この本は夫の書棚に長いこと大切に収まっていました。私はいつも掃除するたびに
読んでみようかな、と思っていましたがきっと専門書だろうと思い埃はだけは取っていました。
でも先日なんとなく読んでみたい気持ちになり一気に読んでしまいました。
専門的なところも私でも理解できました。夫は多分読んでいなかったと思います。
夫は成瀬先生の最後の研究室の教え子でした。専門はもちろん歯車です。
初めてのデイトの時成瀬先生の素晴らしさを話してくれました。ペスタロッチを崇拝
していらっしゃって、常にぺスタロッチの話をなさっていらっしゃったそうです。
貧しかったスイスが今のようになったのもペスタロッチの教育の成果だと。
教育の大切さをいつも学生たちに話していらっしゃったそうです。
先生が時々夫たち学生をお家に呼んでくださって、今日はお寿司をご馳走します。と
おっしゃって奥様が握ってくださった握り寿司を頂いたそうです。
またフルコースのフランス料理も奥様のお手作りで、その時は先生が頂き方のマナーを
教えて下さったそうです。肘を体に自然に沿わせて、決して肘を張ってはいけませんと。
私が石川啄木の本を読んでいた時、成瀬少年が節子夫人にお食事を届ける場面がありました。
もしかして成瀬先生だったのでは、と聞いたところ夫はそうかも知れないと気にもしない
返事でした。
夫は先生が勧めてくださった自動車の会社ではなく時計の会社を選びました。
先生は町工場ですよとおっしゃったそうですが、初任給が高いし先輩は少ないしと考えたそうです。
おかげでトップになりましたが、先生はもうその時亡くなられていらっしゃいました。
夫は難しいことを易しく話すことが大切と言っていました。それはこの本を読んで成瀬先生が
きっと教えてくださったのだと思いました。その後夫は県の教育にも携わることができました。
成瀬先生に改めて感謝いたします。
この本を読んで啄木の奥様のこと、御嬢様のことなど良くわかりました。そしてこの本が
昭和53年の白浜町役場から発行されていることに驚きました。
発行者は和えい通夫町長さんです。このような素晴らしい本を発行してくださった、皆様に
感謝いたします。