見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

一流の場のドレス・コード(その1)

2007-09-02 00:16:16 | 欧州
創立100年の伝統を誇るチェコ・フィルハーモニー管弦楽団(Czech Philharmonic Orchestra)のコンサートを、彼らの本拠地ドヴォルザーク・ホールで聴くことになった。「なった」という表現は、主体性に欠ける。が、学生時代にオーケストラの一員だった経験が恥ずかしいほど、私の音楽に対する造詣は浅く、当初からプラハのチェコ・フィルに関心があったというわけではない。
「街中がコンサートホール」のプラハの雰囲気に呑まれたのだ。しかも、滞在中に本年度のチェコ・フィル開幕コンサートに遭遇する、と政府観光局の青年が笑顔で言った。「プラハでクラシックを聴くなら、もちろんチェコ・フィルです!」と誇らしげに。
不思議なことに、教会や小ホールを会場とする観光客向けミニ・コンサートを扱う市内各所のチケットショップでは、このチェコ・フィル開幕コンサートチケットを扱っていなかった。「開幕コンサート?」「ルドルフィヌム(チェコ・フィル本拠地)へ直接行って下さい」と異口同音に言う。
一般のチケットショップでは扱わない、とても貴重なコンサートなのかもしれないと思いはじめ、迷いがとれてルドルフィヌムへ向かった。

プロローグ(開幕)に相応しく、曲はベートーベン交響曲第一番、バイオリン協奏曲ニ長調などベートーベン3目。指揮は10代目主席指揮者ズデネク・マカル。ソリストは新進気鋭の若きレイラ・ヨゼフォビッチと、窓口で当日のプログラムの案内を受けた。PC画面上に表示された残りわずかな空席を眺めながら、そのシート料を聞いて驚いた。一般シートがABC席で600~440CZK(3500~2600円)。超一流と言われるコンサート・ホールで超一流の演奏を鑑賞する料金が、街の教会ミニコンサートと同等かそれ以下だった。昨年、サイトウ・キネン・オーケストラを聴いた時のチケットの値段を思い出してため息が出た。
そういえば、超一流のコンサート…。ふと気になって、チケットの支払いをしながら聞いてみた「服装のきまりはありますか」。窓口の温厚な女性は、にこやかに「フォーマルが好ましいですね」と言った。
困った。貧乏旅の真っ最中。チケットを買いに行った姿は、ジーパンにTシャツ、タイで買ったゴム草履。だが、当日はそうはいかないらしい。欧米の公式の場のドレス・コードを、つい失念していた。今、ここで正装を買う出費は痛い。この先の荷物が増えるのはもっとつらい。買ったばかりのチケットを手に石畳の道を歩きながら思案に暮れた。


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