とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
量子テレポーテーションや超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!

ヒルベルト空間論:保江邦夫

2010年05月02日 21時35分30秒 | 物理学、数学
ヒルベルト空間論:保江邦夫

せっかくのゴールデンウィークなので「ルベーグ積分入門:伊藤清三」のように骨の折れる教科書で悶々としながら読書をするより、できるならワクワクする本で過ごしたいものだ。

関数解析の世界も覗き見しておきたかったので先日入手したレア本のうちの1冊「ヒルベルト空間論:保江邦夫」を読んでみた。

これは保江先生の「数理物理学方法序説」というシリーズの中の1冊。どうしたわけかこの本だけ入手がとても困難なのだ。おそらく内容が素晴らしいからなのだろう。

ヒルベルト空間は複素関数を要素とする無限次元のベクトル空間なのでもちろん実在する空間ではない。ヒルベルト空間のおかげで量子力学は数学的な正当性を与えられる。無味乾燥に思いがちな数学の勉強も、それが現実世界にどのように関わっていくか、どのように役立っているかを実感できれば、定理や証明を読み解く楽しみも生まれるものだ。

著者が「理論ミニマム」と表現しているとおり、距離空間、ノルム空間、バナッハ空間そしてヒルベルト空間など関数解析の基礎を最短のルートで学ぶことができる良書だと思った。数学の本にもかかわらず量子力学の匂いがぷんぷんする。良書であることも手伝って僕の理解度は100パーセントであった。120ページほどの薄い本で行間も開いているので一気に読むことができる。ルベーグ積分の知識はなくても読める。

というわけで多くの方に読んでもらいたいのだが、入手困難というのが実に残念だ。復刊にもぜひご協力いただきたい。

復刊ドットコムで投票:
http://www.fukkan.com/fk/VoteDetail?no=50016

図書館などで見つけてぜひお読みになっていただきたい。

=== 後日追記 ===
本書を含めて保江先生の数理物理学方法序説シリーズは紀伊國屋書店のNetLibraryからオンラインで読めることがわかった。

紀伊國屋書店NetLibrary
http://www.kinokuniya.co.jp/03f/oclc/netlibrary/index.htm

ただ次のPDFファイルを見るかぎり、ずいぶん財布を痛めることになりそうだ。(1冊7千円くらい。)

数理物理学方法序説シリーズ(NetLibrary 版)
http://www.kinokuniya.co.jp/03f/oclc/netlibrary/booknews/washo/domestic/nippyo/nippyo_09dec.pdf
================

ヒルベルト空間について大まかな意味を手短かに知りたい方はウィキペディアのエントリーや次のページでどうぞ。

EMANの物理学:ヒルベルト空間
http://eman-physics.net/quantum/hilbert.html

詳しく知りたい方は次のページで勉強するといいだろう。(トップページはこちら。)

ヒルベルト空間(Hilbert Space)
http://ums.futene.net/wiki/Math/48696C62657274205370616365.html

ところで本書には「つづき」があった。というのも本書で導かれているのは「完全連続作用素」や「有界線型作用素」までで、量子力学での物理量は「非有界線型作用素」であるためだ。本書の続きは以下の本として出版されている。ここまで読んだのだから続きがどうしても気になる。

なので次はこの本を読むことにした。

量子力学:保江邦夫


今日の記事で紹介したのはこちらの本。

ヒルベルト空間論:保江邦夫


目次

1 距離空間
2 ベクトル空間
3 ノルム空間
4 ユニタリー空間
5 完備距離空間
6 関数空間
7 縮小写像と不動点定理
8 微分方程式の解の存在定理
9 連続関数の空間
10 バナッハ空間
11 ノルム空間上の有界線形写像
12  ヒルベルト空間
13 共役ヒルベルト空間
14 完全正規直交系
15 有界線形作用素
16 固有値と固有ベクトル
17  完全連続作用素
18 スペクトル分解

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
『ヒルベルト空間論』 (千京 夕夏)
2010-05-04 00:50:47
この『ヒルベルト空間論』は、以前本屋で立ち読みして、「このページ数と文字数でこの値段か・・・」と躊躇して買わなかったんですが、思い切って買っておけばよかったかなと思いました。

保江氏は、最近まで『秘伝』という武術雑誌に「理論物理学者あらてめ理論武術家」という肩書きで連載をしていましたよ。


返信する
Re: 『ヒルベルト空間論』 (とね)
2010-05-04 01:10:56
「このページ数と文字数でこの値段か。。」というのは確かにありますよね。(笑)もし3千円以上だったら僕も買わなかったと思います。同シリーズの他書と比較して丁寧に書かれていると思いました。

千京さんは以前この著者の「武道vs.物理学」という本を紹介していましたよね。そのことを思い出しながらこの本を読んでいました。それにしても保江先生は他にも武術の本を出していたり、武術雑誌に連載をお書きになるなんて多才な方なのですね。

千京さんは直接面識ある方なので、もしお望みでしたらこの本お貸ししますよ。
返信する
Unknown (千京 夕夏)
2010-05-04 10:56:25
とねさん>

ありがとうございます。
とねさんが、読まれなくなったらでいいので「ヒルベルト空間論」見せてください。

写真を見る限り、保江さんは元気そうなので安心しております。それと『秘伝』の連載はまだ終わっていませんでした(^^; 隔月連載なので来月号にまた載るでしょう。ちなみに、その連載を元にしたDVDも出ています。
返信する
千京さんへ (とね)
2010-05-04 11:12:02
もう読み終わっているのでお貸しするのはいつでもいいですよ。(この本は区の図書館にもないみたいですし。)

本の受け渡し方法などは、ここではなく個人メールか携帯電話で相談することにしましょう。

保江先生ですが人生の晩年の段階になって武術の「秘伝」を伝えるなんて悟りの境地に達していらっしゃるのですねぇ。どちらかというとドラえもんのノビ太を大人にしたような僕にはとうていたどり着けない境地のように思えました。

返信する
Unknown (千京 夕夏)
2010-05-05 13:32:08
了解です。
また連絡させていただきます。

よろしくです。
返信する
千京さんへ (とね)
2010-05-05 19:03:38
いつでもどうぞ。
連絡はミクシィのメッセージ使ってもいいですね。
返信する

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