とね日記

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リー群と表現論:小林俊行、大島利雄(第6章:Lie群と等質空間の構造)

2012年01月09日 16時08分40秒 | 物理学、数学
リー群と表現論:小林俊行、大島利雄

天文の本と併行しながら、数学のほうもこつこつ勉強を進めている。そして夜は相変わらず「京極夏彦のミステリー小説」を読んでいる。

今回の章は内容が盛りだくさんで、難易度も高かった。7割くらいしか理解できていないと思う。

この章を理解するために必須な分野は多様体と位相幾何学(トポロジー)。「多様体」とはいっても接空間、接ベクトル場あたりまでを理解しておけば大丈夫。位相幾何学(トポロジー)についてはホモトピーや基本群あたりを学んでおけばよい。これらは本書内でも解説されているが、まったく学んでいないとイメージがわかないので、それぞれ入門書を読んでおくとよい。

1) 多様体:「多様体の基礎: 松本幸夫著
2) 位相幾何学:「トポロジー―ループと折れ線の幾何学:瀬山士郎」本当は「トポロジー入門:松本幸夫」をお勧めしたいのだが、こちらは現在絶版中で中古は7千円以上もする。


第6章:Lie群と等質空間の構造

Lie群の大域的な構造はLie環によってかなり統制することができる。連結なLie群の普遍被覆空間は自然にLie群の構造をもち、しかも両者のLie環は同型である。同型なLie環をもつ連結Lie群は、単連結なLie群の中心部分群によって分類できる。

連結なLie群の大域的構造は単位元の近傍の構造を解析接続したものである。Lie環の間に準同型があると、それはLie群の単位元の近傍での局所準同型を一意的に定義するが、それがLie群の準同型に拡張されるかどうかは明らかではない。ただし、写像はC^ω級であるから、Lie群が連結であり、拡張が存在すれば一意的である。

拡張可能かどうかは、大域的な問題、すなわちトポロジーの基本群が関係してくる。このような障害のない連結なLie群は単連結となるもので、普遍被覆群と呼ばれ、そのLie環から同型を除いて一意的に定まる。

任意の連結Lie群は、それに含まれている極大なコンパクト部分群とホモトピー同値である。この定理を簡約Lie群(たとえばGL(n,C))の場合に極大トーラスと呼ばれる可換部分群を用いて調べることができる。「任意のユニタリ行列は対角化可能である。」という線型代数のよく知られた結果は、「連結コンパクトLie群の任意の元は極大トーラスの元と共役である。」という定理に拡張される。

コンパクト単純Lie群の普遍被覆がコンパクトであるというWeylの定理は、極大トーラスの性質とSU(2)の埋め込みを用いた手法で証明される。

Lie群あるいはそれが作用している空間での解析を行うには、Lie群が作用する空間を調べる必要がある。その最も基本的な「最小単位」は、その群の軌道がただ1つの場合、すなわち、群が推移的に作用する場合である。

Lie群Gが多様体Xに推移的に作用しているとき、Xの1点を選び、その点を動かさない元全体のなすGの部分群をHとすると、右剰余類の集合G/H(等質空間)とXとの間に全単射対応が存在する。

等質空間G/HにはLie環の指数写像を用いて多様体の構造を定義することができる。そして、Lie群の2種類の定義が同等であったのと同じように、G/Hに(内在的に)定義された多様体の構造と(Gが変換群として作用している)Xの多様体の構造が一致する。


第6章の目次詳細と「要約」は次のとおり。

第6章 Lie群と等質空間の構造
 §6.1 普遍被覆群
 §6.2 複素Lie群
 §6.3 等質空間
 §6.4 Lie群上の積分
 §6.5 コンパクトLie群
 要約

(要約)
6.1 Lie環gをもつLie群には、連結かつ単連結となる普遍被覆群Gが同型を除いて唯一つ存在する。このGの中心に含まれる離散部分群Γによる商群G/Γの基本群はΓに等しい。Gと局所同型な連結Lie群は、このようにして作った商群G/Γのいずれかと同型になる。

6.2 Lie環の準同型φ:g→hはgをLie環とする普遍被覆群Gから、hをLie環とするLie群Hへの連続同型に一意に拡張できる。特に、普遍被覆群Gの表現とそのLie環の表現とは1対1に対応する。

6.3 複素Lie群の表現が複素解析的になるための必要十分条件は、対応する複素Lie環の表現がC-線型になることである。

6.4 Lie群Gが連続かつ推移的に作用している多様体Mは、作用GxM→M,(g,x)|→gxがC^ω級となるようなC^ω-多様体の構造が唯一つ入り、Gの等質空間とみなせる。

6.5 Lie群Gに両側不変な測度が存在する条件や、Gの等質空間に不変測度が存在する条件は、Gの随伴表現の表現行列の行列式を使って述べることができる。特に、連結なベキ零Lie群や連結成分が有限個の簡約Lie群には両側不変な測度が存在する。

6.6 コンパクトLie群の極大トーラスは互いに共役である。

6.7 連結コンパクトLie群Gの極大トーラスの1つをTとすると、G=∪_g∈G{gTG^(-1)}が成立する。また、GのLie環からの指数写像は全射となる。

6.8 連結Lie群GのKilling形式が負定値⇔Gは連結で中心が有限のコンパクトLie群。

6.9 (用語)普遍被覆群、基本群、複素Lie群、複素解析的表現、等質空間、Cartan分解、Lie群および等質空間上の普遍測度、極大トーラス、Dirichletの定理、Killing形式、半単純Lie群


リー群と表現論:小林俊行、大島利雄



参考ページ:

Lie Groups (Copyright 2004 and 2011 (Springer-Verlag NY and Daniel Bump)
http://match.stanford.edu/lie/index.html


Caltechの大栗博司先生のブログに本書の著者のおひとりでらっしゃる小林俊行先生の講演の記事を見つけました。横からのお姿ですが小林先生の写真が掲載されています。

深夜のセミナーと中間審査(2012年12月15日の記事)
http://planck.exblog.jp/17206738/

関連記事:

読み始めた。:リー群と表現論:小林俊行、大島利雄
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/6f89fddb08dc3141e6753249891523b9


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リー群と表現論:小林俊行、大島利雄

まえがき
理論の概要と目標
第1章 位相群の表現
 §1.1 位相群
 §1.2 位相群の表現
 §1.3 種々の表現を構成する操作
 §1.4 Hilbertの第5問題
第2章 Fourier解析と表現論
 §2.1 Fourier級数
 §2.2 Fourier変換とアファイン変換群
第3章 行列要素と不変測度
 §3.1 行列要素
 §3.2 群上の不変測度
 §3.3 Schurの直交関係式
 §3.4 指標
第4章 Peter‐Weylの定理
 §4.1 Peter‐Weylの定理
 §4.2 Peter‐Weylの定理の証明
  (その1: Stone-Weierstrassの定理を用いる方法)
 §4.3 Peter‐Weylの定理の証明
  (その2: 関数解析を用いる方法)
 §4.4 有限群論への応用
第5章 Lie群とLie環
 §5.1 Lie群
 §5.2 行列の指数関数
 §5.3 Lie環
 §5.4 Lie群とLie環の例
 §5.5 Lie群の解析性
 §5.6 Lie群とLie環の対応
第6章 Lie群と等質空間の構造
 §6.1 普遍被覆群
 §6.2 複素Lie群
 §6.3 等質空間
 §6.4 Lie群上の積分
 §6.5 コンパクトLie群
第7章 古典群と種々の等質空間
 §7.1 いろいろな古典群
 §7.2 Clifford代数とスピノル群
 §7.3 等質空間の例1: 球面の種々の表示
 §7.4 等質空間の例2: SL(2,R)の等質空間
第8章 ユニタリ群U (n)の表現論
 §8.1 Weylの積分公式
 §8.2 極大トーラス上の対称式と交代式
 §8.3 U (n)の有限次元既約表現の分類と指標公式
第9章 古典群の表現論
 §9.1 古典群のルート系とWeylの積分公式
 §9.2 Weyl群の不変式と交代式
 §9.3 有限次元既約表現の分類と指標公式
第10章 ファイバー束と群作用
 §10.1 ファイバー束と切断
 §10.2 ベクトル束と主ファイバー束
 §10.3 主束に同伴するファイバー束
 §10.4 群作用と切断
 §10.5 G -不変な切断
第11章 誘導表現と無限次元ユニタリ表現
 §11.1 Frobeniusの相互律
 §11.2 無限次元表現の構成 
第12章 Weylのユニタリ・トリック
 §12.1 複素化と実形
 §12.2 Weylのユニタリ・トリック
 §12.3 等質空間におけるユニタリ・トリック
第13章 Borel‐Weil理論
 §13.1 旗多様体
 §13.2 Borel‐Weilの定理
 §13.3 Borel‐Weilの定理の証明
 §13.4 Borel‐Weilの定理の一般化
現代数学への展望
参考文献
演習問題解答
索引
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