見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

ベルベル人とモロッコ人

2007-11-09 20:10:39 | モロッコ
イスラム文化が色濃く残るスペインに滞在中、様々な場所で「ベルベル人」と「ムーア人」という言葉を聞いた。その両者の用いられ方に混乱する場面は多かったが、しかし、「ベルベル人」が登場する文や説明には、彼ら独特のエキゾチックな文化や生活様式に対する憧憬が感じられ、ベルベル人に対する好奇心は高まる一方だった。

ベルベル人は、古くから北アフリカに住む先住民族。ローマ帝国の支配化では、キリスト教を受け入れたが、7世紀のアラブ人侵入以降は急速にイスラム化が進み、熱心なイスラム教信者となったベルベル人の王たちによる王朝もいくつか成立している。
現在のモロッコの公用語はイスラム教で用られるアラビア語だが、ベルベル人独自の言語文化の回帰運動やアイデンティティへの問いかけが近年高まりつつあるという。



モロッコ人の60%以上がベルベル人、次いでアラブ人、ユダヤ人。道ですれ違う2人に一人以上はベルベル人ということになる。が、モロッコの街を歩く人たちの様相はあまりに多様だった。彼らを見分ける顕著な特徴はあるのだろうか。

ガイドのジョナさんの説明に、たびたびベルベル人が出てくるので聞いてみた。
「ベルベル人の区別ですか?もちろんできますよ」とジョナさん。
「言葉や雰囲気でわかります。もちろん、顔つきからも」
で、どう違うんでしょうか、とさらに訊くと、ジョナさんはちょっと考えてから
「私にとっては、中国人も日本人も韓国人も同じに見えます。でも、あなた方は区別がつくでしょ。それと同じですよ」と言った。

私には自分の街に在住する中国人や韓国人と日本人の区別はつかない、と言おうとして言葉を呑みこんだ。
つまり、直感的に感じるという程度の違いなのだ。もちろん、ベルベル人独自の言葉を使ったり、民族衣装をきたときは判断できる。でも、アラブ人もベルベル人もモロッコ人であることに違いはない。そういうことだ。



フェズやマラケシュのメディナのスーク(商店街)を歩いていると、意外にも頻繁に「ベルベル人の」という言葉が飛んできた。
「ベルベル人の伝統織りの絨毯です。どうですか」「ベルベルの伝統的模様のタイルを見ませんか」「この製品は、ベルベル人の誇りをもって保証します」…。
モロッコの商人たちは、「ベルベル人」という言葉の付加価値を十分承知しているようだった。そして、ベルベル人であることを誇りにする商人も少なくなかった。







ところで、ムーア人とベルベル人の違いについて、モロッコから戻ってスペイン人の何人かに聞いてみた。
30代のスペイン女性は次のように語った。

「ベルベル人は民族の名前でしょ。モロッコやチュニジアにいる。いろいろな民族を意識したときは使うことはあるけど、普段は使わない。モロッコでは、観光客を誘うときに使う人たちが多いみたいだけど。ムーア人は、北アフリカ方面から来た『侵略者』というイメージで昔の話をするときに登場する。でも、ムーア人は過去の人物。私たちキリスト教徒の先祖に対してムーア人というわね。北アフリカから来たイスラム教徒という意味もあると思う。そう、今でも、冗談で『ムーア人だからねえ』なんて北アフリカ地方から来た人を揶揄して言うことはあるけど、それは過去の歴史を意識した冗談なのよ。ムーア人には、アラブ人もベルベル人も含まれるわ。でも、はっきりしたことはわからないけれど、ムーア人の中にはアラブ人やベルベル人以外の民族も入っていたんじゃないかな」

何となくわかったような気もするのだが・・・。
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