「改訂版 微積分のはなし〈下〉:大村平」変化と結果を知るテクニック
内容
直角座標・極座標・回転体の面積、球の体積、二重三重の積分、微分方程式、ラプラス変換、ラプラス逆変換、テイラー級数、マクローリン級数、偏微分、全微分、コンピュータのための微積分などを解説。
下巻では、数学III以上のレベルまで取り扱っているが、難しさは高校程度。
僕がこの下巻を読んだのは大学受験の勉強をしていた頃だ。おそらく書店で参考書を探しているときにこの本に出会ったのだと思う。最初に「微積分のはなし〈上〉〈下〉」読み、次に「関数のはなし〈上〉〈下〉」を読んだ。
特にこの「微積分のはなし〈下〉」は当時の僕にとって「革命」だった。それまでに僕が知っていた数学の世界は趣味として続けていた天文学と結びついていて、円や楕円、放物線、双曲線、サインカーブなどで表わされる「理想的」で「対称的な美しさ」をもつ関数で表わされるものばかりだったからだ。
けれども現実の自然現象はそのような美しさはなく複雑だ。物を投げれば空気抵抗のために放物線にはならないし、おもりを吊るしたバネの上下運動もやがて止まってしまう。
それまでに僕が計算できた長さや面積、体積などは直線や円弧の長さ、長方形や台形、円などの面積、直方体や球、円錐など、「単純」で「理想的」な形のものばかりだった。当時の僕は放物線やサインカーブの一部を切り取ってその長さを求めることはできなかったし、数式でその形があらわされていても面積や体積を計算できない物がたくさんあった。(参考:放物線の長さの求め方:PDFファイル)
高校までで学んだ数学では惑星の運動や万有引力の問題は解けたとしても、自分の身の回りのほとんどの問題は解くことができない。「微積分のはなし〈下〉」を読んで僕はそのことに気付き、この本が「数学で解くことができる範囲」を大きく広げてくれることを知って身震いした。「解くべき問題は宇宙にではなく、この地球上にたくさんあるのだ!」と思った。
本書に書かれていることは高校の範囲を超えている。大学に入ってから学ぶことはまだまだたくさんある。苦しい受験勉強を続けるためのモチベーションに本書が大いに貢献したことは言うまでもない。当時僕が持っていた数学のイメージは「解析学」という分野の事柄であることを、後に大学に入ってから知ることになった。大学で学ぶ数学がどのようなものかは、学部による扱いや方向性の違いも含めて、いずれ記事に書きたいと思う。
コンピュータを使った数値計算に頼らず、手を使った数式による計算だけでも、身の回りのかなりたくさんの事柄を計算し、分析することができることを本書を読んで知ったのだ。数式変形だけで問題を解くことを数学では「解析的に解く」と表現する。
数学は苦手で中学のレベルでギブアップてしまった人が「関数のはなし〈上〉〈下〉」と「微積分のはなし〈上〉〈下〉」の4冊を読むだけで、高校3年までの関数と微積分の意味を理解できるようになるだけでなく、本書のような理数系大学の1、2年生並みのレベルまで到達することができからだ。
さらに数式入りの本を楽しむめるようになるための下地を作ることもできる。そのことを知っていただくために僕はこれまで大村先生の本を紹介してきたわけなのだ。
前置きが長くなったが、本書の内容を紹介しよう。
第10章:ふたたび面積に挑戦
- 上巻で学んだ面積と体積の計算をさらに深める。直角座標の他、極座標を使って回転対称形の三つ葉や四つ葉の面積を求めたり、媒介変数を使った形で積分を行う。
第11章:二重三重の積分
- 多重積分に入門する。球の体積の公式はどのように導くのだろうか?これまでには計算できなかった形をした物体の体積を計算したり、非対称な形をした物体の重心の位置の計算方法などを学ぶ。
第12章:微分方程式入門
- これまでに学んでいた方程式の解は「数値」だった。微分方程式は微分した関数を方程式に含み、その解は「無数の関数で表わされる曲線群や曲面群」だ。その中から1つを決めるために初期条件や境界条件と呼ばれる「制限」をつける。最終的に答は1つの「関数」として求められる。
微分方程式のイメージがつかめない方は次のホームページで視覚的に理解することができるのでご覧いただきたい。
微分方程式を図解する(前野先生のページ)
http://irobutsu.a.la9.jp/mybook/ykwkrMC/sim/DE.html
微分方程式を解く(解の曲線群が図示されているページ)
http://www004.upp.so-net.ne.jp/s_honma/differential-eq/diff-eq103.htm
この章では微分方程式の考え方を紹介した後、変数分離形による解法、肉まんの冷却の様子を微分方程式で表して解いてみせたり、「ナポレオンの法則」として兵隊数が異なる2つの軍が戦うと、どのように兵隊数が減っていくかという問題を「連立微分方程式」をたてて解いて兵隊数の減り方をグラフで紹介している。
第13章:微分方程式のいろいろ
- 微分方程式の種類の紹介。「ロケットの運動」では燃料を消費しながら、つまり質量を減少させつつ、かつ空気抵抗を受けながらロケットが飛ぶ場合について1階微分方程式をたて、時々刻々変化するロケットの飛行速度を関数として求める。「振り子の等時性」では2階微分方程式をたて、空気抵抗を受けながら減衰振動する振り子の問題を解く。
第14章:ラプラス変換
- 微分方程式を解くためのテクニックとして「ラプラス変換」という魔法のような方法がを学ぶ。解きたい方程式は「表の世界」の形式で書かれていて、これをラプラス変換表を見ながら「裏の世界」の形に書き直す。裏の世界の方程式はどうしたわけか簡単に解くことができる。解いたあと「ラプラス逆変換」すれば表の世界の方程式の答が自動的に得られるのだ。
微分方程式の解法でラプラス変換を使うメリットは「省力化」だ。表の世界では複雑で手間のかかる計算も裏の世界ではあっという間に解けてしまう。なぜそういう魔法のようなことができるのか、本書を読んで考えてみてほしい。
この章で紹介されるのは「おもりを吊るしたバネの上下運動」だ。空気抵抗を受けながら上下運動するおもりはだんだんその振幅が小さくなる。また、おもりを水中に沈めて運動させると抵抗はさらに大きくなるので1往復すらしない単調減少運動になる。おもりが受ける抵抗の値を変えたり、時刻0でのおもりの位置や初速度を変えて微分方程式を解き、それぞれの運動の様子を関数とグラフで紹介する。
ラプラス変換については次のようなページでイメージをつかむことができる。
ラプラス変換とは何か
http://www.jeea.or.jp/course/contents/01131/
初心者用ラプラス変換解説
http://www.ice.tohtech.ac.jp/~nakagawa/laplacetrans/Laplace1.htm
第15章:微分の上級コース
- この章では任意の関数を多項式関数で近似する「テイラー級数」や「マクローリン級数」を学ぶほか、「偏微分」を学んで曲面の極大点・極小点を求めたり、「全微分」が紹介される。
第16章:コンピュータのための微積分
- 微分や積分はコンピュータによる数値計算で解を計算することができる。さらにこれまでの章で学んだ方法では解くことができない微分方程式でさえ、コンピュータによる数値計算で解くことができるのだ。この章ではそれらがどのようにして行われるのかを解説する。
本書の雰囲気を知っていただくために見開きで3箇所ほど紹介しよう。画像クリックで拡大する。
多重積分について解説しているページ
「ナポレオンの法則」について解説しているページ
ラプラス変換による微分方程式の解法例
いちばん下の画像の「ラプラス変換による微分方程式の解法例」は、今日ではWolframAlphaを使って解くことができる。解くべき方程式と初期条件、境界条件は次のとおり。
これを解かせるにはWolframAlphaに次のように入力する。
x''(t)+3*x'(t)+2*x=4, x(0)=6, x'(0)=7 (WolframAlphaで解いてみる)
すると次のように解の関数が求められる。
この関数はWolframAlphaに次のように入力してグラフを描くことができる。
x(t) = -11 e^(-2 t)+15 e^(-t)+2, t=0 to t=5 (WolframAlphaでグラフを描いてみる)
このようなグラフが表示される。本に示されているグラフと同じだ。
微分方程式の係数や初期条件、境界条件などを変えて解やグラフの様子が変わることを確認してみるのも面白いだろう。
今回取り上げた「改訂版」が発売されたのは2007年だ。上巻とあわせてお買い求めいただきたい。アマゾンに投稿された読者によるレビューは旧版のほうでご確認ください。
「改訂版 微積分のはなし〈上〉:大村平」
「改訂版 微積分のはなし〈下〉:大村平」
本書は40年以上前から読み継がれている良書なのだ。サイズもコンパクトでページ数も手ごろである。僕が学生時代に読んだのは旧版だ。改訂版の値段が高いと思われる方は以下のリンクから中古の旧版をお求めになるとよいだろう。
旧版から改訂版への変更点は「時代環境の変化などにより生じた不自然な箇所」だけなのだという。学ぶ上では旧版でも全く問題は生じない。
「微積分のはなし〈上〉:大村平」(1972年)
「微積分のはなし〈下〉:大村平」(1972年)
「微積分のはなし〈下〉:大村平」(1972年)
なお本書を読み終えたらぜひ「再読: なっとくする偏微分方程式:斎藤恭一」をお読みいただきたい。この本は大村先生の本と同様のくだけたスタイルで、偏微分方程式やさらに高度なラプラス変換について学ぶことができる。
関連記事:
改訂版 関数のはなし〈上〉:大村平
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d36a9ff4f6196b3fead1b9b6ca4dcf1c
改訂版 関数のはなし〈下〉:大村平
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e668159189be4b635f4d38c3bf252938
改訂版 微積分のはなし〈上〉:大村平
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/61b91ea9f2a66c66a33c507aa2c2d0c0
改訂版 行列とベクトルのはなし: 大村平
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/71c73f4258b48518957d5995d96f81ad
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「改訂版 微積分のはなし〈下〉:大村平」変化と結果を知るテクニック
まえがき
第10章:ふたたび面積に挑戦
- ヘテロジニアス
- 微分は、変化のありさま
- 積分は、変化の結果
- 直角座標の面積
- 媒介変数による積分
- 極座標の面積
- 三つ葉と四つ葉の面積
- 回転体の表面積
第11章:二重三重の積分
- 剣の達人の心境
- ぞうり虫の面積
- 球の体積
- 2つの問題
- 極座標の活用
- 宅地造成の積分
- 平均のはなし
- 直感力テスト
- 重心のはなし
- 3次元へ拡大
第12章:微分方程式入門
- 落下の運動を式であらわす
- 微分方程式の紹介
- 変数分離形
- 肉まんの冷却
- 減衰曲線
- ナポレオンの法則
- グラフで見る微分方程式
第13章:微分方程式のいろいろ
- 同次形
- 線形微分方程式
- 1階線形微分方程式
- 続1階線形微分方程式
- 続続1階線形微分方程式
- ロケットの運動
- 2階線形微分方程式
- 振り子の等時性
- 減衰する振動
第14章:ラプラス変換
- 自動制御
- 裏の世界の物語
- 微分方程式が代数方程式に変わる
- ラプラス変換とラプラス逆変換
- 裏の世界への入口
- 導関数のラプラス変換
- 裏の世界からの出口
- ラプラス変換の総仕上げ
第15章:微分の上級コース
- 未来に光明あり
- テイラー級数
- マクローリン級数
- 一流の知識人となるために
- 偏微分
- 続偏微分
- 曲面の極大極小を求める
- 全微分
第16章:コンピュータのための微積分
- 微分は差分で代用する
- 微分のケース・スタディ
- 積分は、面積をかんじょうする
- 積分のケース・スタディ
- 微分方程式を数値で解く
- アナログな微積分
付録:
- 微分の公式
- 積分の公式
- ラプラス変換の公式
- ラプラス逆変換の公式
内容
直角座標・極座標・回転体の面積、球の体積、二重三重の積分、微分方程式、ラプラス変換、ラプラス逆変換、テイラー級数、マクローリン級数、偏微分、全微分、コンピュータのための微積分などを解説。
下巻では、数学III以上のレベルまで取り扱っているが、難しさは高校程度。
僕がこの下巻を読んだのは大学受験の勉強をしていた頃だ。おそらく書店で参考書を探しているときにこの本に出会ったのだと思う。最初に「微積分のはなし〈上〉〈下〉」読み、次に「関数のはなし〈上〉〈下〉」を読んだ。
特にこの「微積分のはなし〈下〉」は当時の僕にとって「革命」だった。それまでに僕が知っていた数学の世界は趣味として続けていた天文学と結びついていて、円や楕円、放物線、双曲線、サインカーブなどで表わされる「理想的」で「対称的な美しさ」をもつ関数で表わされるものばかりだったからだ。
けれども現実の自然現象はそのような美しさはなく複雑だ。物を投げれば空気抵抗のために放物線にはならないし、おもりを吊るしたバネの上下運動もやがて止まってしまう。
それまでに僕が計算できた長さや面積、体積などは直線や円弧の長さ、長方形や台形、円などの面積、直方体や球、円錐など、「単純」で「理想的」な形のものばかりだった。当時の僕は放物線やサインカーブの一部を切り取ってその長さを求めることはできなかったし、数式でその形があらわされていても面積や体積を計算できない物がたくさんあった。(参考:放物線の長さの求め方:PDFファイル)
高校までで学んだ数学では惑星の運動や万有引力の問題は解けたとしても、自分の身の回りのほとんどの問題は解くことができない。「微積分のはなし〈下〉」を読んで僕はそのことに気付き、この本が「数学で解くことができる範囲」を大きく広げてくれることを知って身震いした。「解くべき問題は宇宙にではなく、この地球上にたくさんあるのだ!」と思った。
本書に書かれていることは高校の範囲を超えている。大学に入ってから学ぶことはまだまだたくさんある。苦しい受験勉強を続けるためのモチベーションに本書が大いに貢献したことは言うまでもない。当時僕が持っていた数学のイメージは「解析学」という分野の事柄であることを、後に大学に入ってから知ることになった。大学で学ぶ数学がどのようなものかは、学部による扱いや方向性の違いも含めて、いずれ記事に書きたいと思う。
コンピュータを使った数値計算に頼らず、手を使った数式による計算だけでも、身の回りのかなりたくさんの事柄を計算し、分析することができることを本書を読んで知ったのだ。数式変形だけで問題を解くことを数学では「解析的に解く」と表現する。
数学は苦手で中学のレベルでギブアップてしまった人が「関数のはなし〈上〉〈下〉」と「微積分のはなし〈上〉〈下〉」の4冊を読むだけで、高校3年までの関数と微積分の意味を理解できるようになるだけでなく、本書のような理数系大学の1、2年生並みのレベルまで到達することができからだ。
さらに数式入りの本を楽しむめるようになるための下地を作ることもできる。そのことを知っていただくために僕はこれまで大村先生の本を紹介してきたわけなのだ。
前置きが長くなったが、本書の内容を紹介しよう。
第10章:ふたたび面積に挑戦
- 上巻で学んだ面積と体積の計算をさらに深める。直角座標の他、極座標を使って回転対称形の三つ葉や四つ葉の面積を求めたり、媒介変数を使った形で積分を行う。
第11章:二重三重の積分
- 多重積分に入門する。球の体積の公式はどのように導くのだろうか?これまでには計算できなかった形をした物体の体積を計算したり、非対称な形をした物体の重心の位置の計算方法などを学ぶ。
第12章:微分方程式入門
- これまでに学んでいた方程式の解は「数値」だった。微分方程式は微分した関数を方程式に含み、その解は「無数の関数で表わされる曲線群や曲面群」だ。その中から1つを決めるために初期条件や境界条件と呼ばれる「制限」をつける。最終的に答は1つの「関数」として求められる。
微分方程式のイメージがつかめない方は次のホームページで視覚的に理解することができるのでご覧いただきたい。
微分方程式を図解する(前野先生のページ)
http://irobutsu.a.la9.jp/mybook/ykwkrMC/sim/DE.html
微分方程式を解く(解の曲線群が図示されているページ)
http://www004.upp.so-net.ne.jp/s_honma/differential-eq/diff-eq103.htm
この章では微分方程式の考え方を紹介した後、変数分離形による解法、肉まんの冷却の様子を微分方程式で表して解いてみせたり、「ナポレオンの法則」として兵隊数が異なる2つの軍が戦うと、どのように兵隊数が減っていくかという問題を「連立微分方程式」をたてて解いて兵隊数の減り方をグラフで紹介している。
第13章:微分方程式のいろいろ
- 微分方程式の種類の紹介。「ロケットの運動」では燃料を消費しながら、つまり質量を減少させつつ、かつ空気抵抗を受けながらロケットが飛ぶ場合について1階微分方程式をたて、時々刻々変化するロケットの飛行速度を関数として求める。「振り子の等時性」では2階微分方程式をたて、空気抵抗を受けながら減衰振動する振り子の問題を解く。
第14章:ラプラス変換
- 微分方程式を解くためのテクニックとして「ラプラス変換」という魔法のような方法がを学ぶ。解きたい方程式は「表の世界」の形式で書かれていて、これをラプラス変換表を見ながら「裏の世界」の形に書き直す。裏の世界の方程式はどうしたわけか簡単に解くことができる。解いたあと「ラプラス逆変換」すれば表の世界の方程式の答が自動的に得られるのだ。
微分方程式の解法でラプラス変換を使うメリットは「省力化」だ。表の世界では複雑で手間のかかる計算も裏の世界ではあっという間に解けてしまう。なぜそういう魔法のようなことができるのか、本書を読んで考えてみてほしい。
この章で紹介されるのは「おもりを吊るしたバネの上下運動」だ。空気抵抗を受けながら上下運動するおもりはだんだんその振幅が小さくなる。また、おもりを水中に沈めて運動させると抵抗はさらに大きくなるので1往復すらしない単調減少運動になる。おもりが受ける抵抗の値を変えたり、時刻0でのおもりの位置や初速度を変えて微分方程式を解き、それぞれの運動の様子を関数とグラフで紹介する。
ラプラス変換については次のようなページでイメージをつかむことができる。
ラプラス変換とは何か
http://www.jeea.or.jp/course/contents/01131/
初心者用ラプラス変換解説
http://www.ice.tohtech.ac.jp/~nakagawa/laplacetrans/Laplace1.htm
第15章:微分の上級コース
- この章では任意の関数を多項式関数で近似する「テイラー級数」や「マクローリン級数」を学ぶほか、「偏微分」を学んで曲面の極大点・極小点を求めたり、「全微分」が紹介される。
第16章:コンピュータのための微積分
- 微分や積分はコンピュータによる数値計算で解を計算することができる。さらにこれまでの章で学んだ方法では解くことができない微分方程式でさえ、コンピュータによる数値計算で解くことができるのだ。この章ではそれらがどのようにして行われるのかを解説する。
本書の雰囲気を知っていただくために見開きで3箇所ほど紹介しよう。画像クリックで拡大する。
多重積分について解説しているページ
「ナポレオンの法則」について解説しているページ
ラプラス変換による微分方程式の解法例
いちばん下の画像の「ラプラス変換による微分方程式の解法例」は、今日ではWolframAlphaを使って解くことができる。解くべき方程式と初期条件、境界条件は次のとおり。
これを解かせるにはWolframAlphaに次のように入力する。
x''(t)+3*x'(t)+2*x=4, x(0)=6, x'(0)=7 (WolframAlphaで解いてみる)
すると次のように解の関数が求められる。
この関数はWolframAlphaに次のように入力してグラフを描くことができる。
x(t) = -11 e^(-2 t)+15 e^(-t)+2, t=0 to t=5 (WolframAlphaでグラフを描いてみる)
このようなグラフが表示される。本に示されているグラフと同じだ。
微分方程式の係数や初期条件、境界条件などを変えて解やグラフの様子が変わることを確認してみるのも面白いだろう。
今回取り上げた「改訂版」が発売されたのは2007年だ。上巻とあわせてお買い求めいただきたい。アマゾンに投稿された読者によるレビューは旧版のほうでご確認ください。
「改訂版 微積分のはなし〈上〉:大村平」
「改訂版 微積分のはなし〈下〉:大村平」
本書は40年以上前から読み継がれている良書なのだ。サイズもコンパクトでページ数も手ごろである。僕が学生時代に読んだのは旧版だ。改訂版の値段が高いと思われる方は以下のリンクから中古の旧版をお求めになるとよいだろう。
旧版から改訂版への変更点は「時代環境の変化などにより生じた不自然な箇所」だけなのだという。学ぶ上では旧版でも全く問題は生じない。
「微積分のはなし〈上〉:大村平」(1972年)
「微積分のはなし〈下〉:大村平」(1972年)
「微積分のはなし〈下〉:大村平」(1972年)
なお本書を読み終えたらぜひ「再読: なっとくする偏微分方程式:斎藤恭一」をお読みいただきたい。この本は大村先生の本と同様のくだけたスタイルで、偏微分方程式やさらに高度なラプラス変換について学ぶことができる。
関連記事:
改訂版 関数のはなし〈上〉:大村平
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d36a9ff4f6196b3fead1b9b6ca4dcf1c
改訂版 関数のはなし〈下〉:大村平
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e668159189be4b635f4d38c3bf252938
改訂版 微積分のはなし〈上〉:大村平
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/61b91ea9f2a66c66a33c507aa2c2d0c0
改訂版 行列とベクトルのはなし: 大村平
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/71c73f4258b48518957d5995d96f81ad
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「改訂版 微積分のはなし〈下〉:大村平」変化と結果を知るテクニック
まえがき
第10章:ふたたび面積に挑戦
- ヘテロジニアス
- 微分は、変化のありさま
- 積分は、変化の結果
- 直角座標の面積
- 媒介変数による積分
- 極座標の面積
- 三つ葉と四つ葉の面積
- 回転体の表面積
第11章:二重三重の積分
- 剣の達人の心境
- ぞうり虫の面積
- 球の体積
- 2つの問題
- 極座標の活用
- 宅地造成の積分
- 平均のはなし
- 直感力テスト
- 重心のはなし
- 3次元へ拡大
第12章:微分方程式入門
- 落下の運動を式であらわす
- 微分方程式の紹介
- 変数分離形
- 肉まんの冷却
- 減衰曲線
- ナポレオンの法則
- グラフで見る微分方程式
第13章:微分方程式のいろいろ
- 同次形
- 線形微分方程式
- 1階線形微分方程式
- 続1階線形微分方程式
- 続続1階線形微分方程式
- ロケットの運動
- 2階線形微分方程式
- 振り子の等時性
- 減衰する振動
第14章:ラプラス変換
- 自動制御
- 裏の世界の物語
- 微分方程式が代数方程式に変わる
- ラプラス変換とラプラス逆変換
- 裏の世界への入口
- 導関数のラプラス変換
- 裏の世界からの出口
- ラプラス変換の総仕上げ
第15章:微分の上級コース
- 未来に光明あり
- テイラー級数
- マクローリン級数
- 一流の知識人となるために
- 偏微分
- 続偏微分
- 曲面の極大極小を求める
- 全微分
第16章:コンピュータのための微積分
- 微分は差分で代用する
- 微分のケース・スタディ
- 積分は、面積をかんじょうする
- 積分のケース・スタディ
- 微分方程式を数値で解く
- アナログな微積分
付録:
- 微分の公式
- 積分の公式
- ラプラス変換の公式
- ラプラス逆変換の公式