湾版suicaで、地下鉄やバスの運賃、コンビニでの飲食物など大抵のものに使える。
 駅の自販機はもちろんコンビニでもチャージ可能で、帰国の際には払い戻しも可だ。
 (以下、費用は当時のレートで日本円に換算。1台湾ドル≒3.5円とする。)
 
 まずはMRT(地下鉄)で台北市街へ移動。(約40分)
 車窓からは日本と似た風景が広がるが、やはり南国のせいか全体的に緑が濃い。

 
台湾に着いたら、まずsimカードとeasyカード。(左)
巨大な「台北」駅(右)
 
 台北駅のコンビニで肉マンとアスパラガスジュースという妙な朝食を買い、そのまま新幹線(高鐵)で「嘉義」へ。(約1h30m、3,660円)
 さらに駅前バスターミナルから路線バスに乗り「阿里山」まで。(約2h30m、960円)
 阿里山は聞くところによると「台湾の上高地」などと呼ばれ、そういうイメージを持っていたのだが、バスの終点となるターミナルは特に何もなく殺風景なところ。
 
 さらに午後になって猛烈なスコールとなり、辺りは灰色一色となる。
 今回、事前の天気予報では登山日の二日間とも雨マークで、もしかしたら玉山は登れないかもと半分諦めモードでここまで来たが、さらにその感を強くする。
 実際の観光地としての阿里山はここからさらに少し先になるようだ。

 
「嘉義」から「阿里山」へ向かう路線バス(左)
阿里山バスターミナル。観光地とししての阿里山はさらに奥?で、ここにはセブンイレブンしかない。(右)
 
 ターミナルにあるセブンイレブンで明日からの行動食を調達。
 山小屋での朝夕の食事は頼んであるが、玉山ではこの先、売店などは一切無く、この阿里山バスターミナルのセブンが最終補給地点となる。
 
 予約していたチャーター車が到着。
 ここから登山口の上東埔駐車場までは車で40~50分ほどかかる。なぜかこの辺りはタクシーが一台も走っていないので阿里山から上東埔までは事前に代理店に頼むなどして車を確保しておいた方が良い。(「計画編」参照)
 
 上東埔駐車場着。
 売店などは無く、あるのはトイレのみ。雰囲気としては富士山の富士宮口五合目と似た感じか。
 この日はその下にある「東埔山荘」に泊。(素泊まり1,100円+食事2食1,000円)
 食事は事前予約しておいたが、基本的に素泊まりを想定しているようで、他の台湾人登山者はカップラーメンなどを持参していた。
 お湯は使い放題なので、自分もそうすれば良かった。

 
上東埔駐車場(左)と東埔山荘(右)
 
 早めに到着したので、登山道の下見を兼ねてこの日のうちに登山届を提出する。
 歩いて20分ほどで、登山管理所と警察があり、そこでパスポート提示と共に日本でプリントアウトしてきた国立公園入園許可証、玉山入山許可証を提出。
 これでようやく入山できるわけだ。
 登山管理所は玉山国立公園の自然を紹介すると共に、スマホの充電やお湯も無料でもらえるので便利だ。

 
登山管理所(左)と、その隣にある警察(右)。それぞれに届を出して準備完了。
 
 東埔山荘に下って早めの夕食。
 同じテーブルに座った台湾男性二人組がとても親切で、オレンジをくれたりして、しばし談笑する。
 明日、登山管理所から塔塔加登山口までのシャトルバス(所要10分)の始発は6:30。
 最初はそれに乗るつもりだったが、彼らはそれを待たずもっと早い時間に歩いていくと聞いて、自分もそうすることにした。
 
 今日の天気を見ると台湾、特に山岳地帯は大陸性の天気で、午前中は晴れるが、午後になるとスコールが起きそうな気がする。
 できれば明日早出して一気に主峰、そしてできれば東峰まで登ってしまおう。
 ただ一つ気になることがあって、今回の旅の直前にどこかで左足首を捻ってしまったようで、時々痛む。大きな腫れなどはないが、こんな状態で足が最後までもつだろうか。念のため明朝はテーピングできつめに固定しておこう。

 
東埔山荘の夕食風景(左)とベッドルーム(右)
 
 
二日目(10/6)天候:
 行程:東埔山荘3:30-排雲山荘7:40~8:00-玉山主峰9:40~10:00-東峰11:30~50-主峰13:10~30-排雲山荘14:45
 
 結局、朝3時には目が覚めてしまった。
 東埔山荘のベッドはいっぱいで、隣のイビキがひどかったらヤダなと思っていたが、台湾の人たちはみな静かで、おかげでぐっすり眠れた。
 
 朝食も摂らずに、そのまま3:30には出発。
 辺りは真っ暗だが、昨日少し下見をしているし、ヘッデンと星明りで特に迷うことはない。
 
 登山管理所から塔塔加登山口までは車で10分らしいが、歩くとけっこう長く感じる。
 下山時はやはりシャトルバスを使おう。(約350円)
 大抵の登山者はシャトルバスを使って明るくなってから登り始めるが、もちろん暗い内からヘッデンを点けて登っている人たちもいる。

 
石碑があるだけの塔塔加登山口(左)と、「孟禄(モンロー)亭」と呼ばれる最初の休憩スペース(右)
 
 塔塔加登山口は大きな石碑があるだけで、何もない所。
 道は一本で、指導標もあるので真っ直ぐ登り続ける。
 登山道はよく整備され、雰囲気としては箱根のハイキング道である。
 道標はきっちり0.5kmごとに設置され、ペース配分の目安になる。
 
 東屋だけの「孟禄(モンロー)亭」、立派なテラスのある「白木林」の休憩舎を越えていく。
 特に後者は眼前に頂上稜線が望め、快適なビバークポイントだ。

 
登山道の指導標は0.5kmごとに設置され、今どの辺の位置にいるかわかりやすい。

 
展望の利くテラスのある「白木林」は、快適な休憩所(左)。途中にある「大肖壁」という大きなスラブ壁(右)
 
 玉山の七~八合目に相当する「排雲山荘」(3,402m)に到着。
 通常のペースでおそらく5~6時間のところを4時間10分。時間的には少し余裕ができ、これなら今日中に主峰を越えて東峰まで足を延ばせそうだ。
 排雲山荘のスタッフはなぜか台湾人ではなく、フィリピンとかタイとかもっと色黒の東南アジア系だった。
 
 

 不要なウェアなどを小屋にデポして、さらに登り続ける。
 少し飛ばし過ぎたのか頭痛というほどではないが、頭が重いので、ここから先は一段ペースを落とす。
 もうこの先は富士山の頂上付近と同じ、そしてさらにその高さを越えていくのだ。
 それでも主峰への登山道は台湾の人々と同じく、どこまでも優しく、斜面は急になってもできる限りジグザグに切って傾斜を感じさせないようにしている。
 空気は薄いが、富士山の登山道よりはよっぽど登りやすい。

 

 
 
 しかし、ここまで晴れていたものの、頂上に近づくにつれ天気は悪化してきた。
 頂上直下のロックシェイド(落石避け)の手前で雨具を着用。この時間になると下山する人が疎らにいるだけで、自分もよほど出直そうかと思った。
 それでもあと少しと思い直し、登り続け、ようやく主峰(3,952m)に到着。
 
 雨はそれほど激しくないが、立っていると倒されそうな強風だ。
 岩陰で風を避けているとそれでも後から登ってくる者がいて、お互いに写真を撮り合う。
 やたら元気なニイちゃんがいて、こちらが一人で写ろうと思っているのに勝手にシャシャリ出て肩を組んでくるのには苦笑したが。

 
台湾最高峰、玉山主峰 3,952m
 
 とにかく風が強く、このまま長居すると身体が冷え切ってしまうのでそそくさと下山しようとしたが、ふと見ると東峰の方からも2、3組やってきた。
 中には若い女子もいて、(彼女でも頑張れたなら、自分でも行けるかも。)と冷えた心に火が点いた。
 それに長年の山の経験からこうした山の悪天は風が強ければ、その分すぐにまた雲が切れたりすることも多い。
 
 その読みは見事に当たり、しばらくするとあっという間に雲が切れ、再び青空が広がり始めた。
 ナイス!これなら行ける。
 迷うことなく東峰へ向かった。

 

 
主峰から東峰への道。鎖や道標となるテープは随所にあるが、台湾では上級コースとなっているようだ。
 
 東峰への道はバリエーションルートぽく、鎖場とザレの連続だった。
 しかし、指導標や目印のテープ、鎖はかなりしっかりしていて不安は無い。北アの岩稜を経験していれば十分な程度である。
 ただ、この辺りで標高3,600~3,800mとなり、日本では経験できない縦走となる。
 頭がフラフラしている可能性もあるので、十分注意したいところだ。

 
東峰頂上直下の鎖場(岩はしっかりしているが、ほぼ垂直)、そして東峰頂上。
 
 東峰への最後の登りはほぼ垂直の鎖場だが、岩はしっかりしていて問題無し。
 そして、東峰(3,869m)に登頂。
 昨日の台湾二人組も「玉山に初めて来た外国人が一人で東峰まで行くのはスゴイ。」と言っていたが、それができて嬉しい。(だが、実際にはそれほどハードなわけじゃない。) 
 20分ほど一人で頂上を満喫。

 下りの鎖場を慎重にこなし、再び主峰へ戻る。
 先ほどの悪天が嘘のように落ち着いた主峰にはもはや誰もおらず、ここでもたった一人の頂上を満喫。
 とりあえず目標達成の安堵感をしみじみと感じながら、頂上を後にする。


 
再び主峰を経由してから下山する。
 
 その夜は排雲山荘泊。(素泊まり1,800円+食事三食2,100円+寝袋代1,000円)
 高度と興奮のせいか頭の張りはなかなか消えず、11時間行動で疲れているにも関わらず、なかなか寝付けなかった。

 
排雲山荘の夕食準備(左)と、親切にしてくれた台湾の二人組(右)

2019台湾の旅 #1-ニイタカヤマノボレ・計画編

2019年10月04日 | 海外

 さて、2013年から続いていた海外登山だが、昨年(2018)は諸々の都合で行くことができず。
 そろそろ禁断症状が出てきて、どこでもいいから日本の日常を飛び出したいと思って、思いついたのが台湾である。
 当初は龍洞でのクライミングを予定していたが、諸般の都合でこちらは延期。
 おそらくいつかは行くであろう海外の山リストから、ベタだが今回は台湾最高峰の玉山を計画した。

 玉山は、かつて台湾が日本の統治下の頃、「新高山」と呼ばれ、昭和初期の方には馴染みの深い山。
 「ニイタカヤマノボレ一二〇八」は日本が太平洋戦争を仕掛ける(敢えてこう書こう)際の暗号にもなった山である。
 標高は主峰が3,952mで富士山3,776mより高く、近年はマレーシアのキナバル、タンザニアのキリマンジャロよりもさらに身近な海外登山の第一歩とも言える。
 今やネットで検索すれば多くの人の登山記が見つかり、今さら自分が書くこともないが、備忘録として残しておこう。
 個人で登ろうと思っていない人にはまったくつまらない内容なので、あしからず。

 まず、玉山へ登るには大きく分けて三つのパターンがあると思う。
 A 日本のエージェンシー、ツアーで登る。
 B 現地のエージェンシー、ツアーで登る。
 C 個人手配で登る。

 そして、それぞれのメリット/デメリットは、
 A 安心、安全/料金が高い、団体行動(予算は約20万円)
 B 手配が楽、安い/言葉の問題、団体行動(予算は約6~7万円)
 C 安い、自由/手配が大変(予算は約5~6万円)
 
 自分が選んだのはもちろん「C」であるが、玉山個人登山の場合、最初の鬼門となるのが事前の手続きである。
 台湾の山は基本的に国が管理していて、フラッと行って勝手に登るわけにはいかない。まずここが面倒くさくて個人登山を断念する人も多いと思う。
 手続きとしては、
1 玉山国家公園への入園申請
  台湾国立公園入園オンライン申請のHP(日本語表示あり)   
   
  玉山は毎日解放しているわけではなく、入れる日が限定されていて、まず上記HPから入園申請する必要がある。
  主峰だけなら登山口から往復10~12hほどの日帰り登山も可能だが、通常は七合目付近にある排雲山荘(パイウンロッジ)に一泊しての二日間行程。
  小屋は114名が定員で4か月前?から先行申請可能で早い者勝ちだが、自分が思い立ったのが出発の2か月前でその時点で既に満員。
  かと言って打ち切られるわけではなく、溢れた者で抽選となり、結果は出発の1か月前になって初めてわかる。外国人優先枠もあり。
  実は昨年の秋も申し込んだのだが、クジ運がいいのか、一人なのでスッと割り込めたのか、自分は二回とも当選した。
  人数が多いとメンバーの一部が当選、一部が落選ということもあるかもしれない。
  あと申請の際は緊急連絡先を決めなければならず、日本国内で構わないが電話番号の他、緊急連絡先の身分証明IDを求められる。
  日本のマイナンバーや運転免許証、保険証No.は当然、国際的に通用せず、そうなると留守宅となってくれる人のパスポートNo.が必須だ。

 
 
玉山国立公園の入園許可書(左)と入山許可書(右)
この二つを3部コピーし、登山管理所と隣にある警察署、さらに排雲山荘に提出しなければならない。

2 航空券の手配
  当然、格安航空券(LCC)も出発間近よりなるべく早い時期の方が安いものを確保できる。
  上記入園許可を確認してからの航空券確保では遅いので、ここは玉山へ行けなくてもダメなら観光でもと割り切って上記日程に合わせてeチケットを確保してしまおう。どうせ往復でも1~2万円代だし。
  ちなみに何かの都合で行けなくなった場合、こんな保険もある。チケットガード保険

3 現地警察への登山申請、その他宿泊先、交通手段等の手配
  当選したら自分の場合、排雲山荘コースだったので、三日以内に指定の現地銀行口座に山荘利用料金を振り込まなければならない。それを振り込まなければ、せっかく当選したといっても正式な許可とならない。しかもクレジットカード決済不可!
  ここが一番冷や汗をかいたところで、自分が当選通知をもらったのが金曜の午後3時。
  仕事を終えて、すぐに大手の郵便局や都市銀の窓口に出向いたが、たかだか1,800円を振り込むのに手数料が5~7千円かかると言う。
  ネット銀行の口座を持っていれば手続きは早いが、それでも3千円ほどかかるらしい。
  しかも明日、明後日は土・日だし、入金間に合うのかとヒリヒリしたが、それは後述の手配で一気に解決。
  次に宿泊先だが、玉山登山の場合、登山口のさらに下にある東埔山荘がよく利用されている。
   
  ここは国家公園と関係なく、自分で予約しないといけないが、メール受付は無く、電話受付は中国語のみ。
  さらに交通手段だが、台北から嘉義までは鉄道かバス。嘉義から阿里山までは路線バスと公共交通機関があるが、阿里山から登山口の上東埔駐車場まで(車で40~50分)は何らかの交通手段を確保しなければならない。(歩くのはまず現実的でない!)
  東埔山荘のHPにワゴン車チャーターについて書かれているが、これも中国語による電話受付のみ。
   
  せっかくここまで自分で申請、当選したものの、その先で中国語三千年の歴史が重くのしかかり、行く先は難攻不落と思えるのだった。

  しかし、ここで救世主現る!
  何かの拍子に偶然見つけたツアー会社にこれこれこういう事情でと問合せ先にメールを送ったところ、海外送金、警察への申請、東埔山荘の予約、途中の交通手段確保とその他諸々の雑多な手配を一気に片づけてくれた。
  全て併せた手数料も自分で海外送金するより全然安く、土曜午後に連絡したにも関わらず日曜午前中には全て解決。
  安い!早い!丁寧!と三拍子揃ったサービスに驚いた。
  それがここ。
  Satis Tour(サティスツアー) お勧めします!

  この会社の強みは本社が台湾、支社が東京にあるため、お願い事はすべて東京支社へ日本語でOK。
  台湾の本店と連携して即座に動いてくれることだ。
  ここまで長々と書いてきたが、早い話、個人登山の場合もここに一切任せてしまって間違いない。
 
4 旅の行程
  というわけで、全体のスケジュールは次のとおり。
  10/4(金)午後から有休を取り、夜の便で成田から台湾へ。そのままエアポートビバーク。
  10/5(土)移動日。桃園空港(MRT)台北(新幹線)嘉義(路線バス)阿里山(チャーター車)東埔山荘泊
  10/6(日)東埔山荘から登山一日目、排雲山荘泊。
  10/7(月)排雲山荘を出発、登山二日目。そのまま下山し、台北まで戻る。
  10/8(火)一日観光。龍洞、九份、士林など。そのままエアポートビバーク。
  10/9(水)早朝の便で昼前には成田着。半日休んで翌日から出勤。
 
 登山に関しては上記A、Bのツアーではまず主峰のみの登頂となるが、やはりそれだけではもったいなく、北峰や東峰にも登りたいとダメ元で追加申請してみた。
 台湾では単独行の人は少なく、まして玉山東峰は台湾「十峻」の一峰として上級コースに位置付けられており、わけのわからん日本のオッサンは即座にハネられるだろうと思ったらあっさり許可をいただいた。

 登山に関して参考にしたのは、こちらのHP
山と道-ラボ渡部の玉山登頂記 (トレイルランナーのペースなのでタイムは真似できないが、参考になる。)
Taipei Hiker (こちらは日帰り。台湾の山の概要がわかりやすい。)     
   
 28Lザックにウェストバッグ、サンダル履き。空港でのゴロ寝を除けば三泊六日?という弾丸バックパッキング。
 一泊で日本の山へ行くより全然気軽な格好で、成田から出発した。



2017韓国の山旅 #3-道峰山(トポンサン)

2017年09月18日 | 海外
9/17 天候:
行程:恵化-道峰山駅-神仙台(シンソンデ)-ソニンボン視察-道峰山登山用品通り-明洞(ミョンドン)-仁川国際空港(仮眠)-帰国(翌18日午前)
行動:単独

 今朝は少し早く朝5時起床。
 いよいよ最終日。あっという間の三日間なので、今日も目一杯楽しもう。
 しかし、さすがに脚に乳酸が溜まりまくって、何ともダルイ。
 
 チェックアウトは昨夜のうちに済ませておいた。
 本当は二日目、三日目は同室のヤツらの騒音を警戒してシングルルームを予約していたのだが(一泊2,500円)、宿側の手違いでシングルが確保できず。
 初日のドミトリーが思ったより快適だったのでそのままでいいと言ったら、スタッフのガンが気を使ってくれたのか二泊で1,000円ちょっと。
 結局、合計三泊で2,000円ほど。うーん、本当にこれでイイの?
 
 コンビニに寄ってから恵化駅まで歩く。
 地下鉄4号線で「倉洞(チャンドン)」、そこから1号線に乗換え「道峰山(トポンサン)」駅へ。
 今回、地図は韓国の山の特集を組んだ「岳人」2016年6月号のコピーを持参したが、これが大いに役立った。
 一応、ジョンや北漢山の案内書でも地図をもらっていたが、やはり似たような文字が並ぶハングル表記は、よくわからない。
 
 
「道峰山(トポンサン)」駅。駅前から仙人峰(ソニンボン)の岩壁が見える。
 
 地図を頼りに登山口に向かって歩き始める。
 土曜日なのに、意外と空いている。まだ朝早いせいか。
 後でわかったことだが、ソウル近郊の山では地元の人はそれほど早出しない。登山自体は半日行程、あとは途中の飲み食いでゆったり一日行程としているので、スタートはゆっくりだ。

 宿をチェックアウトしたので、全装備を担いでいるが、できれば不要なクライミングギアはどこかに預けておきたい。
 残念ながら道峰山の駅にはコインロッカーらしきものが無く、登山口へ至る通りもまだ店が開いてない。
 しばらくどこかに荷物を預けられないか探したが見つからず。諦めかけてこのまま全装備担いで登るかと思ったところ、登山用品店通りを過ぎた左手の管理事務所に親切そうなお姉さんを発見。
 片言英語で頼んでみるが、やはりこの御時勢。テロを心配して危険物が入ってないか慎重な対応である。
 パスポートのコピーを預け、何とか信用してもらい、無事重荷から解放。助かった。

 
登山口のモニュメント(左)と光輪寺(右)

 登山口から光輪寺というお寺につき、そこを左に折れて、しばらくは沢沿いに遊歩道のような道が続く。ちょっと奥秩父の西沢渓谷のような雰囲気か。
 登山道はけっこうあちこちに別れ、道標もほとんどハングルなのでちょっとわかりにくいが、その中のpeakという文字を頼りに登っていく。

 登るにつれ石段の道は急な傾斜となり、軽荷とはいえけっこうシンドイ。
 韓国の人たちはここを毎週のように登っているのか。これならシェイプアップもできるはずだ。

 途中、何か所か寺のような所を通過する。また、小さな岩場があり、クライミングの団体講習みたいなのをやっていた。
 やがて見晴らしの良いスラブ状の小ピークに到着。
 何という場所かわからないが、k-pop風の山ガールが一人でのんびりバーナーでブランチを楽しんでいたりして、なかなか絵になる。

  

 朝のうちは雲が広がっていて、もしかしたら今日は少し降られるんじゃないかと心配していたが、登るにつれ暑くなり、結局三日間でこの日が一番夏の陽気となる。

 ソニンボン(仙人峰、693m)の左側を越え、いよいよ最後のシンソンデ(神仙台)への登り。
 しっかりした手摺はあるが、けっこうシンドい登りだ。

 シンソンデ(神仙台)頂上。
 すぐ目の前にある紫雲峰(チャウンボン)740mの方が高いが、一般登山者が登れるのはここまで。
 東南側に連なる紫雲峰、萬丈峰(マンジャンボン)、仙人峰(ソニンボン)が狭義の道峰山。さらに少し離れて西側に五峰(オボン)と呼ばれる五つの岩峰が連なっている。
 遠く昨日まで登ったインスボンを始めとした北漢山、さらに仁川方面の海まで見渡せ、素晴らしい景色だ。
 しばらくここで大休止。韓国最終日のピークの景観を目に焼き付ける。

 手前に五峰(オボン)、遠くに仁寿峰(インスボン)

 

 

 

 本当は五峰までの岩稜縦走をしてみたかったが、昨日のリッジクライミングでもう細かい岩尾根のアップダウンは十分。
 すぐ近くの小ピークまで往復し、あとは無理せず下山することにした。

 帰りは、ソニンボンの取付きまで偵察。この日もクライマーの団体が数組いたが、アプローチが短い分インスボンの方が人気があるようだ。
 しかし朝のうち空いてると思った道峰山は昼近くなるにつれ人、人、人。休日の高尾山と同様の人出である。
 知らなかったといえ、朝早い内に登ったのは正解だった。おそらく先ほどのシンソンデなど狭くて10人も立てばいっぱいだから凄い渋滞となるだろう。

 

 登山口の管理事務所に寄り、ザックを回収。
 お礼に先ほどのお姉さんにコーヒーでも奢って渡そうかと思ったが、残念ながら留守だった。

 さて下山後は登山用品店巡りである。
 掘出し物がないものか端から徹底的に見て回る。
 しかし初日にチラ見した時は500円のウェアなど見て狂喜したが、落ち着いてみるとうーん、これはどうかなぁと考えてしまう。
 やはりパタゴニアやノースなどは安売りしててもそれなりの値段で、片や「The RedFace」なんていう韓国メーカーを日本に持ち帰っても、物は悪くないんだろうけど、なんか失笑買いそうな?

 結局、お馴染みのミレーで数人の山友へのお土産にソックスと自分用に中綿入りベストを。
 ミウラーが新品で15,000円だったが、まだリソールすれば使えるのを何足か持っているし、ここは自重。
 屋台でパンケーキとおでんという妙な組合せの遅い昼食を摂り、道峰山を後にした。

 

 

 その後、繁華街の明洞(ミョンドン)で家族と職場用にお土産を物色。
 地下鉄の駅から地上に出た途端、目の前に地上数十階のノースフェイスビルを見てビックリ。
 ここ明洞は銀座と渋谷をミックスしたような街だ。

 ロッテ百貨店に行くが、高級ブティックが連なる中を薄汚れたザックを背負った異邦人がキョロキョロしながら歩くのは違和感たっぷり。
 さすがにアウェイ感に堪え切れず、結局地下街の庶民的な土産屋で韓国海苔やお菓子を購入。
 ここでも妙齢のお姉さんがお負けしてくれて感謝。
 韓国最後の晩餐は、適当な食堂に入ったら店のオバちゃんに勝手にキムチチゲ(キムチ鍋)にされてしまった。まぁいいけどね。

 明朝のフライトが早いので、今夜はそのまま鉄道で仁川空港へ。
 以前のガイドブックには、空港は広く仮眠スペースが十分あると書いてあったが、ここ数年で様変わりしたのか目当ての施設を見つけられず。
 結局、待合ロビーのベンチでザコ寝した。まぁいいけどね。
 
 翌朝7時25分のフライトで成田着、昼には横浜の自宅に帰る。
 慌ただしかったけど、それだけに濃密な韓国の山旅だった。

動画はこちら

 3:49

2017韓国の山旅 #2-インスボン・リッジトラバース

2017年09月16日 | 海外
9/16 天候:
行程:インスボン・仁寿リッジ(5.9 A0、8P)~仁寿峰~萬景台~マンギョンデーリッジ(5.6 6P)下降
同行:Jeon Yonghak(ジョン・ヨンハク)
 
 今日も朝6時起床。
 昨日と同じコンビニで食料等を買い足し、7時半に迎えに来たジョンと共にまたまた北漢山登山口へ。
 
 しかし、今日は土曜日。
 一応、上の駐車場まで車を走らせるが、既に車がいっぱい。
 自分は登山口で先に降り、ジョンは一旦下の駐車場まで戻って再びタクシーで上がってくることに。(タクシーといっても100円ぐらいとのこと)
 
 それにしても、今日は賑わっている。
 ソウルの人々は本当に山が好きで、老若男女問わず、土日ともなるとここ北漢山か道峰山にハイキングあるいはクライミングに来るそうだ。
 おばさんもだが、とにかく山ガールが多い。みんなスタイルが良く、少なくともソウルではあまり肥満体の女性を見ない。 
 食文化旺盛な韓国だが、食べる分だけ動くから健康的であり、病んだ体型の日本人など大いに見習うべきだと思う。
 
 登山口ではジョンのガイド仲間とも会う。
 彼らも今日は大人数で仁寿リッジに行くそうだ。みな友好的で、こちらが日本人と知ると「コンニチハ!」と日本語で挨拶してくれる。
 今回時間が無く、ハングルを予習してこなかった自分が恥ずかしい。
 
 アプローチは昨日のレスキューオフィスまでは同じ。
 そこから今日は右側(北方面)へ延々細い踏み跡をトラバースしていく。
 日本のように赤布や目印があるわけではなく、ここは初見で行くのは難しい。
 
 レスキューの場所から30分ほど歩き、途中ちょっとしたスラブもあったりするが、取付きはまだまだ遠い。
 ジョンはソウル在住ながら海外でのガイドが多いらしく、インスボンはせいぜい年に2~3回ほど。
 周りの木々であまり視界が利かない中、何度か辺りを確認しながらようやく取付きの外傾スラブに到着した。
 一緒に登るはずのジョンの友だちパーティーはなかなか上がってこなくて、まだずっと下にいるのでお先にスタート。
 
インス(仁寿)リッジ 
 1P目 10m 5.6
 正面のクラックを登るが、まだ途中少し歩くパートがあるからとアプローチ・シューズのまま登る。
 こちらの人たちはちょっとした岩場ならアプローチ・シューズで登ってしまうが、慣れてないとけっこう厳しい。

 取付きの外傾クラックから見るインスボン頂上。
 
 2P目 5m 5.6
 ジェードルクラック。実はあまりよく覚えていない。ので特に問題無し。

 
 3P目 15m 5.6
 右側の小さな岩を経由して正面のおむすび岩に登るが、右側がスパッと切れた上に途中支点が無いので、リードはちょっと度胸がいる。
 ジョンも「難シクナイケド、チョット怖イネー。」と笑っていた。フリクションはバチ利きなので、それを信じて。

 この岩に上がってから左のスラブに移る。ノーピンなので少し怖い。
 
 4P目 20m 5.6
 おむすび岩の支点から5~6mロワーダウンして、反対側の岩に乗り移る。
 高度感があり、ちょっと怖い。ロープ操作を誤らないよう、慎重に降りる。何とか反対側の岩に移り、ホッ。
 スラブを登り返し、その後、再び懸垂でちょっとした広場に出る。
 
 
おむすび岩からロワーダウンして。正面のスラブ壁へ。ロープワークは慎重に。
 
 5P目 20m 5.9
 綺麗なクラック。ジャミングするのは1ポイントだけで手掛かりは良く、レイバック風に登れる。
 最後、バランスが悪くなってくる所でガバが待っているが、下からはちょっと見つけにくく、リードはちょっとシビれると思う。

 美しいクラック
 
 6P目 40m 5.6 A0
 立ったクラック。ただ、幅が広くてジャミング不要。クラックの中に手を突っ込めば奥に良いホールドがある。何とも快適で気持ち良いピッチ。
 ただ、クラックが消えた後、スラブの1ポイントが悪い。ここはA0。さらに延ばしてテラスに出る。
 ここから先ほどのおむすぶ岩が見え、後続パーティーが続々と登ってきているのが見えた。
 少し離れた右隣のリッジはここより簡単らしいが、バリエーションながら凄い行列で、さながら丹沢の表尾根のようだ。

  高度感あるピッチ
 
 7P目 20m 5.7
 フェース。特に問題無し。

 
 
 8P目 10m Ⅲ
 易しいフェース。問題無し。
 ここでアプローチシューズに履き替え、後は簡単なスラブをペタペタと歩き、昨日と同じ仁寿峰着。二度目の登頂。

 左が萬景台800m、右が白雲台837m。
 
 頂上では、やはり別パーティーでジョンの知合いがいた。
 こちらの山岳雑誌の編集長?らしく、韓国山岳界では有名な人らしい。
 既にセブンサミットのうち6つは登っているが、エベレストだけは運が無く三回失敗。最近はやはり登れなかったが、グランドジョラスへ行ってきたそうだ。
 ちなみにジョンはこちらの山岳雑誌ではクライミングにおける安全策について連載を持っているとか。
 インスリッジは、途中ギャップがあったり、歩きのパートも多いので、昨日のシュイナードに較べると体力勝負だ。

 正確なタイムは計ってないが、ジョンは「ウン、早イヨ。」と言ってくれた。
 しばらく休んだ後、また南面のスラブを懸垂2ピッチで下って、白雲(ペグン)山荘へ。
 ここで昼食。多くのハイカーで賑わっている。

 
 
 以前はここで手作りの料理が食べられ、宿泊もできたが、今は基本的にそれらのサービスはやっていないとのこと。
 90年ほどの歴史ある山小屋らしいが、今、韓国全土の山小屋が国営化され管理が進む中で、ここだけが昔ながらの個人営業であり、ちょっとした問題になっているらしい。
 もちろん多くの登山愛好者は国営化に反対で、従来のままの山小屋を続けてほしいと願っている。
 日本でも、もし廻り目平が国の管理下に置かれ焚火一切禁止となったら、多くのクライマー、ハイカーは反対するだろう。
 
 とりあえず今日は御主人の姿は見えず、奥さん一人が切盛りしている。
 ビーフンのカップ麺、それにキムチと山菜の炒め物、豆腐がさっぱりして美味しかった。馴染みのジョンの連れということでコーヒーもいただいて感謝!

 
 
 後半は、マンギョンデー(萬景台)リッジ
 景色が良く、グレードとしては簡単。こちらの人はクライミングシューズなど履かず、アプローチシューズで登ってしまうそうだ。
 それでもリッジコースは初心者がチャレンジ精神で踏み込み、事故が多いそうで、現在はルートの前後に登山者をチェックする係員がいるようだ。
 
 萬景台からは、白雲台、仁寿峰が綺麗に並んで見え、登山や観光のポスターにもよく使われる風景とのこと。
 この三つの岩峰をメインとして狭義の北漢山(ブカンサン)と呼び、さらに離れた道峰山(ドポンサン)も含めて「北漢山国立公園」となっている。

 左が白雲台(ペグンデ)、右が仁寿峰(インスボン)

 
 
 マンギョンデーリッジは本来は下から登るのだが、今回はインスリッジからの継続なので下降となる。
 最高グレード5.6ということだが、スラブのクライムダウンあり、小ギャップの飛び移りありと、アプローチシューズではけっこう冷や汗かく場面もあった。
 元気なオバアちゃんも登っているとは言え、やはりロープなどの装備や技術は必要。
 多くの人が登っているが、目印があるわけではなく、初見ではルートファインディングも難しいと思う。

 

 

 スケールは剱岳に及ばないものの、例えるなら前半のインスリッジは剱尾根、後半のマンギョンデーリッジは八ツ峰といったところか。
 最高の天気に恵まれ、二日間のインスボンを堪能。
 今回はルートガイドだけでなく、あらゆる所でジョンから「使えるガイドテクニック」も教わった。
 自分も年々ボケてきているので、少しでもそれらを活かしたい。
 
 恵化に戻り、ジョンと別れる。あさってからは約一か月ヨセミテでガイドの仕事があるそうだ。カムサムニダ(ありがとう)!
 宿に戻り、シャワーを浴びてから近くの食堂で夕食。今日は牛鍋(480円)。
 旨そうに見えたが、ちょっと微妙。やはり韓国の肉は豚が良い。
 ビールを飲んで就寝。今日はけっこう歩いた。さすがに足が筋肉痛だ。

 
(左)恵化(ヘファ)の周辺は大学が多く、学生の街でもある。(右)ちょっとビミョーな味だった牛鍋。

2017韓国の山旅 #1-インスボン・クラシック

2017年09月15日 | 海外
9/15 天候:
行程:インスボン・シュイナードB(5.8、6P)~インスAルート(5.8 4P)~インスボン(仁寿峰)
同行:Jeon Yonghak(ジョン・ヨンハク 韓国マウンテンガイド協会)
 
 朝6時起床。
 昨夜は緊張して寝付けないかと思ったら、仕事で疲れているのかよく眠れた。

 宿を出てすぐの所に「CU」というコンビニがあり、ここでカップ麺の朝食を摂り、昼の行動食やミネラルウォーターを購入。
 少々勝手がわからず戸惑っていると、ここでも店員が親切にいろいろ教えてくれた。
 それにしても、こちらはジュースやパンを買うだけで財布から千単位で札が飛んでいくので最初のうちはドキッとする。
 韓国の通貨ウォンは大体、日本円の1/10弱の価値。その感覚に慣れるまで貧乏性の自分は少し時間がかかった。

 約束の朝7時半。ガイドのジョンが4WDで迎えに来る。
 もちろん自分より若いが、それでも50歳ぐらいか。見た目は若々しく、何となく往年の西城秀樹風。
 「Nice to meet you.」挨拶を交わし、早速インスボンへ。

 ジョンは流暢ではないが日本語を話せるため、今回は非常に楽である。
 アポを取ってから今日までのやり取りはLINEでしてきたし、何とも手際が良い。
 車の中でいろいろ話をする。(もちろん日本語)
 日本のガイドH瀬さんとも仲が良く、ヨセミテやシャモニーはよく行く。高所ではパキスタン・フンザの六千m級の山で新ルートを登ったこともあるそうだ。

 渋滞する市街を抜け郊外へ。街中からもインスボンの特異な姿が見え始める。
 やがて幹線道路を西に折れ、山へのアプローチに入る。何となく道の雰囲気が湯河原幕岩へ向かう時と似た感じだ。
 本日は平日のため大丈夫だったが、休日ともなると登山口となる上の駐車場は一杯となり、下からタクシーでピストン輸送となるらしい。


 
北漢山(ブカンサン)登山口。インスボンの取付きまでは小1時間ぐらいか。

 登山口で用意を整え、さっそく登り始める。
 よく整備された石段の山道で、ここらの雰囲気は鳳来と似ている。
 30分ほど登り詰めると、レスキューが常駐する森の中のキャンプ地に到着。
 そこからさらに細い踏み跡のような道をクネクネと上がっていく。
 登山口から登り始めて小一時間ぐらいか。眼前に真っ白い剥き出しの岩山がドォーンと現れる。


 
 おーっ!これがインスボンか。 
 
 元々標高が低い山なのでここまで上がると頂上まで近いようにも見えてしまうが、その反面、上部の立ったクラックは遥か上のようにも見える。
 空気が澄んでいるせいか、距離感が掴めない。
 正面の大スラブから登り始めるパーティーもいるらしいが、ジョンはセオリーどおりスラブの裾を右へ回り込んで少し上がった正規の取付きまで行く。

 

 
 いよいよ、ここから「シュイナードB」のスタート。今回はガイド登山なので、リードは基本的に全てジョンである。
 
シュイナードB
(以下、グレードは現地グレード。ランナウトするスラブやナチュプロに慣れていないと、このグレードはあまりにも厳しいので御用心!)
 1P目 35m 5.7
 出だしは大きな弓型フレーク、いや鎌形フレークというべきか。
 下から見ると何とも緩い傾斜に見えて楽勝と思えるが、取付いてみると意外と傾斜があったりする。 
 ただフリクションはバチ利き。瑞牆の花崗岩をもっと目を粗くした感じでソールが吸い付くようである。
 左手でフレークの上を押さえ右手でクラックをアンダークリング。足はスメアで上がっていく。
 最後は1ポイント、細かいスラブを登ってピッチを切る。

 

 2P目 40m 5.8
 トポではこのルートの核心。細いフレーク状のクラックを斜上。
 とにかくスメアを信じることが大事。

 
 
 3P目 25m 5.7
 クラックをトラバースして、右側のカンテ状フレークに移る。
 一段クライムダウン気味にトラバースするところが次のスタンスが遠くてちょっと怖い。
 ネットで他の記録を検索したら、ここで敗退した白人パーティーもいたとか。
 カンテに移れば安心。
 上のビレイポイントに着いた所で油断したのか、ここで自分のビレイ器を落としてしまう。
 また天気は良いが、この辺りから風が強くなってきた。

 

 4P~5P目 40m 5.7
 左から岩が覆い被さってくるようなハーフパイプ状のチムニー。
 立体的なクライミングでアルパイン的。途中に抜けなくなった残置カムあり。
 トポでは途中20mで洞窟テラスというのがあり、そこでピッチを切るようにもなっているが、あまり覚えていないのでそのまま5ピッチ目も繋げたように思う。
 上部はWクラック。肩幅ぐらいで二本のクラックが並行して上に延びている。
 これはクロスで持つのか、それともガストン?
 ただクラックといってもジャミングを効かせるわけではなく、自分は掛かりの良い右側のクラックをフレークのようにしてレイバック風に登った。

  ハーフパイプ状チムニー

  Wクラック

 6P目 40m 5.7
 チムニー~クラック。あまりよく覚えていない。
 耳岩と呼ばれる顕著な岩塔の裾を左に上がって、まずはシュイナードBを終了。

 ここから懸垂下降で少し下り、さらにもう一本という所で私はまたしてもビレイ器を落としてしまう。今度はジョンから借りたヤツだ。
 あぁ、まったくなんてドジなんだ。情けない。
 自分が不器用なのが原因だが、あえて言い訳をさせてもらうと回転防止付きのカラビナはギアを付け外しする場面が多いマルチにはどうにも使いにくい。日々是勉強である。

 幸い、ジョンのビレイ器は下のオアシステラスで見つかった。ホッ!
 ここで昼食を兼ねて小休止。
 午後はインスAを登ることになった。

インスA(仁寿Aルート)
 1P目 40m 5.6
 広いクラック。クラックといっても中に入り込んでしまうと身動きとれない。
 上部は外に出てクラックを跨いでイグアナのように登る。

 

 2P 30m 5.8
 狭いチムニーというかジェードル。
 クラックはジャミングが効かず、足はスラブなので自然とバック&フットの登りとなる。
 ズリズリと上がるが、目の粗い岩質なので後で見たらザックの表面が擦り切れていた。恐るべし、インスボン!



 3P目 30m 5.7
 広いチムニー。ここもズリズリと登る。
 現地グレードでは5.7~8ということだが、下のピッチと併せてここもカムをセットしながらリードしたくないなぁ。

 4P目 30m 5.6
 チムニーから抜け出し、ホッとする。大きなV字の底のようなテラスに出る。
 背後にソウルの高層住宅街が米粒のように見える。
 インスAはこれで終了。

 それにしても、やはり韓国の山インスボン。グレードの割にはキムチのように辛い!
 小川山や瑞牆でスラブやNPに精通していればいざ知らず、ふだん短い間隔でボルトが整備されたショートルートしか登っていない11台前半くらいのクライマーが「10aもないんでしょ。」と甘い気持ちで取付くと、きっと涙目になるに違いない
。いや、ホントに。



 

 さらに2ピッチ、磨かれた掛かりの浅いクラックと、「狸の腹」と呼ばれる短いスラブを登ってインスボンの頂上へ。
 「狸の腹」はチッピングされているものの、多くの人が登っているのでスラブが磨かれている。
 途中支点もないので「ココガ、ケッコウ怖イデスネ~。」とジョンは笑っていた。

  クリックして拡大。がシュイナードB、がインスA。オレンジが翌日登るインスリッジ。

 インスボン頂上(810m)は遮るもののない絶景。
 谷を隔ててすぐの所にはこの辺り、北漢山(プカンサン)山域の最高峰「白雲台(ペグンデ)837m」が聳え、韓国国旗の立つ頂上は多くの登山者で賑わっている。 
 目を転じれば、ソウル中心部の町並みが細かいレゴブロックのように視界一杯に広がる。
 ソウルタワー、ロッテタワー、そして市街を南北に分ける大きな川「漢江」。北の方には道峰山(ドポンサン)も。
 ジョンが言うにはこんな素晴らしい青空の日はそうそう無く、今回来た私はとてもラッキーとのこと。

 インスボン(仁寿峰)頂上 810mより

 

 ゆっくり休んだ後、下降開始。
 ペグンデ側に向かってスラブをトラバース気味に進み、チェーンの繋がった部分を経由して懸垂ポイントへ。
 ここは南面のピディルギーキル(鳩ルート)とも重なり、懸垂支点がたくさんあるが、ジョンは上から見て左から2本目の支点がお薦めとのこと。
 ちなみにピディルギーキルはインスボンへ登るには一番簡単なルート(4P、5.7、A0)らしいが、見たところ全面ランナウト気味のスラブでそれほど簡単とも思えない。

 
南面の下降ルート(左)、インスボン東面を振り返る(右)

 帰りはシュイナードBの取付きまで戻り、自分の落としたビレイ器を探してみたが、結局見つからず。
 もう何年も使ったから、まぁいいか。
 朝登ってきた登山道を伝って、そのまま下山。

 ソウルの秋は東京より陽が長いのか、下山してもまだ明るい。
 三日目はジョンに別件があり、自分は一人でここから少し離れた道峰山へ行くつもりなのでそのことを話すと、今日のうちに道峰山の登山口まで車で案内してくれた。
 ここは有数の登山ショップ通りとなっていて、海外有名ブランドから国内バッタ物?まで幅広く登山用品店が並んでいる。
 安いウェアなら500~1,000円。日本では安売りしない有名メーカーの物でも常時3割引きといった感じだ。
 日本のH瀬ガイドの連れてくるおばちゃんクライマーたちは、インスボンで一本登るとクライミングもそこそこにショッピングに夢中になる、とジョンは笑っていた。
 とりあえず、ここでの買物はあさってじっくりするとしよう。

 
明るい雰囲気の道峰山登山用品店通り(左)と、問屋町風の東大門登山用品店街(右)

 帰りはジョンが宿まで車で送ってくれるが、明日のためにビレイ器を買っておこうと東大門(トンデムン)へ行ってもらう。
 東大門も有名な登山用品店街だが、実際には東大門の一つ隣「チョンオーガ」駅周辺にそれはある。
 道峰山と東大門の登山用品店街を簡単に説明すると、
 前者はウェア中心、通りの雰囲気はシャモニーかカナダのバンフ風。後者はギア中心、雰囲気はアメ横風といったところか。

 ジョンの先輩が社長を務める小さな店を紹介され、ここでグリベルのビレイ器とオーツンのクラック・グローブを購入。さらに別の店でグリベルのツインゲート・カラビナを追加。
 後で検索してみたらグリベルのビレイ器MasterProが日本4,320円→韓国2,850円、オーツンのグローブが日本で約6,700円→韓国3,750円(※韓国はお友だちプライスだけど)。ちなみにジョンはグリベルがスポンサーに付いているらしい。(ビレイ器はDMMのピボットを一押ししてたが。)

 道具好きの自分はジョンと別れた後もついつい登山用具店をフラフラ覗いてしまい、気が付くと外は真っ暗。
 またしても道に迷い、そのたびに優しいコリアンの人たちに助けられて、何とか歩いて宿にたどり着く。

 
宿への帰り道、怪しげなスポットに迷い込む(左)。韓国と言えば焼肉でしょう。(右)
 
 この日の夕食は近くの食堂で一人焼肉。
 ビール一本つけて約1,000円。日本よりは安いかな。キムチとかナスの甘辛炒めとかお代わり自由だし。
 けっこう疲れて、この日も爆睡。

動画はこちら

 6:57

2017韓国の山旅 #0-出発

2017年09月14日 | 海外
日程:9月14日(木)夕~18日(祝)、実質3日間
9/14 天候:
行程:横浜-成田空港-仁川(インチョン)国際空港-恵化(ヘファ)-Windroad Guesthouse
 
 当初の予定では今年の夏はアメリカへ行くはずだった。
 山ではない。ハーレーに乗ってアリゾナやモニュメントバレーを走りたい!・・・いまだに「イージーライダー」の幻影を追い続けているオヤジはそんな妄想を抱いていた。
 しかしながら、仕事の関係で早くも春には挫折。
 とてもじゃないが一週間も休みを取ることなどできず、それならばと思いついたのが近場のアジアである。
 
 それにしてもアジアは手軽だ。今回、航空券を取ったのが出発の三週間前。
 ネットで格安宿と現地ガイドにもアポを取り、あっという間に準備は整った。
 場所が変われば目標も変わる。バイクの旅は見送り、結局、今回もメインは山。目指すは東洋のヨセミテ「インスボン」である。

 
夕暮れの成田空港(左)。今回使ったのはLCCのJinAir、成田-仁川(インチョン)往復で28,000円(諸々込) 
 
 木曜昼から休みをもらって、成田発17時55分のフライト。
 LCCのジンエアー・ボーイング737は2時間ちょっとで仁川国際空港へ着いてしまった。早い!
 
 韓国は二度目。
 10年ほど前、観光で済州島(チェジュ)に行ったが、もちろんハングル語は「アンニョンハセヨ」ぐらいしかわからない。
 まぁいつものようにテキトー英語で何とかなるだろう。
 
 20時過ぎ、仁川(インチョン)国際空港着。 
 入国手続きは悠長にやっているアメリカなどに較べるといたってスムーズ。
 
 
韓国の最新アイドル「BLACKPINK」がお出迎え(左)。空港鉄道の券売機。日本語対応で、わかりやすい。カードチケットは後で返金あり。
 
 そのまま空港鉄道に乗って、ソウルへ。
 鉄道はハングルや英語に加えて日本語表記やアナウンスがあり、わかりやすい。
 また、回りも当然日本人と同じ顔なので、違和感が緊張感がまるでない。
 ソウル駅から地下鉄への乗換も問題なく、空港から1時間弱で宿の最寄駅である「恵化(ヘファ)」に降り立った。
 
 で、ここからである。さすがに初めて来た異国の町(しかも夜!)では右も左もわからない。
 一応、タブレットにオフラインで使える現地地図をダウンロードしてきたので、それを見ながら適当に歩き始めるが、イマイチはっきりしない。
 うーん、しかたない。誰かに訊ねてみるか。
 
 交差点で女子大生風の三人組がいたので、英語で話しかけてみる。
 すると親切にも自分たちのスマホを取り出し、調べてくれた。宿までの道を確認すると何と「一緒に行くから。」と親切に案内してくれた。
 これには感激。ヨン様ブームが去り、近頃はまた過去の問題で日韓関係がギクシャクしているように思えたが、幸先良いスタートである。

 
親切な韓国女子(左)。ちょっと怪しげなウィンドロード・ゲストハウス(右)
 
 とりあえず今回の宿に到着。"Windroad Guesthouse"
 ネットで検索し最安値だったのだが、ドミトリーで一泊9,000ウォン(日本円にして約860円。以下、金額は日本円換算とする。)
 賑やかな通りのはずれにあり、外観からしていかにもといった風情の典型的バックパッカー宿である。
 オーナーはロシア人?のようで、他に男のスタッフが二人。
 うち一人は「ガン」という名の韓国系。見るからにヤンチャな兄ちゃん風で最初はちょっとアブない奴に見えたが、この男もまた実にフレンドリーで、いいヤツだった。

 
ウィンドロード・ゲストハウス。結局、ドミトリーで三泊して合計約2,000円(笑)
 
 そんなわけで慌ただしい半日が過ぎ、今、日常から離れたところにいる自分が不思議な感じだ。 
 明日からは二日間、現地ガイドとクライミング。朝は早い。
 サブザックにクライミング用具を詰め直すと、あてがわれた二段ベッドで眠りについた。

2016年ボリビアの旅-結果報告

2016年08月08日 | 海外
 既にFacebookでは報告していますが8/6夜、無事羽田へ帰国いたしました。
 
 連日スケジュール、環境ともそれなりにハードでしたが、得るものも大きかったです。
 成果としては、
 
 

 
・ウユニ塩湖
(乾季なのに、まさかの鏡張り!)
 
 
・コンドリリ山群

 ピコ・アウストリア(Pico Austria 5,328m)登頂
 ピラミデ・ブランカ(Piramide Blanca 5,230m)登頂
 タリハ(Tarija 5,255m)-ペケーニョ・アルパマヨ(Pequeno Alpamayo 5,370m)登頂
 
  
ワイナポトシ(Huayna Potosi 6,088m)登頂
 
・向こうで知り合った友人
 日本、台湾、韓国、ボリビア、ドイツ、アンドラ、スペイン人など。(うち女子が多数
 

 記録は出発日の7/21から順次upしています。 下へスクロールするか、右のカレンダーからクリックしてください。)
 自分のための備忘録ですが、お時間ある時に興味のある方は読んでいただければ幸いです。m(_ _)m

2016ボリビアの旅 #15-旅はなかなか終わらない!?

2016年08月06日 | 海外
Day15~ 2016.8.4-6
ラパス19:10-サンタ・クルーズ(ボリビア)21:00~22:00-マイアミ5:00~14:20(8/5)-L.A16:30~18:30-羽田22:30(8/6)
 
 朝3時に頼んでおいた迎えのタクシーが来て、エル・アルト国際空港へ。
 
 さぁ、これからまた日本までの長旅だ。と思ったら、いきなりのハプニング!
 何とアメリカン・エアラインズが遅延とのこと。
 急遽、向こうの全額負担でラパスの最高級五つ星ホテル「Casa Grande」のスイート・ルームで午後2時半まで待機することに。
 
 中に入ってビックリ!
 ベッドは大人3人が寝れそうなキングサイズ。足が十分伸ばせるバスタブがあり、さっそく熱々のお湯を張って二週間の汗と埃を洗い流す。
 もちろん、朝食&ランチ付き。
 ネットで調べてみたら16,000円/泊~となっていたが、これまで泊まっていたアウストリアがドミトリー600円/泊、シングル・プレミアムで1,200円/泊。
 まさにそれまでの貧しい庶民が一夜明けたらリッチマンになったようで、漫画「カイジ」を地で行くよう。
 人生・大どんでん返しで、夢でも見ているような気分だった。

 
 
 おそらくこちらの物価から換算すると日本だったら間違いなく一泊3~5万円はするような部屋で、もしかすると自分の生涯で泊まったホテルの中で一番ゴージャスだったかも?
 往きの飛行機も向こうの手違いで、ただのエコノミーがプレミアム・シートになったし、何だか今回の旅は中身は疲れたが、その分初めと終わりが実にラッキーだ。
 
 結局、風呂には二回入り、朝食のデザートのケーキも食べれるだけ食べて、フカフカのベッドで午後まで爆睡。
 再びエル・アルト空港へ出向き、ようやく帰りの便となる。
 最後にちょっとした自分の勘違いで息子へのお土産のシンガニ没収という憂き目に遭ったが、まぁ身体も元気、大きなトラブルもなく、旅全体としてはノー・プロブレムだ。
 
 その後、長い空とトランジットの旅が続く。
 サンタ・クルーズ~マイアミ間は痛み出した歯のせいで、ほとんど眠れず。
 虫歯なのか、気圧と疲れのせいなのか、辛い。
 
 マイアミには翌日未明に到着。
 次の便までのトランジットが半日以上あるので、航空会社から空港内の全てのレストランで使える朝食券を渡される。
 完全に野菜不足なのでサラダとケーキを頼むが、どちらもアメリカン・サイズでサラダだけで腹一杯。
 しかし、この空港ビル内にもコーヒー・ショップは沢山あるが、なぜかスタバだけ行列ができている。
 スタバだけがそんなに特別に旨いとは思えないのだが。

 
 
 マイアミでの待ち時間の間は、それまでの歯の痛みによる寝不足のため死んだように眠る。
 旅も終わり気が抜けたのか、起きた後も何だかフラフラするので、頼みの綱のレッドブルを購入。
 何とレギュラー缶(250ml)で約500円もするのには驚いたが、おかげでようやくシャキッと回復してきた。
 ケニアの時もそうだったが、身体が弱っている時はやはりレッドブルとカップ麺が頼りになる。

 
 
 次のトランジットであるLAでは、手続きの行列の中でNBA選手風の黒人二人組としばらく一緒になる。
 間近で見ると、とにかく身体のサイズがパーツごとに馬鹿デカく、とても同じ人類とは思えない。
 まぁ彼らにしてみれば、日本人がなぜこんなに小動物なんだろうと不思議に思っているだろうが。
 
 空港でしか見ていないが、やはり同じアメリカでもLAとマイアミでは随分雰囲気が違う。
 やはりLAは行きかう人たちもスタイリッシュというか、都会っぽい。
 次の旅はやっぱアメリカかな。ルート66をハーレーで走りたい。早くもそんな妄想を描いている。
 
 最後のLA-羽田間はJALの便。
 機内食も次第に日本風になってきて、いよいよ帰ってきたなという感を強くする。

 

 映画は日本でも現在上映中の韓国映画「ヒマラヤ-地上8,000mの絆」とアメリカ映画の「アロハ」という作品を観る。
 前者の方はうーん、映画館でお金出さないで見れて良かったといった感じ。☆★
 後者の方はハワイの雰囲気は良かったが、主人公の旦那がモテ過ぎでしょ、といった印象。☆☆

 
 
 で、ようやくネットリと暑い日本に到着。
 空気の濃さを改めて実感して、旅は終わった。

2016ボリビアの旅 #14-ラパス最終日

2016年08月03日 | 海外
Day14 2016.8.3
 
 今日でボリビアも実質、最終日。
 ワイナポトシの夜行登山で生活がすっかり昼夜逆転してしまったため、夜は目が冴えてしまい、午前中いっぱいホテルの部屋で眠る。
 
 午後から土産の最後の買い出し。
 息子から頼まれ、現地の酒"Singani"(シンガニ)を買いたいが、スーパー・マーケットがなかなか見つからない。
 しかたなく昨日アルパカのセーターを買った店へ行き、英語の通じる看板娘に聞くと、サン・フランシスコ寺院横のメルカドにあると言う。
 なんだ、メルカドとはマーケットのことだったのか。
 
 しかし、このメルカドはいつの曜日、時間帯に行っても全体の半分以上の店がシャッターを閉めている。
 だが、よく歩いてみると確かにリカー・ショップがあり、ここでシンガニ黒ラベルsmallボトルを2本購入。
 アルパカのセーター、その他諸々も買ったし、後はクレープ屋に入って記録の整理やメール・チェックなどしてのんびり過ごす。

 
ラパスの街とも今日でお別れ
 
サルティーニャはパイの中に肉、ゆで卵、野菜が入っている。安くて旨い。ボリビアに自販機は無く、ドリンクは店頭に並んでいる。
 
 そういえばサガルナガ通りをブラブラしていると、またカワレツ夫妻とバッタリ。
 実はワイナポトシのBCで別れてから、昨日の夕方もラパスの街中で顔を合わしていたので、お互いに笑ってしまう。
 いやはや世界、いやボリビアは狭いっ!
 彼らも今日がボリビア最後の日になるそうだ。
 今度こそ最後になるだろうと固い握手を交わす。
 「Have a nice flight !」
 
 夕方、ホテルに戻り、ロビーで休んでいると日本人ぽい青年がいたので声を掛けてみると、やはりハポネ(日本人)で長崎の学生とのこと。
 カナダのトロントへワーキング・ホリデイで行って、今回は休暇でペルーやボリビアを旅していると言う。
 
 しかし、ペルーでは楽しみにしていたマチュピチュがバスのストライキでアプローチできず、ボリビアのラパスに来た途端、高度の影響で体調を崩してしまったとか。
 それでもウユニ塩湖は行きたいというので、お節介ながら自分の使ったエージェントとかツアーの内容など伝えておいた。さらに余った胃腸薬やホッカイロも渡す。
 かなり辛そうな様子で、もう一つの候補地であったメキシコのカンクンにでも行けば良かったと少し後悔しているようだったが、まぁ頑張れ、若者!
 確かに自分も今回の南米の旅はキツかったと思う。
 
 明日の便は朝早いので、午前3時にはタクシーでここを発たなければならない。
 これまで我慢してきたが、最後ぐらいいいだろうと350mlレギュラー缶のビール、あとは近くの「メガ・バーガー」をテイクアウトして夕食とする。
 メガバーガーは320円ほどでバーガーもポテトも食べ切れない量。味は日本のマックより旨いと思った。
 
 しかしビールは失敗。
 味は普通に旨かったが、やはりここは3,600mの高地。
 一気に飲んだら途端に心臓がドキドキして寝付けなくなってしまった。
 いくら6,000mまで高度を上げても、日本人だとなかなか高度に順応しないものだと改めて思い知る。

ラパスで買った土産あれこれ
 
アルパカの帽子、同じくセーター、カーディガン

 
小銭入れ。怪しいビン細工

 
地元の酒シンガニ(残念ながら後で没収)。南米柄のテーブルクロス 

2016ボリビアの旅 #13-ワイナポトシ登頂

2016年08月02日 | 海外
Day13 2016.8.2
起床0:30-朝食1:00-HC(5.100m)1:30-頂上6:00~20-HC8:30~9:00-BC10:20-ラパス
 
 結局、昨夜はほとんど眠れなかった。
 朝食のテーブルについたカワレツ夫妻に聞いてみると、同様とのこと。
 やはり皆、高山病というよりそれなりの緊張で寝付けなかったようだ。
 
 睡眠不足だが、幸い頭痛や倦怠感、気分の悪さといった高山病の症状は無い。
 ガイドのエドに「気分は?」と聞かれたので「Not sleep, but fine.」と答えておいた。
 
 ワイナポトシはコンドリリ山群より高さもあり寒いというので、今日はありったけのウェアを着込んで行く。
 デジカメのバッテリーも冷えると消耗が激しいので、今日はウェア内側のポケットにホッカイロを貼り、寒さからガードするようにした。
 またチューブ式のビニール水筒は凍ってしまって役に立たないので、テルモスとペットボトルにHotポカリを用意する。
 
 簡単な朝食を済ませ、各パーティー順次スタート。
 自分も用意ができたので、アレックスに声を掛ける。
 
 「Alex. I go !」
 「Ok. See you summit !」
 「Yeah!」
 パーン!とハイタッチを交わす。
 おぉ、なんかカッコよくないか。外国人って、こういう時のノリの良さというか、テンションの上げ方がさりげなく上手い。
 思わず「トップガン」のテーマが頭の中に浮かぶ。
 
 ヘッデンを点け、まずは小屋の先にある岩場を200mほど上がる。
 その先からはいよいよ本格的な雪と氷の世界となり、ここでアイゼンを着けロープを結ぶ。
 P・アルパマヨの時もそうだったが、ここでも私とエドの組が一番先に準備を済ます。
 日本の山屋はこういうのはチャッチャと済ませろと教え込まれるからね。

 

 そして再び出発。
 空は満天の星空だが、真っ暗闇でどこをどう歩いているのかわからない。
 ただヘッデンの光を頼りにエドの後をついていくだけだ。
 なるべく彼のスピードに合わせ、もちろん向こうも馴れない日本人のことを思ってゆっくり歩いてくれているのだろうが、傾斜が少しでもキツくなると途端に呼吸が一杯になってしまう。
 幸い今日は風も無く、気温もそれほど低くない。条件は最高に味方してくれている。
 
 やがて左手にオレンジ色のラパスの夜景が見えるようになってくる。
 
 5,600m付近で最初の難関が現れる。
 多くのパーティーによりステップが刻まれているので壁というほどではないが、傾斜がキツい段差が20m(?)ほどあり、ここでつまづくパーティーも多い。
 ハァハァゼィゼィ息を切らしながら、ここをクリア。 
 これを過ぎるとまたしばらく傾斜は緩くなるが、その分高度も上がってきているので呼吸は苦しい。
 エドには「ゆっくり頼む」と言ってあるが、こちらが何とかついて行くと次第に彼の本来のペースになってしまう。
 
 アイゼンを履いたスタート地点では我々が一番手だったが、その後、ガイドレスのスペイン・チーム、そしてヒゲのペルー・チームに抜かれる。
 スペイン組は強力でバカみたいに速く、トレース無視でとんでもない斜面を独走しているのがヘッデンの明かりでわかる。
 一方、ペルー組は一人がバテたようで途中でヘタり込んでしまった。
 
 そして最後の急登となる。
 コンドリリ山群と同じようにアンデス特有の例のトゲトゲした氷の急斜面となり、とても登りにくい。
 ワイナポトシについてはもっと簡単な雪稜のイメージを勝手に持っていたが、少なくとも今の時期、上部はアルパイン・クライミングの世界で、それなりのアイゼン・テクニックを要する。
 振り返ると、続々と後続パーティーが追ってきている。
 
 あと、どれくらいこの登りが続くのか。プロトレックの高度計は5,900mを表示している。  
 さっさと片づけてしまいたい気持ちもあるが、まだ太陽が上がっていないので暗いうちに登頂しても面白くない。
 エドはどうせ下山時には明るくなるので回りの景色はその時見せればいいと思っているようだが・・・。

 
 
 そのうち先行するスペイン組と遭遇。
 さすがに飛ばし過ぎてバテたのかと思ったら、もう登ってきて下山中とのこと。早いっ!
 それにしても、彼らには山頂からの景色を見るとか写真を撮るという興味はないのか。
 コンドリリ山群のアウストリアの山頂では随分のんびりしていたくせに。
今思うと、あれは彼らの高度順化だったのかもしれない。
 
 擦れ違いざま、スペイン組の一人が私の脚をポンポンと叩き、「バモス!(行け!)」とハッパをかける。
 アイゼンの爪がろくに刺さらないガリガリの氷の斜面を登っていくと、突然前を行くエドが立ち止まり、振り返って手を差し出す。
 エッ、何?

 すると、ここが頂上だと言う。えっ、そうなの?何だか最後は嬉しいとか達成感というより、拍子抜けな感じだった。





 頂上は非常に狭く、一番高い所に四人がせいぜいといったところだ。
 山頂というよりは薄いアイスリッジの一角で、無暗に動きがとれない。ガチガチの堅い氷で、ザックなどその辺に下ろそうものなら、すぐに1,000mも滑り落ちていきそうだ。
 自分らの後にアレックスの組が到着。おぉ、やっぱ強いな!登山は素人同然と言っていたが、さすが21歳の若さだ。
 
 「You did it ! And me too !」そう叫びながら手を上げてきたので、再びハイタッチ。そしてお互いの肩を抱く。

 
 
 山頂ではようやく東の空が明るくなってきたところ。
 写真を撮りまくり、ガイドも撮ってくれるが、とにかく山頂が狭く身動きがとれないのでポーズやアングルを決めることができない。
 
 続いてペルー組、さらに昨日見かけなかったのでおそらくBCから一気に来たと思われる男女ペアが到着するが、それぞれ一人ずつが相当参っている。
 何とか山頂にたどり着いたが、その場にヘタリ込んで目も虚ろである。

 あまり自分たちで頂上を独占しても悪いので、いいところで下山開始。
 明るくなって気付いたが、頂上直下はガチガチにコンクリート化した氷の滑り台。・・・ここを下るのか。
 おそらく時期や積雪の具合によってだいぶ状況は違ってくるのだろうが、いくらガイドにロープで確保されていても、ここはちょっと恐怖を感じた。
 
 アイゼンの歯をガンガン蹴り込んで慎重にクリア。さらにトゲトゲの氷の斜面、そして緩やかな雪の斜面に着いて、ようやく少しホッとする。
 そして朝陽が昇ってくる。今日も綺麗に雲海が広がる。
 乾季とはいえ、本当に今回の山は天候に恵まれた。毎日がほぼ快晴無風だ。


 
 下山中、カワレツ夫妻とは擦れ違わなかったので、おそらく途中でリタイアしてしまったのだろう。
 ワイナポトシは一般的に登頂率50%、天候が安定した時期なら70%は登れるとペドロは言っていたが、天候が安定していても数10%は登れないのが事実。
 日中になるとクレバスが開いてしまうためガイドもタイム・リミットを設けているようで、「最も簡単に登れる六千m」と言われながらもけっこう厳しいものを感じた。
 
 デポしていたザックやシュラフを回収するためHCに立ち寄ると、昨日BCを飛ばして一気にHCまで上がってきたドイツ人のワクチンくんがいた。(名前がポリオなので、私は勝手にワクチンくんと呼んでいた。
 
 彼は今朝、夜半に起きた時点で頭痛がひどく、リタイアしたとのこと。
 やはり一泊二日は二泊三日の行程に較べて料金は安いが、高度順化という点で少し無理があると思う。
 
 通常はここHCから自分の装備をフルに担いでBCへ下山するのだが、私の頼んだエージェントでは、ここでもポーターが持ってくれる。
 何だか大名登山でスミマセン!

 結局、HC~頂上までは4時間半。
 現地ガイドブックで標準5時間半、ネットで他の日本人の記録を見ると6~7時間が普通なので、このタイムはキツかった!
 うーむ、エドめ!
 
 HC~BC間は雪もなく、まぁ安全なトレッキング・コースなので、ようやくエドのペースから解放され一人ゆっくり行く。
 ていうか最後は気が抜けたのか、軽荷なのにもうヨレヨレ。アドレナリンが切れたのか、高度の影響と疲れは少し時間を置いてからガクンとやってくる。
 しかし、昨年は謎の膝痛で、一時は山はおろか日常生活でも支障をきたしていたのに、よくぞここまで復活したものだ。
 自分の足ながら誉めてやりたい。

 
 
 BCに着くとカワレツ夫妻と再会。「Ohー!」と言って握手を交わす。
 聞くと、やはりあの標高5,600mの段差の所で奥さんの方がギブアップし、結局二人してリタイアしてしまったそうだ。
 私とアレックスは登頂できたと言うと「やはりあなたたちはスゴイよ。」と自分の身内のように喜んでくれた。
 Mr&Mrs.Kawaletz、頂上まで一緒に行けなかったのは残念だけど、でもあなたたちのチャレンジはきっと二人の素晴らしい思い出になったんじゃないかな。
 彼らも悔しいというより、むしろ清々しい顔をしていたように思う。
 
 ラパスまでは例のスペイン・ペアも一緒に乗せてエドの4WDで帰る。
 エドは誠実で人柄もいいのだが、英語があまり話せず、スペイン人が一緒だと自分の客そっちのけで自分たちの話に没頭してしまう。
 まぁこっちも疲れてるからいいんだけど、国際ガイドでエージェントの代表なんだからもう少し英語を勉強した方が良いのでは?
 その点、ペドロの方がローカル・ガイドなのに英語は堪能、サービス精神旺盛で好ましかった。
 
 そして、三日振りにホスタル・アウストリアに到着。
 因みに「地球の歩き方」にそう書いてあるのであえて「アウストリア」と表記しているが、現地に住むエドは普通に「オーストリア」と発音していた。
 
 最後の二泊は身体をゆっくり休めたいと思い、奮発してシングルのスーペリア・ルーム。
 と言っても違いは、大型TVとベッドがWサイズ、大きなクローゼットがあるだけで料金は80Bs/泊。(約1,200円)
 まぁドミトリーに較べればロビーに近い分Wi-fiの通りが良く、荷物を大きく広げられるので楽と言えば楽だが。
 
 自室で一休みした後、夕方からサガルナガ通りへ足を運んで、家族への土産などを物色。
 夜はまたホテル隣のチャイナ・レストランでお馴染みトルーチャ(鱒のフライ)炒飯とする。
 ここは中華料理店のくせになぜかスープらしき物がないので飲み物に迷っていると、店のオバさんがレモネードを勧めてくれた。
 
 で、出てきたのが明らかにこちらの水を使ったヤツで、怪しげに濁っている。
 もう山も終わったことだし、ええい、ままよと飲んでみたが、意外と美味しい。
 幸い、その後も腹を下すこともなかった。
自分もずいぶん強い大人になったものだ。

「ワイナポトシ 6,088m - 2016年の記録」 5分37秒


2016ボリビアの旅 #12-ワイナポトシHCへ

2016年08月01日 | 海外
Day12 2016.8.1
起床7:30-朝食8:00-BC(4,700m)8:30-HC(5.100m)10:50
 
 昨日は道に迷ってえらい目に遭ったが、怪我の功名というべきか、お陰で高度順化ができたようで割と良く眠れた。
 しかし、やはり夜半はどうしても呼吸が浅くなり、息苦しさで一度は目が覚めてしまう。
 それでも先日のラパスでのような死ぬような恐怖に襲われることはなく、体調はまずまず。便も良い。
 
 昨日のメンバー3人とまたテーブルを囲み朝食をとった後、HCへ向け出発。
 エージェントが違うのでしかたないが、私の荷物はポーターが持ってくれることになっているが、他のメンバーは自分持ち。何だか申し訳ない。
 それでも一番若いアレックスは元気一杯。こちらは軽荷なのに、付いていくのに精一杯だ。おそらく彼は好タイムで登頂できるだろう。
 一方、カワレツ夫妻も何だかんだで重荷を背負って、しっかり付いてくる。

 

 
 
 道すがら下山パーティーと擦れ違う。
 中南米系の若者が一人、ガイドと共に下りてきたので「You,top?」と聞いてみると、残念ながら5,700m辺りで断念したとのこと。
 さらにヨーロッパ系男女四人組が下りてきて、こちらは見事、成功したようだ。
 
 2時間ちょっとで標高5,100mのハイキャンプ(HC)に到着。
 HCは若干標高を変えて数棟あるが、我々が入るのは一番下の小屋である。
 中はBCより綺麗で、二段ベッドで収容人数も限られており、日本の山小屋より良いくらいだ。
 
 昨日もそうだったが、ここワイナポトシは独立峰のため風が強い。
 明日の鍵となるのは、風と高度と寒さだろう。あと約900mの標高差か。

 

 
 
 小屋に着いた途端、他の三人はまだ昼前だというのにシュラフの中に潜ってしまった。
 高度順化に出かけても良いが、もうこの先はアイゼンとアイス・アックスの世界だし、もう今日はゆっくり休んで体力温存した方がいいかな。
 
 ランチの後、2~3時間ほど四人でいろいろ話をする。
 アレックスは英語もスペイン語も達者だが、カワレツ夫妻の英語は日本人の私と同じぐらい。それでも話しているうちに全体の会話は成り立つもんだ。
 
 14:30頃、コンドリリ山群で会ったスペイン男性二人組、そしてドイツ人男性一人が、さらに遅れてヒゲの外国人二人組がHCに到着。
 何とも国際的な顔ぶれだが、こうなってくると会話も完全にスペイン語主体となってきて、ついていけない自分は昼寝をする。
 ちなみにスペイン組はあの後、コンドリリ主峰を登ったそうだ。やるなぁ。
 「Congratulations!」と言うと「難しさはP・アルパマヨと同じくらい。ただ少し標高が高いので、その分体力が要った。」とのこと。
 うーん、自分も登りたかったが、たぶんギリでどうなっていたかわからないな。
 
 
 
 夕食は18時。
 出発は、明日というか今夜半なので、夕食後はさすがに皆、談笑することなく、装備のチェックをしてさっさと自分のベッドに潜り込む。
 何となく大事な試合前夜のような緊迫感が小屋全体に漂っていた。