
趣味で相対論(EMANの物理学):感想
6月20日の記事で紹介した広江克彦さんの「趣味で相対論」(Kindle版)を一週間かけてじっくり読ませていただいた。前作の「趣味で物理学」にくらべて「遊び」が少なく真面目(?)な本にになっていた。相対性理論の教科書を読みながら数式をひとつずつ検算し、自分で理解するという姿勢をつらぬいているからだろう。まず、取り扱う内容が前作の力学や電磁気学よりも格段に高度なため、そして紹介する事柄の分量が多いことを思えば独自の考察を含める余地が少なくなるのは当然といえる。
にもかかわらず、この本が広江さんらしいのは一般の相対論の教科書で紹介されていない数式の導出を自ら試みて紹介している箇所が多いからだ。この理論に入門しようとしている人にとって、これらのことを独学で検算するのはとても大変なことだから、それを見れるだけでもありがたいのだ。
大学でひととおり基礎数学や物理学を学んだ人が、重力場の本質を解明した一般相対性理性理論を独学でマスターしたいと思ったときに適当な教科書は少ないのが現状だ。数式を使わない啓蒙書ではその目的はもちろん達せられず、専門書となるといきなり難しすぎて敷居が高いし、理論を理解しきった先生による説明は天下り的になる傾向があるため初学者にはつらいことが多い。
自分と同じようなレベルから、親切に、説明を省略することなく丁寧に、日常の言葉で、時間と労力の点で無駄なく学べる本として、この「趣味で相対論」はいちばんよいのではと思った。本の外帯で武蔵工業大学教授の西村功先生が書かれているように「理工系図書の新しいジャンルを切り拓いた。」のだ。専門家から見ても十分評価される本である。
この本が自分にとって難しすぎるかどうかは、本を買う前に「EMANの相対論」のサイトで確認することをお勧めする。じっくり手にとって読みたければ本を買えばよい。
数式が記号にしか見えない読者でも、文章のところだけ読み進めることができると思う。その結果、数式を使わない一般書では得ることができない次のようなことをおぼろげながら理解できるようになるはずだ。
- 相対性理論はどれくらい複雑で難しいか
- 何を勉強すればこの理論が理解できるようになるか
- 4次元時空の曲がりや重力理論は数式ではどんな感じで表現できるのか
- 数式で物理の理論を計算するということは実際にはどういう感じなのか
数式で理解するためには線形代数、微分方程式、偏微分、ベクトル解析などの数学と力学についての知識が相対性理論を理解するための前提となる。
なお、一般相対性理論で必要となる共変ベクトルから共変微分までの内容については、先日紹介した「相対性理論への数学的第一歩 ~共変微分のやさしい説明~」をお勧めする。こちらを事前に読んでおくことで「趣味で相対論」はより抵抗なく読めるはずだ。
本書のあとがきに書かれていたことだが、執筆中はお子さんが成長されて一緒に遊ぶ時間が必要になったこと、奥様の愚痴をたくさん聞かなくてはならなくなったことにより、第1作よりも大変だったそうだ。よほど好きでないかぎり会社員をしながら専門的なサイトや本を書くことが並大抵なことでないことは困難であることを多くのアマチュアサイエンティストが日々実感していることである。広江さんがご苦労した様子はこのページの日記でうかがい知ることができる。
第3作は「解析力学」を予定しているそうだが、ぜひ楽しみながら執筆していただけることを願っている。
物理系ブログを書いている僕にとっても、今回の「趣味で相対論」は大きな励みになった。
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趣味で物理学:
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/7faaca22d6b525d82e45a5724fef9811
EMANの物理学:
http://eman-physics.net/
EMANの相対論:
http://eman-physics.net/relativity/contents.html
相対性理論についての記事(とね日記の中):
一般相対性理論に挑戦しよう!
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ea7ad9292ce01ad4abbbc8c98f3303d0
少年の頃の夢(の続き)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a6e4b9271cd56b2e85c3bdaa0b8b7cae
アインシュタイン選集(1)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/26d6fc929bf7b9f0fc1e2a210882f559
アインシュタイン選集(2)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d3d0869ab3911e84845b5b121bd1aa3e
相対性理論への数学的第一歩 ~共変微分のやさしい説明~
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/6667881234da004069e26e160a5b06f1
時空の幾何学:特殊および一般相対論の数学的基礎
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ffc643a688ce45dec7460d107fe1392e
みるみる理解できる相対性理論 改訂版(Newton別冊)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b4d4d20bd1c5ec9a027ebdeb28a107c7
マンガで科学入門 アインシュタインの相対性理論
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/7ca19fdb73035cfb3de6669fa89e04ad
宇宙のシナリオとアインシュタイン方程式
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/7413ad98fe893bbd2017bf306916d17a
アインシュタインとファインマンの理論を学ぶ本
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/43518c3ba428a011f34651b112dc13d2
道具としての相対性理論
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/adb53747ab57ba2a209d16417a712486
6月20日の記事で紹介した広江克彦さんの「趣味で相対論」(Kindle版)を一週間かけてじっくり読ませていただいた。前作の「趣味で物理学」にくらべて「遊び」が少なく真面目(?)な本にになっていた。相対性理論の教科書を読みながら数式をひとつずつ検算し、自分で理解するという姿勢をつらぬいているからだろう。まず、取り扱う内容が前作の力学や電磁気学よりも格段に高度なため、そして紹介する事柄の分量が多いことを思えば独自の考察を含める余地が少なくなるのは当然といえる。
にもかかわらず、この本が広江さんらしいのは一般の相対論の教科書で紹介されていない数式の導出を自ら試みて紹介している箇所が多いからだ。この理論に入門しようとしている人にとって、これらのことを独学で検算するのはとても大変なことだから、それを見れるだけでもありがたいのだ。
大学でひととおり基礎数学や物理学を学んだ人が、重力場の本質を解明した一般相対性理性理論を独学でマスターしたいと思ったときに適当な教科書は少ないのが現状だ。数式を使わない啓蒙書ではその目的はもちろん達せられず、専門書となるといきなり難しすぎて敷居が高いし、理論を理解しきった先生による説明は天下り的になる傾向があるため初学者にはつらいことが多い。
自分と同じようなレベルから、親切に、説明を省略することなく丁寧に、日常の言葉で、時間と労力の点で無駄なく学べる本として、この「趣味で相対論」はいちばんよいのではと思った。本の外帯で武蔵工業大学教授の西村功先生が書かれているように「理工系図書の新しいジャンルを切り拓いた。」のだ。専門家から見ても十分評価される本である。
この本が自分にとって難しすぎるかどうかは、本を買う前に「EMANの相対論」のサイトで確認することをお勧めする。じっくり手にとって読みたければ本を買えばよい。
数式が記号にしか見えない読者でも、文章のところだけ読み進めることができると思う。その結果、数式を使わない一般書では得ることができない次のようなことをおぼろげながら理解できるようになるはずだ。
- 相対性理論はどれくらい複雑で難しいか
- 何を勉強すればこの理論が理解できるようになるか
- 4次元時空の曲がりや重力理論は数式ではどんな感じで表現できるのか
- 数式で物理の理論を計算するということは実際にはどういう感じなのか
数式で理解するためには線形代数、微分方程式、偏微分、ベクトル解析などの数学と力学についての知識が相対性理論を理解するための前提となる。
なお、一般相対性理論で必要となる共変ベクトルから共変微分までの内容については、先日紹介した「相対性理論への数学的第一歩 ~共変微分のやさしい説明~」をお勧めする。こちらを事前に読んでおくことで「趣味で相対論」はより抵抗なく読めるはずだ。
本書のあとがきに書かれていたことだが、執筆中はお子さんが成長されて一緒に遊ぶ時間が必要になったこと、奥様の愚痴をたくさん聞かなくてはならなくなったことにより、第1作よりも大変だったそうだ。よほど好きでないかぎり会社員をしながら専門的なサイトや本を書くことが並大抵なことでないことは困難であることを多くのアマチュアサイエンティストが日々実感していることである。広江さんがご苦労した様子はこのページの日記でうかがい知ることができる。
第3作は「解析力学」を予定しているそうだが、ぜひ楽しみながら執筆していただけることを願っている。
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趣味で物理学:
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EMANの物理学:
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EMANの相対論:
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相対性理論についての記事(とね日記の中):
一般相対性理論に挑戦しよう!
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少年の頃の夢(の続き)
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アインシュタイン選集(1)
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アインシュタイン選集(2)
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相対性理論への数学的第一歩 ~共変微分のやさしい説明~
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時空の幾何学:特殊および一般相対論の数学的基礎
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みるみる理解できる相対性理論 改訂版(Newton別冊)
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マンガで科学入門 アインシュタインの相対性理論
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宇宙のシナリオとアインシュタイン方程式
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アインシュタインとファインマンの理論を学ぶ本
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道具としての相対性理論
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この本の序文に書いてあるように学生向けは内容が厳しく不親切で、逆に一般向けは数式がほとんど書いておらず分けが分からない。この本は私のような素人にも少しは分かるように数式の説明が親切に書かれている。
分からないところは、とねさんにメールで教えてもらうつもりです。
この本はいい感じですよね。大学の教科書よりずっとわかりやすいと思います。文章も広江さんご自身の言葉で語っているので読者に伝わりやすいのだと思います。
メールでご質問いただいても構いませんが、数式を含めた形で質問したりご返事したりするとしたら、文字入力が面倒かもしれませんね。文章だけでどれだけ質問やご返事が表現できるかがキーポイントとなりそうです。
http://blogs.yahoo.co.jp/ryuuzei