とね日記

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アインシュタイン選集(2): [B6] 重力場と電磁場の統一理論(1932年)

2008年08月09日 15時31分40秒 | 物理学、数学
[B6] 重力場と電磁場の統一理論(1932年)

この論文も[B5]と同様アインシュタインとメイヤーによる共著である。

僕はこの論文を読み終えていざ解説を書こうとしたとき、はたと困ってしまった。一般的にアインシュタインは統一場理論を完成できなかったと言われているにもかかわらず、この論文では形式上完成してしまっているからだ。論文の最後には「統一場の方程式」として6本の方程式が結論されている。そこに至るまでの計算は9ページに渡り、相変わらず難解である。

それではどうしてこの論文は完全でないのだろうか?この点がに解説をはじめよわかるような形で解説をはじめよう。

この論文は前の論文の一部の仮説を却下し、全体的に理論を発展させたものだ。すなわち4次元時空にアインシュタイン独自の曲がった5次元ベクトル空間V5を導入して理論を展開している。そこから得られた電磁場の方程式は、真空中におけるマックスウェルの方程式を一般相対論的に書き表したものと一致している。しかしこの方程式は、電荷や電流が存在する場合には適用できない。したがって荷電粒子を取り扱うためには、それを場の特異点として表現することだけが可能だ。完全な場の理論ではすべての場は特異点をもてはならない。

そこでアインシュタインはこの論文で前提としている空間構造を一般化して、電磁場の方程式に電荷密度を示す項を付け加えることができるかどうか検討した。その結果そのような項を付け加えた形で1組の場の方程式(上述の6本の統一場の方程式)をお互いに矛盾することがない形で導くことに成功した。

しかし、このような1組の方程式系が現実の世界を記述する能力をもっているかどうかについては、まだ検討されていない。(とね註:つまり統一場理論は完成されていないことを示しているのだと思う。)

今回の論文で採用した空間構造では、前の論文の§3で提示した3つの仮説のうち仮説IIIを放棄している。そのような空間構造に対して、互いに矛盾しない1組の統一場の方程式系をつくることが可能であることは、時空連続体が4次元であることと結びついている。


§1 空間構造

前の論文の§1と§2の内容はそのまま使う。また§3の仮説Iも認めることにする。つまり、

仮説I:1つの5元ベクトルの(1の決まった方向における)絶対微分が0となる。

である。そして前の論文の仮説IIは棄却する。つまり、

仮説II:4元ベクトルが平行移動されると、これにつれて移動される5元ベクトルの絶対微分は「特殊方向」に比例する。

そして、仮説IIIは成り立つものとする。

仮説III:4元ベクトルをこのベクトル自身の方向に平行移動させたときは、これに対応した「特殊平面」内の5元ベクトルも平行移動をこうむる。

さらに前の論文の§4で紹介した「曲線」の導き方もそのまま成立するものとする。つまり、そのような曲線は電荷をもった質点の古典的運動方程式によって与えられるが、これは1つの5元ベクトルをそれに対応する方向に平行移動させることによって規定される曲線である。


§2 曲率および場の方程式

アインシュタインは前のセクションで前提とした構造をもつ空間に対して5次元的曲率を表わす式を前の論文の§5にならって紹介した。

次に場の方程式を求める。これは最も簡単に、5次元曲率から代数的演算で求められる量を0に等しいとおくような方法で勝手に選ぶわけにはいかない。求める場の方程式は、各方程式どうしが矛盾ない形で成り立つ条件を示すものであるべきだ。

この方程式は時空の1つの切り口(すなわち x4=一定 というひとつの超平面)上における方程式の解が、この方程式系に従って時間の経過とともに未来のほうに伝播していくように、未知変数(すなわち、場の量)を完全に決定してくれるものでなければならない。

このような前提のもと、アインシュタインは2ページに渡って計算によって2本の場の方程式を導いた。1本は電磁場をあらわすマックスウェルの方程式の第1組に相当し電流密度を含んでいる。2本目は重力場の方程式に対応する。しかし2本目の式は一般相対性理論における重力場の方程式とは異なり、これに付随するスカラーの方程式は存在しない。(とね註:つまり統一場理論は完成されていないことを示しているのだ。)

マックスウェルの方程式の第2組を得るためにアインシュタインは5ページに渡って計算を続ける。その仮定で4本の場の方程式を得る。

計算の過程で特徴的なのは、彼が式を構成するテンソルの対称性と反対称性を強く意識していることだ。


§3 場の方程式相互間の無矛盾性

前のセクションで導いた統一場を表わす6本の方程式を列挙し、それらの方程式が4本の恒等式で結ばれていることを紹介している。

これらの方程式の間に矛盾がないことを証明できると書いているが、ここで実際に証明を与えているわけではない。(とね註:おそらく彼の主張は正しいのだろうが、証明していないからといって統一場理論が不完全と結論するわけにはいかないと思う。)


関連リンク:

アインシュタイン選集(1)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/26d6fc929bf7b9f0fc1e2a210882f559

アインシュタイン選集(2):読みはじめた
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d3d0869ab3911e84845b5b121bd1aa3e

時空の幾何学:特殊および一般相対論の数学的基礎
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ffc643a688ce45dec7460d107fe1392e

少年の頃の夢(の続き)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a6e4b9271cd56b2e85c3bdaa0b8b7cae

趣味で相対論
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/90aa60383b600ff4e4fd7bea6589deaa

とね書店:

アインシュタイン選集(1)
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アインシュタイン選集(2)
https://amazon.co.jp/&tonejiten-22/dp/4320030206/503-5691539-3879144

アインシュタイン選集(3)
https://amazon.co.jp/&tonejiten-22/dp/4320030214/503-5691539-3879144


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