ゆらぎつつゆく

添島揺之歌集。ツイッター感覚で毎日つぶやきます。色調主義とコラボ。

雪炎

2018-06-20 03:29:09 | 資料


土手の片蔭に雪が残ってゐる、雪の上を月が照らしてゐる。
月にも色はない、雪にも色はない。
月の光と、雪の息とが縺れ合って、冷たい陽炎が立つ。
ちらちらとまぶしい、白いやうな、青いやうな、紅いやうな繊い炎が燃ゆる。
北国に行くと、雪の炎の間から白い女の顔が見えるさうだ。


河井酔茗の詩である。

雪が炎のようであるとは鋭い感性だ。

どちらもたしかに触ると痛い。

女の顔が見えるというは、人間の奥の深い記憶に根差したものであろう。


白雪のもゆる影にも指さしてあつきといひし冬の朝かな    揺之





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