BSディベートという番組でプロ野球改革の話題。
途中からではあったが話題につられて見てしまう。
ディベートのテーマは2本。
ひとつは「球団経営をどう健全化させるか」、ひとつは「人気回復に何が必要か」。
親切にも番組のホームページで登場パネラーの意見が事前に紹介されているが、自分は登場パネラーでは大坪正則教授の意見に近い。
球界問題でモノを言う時の自分の大前提は、「球界を一業界あるいは一組織と考えること」にある。
ドラフト制を談合だと息巻いた小林至に対し、大坪教授は番組でも球団を一企業として考えるのではなく、ディビジョン(部署)として考えればいいのではないかと、若い小林至を諭していたが、同感である。
小林至や客席には自由競争論者もいたが、健忘症なのだろうか、経済ニュースを見てないのだろうか。
それが行き着く先をつい最近、野球ファンは味わったばかりではないか。また企業の統廃合が進む一般社会を見ていないのか。
競争はグラウンド上と、各球団のファンへのプレゼンテーションだけで充分である。少なくとも今は時期尚早だ。この点は後述。
そこで「球団経営をどう健全化させるか」についてだが、これは目的であってはならない。イーグルスは健全経営だったが、アレが理想なわけない。
もし答が単に黒字というなら、選手の年俸に手をつけざるを得ない。この点は再編騒動の際でも殆ど語られなかった。あのとき選手会はベビーフェースのままだったが、この問題を語るとき、彼らがヒールになる可能性がある。その悪影響を懸念する。
永谷脩の言うように二軍選手の給料をカットすうというのは賛成だが、そもそも企業が球団を持つ目的は、昭和の時代からその意義は変わってきてはいるが、現在では本業とのシナジーにある。
この点は野崎勝義と同じ意見で、たとえ赤字であっても、本業に何らかの貢献をしているのであれば、企業にとってその存在意義は大きい(というか、最高のCSRであると個人的には思っている)。
その貢献内容とは、人々に支持されること、球場がファンで埋め尽くされる光景、これに尽きる。
従って普通の企業であれば利益優先となるのだが、球団の場合は売上優先である。
で、売上が上がれば、カープのような市民球団の黒字化も容易になる。
だから売上に響くような収益率改善策については慎重に考えるべきであるし、振興策もその点を第一に考えなくてはならない。
そこで「人気回復に何が必要か」。
各球団ベースで考えれば、地域密着とスター育成・獲得、この2点に尽きると思う。後者はFAマンセーというより新庄をイメージしているのだが。
もうGモデルはありえない。小林至が引き合いに出しているスペインリーグの例はGモデルが成り立たない以上、難しいのではないか。この点も後述。
番組ではこの点について「戦力均衡か、自由競争か」というテーマで例によってドラフトが取り上げられていた。
業界としての売上極大化を目指すのなら、白熱した優勝争いに勝るものはなく、その線でいけば、答は戦力均衡しかない。だからベストではないがドラフトがベターだと思う。
だが、何年後になるかはわからないが、本当に地域密着が進み、浦和レッズのように強かろうが弱かろうがお客さんが来てくれるような状態にまで各球団のファンの「○○ is my life」度が進めば、自由競争でも良しとする。
自由競争というのは、フェアであるべきで、三歳児と大人が競争するものではない。
現在の状況では、バファローズ、カープ、スワローズなどまだ心配な球団が多すぎる。地域密着の概念が今のような形で認知されたのは、つい最近の話。この概念の上で、上記各球団が人気球団になるためにはまだ時間が必要だ。
もちろん「○○ is my life」度を各球団で高めること、ここは今もこれからも自由競争である。ただその相手はコンサドーレであり、ガンバであり、サンフレッチェであり、FC東京であり、K-1である。
逆に球団間での自由競争、これは単なる消耗戦である。川淵Cが喜ぶだけだ。
また番組では国際化について触れており、ここでも小林至が大リーグに負けないリーグをと頑張っていたが、彼の主張でいけば、外国人選手枠は撤廃せざるを得ない。
この点、選手会との軋轢は生まないかどうか。
まあ選手枠は個人的にもいいと思うが、レアルやマンUのようにメジャーのスター選手がジャイアンツとタイガースに集まるようなリーグをこしらえたとして(そんなチームはGでも財源的に厳しいとは思うが)、その2チームはいいが、問題はその他のチームの試合。
これも「○○ is my life」度が各球団で浸透していればよいが、そうでなければ統廃合対象の運命を辿るだろう。
他国で成功しているモデルを導入する際は、中国経済がそうであるように漸進主義でいくのが吉だ。国民性、そして野球の場合は県民性も考えないといけない。
それに最後に永谷脩が言っていたが、国際化の前にプロアマ問題の解決などやることがあるだろうと。
小林至はスペインリーグを引き合いに出していたが、足元を固めぬまま大物選手がやってきても、リーガのようにはならず、ペレ、クライフ、ベッケンパウアーがいたNASL(北米サッカーリーグ)の二の舞になる可能性が高いのではないか。
70年の歴史はあれど、地域密着の概念が認知されてからはせいぜい数年。まだまだ現時点では足元固めの時期だ。
欲求には段階がある。ファンを慣らしつつ、次のステージに向かうには一歩ずつだ。
(文中敬称略)
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