かきくらしふる白雪の下ぎえにきえて物思ふころにもあるかな 壬生忠岑
心の底に秘めた恋の歌である。
暗い空から降る白雪の積もった下の雪が解けて消えてゆくように、あなたを思う心が消え入りそうなほど苦しんでいることですよ。
雪の冷たさと白さが恋のつらさを引き立てる。表面上は何でもない顔をしておいて、恋は心の内でうずくものだ。それはなかなかに消すことができない。雪のように春になれば溶けてくれるものであればいいのだが。
恋によっては一生苦しむものもあるのである。
たまゆらの夢もかなはぬ恋なれば雪の降る間に凍てて果てなむ 揺之