どうも、こんにちは。
今年(2023・令和5年)の『霊場魔所の紅葉』シリーズ、第3回目はシリーズ前回に引き続いて、東山の有名禅寺・南禅寺を、その始まりである妖怪伝承地・南禅院を何年かぶりに訪れます。
ここに伝わる禅僧・無関普門の妖怪伝承地でもある南禅寺の紅葉風景を巡ります。
そして、その妖怪の正体についても、過去に訪れた時とはまた違った説も紹介したいと思います。
シリーズ前回の続きから。
水路閣の下をくぐった先には、南禅寺別院・南禅院があります。
この南禅院こそは。
後嵯峨天皇が文永元年(1264年)に造った離宮「禅林寺殿」だった場所です。
南禅寺はじまりの地であり、亀山上皇が怪現象に悩まされた、禅僧・無関普門による妖怪退治伝説の舞台であった場所でもあります。
ここで過去記事のおさらいになりますが、南禅寺の創建と、その際にまつわる妖怪退治伝説を大まかに紹介します。
元々この地には、後嵯峨天皇が文永元年(1264年)に造った離宮がありました。その離宮は、その北にあった禅林寺(※紅葉名所としても有名なあの「永観堂」です)にちなんで「禅林寺殿」と呼ばれていました。
のち正応4年(1291年)、亀山法皇は無関普門を開山として、禅林寺殿を「龍安山禅林禅寺」という寺に改めました。
その時に、こんな伝承が伝わっています。
この禅林禅寺には、毎晩妖怪が出没しました。
何も無いところで物音がしたり、物が無くなったり、ポルターガイスト現象みたいに戸が勝手に開いたりなど、怪現象が起こりました。亀山法皇は困り果てて、護摩や加持祈祷などをしましたが、怪現象は止まず、当時80歳だった、東福寺第3世・無関普門禅師に妖怪退治を依頼します。
最初、禅師は「徳は妖怪に勝るからその必要はない」と言いますが、亀山法皇はそれでも頼みこみます。
そして妖怪退治となるわけですが、その退治方法がこれまた面白い。
禅師は弟子たちを引き連れて、禅林禅寺に入り、座禅をし、禅宗の教えに従って修行と生活を続けたのです。なんと、それだけで妖怪は居なくなり、怪現象も収まったのです。
亀山法皇は、禅師にここの開山を命じ、こうして南禅寺が創建された、と伝えられています。
これが南禅寺の創建のきっかけにもなった禅僧の妖怪退治伝説の概要です。
その妖怪の正体について、こちらの過去記事では、悲運の皇子・惟高(これたか)親王の怨霊であるという説を紹介しました。
(※その説の詳細については、当該記事をご覧ください)
しかしこの禅林寺殿に現れた妖怪の正体については、別の説もあるようです。
それが、「白い馬(駒)に乗って天へと昇った」という伝説もある、この地にゆかりの深い高僧・「道智(どうち)僧正」だという説です。
シリーズ前々回でも紹介しました、「竹書房怪談文庫」シリーズの一冊、『京都怪談・猿の聲』に掲載されている、舘松妙『金地院の亀』という怪談では、その説が紹介されていました。
(以下、引用)
>それにしても物の怪の正体が何であったのだろうか。
それの正体は、此の地を深く愛した道智僧正という高僧の亡霊だったと云われている。
鎌倉時代、 園城寺(三井寺)長吏(管長)を務めた道智僧正は晩年此の地に隠棲し、その最後は白い馬(駒)に乗り天空に昇って身を隠したという伝説の人物である。
この伝説から駒大僧正と呼ばれ、住まい付近にあった滝を駒ヶ滝と呼ぶようになった。
没後も此処にひとかたならぬ深い執着を持ち続けた僧正が、物の怪に姿を変えて出没したというのだから、法力に容易く屈服するはずもない。
とはいえ南禅寺(の土地)愛バトルは亀山上皇の勝利で終わり、栄枯盛衰はあったが今に見る大伽藍が造営された。
(引用ここまで)
うーむ。
南禅寺にはこのような妖怪と聖人の伝承もあったとは。
それを今までに知らなかったとは、『京都妖怪探訪』シリーズなるものを15年以上も続けておきながら、私もまだまだ勉強不足だと言わざるをえません・・・。
ここで、南禅院巡りに話を戻します。
まずは南禅院の方丈を。
かつてここで、今で言うポルターガイスト現象が発生し、亀山上皇やお付きの人たちを毎晩悩ませていたのでしょうかね。
現在では中に亀山上皇の像が祀られ、何事もなく静かに佇んでいるようですが。
亀山上皇が作庭したというこの庭は、京都の三名勝庭園の一つも指定されているという、鎌倉時代末期を代表する池泉回遊式庭園だそうです。
そう言われるだけあって、見事な紅葉風景が広がり(妖怪伝承地でもあることもあって)、わがお気に入りの紅葉スポットのひとつでもあります。
今年もここの美しい紅葉風景を堪能できました。
これだけでもおなかいっぱいになれるのですが・・・今年は更にその奥にある、南禅寺の妖怪の正体ともされている‘駒大僧正’こと道智僧正にゆかりの深い塔頭寺院・最勝院と、道智僧正を祀る奥の院のお堂、そして僧正が修行したという駒ヶ滝を目指すことにします。
では、今回はここまで。
この続きはまた次回。
*南禅寺へのアクセスはこちら。
*南禅寺のHP
*『京都妖怪探訪』シリーズ