感動は命の肥し

曇りなき眼で、物事を見つめるなら必ずや真実を見極めることができる。覚醒の時を生きた記録として。

思ったことがある。

2022-01-28 | 日々思うこと

話の筋も、事の成り行きもすべてわかっている話なのに、北の国からをまた見ている。

どうしてだろう。

北の国からの七不思議、がある。

五郎さんとゆきちゃんが義理の兄妹の関係でありながら、なぜか共に暮らす。

美しい竹下景子演じるゆきちゃんが、教養やかっこよさからは程遠い姉の夫の五郎さんを慕っているからか、母の元を離れて暮らす甥たちが心配で北海道まで来ているのか、東京の現実(妻子ある人との実らぬ恋)から逃げての事か、それとも、北海道が人を引き寄せるのか…。

19話と20話で五郎が飲み屋で勤める女性といい関係になるエピソードがある。

それを察知した純と蛍が、ゆきこおばさんに、五郎と結婚する気はないのかとたずねるシーンがある。正式に母親と離婚した五郎が、どこの誰かもわからない人と仲良くなるのをよく思わず、母親の妹のゆきこおばさんが一緒になってくれたらと願った子供たち。(子供たちからの提案を聞いて戸惑うゆきこおばさんの姿に、見る側の人間は、また、わからなくなる。ゆきこおばさんは、もしかしたら、五郎さんとの可能性を考えていたのではないかと言う事だ。)

五郎が働く建設現場に、初めて自分で作った手作り弁当を届けに行った蛍が見たのは、仲睦まじく一緒に弁当を食べている五郎とその女性の姿。

その後、せっかく作った手作り弁当を黙して川に捨てる蛍の心理がすごく現実味がある。同じ立場に立たされたら、きっとおそらくそうしただろうと。父親を他の女性に取られると思ったろうと。

それよりも、何よりも、どうして五郎さんにれい子さんなのかと言う事だ。

田中邦衛さんは素敵な俳優さんだ。けれど、ドラマの中の五郎さんは一言で言えばさえない。

いしだあゆみ演じるれい子さんが、どうして五郎さんと結婚しようと思ったのか…。

そこで、見る側の人間は、また悩む。どうしてだろう? 

きっと、それほど、五郎さんと言う人間がどうしようもなく女性をその気にさせるのかもしれない、と考える。教養や、見てくれや、そんな一切を超えた人を惹きつけてやまない魅力がきっとこの人にはあるんだろう、と思わせる。そう考えるしかないからだ。

男女の事は難解である。

北の国からは、見る側の人間にとって、かなり難解なドラマだと言っていい。

 

小説には、何度も何度も繰り返し読みたい本がある。

私の場合は藤沢周平先生の本がそうだ。

話の筋はすべてわかっていても、読むのは話の筋ではなく、先生が書いている自然描写や、季節の美しやさ、そして人間の心の内側、先生が慈しむように掻き出す人の姿に感動しながら読む。わかっていても涙が出るし、おかしくて笑う。

北の国からもそうなのかもと思ったのだ。

話の筋だけを楽しんでいるのではない。役者さんたちの引き込まれる演技、過度にならない演出、北海道の自然と、そこで暮らす人々の飾らない生身の姿、自分もその中に一緒に暮らしているかのような錯覚。それが、藤沢先生の文章と同じだなと。

五郎さんの匂いや、暖炉の暖かさや、吹雪の寒さや、そんなものを五感で感じながら見る。藤沢先生の小説も活字を読みながら、五感で感じて読む。すごい作品なんだ。

何度も見たくなるドラマは、そうそうない。

大概が、一度見れば気が済むし、もう一度見たいとまで思わないし、dvdで手元に置きたいとまで思わない。

dvdや本として手元に置きたいと思う映画やドラマ、小説には共通したものがあるんだ。

(男はつらいよシリーズも、北の国からに匹敵する魅力がある。何せ、主人公は寅次郎である。寅さんと言えばトランプさん関係ないけど)

 

北の国からを見ながら、そんなことを思ってみた。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。