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とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
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変分学:保江邦夫

2010年05月09日 15時02分15秒 | 物理学、数学
変分学:保江邦夫

ゴールデンウィーク前に「ヒルベルト空間論:保江邦夫」というレア本を購入できたことがきっかけで、僕はそのまま保江先生のこの「数理物理学方法序説」というシリーズを全部読むことになった。今回で7冊目の紹介だ。

本書は「変分学」ということでHPでは「理論物理学の基礎方程式は、メタ理論としての変分学の枠組みに乗せることで数学的に整備され、見通しのよい議論が可能になる。この変分学の基本を、ヒルベルト空間上の解析学として数学的に解説する。」と紹介されている。

これまでに読んだ同シリーズの他の本はとてもよく書けていたのだが、残念ながら本書についてはアマゾンに1件だけ投稿されているレビューで「読んで怒りを覚えるような教科書」と酷評されているように、この本だけ単品で購入される読者はきっとこのレビューと同じ感想をお持ちになるだろう。

本書は同シリーズの他の本と併読して価値がでてくることに注意しなければならない。レビュー記事が示しているとおり他の本への参照箇所や証明の省略が多すぎるのだ。

全体的な流れとしては、多変数実関数の微分、バナッハ空間上で定義されるフフレッシェ微分など解析学系の話題からはじまり、微分形式やその微分と積分、ストークスの定理など幾何学的な話、そしてソボレフ空間を定義してからソボレフ空間上の汎関数の変分、フーリエ級数、フーリエ変換などが紹介される。種々雑多な分野の寄せ集めに見えるが、バナッハ空間ヒルベルト空間での微分や汎関数の変分問題として一意解が存在するのだよという主張が全体を貫いているのだと思った。

1冊に詰め込まれているテーマが多いだけに同シリーズの他書にくらべて説明不足なところが多いと思った。残念ながら僕の理解度は6割くらいでしかない。理論物理全般にとって変分学は重要なのでこの分野については他の良書を探して読んでみたいと思う。

けれども保江先生もお書きになっていらっしゃるように変分学にフォーカスした良書はほとんどないのが現状だ。アマゾンでの評価を参考にする限り「べんりな変分原理:岡崎誠」がよさそうに見えるが、僕は実物を見たことがないのでコメントできる立場にない。

微分形式についてネットで学びたい方は、東大の坪井先生による授業を動画でご覧になるのがよいと思う。

2006年度 幾何学III(講義の動画)
http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/video/lecture/2006tsuboi/index.html

この講義のテキストは坪井先生の「幾何学〈3〉微分形式:坪井俊」を購入するか、次のページのいちばん下の「講義ノート」をご覧になるとよい。
http://faculty.ms.u-tokyo.ac.jp/users/tsuboi/kikagaku3table2006.html

ソボレフ空間についてネットで学んでみたい方には次のページをお勧めする。

ソボレフ空間の基礎
http://ums.futene.net/wiki/Math/6261736973206F6620536F626F6C6576205370616365.html


さて、次はこの本を読むことにしよう。

複素関数論:保江邦夫



今日紹介したのはこちらの本。

変分学:保江邦夫


目次

1章 多変数関数と微分
2章 フレッシェ微分
3章 逆関数の定理と陰関数の定理
4章 曲面と曲線
5章 微分形式
6章 微分形式の微分
7章 微分形式の積分とストークスの定理
8章 一般化された微分
9章 ソボレフ空間
10章 汎関数と変分
11章 極値と2次の変分
12章 調和関数のディリクレ問題
13章 フーリエ級数
14章 フーリエ変換
15章 コーシー問題
16章 力学と変分原理
17章 場と変分原理
18章 確率変分学


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