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発売情報:現代の量子力学(上) (下) 第3版:J.J. サクライ, J. ナポリターノ

2023年06月24日 14時45分39秒 | 物理学、数学
 
中級者向けの量子力学の名著、J.J.サクライの教科書の下巻の第3版が6月19日に発売され上巻、下巻ともに第3版が揃うことになった。

現代の量子力学(上) 第3版:J.J.Sakurai, Jim Napolitano
現代の量子力学(下) 第3版:J.J.Sakurai, Jim Napolitano
 


内容

上巻
本書のもとである、J.J.サクライによる Modern Quantum Mechanics は1985年の刊行以来、量子力学の核心に迫る名著として高く評価され世界中で読み継がれてきた。ここでは波動関数もシュレーディンガー方程式も与えられた仮定ではなく、全てが明確に提示された基礎概念から極めて自然に導かれている。
第2版では実験家であり教育者であるジム・ナポリターノ氏が共著者となり、量子力学の基礎に関連する新しい実験データや講義で必要となる一般的事項や問題を追加した。そして相対論的量子力学への拡張を考慮して改訂がなされている。
理論の道筋を説得力をもって示す一方、その帰結である極めて非古典的な実験事実を紹介するのも本書の特徴である。中性子の重力干渉、アハラノフ-ボーム効果、ベルの不等式の検証や最近のニュートリノ振動のデータなどは、初学者にとって新鮮な驚きであろう。本書は量子力学の魅力と普遍性を雄弁に語っている。

下巻
著者J.J.Sakurai(桜井純1933‐1982)は東京で生まれ、高等留学生として渡米して以来アメリカで高等教育を受けた理論物理学者。素粒子物理学の分野で先駆的理論を提出していたが、1982年CERNに出張中に急逝、本書はその遺稿をもとにする。上巻に収めた第3章までは原稿が完成していたが、第2版の下巻では共著者となった実験家のJim Napolitanoが大胆に再編を試みた。初版が非相対論的量子力学の記述にとどまっていたのに対し、第2版では場の理論とのつながりを意識して、第2量子化を用いた多粒子系の扱いや電磁場の量子化、ディラック方程式による水素原子の問題なども含まれ内容は相対論的量子力学まで広がっている。また近年の実験からベリーの位相、カシミール効果、スクィーズド光などのデータも提示され、いまなお魅力を増している量子力学の世界が紹介されている。共著者は本書の初版を教科書としてきた経験から、改訂に当たって内容の選択や章末の問題など随所に教育的配慮をしている。 第3版で追加された重要な項目は、近年多くの分野で用いられている密度汎関数理論であり、その基礎と簡単な応用を説明する。最後の相対論的量子力学については、ボソンとフェルミオンについてクライン-ゴルドン方程式とディラック方程式を説明し、第3版では前者の場の理論も追加した。最後に相対論的場の量子論の必要性が示される。 第3版では、読者の理解を深めるために演習問題が大幅に増やされた。さらに、分かりにくい箇所を中心に日本語訳では多くの訳註を付けて、初学者、自習者の便宜をはかった。

著者略歴
桜井明夫
1967年東京大学理学系大学院博士課程修了。1967~1978年東京大学物性研究所、ベルリン自由大学理論物理学研究所勤務。1979~2007年京都産業大学理学部勤務。専攻:物性理論。現在:京都産業大学名誉教授。理学博士。

上巻目次

第3版序文
追悼
初版序文
日本語初版序文
第1 章基礎概念
 1.1 シュテルン-ゲルラッハの実験
 1.2 ケット, ブラと演算子
 1.3 基底ケットと行列表現
 1.4 測定, 観測可能量および不確定性関係
 1.5 基底の変更
 1.6 位置, 運動量と平行移動
 1.7 位置および運動量空間における波動関数
 問題
第2章量子ダイナミックス
 2.1 時間発展とシュレーディンガー方程式
 2.2 シュレーディンガー表示とハイゼンベルク表示
 2.3 調和振動子
 2.4 シュレーディンガーの波動方程式
 2.5 シュレーディンガーの波動方程式の初等的な解
 2.6 プロパゲーターとファインマンの経路積分
 2.7 ポテンシャルとゲージ変換
 問題
第3 章角運動量の理論
 3.1 回転と角運動量の交換関係
 3.2 スピン1/2の系と有限回転
 3.3 SO(3), SU(2) およびオイラーの回転
 3.4 密度演算子と純粋ならびに混合アンサンブル
 3.5 角運動量の固有値と固有状態
 3.6 軌道角運動量
 3.7 中心力ポテンシャルの場合のシュレーディンガー方程式
 3.8 角運動量の合成
 3.9 角運動量を表すシュウィンガーの振動子モデル
 3.10 スピン相関の測定とベルの不等式
 3.11 テンソル演算子
 問題
付録A 電磁気の単位
付録B シュレーディンガーの波動方程式の基本的解
付録C 電磁場中の電荷のハミルトニアン
付録D 角運動量の合成則(3.358) の証明
付録E クレブシュ-ゴルダン係数の見つけ方
文献

下巻目次

第4章量子力学における対称性
 4.1 対称性,保存則および縮退
 4.2 離散対称性,パリティすなわち空間反転
 4.3 離散対称性としての格子上の平行移動
 4.4 時間反転の離散対称性
 問題

第5章近似法
 5.1 時間に依存しない摂動論 縮退のない場合
 5.2 時間に依存しない摂動論 縮退のある場合
 5.3 水素様原子 微細構造とゼーマン効果
 5.4 変分法
 5.5 時間に依存するポテンシャル 相互作用表示
 5.6 時間依存性が極端なハミルトニアン
 5.7 時間に依存する摂動論
 5.8 古典的放射場との相互作用への応用
 5.9 エネルギーシフトと崩壊幅
 問題

第6章散乱理論
 6.1 時間に依存する摂動としての散乱
 6.2 散乱振幅
 6.3 ボルン近似
 6.4 位相のずれと部分波
 6.5 アイコナール近似
 6.6 低エネルギー散乱と束縛状態
 6.7 共鳴散乱
 6.8 散乱における対称性の考察
 6.9 非弾性電子-原子散乱
問題

第7章同種粒子系
 7.1 置換対称性
 7.2 対称化の要請
 7.3 2電子系
 7.4 ヘリウム原子
 7.5 多粒子状態
 7.6 密度汎関数理論
 7.7 量子場
 7.8 電磁場の量子化
 問題

第8章相対論的量子力学
 8.1 相対論的量子力学への道
 8.2 ディラック方程式
 8.3 ディラック方程式の対称性
 8.4 中心力ポテンシャルがあるときの解
 8.5 相対論的場の量子論
 問題

付録F 複素変数についてのノート
 F.1 複素数と複素関数
 F.2 微分と解析性
 F.3 積分と級数展開
 F.4 コーシーの留数定理

文献
初版改訂版への序
訳者後書き
著者紹介
総索引


演習書は第2版が最新である。

演習 現代の量子力学 第2版」(正誤表



翻訳のもとになった英語版は2020年9月に第3版が刊行された。

Modern Quantum Mechanics 3rd Edition: J.J.Sakurai, Jim J.Napolitano」(Kindle版



関連記事:

現代の量子力学〈上〉J.J.サクライ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/24fd19db8b5e2169820606e076972fed

現代の量子力学〈下〉J.J.サクライ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a6ce1bc17d265ec766198418965a2c37

発売情報:現代の量子力学(上) (下) 第2版:J.J. サクライ, J. ナポリターノ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/798f43e65b60d75143ee875bccc1be69


 

 

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