さて、まもなく劇王の本番です。ここで、初心に帰って、「どうして人は演ずるのか」ということを考えてみたいと思います。
まず演技をするということはどういうことなのか考えてみます。辞書を開いて調べてみると、「自分の心を隠して見せ掛けの態度をとること」という解説を目にしました。言ってみればこれは自分ではない他人になりすますという事です。ここに僕は人間の脳みその進化がとてもかかわっているように思うのです。他人に成りすますと言うことは、他人の心を組みとる事が重要です。演劇でも台本の中のあらゆる場所から、その役の心理を読み取りそれを表現するかが重要です。で、この演じることと脳みその進化とどう関係があるかと言うと、そのキーワードは「ミラーニューロン」というものだと考えています。
ニューロンとは神経系を構成する基本的および機能的な単位のことなのですが、難しいことはさておき、このミラーニューロンは近年発見されたのですが、人が、他人の行動を自分の行動のように感じて、他人と同じような状態を自分におくことで他人を理解するそのときに反応する場所なのです。たとえば事故や災害で大怪我をした人の映像を見たとき、顔をしかめて「ああ、痛そうだなぁ」と思ったり、さも自分が大怪我をしたように感じてしまう時がありますよね。そのときミラーニューロンが活発に働いている。で、このミラーニューロンは人間が進化する過程で大きく進化した部位、逆に言うとこのミラーニューロンが活発に作用するようになって人間は進化できたのだそうです。
金八先生の「人という字は…」じゃないですが、人は一人では生きてゆけません。お互い支えあって万物の霊長と称されるようになったのです。ミラーニューロンを活発にさせ、そこには他人とのコミュニケーションがさまざまな形でネットワークを形成してお互いを理解しあおうとしてきた結果があるのです。
チーターのように速く走ることが出来るわけでもなく、象のような大きな体をもたない人間が万物の霊長となり得たのは、相手と共感したり支えあっていくことでサバイバルなこの地球に生き残ることが出来るということを遺伝子に埋め込んだからだと思います。
今、それを忘れ自己主張、個人の権利の主張をばかりしていると、受け継がれてきた大事なものを、失ってしまうように思います。
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