はりぶろぐ

鍼灸師のブログです。東京都国分寺市にて孔和堂鍼灸院を開業しています。
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歳を重ねるということ

2018-09-20 22:32:02 | 養生
10〜20代の頃は常に音楽を聴いていました。
自分の好きなアーティストや流行りの曲を、飽きもせずとにかくずっと聴いていました。
いつしか日常で音楽に触れる機会がほとんどなくなり、聴きたいとも思わなくなっていましたが、ここ1年ほど、当時聴いていた音楽を聴き直すことが増えました。10代の頃に聴いた曲は歌詞やアレンジまで詳細に覚えていて、自分でも驚くほど。強烈な懐かしさとともに、当時の楽しさを思い出したり、好きなアーティストでも当時あまり興味が持てなかった曲の良さを新たに発見したり。同時に、今の10〜20代の方たちが聴いている音楽の良さが分からなくなっていることにも気付きます。

子どもの頃、大人たちが懐かしいと言いながら音楽番組を楽しそうに観ているのがよく分からなく、つまらないと感じたことがありました。でも、今、懐かしさを楽しんでいる自分がいて、確実に歳を重ねて記憶の積み重ねの中で生きていることを実感します。
また、20代までは自然を見ても特に何も思わなかったけれど、30代半ば頃から四季の移り変わりの美しさにハッとしたり、それを眺めるだけで嬉しくなったりしました。それは若い頃には想像もしなかった楽しさです。いろんなことが余裕を持って楽しめるようになって、歳を重ねるのもいいものだと感じます。

ただ、歳を重ねるに連れて、感覚だけではなく身体にも様々な変化が訪れます。
ひと晩寝たら回復していた体力が戻らなかったり、関節の痛みを感じやすくなったり、目が見えにくくなってきたり。
以前は当たり前にできていたことが少しずつできなくなっています。
また、見た目も変化します。白髪が出てきたり、シミやシワが増えたり、背中が丸くなってきたりします。
身体の内側の変化としては、記憶力が低下して「あれ、何だっけ?」ということが多くなります。消化能力も低下し、昔ほど食べられなくなったり、油っこいものを食べたら胃もたれを起こしやすくなります。女性の場合は、閉経を迎える頃から更年期症状が増えていきます。
こういった症状を残念なことや悲しいことのように思う方がいらっしゃいますが、私はそうは思いません。


東洋医学では、生まれながらに「先天の精」と呼ばれるエネルギーを持って人は生まれてくると考えます。
これは腎(臓)に蓄えられていて、生まれたその日から少しずつ減っていきます。白髪が生えてきたり、骨(関節・歯)が弱くなったり、耳が遠くなるのはこの腎に蓄えられた「先天の精」がなくなるからだと考えます。「先天の精」を増やすことはできませんが、それを補うことのできるものがあります。
それは「後天の精」です。飲食物によって得られるエネルギーのことです。
歳を重ねると食べられる量が減るので、なおさら何を食べるかが重要になります。1日何十品目を摂るという目標を持つ方もいますし、糖質を控えた食事を心がける方もいます。東洋医学的には、旬の食材を新鮮なうちに摂ることが大事だと思っています。
近頃は天候が不順で四季を感じづらくなっていますが、日本には旬の食材が昔と変わらずたくさんあります。特に秋はおいしいものがいっぱい。食べ過ぎには気を付けて、おいしくいただくことでエネルギーの充電ができます。

もちろん適度な運動を心がけるのも大切。疲れを感じたら早め早めの休息を取るのも大事なポイントです。

そして、この頃私が最も大切だと感じるのが、内面、心の状態のことです。
自分の身に起きている老いによる変化を肯定的に受け止めることは難しいですが、それを過剰に気に病んだり、自信をなくしていろんなことを諦めたりすると、生きていくのが辛くなります。自分の身体に起きる変化は、生きている人すべてに訪れることです。誰1人として抗いようがない。
若い時は気力・体力ともに充実していますが、些細なことに傷つきやすく、生きづらい時期でもあります。歳を重ねることにより、体力は低下しますが、物事を鷹揚に捉えることができたり、経験による自信も持てたりします。身体はしんどくなるかもしれませんが、精神的にはどんどん身軽になって自由に生きることができるようになるはずです。

歳をとったなぁと悲観するよりも、歳をとったからこそ何が出来るかを考えて生きていくことが、人生をより充実したものにしてくれるような気がします。 
コメント
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