ロシアの北都 サンクトペテルブルク紀行

2005年秋から留学する、ロシアのサンクトペテルブルク(旧レニングラード)での毎日を記します。

平凡の中の特別

2006-02-14 20:20:24 | Weblog
2006年02月11日
ロシア滞在通算153日目
【今日の写真:氷細工にはめ込まれたコイン。グランドホテル「ヨーロッパ」前にて。】

今日の主な動き
8時近く 起床
15:59 出かける
16:03 「ブリーンドナルド」(ロシア版マック)
17:03 カザン聖堂側の写真屋
17:35 インターネットカフェ
18:21 帰宅

 午後から出かけて、まずはブリーンドナルドへ。ブリーンドナルドはマクドナルドと名前が似ていて、スティーブンか誰かが「ロシア版マックだ」と言っていたのだが、要するにマックのようなファーストフードの店。でも安くおいしいし、ロシア風のスープなどというマックにはない魅力がある。
 16時頃だったが、ブリーンドナルドは混んでいた。最近お子さまセットに小さなおもちゃをつけるというサービスを始めたらしい。子どもがおもちゃを選んで、”Мне самолёт!”” Мне собачку!”(「飛行機ちょうだい!」「私には犬!」)などと声を上げている様子を見て、どこかでも見たことがある光景だなと思った。
 今回は「学生のランチ」という名前が付いたセットとパンを注文。合計わずか42ルーブルの昼食だったが、初めて注文した「学生のランチ」はマカロニとハンバーグとスープがセットになっており、多すぎず、少なすぎず、適量だった。

 いつもならメトロに乗るところだが、今日は天気も良いことだし、ジュコフスキー通りからリテイニー通り、ネフスキー大通りと、歩いてガスティニードヴォル方面へ向かう。
 目的地は写真屋。日本へ送ったり、友達やホストファミリーにあげたりする写真は、カザン聖堂の側にある写真屋でプリントしてもらうことが多い。予め必要な写真だけ保存してきたメモリースティックを店員に渡す。その際、1枚ずつとか、2枚ずつとか、口頭で説明しなければならないのだが、最近ようやく、「~ずつ」という言い方を知った。
 先日、例によって私が適当な単語を並べて「1枚ずつ」である旨説明すると、店員の男性が、「1枚ずつね」と、前置詞”по”を使って私が伝えた内容を確認したのだ。その時初めて、なるほど、”по”を使えば良いのかと気づき、大変勉強になった。

 今日は一部の写真を2枚ずつプリントしたかったので、ノートに書いた番号を見せて、”по”を口に出してみた。が、「2枚ずつ」と言うには、「2」を何格にしたらいいんだろうととっさに分からなくなり、おそるおそる主格で”два”と言ってみると、店員は”по две”と言った。私の中では、前置詞”по”は与格支配というイメージがあったから、なぜ対格、しかも女性名詞”две”になるのかしっくりこなかった。が、後で辞書を引いたと頃によると、同じ「~ずつ」という意味でも後に続く数詞や名詞によって与格だけではなく生格や対格を使うこともあるのだそうで、「1」は与格、「2」は対格になるということを知った。ロシア語を学んでいる読者の方なら、「”фото”は中性名詞のはずなのに」と思われるかもしれないが、今日の店員はおそらく女性名詞である”фотогляфия”が念頭にあったのだろう。そう考えると、”по две”という言葉は文法的にも説明がつく。
 このように、街の人々の、その人達にとってはどうってことない一言がとても役に立つことがある。ロシアに来てから、こういう経験は数え切れない。私にとって、ロシア人は皆先生だ。

 写真屋を出る頃には、日はかなり傾き、空が茜色に染まり始めていた。明日もきっと晴れるんだろうなあ。今日の気温は-10℃前後か、もうすこし高いくらい。寒いのか寒くないのか良く分からず、それでいて晴れているから、なんとも中途半端な天気である。

 もと来た道を歩きながら、グランドホテル「ヨーロッパ」の前に氷細工があるのを見つけた。しかもただの氷細工ではなく、どういうわけかコインが大量にはめこまれていた(【今日の写真】)。よく見るとはめ込まれているのは皆コペーカコイン。コペーカだけはめこんでデザインにするなんて、何ともせこい展示だなと思ったが、ルーブルをはめ込んだら持っていく輩がいるからなのかもしれない。でもコペーカだって集めれば結構な額になるわけで、ルーブルコインをわざわざ集めに来るような人は、コペーカコインだって収集しかねない。もちろん、集めたところでたかが知れているが。そんなことを考えながらしばし氷細工に見入る。

 何度も行き来した道を歩き、何度も足を運んだ店へ行く。一見平凡な日常が繰り返される。だが街の一場面一場面をよくよく観察すれば、何かしら新しい発見、気づき、考えることは尽きない。一日一日が、独特のインデックスで飾られた特別な日になる。これだから、ロシアは面白い。