とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
量子テレポーテーションや超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!

リー群と表現論:小林俊行、大島利雄(第1章:位相群の表現)

2011年09月10日 15時07分07秒 | 物理学、数学
リー群と表現論:小林俊行、大島利雄

第1章:位相群の表現

直前の記事で「中身は読みやすそうに見える。」と書いたものの、「もし手に負えなかったらブログ読者に宣言してしまった手前、みっともないことになるな。」と思いながら46ページほどある第1章を読み終えた。

結果は大満足!僕の理解度は95パーセント。申し分のない出だしである。本書は「わかりやすい」だけでなく読者の興味をひきつける文章、平易で丁寧な文章であることがわかった。つまり「楽しく読めた」のである。教科書のように無味乾燥かもしれない、という先入観は取り越し苦労だった。

とはいえ、この章を読んで理解するには前提知識が必要である。必須な項目とできれば知っておいたほうがよい項目に分けて推薦本を紹介すると次のとおり。

必須な分野

1) 群論:「群論への30講:志賀浩二」(位相群についての章もある。)
2) 多様体:「多様体の基礎: 松本幸夫
3) テンソル代数(テンソル積)についての入門書

できれば知っていたほうがよい分野

4) 位相:「位相への30講:志賀浩二
5) 関数解析:「関数解析 共立数学講座 (15):黒田成俊」(特にvon Neumannの定理)
6) 位相幾何学:「エキゾチックな球面:野口廣

位相群は位相空間と(抽象)群の構造を兼ね備えた概念であり、その表現は(抽象)群の代数的な表現に連続性の概念を取り込んだものとなる。Lie群は位相群における連続性だけでなく多様体の構造をもつ、つまり微分可能な群である。位相群の中でLie群がどのような位置づけであるかを明らかにするために、第1章では位相群とその表現をテーマとして取り上げ、表現論の基礎を展開している。

章の最後で「Hilbertの第5問題」が取り上げられる。この問題は現在通常に述べられる形になおせば「位相群Gが局所的にEuclid空間と同相であるとき、GはLie群となるか?」となる。この問題を解説する中で「群構造をもたない多様体の構造」の例として「エキゾチックな球面」のことが紹介されている。

第1章の目次詳細と「要約」は次のとおり。

第1章 位相群の表現
 §1.1 位相群
  (a) 位相群
  (b) 位相群の直積、半直積、商群
 §1.2 位相群の表現
  (a) 群の表現をなぜ考えるか
  (b) 表現の定義
  (c) G-線型写像
  (d) 部分表現、既約表現
  (e) 位相群の連続表現
  (f) ユニタリ表現
  (g) ユニタリ表現の直和
  (h) 無限次元表現の位相について
  (i) Schurの補題
  (j) 既約分解、重複度
 §1.3 種々の表現を構成する操作
  (a) ベクトル空間の操作
  (b) 線型作用素の操作
  (c) 群の表現の操作
  (d) ユニタリ表現の操作
  (e) 表現の外部テンソル積
  (f) ユニタリ表現と反傾表現、共役表現
 §1.4 Hilbertの第5問題
  (a) R^Nの閉集合と位相群
  (b) Hirbertの第5問題とvon Neumannによる定式化
  (c) C^r-多様体とC^r-構造
  (d) Hilbertの第5問題の肯定的解決
 要約

(要約)
1.1 群演算と位相空間の構造が両立している群を位相群という。
1.2 位相群が多様体の構造をもつときLie群になる。(Hilbertの第5問題)
1.3 位相群の起源は変換群であり、特に基本的な変換は表現(線型的な作用)である。
1.4 位相群の表現では連続性を考慮する。線型位相空間上の無限次元表現では、G-不変な部分空間として閉部分空間のみが重要である。
1.5 C(複素数体)上の既約な連続表現における絡作用素はスカラー倍を除いて一意的である。(Schurの補題)
1.6 ベクトル空間の様々な操作(テンソル積、双対、...)に応じて、与えられた表現から様々な表現を自然に表現できる。
1.7 (用語)位相群の定義、部分群、直積、半直積、商群、位相群の連続表現、有限次元表現、無限次元表現、ユニタリ表現、既約表現、ユニタリ双対、Schurの補題、既約分解、Hilbert空間の離散直和、重複度、テンソル積、反傾表現、C^r-Lie群、Lie群


リー群と表現論:小林俊行、大島利雄



関連記事:

読み始めた。:リー群と表現論:小林俊行、大島利雄
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/6f89fddb08dc3141e6753249891523b9


応援クリックをお願いします!このブログのランキングはこれらのサイトで確認できます。
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 




リー群と表現論:小林俊行、大島利雄

まえがき
理論の概要と目標
第1章 位相群の表現
 §1.1 位相群
 §1.2 位相群の表現
 §1.3 種々の表現を構成する操作
 §1.4 Hilbertの第5問題
第2章 Fourier解析と表現論
 §2.1 Fourier級数
 §2.2 Fourier変換とアファイン変換群
第3章 行列要素と不変測度
 §3.1 行列要素
 §3.2 群上の不変測度
 §3.3 Schurの直交関係式
 §3.4 指標
第4章 Peter‐Weylの定理
 §4.1 Peter‐Weylの定理
 §4.2 Peter‐Weylの定理の証明
  (その1: Stone-Weierstrassの定理を用いる方法)
 §4.3 Peter‐Weylの定理の証明
  (その2: 関数解析を用いる方法)
 §4.4 有限群論への応用
第5章 Lie群とLie環
 §5.1 Lie群
 §5.2 行列の指数関数
 §5.3 Lie環
 §5.4 Lie群とLie環の例
 §5.5 Lie群の解析性
 §5.6 Lie群とLie環の対応
第6章 Lie群と等質空間の構造
 §6.1 普遍被覆群
 §6.2 複素Lie群
 §6.3 等質空間
 §6.4 Lie群上の積分
 §6.5 コンパクトLie群
第7章 古典群と種々の等質空間
 §7.1 いろいろな古典群
 §7.2 Clifford代数とスピノル群
 §7.3 等質空間の例1: 球面の種々の表示
 §7.4 等質空間の例2: SL(2,R)の等質空間
第8章 ユニタリ群U (n)の表現論
 §8.1 Weylの積分公式
 §8.2 極大トーラス上の対称式と交代式
 §8.3 U (n)の有限次元既約表現の分類と指標公式
第9章 古典群の表現論
 §9.1 古典群のルート系とWeylの積分公式
 §9.2 Weyl群の不変式と交代式
 §9.3 有限次元既約表現の分類と指標公式
第10章 ファイバー束と群作用
 §10.1 ファイバー束と切断
 §10.2 ベクトル束と主ファイバー束
 §10.3 主束に同伴するファイバー束
 §10.4 群作用と切断
 §10.5 G -不変な切断
第11章 誘導表現と無限次元ユニタリ表現
 §11.1 Frobeniusの相互律
 §11.2 無限次元表現の構成 
第12章 Weylのユニタリ・トリック
 §12.1 複素化と実形
 §12.2 Weylのユニタリ・トリック
 §12.3 等質空間におけるユニタリ・トリック
第13章 Borel‐Weil理論
 §13.1 旗多様体
 §13.2 Borel‐Weilの定理
 §13.3 Borel‐Weilの定理の証明
 §13.4 Borel‐Weilの定理の一般化
現代数学への展望
参考文献
演習問題解答
索引
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 読み始めた。:リー群と表現... | トップ | 心配ご無用:衛星の破片、落... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

物理学、数学」カテゴリの最新記事