見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

都市計画を実現させた街の風景

2007-12-14 05:58:57 | 南米
土地利用計画の策定は、日本の自治体にとっても目新しいものではない。
だが、クリチバのそれは、都市計画、緑地政策、交通政策、都市デザイン政策等、まちづくりに関わる多くの政策を整合化させ、着々と実現させているところに他者との違いが見える。
都心の西側に立つテレビ塔の頂上から、クリチバ市がぐるりと一望できる。眼下に広がるその都心の姿に唖然とするのは、私ばかりではない。観光客が一様にシャッターを切るところを見ると、この風景は誰もが映像に残したくなる特異な光景なのだ(トップの写真)。
高密度の高層ビルが、見事にライン内に背中を並べている。そのラインの隣りには、緑豊かな木々に覆われた住居地や公園が、別世界のように遮る高層物の影を見ることなく広がっているのだ。
<高層ビルの逆方向に広がる風景>

「包括的、調和的な開発を展開し、地域社会とクリチバ大都市圏の生活条件を向上させる」ことを目的として策定されたマスタープランに基づき、着々と各種政策を展開してきた結果が、目の前に広がっているのだ。
その象徴的な風景を目の当たりにすると、計画を紙に描いた餅に終わらせないクリチバの力を実感する。

クリチバは、66年のマスタープランで、放っておけば放射線状に拡大して行くであろう都市を、4つの基本ルートに沿って拡大させるプランを策定した。テレビ塔の頂上から見たトップの写真は、その基本ルートの一つ、パドレ・アンチエッタ通りに沿った区画を北側から見下ろしたものである。厳密に土地利用制限された低密度の住環境部分が緑に溢れていることが一目でわかる。

マスタープランによって提案された4つの基本ルートに沿って開発を集積させることに成功したのは、容積率・建蔽率・建築物種目項目を40種類以上に分類した細かい土地利用区画の策定と、それを実施に到らせる手法を創造し執行するシンクタンク「クリチバ都市計画研究所(通称:イプキ)」の存在抜きには語れない。

1965年に設立されたイプキは、市長直轄の法人で、審議委員会(委員長は市長)によって運営されている。イプキ所長は市長による任命。マスタープランに沿った戦略的、革新的都市計画の実行、管理を行う。数百人に及ぶ職員は独自採用であるが、各自治体からの出向職員や研修者も少なくないという。

全庁的な計画を実施に到らせるには、各部署との連携を図り、権限を持った実践力ある頭脳集団の存在が必要であると、クリチバ市の事例が語っている。


↑高密度、高層の開発が可能な土地利用区画には、利便性に富んだ公共交通(バス)の実現と共に、人が集まり、憩い、楽しむ幅の広い歩行者専用道路が多く敷設されている。


↑小動物園のある都心部のパセイヨ・プブリコ公園(1886年設置)は、当時、ベレン川の洪水を防ぐ貯水池を設けることを目的としていたというが、大きな木々が茂り、市民の憩いの場としての価値も大きい。こうした緑地政策も土地利用政策と整合が図られている。


↑マスタープランの開発の基本ルートに沿い、交通政策も策定されている。中央に見えるのがバス専用レーン。両脇にアクセス用の低速走行道路がある。
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