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ANOTHER PLANET

与太話とマンガ。ホームページへのリンクはBOOKMARKにあります。

名著と正論はもう・・・・

2009年11月05日 20時46分58秒 | 本の話

なんとなくハロウィーンの続きのような雰囲気の絵になってしまいましたが、久保田万太郎の俳句は、やっぱり食べ物ネタがいいですね~。

 さて、前回「面白かった」と書いた斉藤美奈子著の「誤読日記」の中の一章は、「21世紀に希望を持つための読書案内」(筑摩書房編集部編)の書評です。
 副題が「若者向けの読書ガイドに名著と古典と正論ばかりが並ぶ理由」。
 「しかし、21世紀になってもドストエフスキーとトルストイの天下なのか・・・と思うと複雑な気分である。」には同感です。
 なんでロシア文学なの?とも思うし・・・。
 名著でも理解できないものは多いし・・・。
 「戦争と平和」は、あまりの面白さに2回立て続けに読みましたけど、人生観が変わったとかそういうことは、なかったような気がします。
 また、瀬戸内寂聴さんのご推薦は「源氏物語」ということですけど、あのお話が「21世紀に希望をもつために」どう役に立つんでしょうか?

 私が何かを推薦するとしたら、「読書は今でも人間にとって最高の娯楽だから、それを一生楽しめるように、若いうちに訓練(たくさん読む)しておいたほうがいい。」ということだけです。
 「本の敷居を高く高く上げてきた結果が『若者の読書離れ』なわけでしょう。『二十一世紀に希望を持つ』ためには、読書ガイドの方法論から考え直す、それが先決かもしれない。」という斎藤さんの結論とそう変わらないみたいですね。

父が子に語る

2008年12月17日 20時35分49秒 | 本の話

 岩井志摩子や中村うさぎばっかり読んでいると思われていそうな私ですので、たまには推薦図書風(だけど絶対にそうはならない)の本の紹介をしようと思います。

 小島毅著「父が子に語る日本史」です。
 目次のいくつかをご紹介すれば、どうして私がこの本を気に入ったのかが分かっていただけるかもしれません。

 「日本史」をどこから見るか
 倭国から日本国へ
 平安時代最強の怨霊
 仁義道徳は人を食らう
 ・・・・・

 さらに2~2箇所引用すれば、面白さも分かっていただけると思います。
西行法師は、自分も釈迦と同じ日に死にたいと言っているのですが、それは仏僧としての宗教心からというよりは、桜の花のもとで死にたいという、美的願望によるもののように見えます。 
 
(中華人民共和国の)国号の核をなしているのは「中華」ということばです。これは、「世界の中心にあって華のように輝き栄えている」という意味でしょう。でも、日本で「栄耀栄華」というと、すぐそのあとに「没落」が待っているような気配を伴ってしまいます。なぜなんでしょう。


 これよりもっとギャグ満載らしい「義経の東アジア」もAmazonで注文してしまいました。楽しみです。


 ところで、今朝のニッケイに小林よしのりの最新刊の広告が出ていました。なんとS天皇(これって伏字になっているんでしょうか?)の似顔絵のマンガ付きで。
 リベラルなはずの週刊朝日で「風刺に富んだ似顔絵」を描いているはずの山藤章二も描いたことはなかったと思います。(ここ何年も週刊朝日の最後のページを見ていないので、確信はありませんけど)私は以前から「どうして似顔絵教室で皇室特集をやらないんだろう」と思っていましたので、今日の小林よしのりのマンガにはちょっと感心してしまいました。何年か前にイッセイ尾形がS天皇役で映画に出演したのが「先陣」だったのかもしれませんけど、その後も似顔絵はあまりなかったと思います。映画より絵のほうが品物としてず~っと存在するから、「偶像」のモンダイに関わってしまいがちなのでしょうか。
 これからは気楽にどんどん、皇室関連の似顔絵が出回るようになったほうがいいと思います。そのほうが人気出るんじゃないかな~。

 
  
( 私も誰かの似顔、描いてみようかな~。でもちょっと難しそう・・・、政治の問題じゃなくて。)


OBAQ

2008年11月14日 22時21分19秒 | 本の話

 おすすめ本の話は、浅田次郎です。
 人気作家なので、今さら私が紹介する事はないのかもしれませんけど、この人の怪談はすごいですね~!!
 「あやし うらめし あなかなし」という怪談の短編集は正真正銘の傑作なので、この中の「遠別離」という話を、仕事帰りの電車内で読んだのが間違いでした。
 夜の十時過ぎに降りる駅を2駅も乗り過ごしてしまうのは、けっこうつらいです。

 私は浅田次郎さんの思想信条にはたぶん共感できないと思うし、文章はちょっと「あざとい」感じがするので、彼とは一生友達にはなれないと思いますけど、でも、それにしても、うまいな~~・・・。
 笑わされて、ハラハラドキドキさせられて、お話の世界を引っ張り回される楽しみを、満喫させてくれます。

  
( 今日のマンガが「分かる」人は、マスターズか、グランドマスターズ・クラスですね♪)


Delivery Health

2008年10月23日 22時05分41秒 | 本の話

[↑今日の絵は、2~3年前の今頃に一度載せたものです。]


 中村うさぎの「女という病」は、最近の数年間に起きた女性が主人公(犯人または被害者)の事件をいくつか取り上げて、それらの女性たちが見た、感じた、欲した、憎んだ、悔やんだであろうことを、作者が思いっきり想像して書いたエッセイ(またはルポタージュ)です。
 タイトルを並べてみると、「同人誌”やおい”漫画家殺人事件」「エリート医師妻誘拐殺人事件」「ニセ皇族の結婚披露宴詐欺事件」・・・・・等々。もちろん、かの有名な東電OL事件も入っています。
 面白かったです~~♪おすすめです。
 素材が素材だけにゴシップとしても充分読み応えがあるのですが、中村うさぎの「自分の内面へのひきつけ方」がハンパじゃないので、ゴシップ的な興味は吹き飛んでしまいます。彼女の「ハンパでなさ」は、いつものことながらすさまじいです。

 で、そのすさまじさが「ついにここまで」というところまで来てしまったのが、昨日読み終わった「私という病」かもしれません。
 なにしろ、本当に実際に「○リヘル」で働いてしまった・・・・という実体験のルポタ-ジュで、ノンフィクション小説で、エッセイです。実際のその「仕事中」の様子や気持ちの動きを、「うさぎ流」に過剰に誠実に、同時に面白く書いていて、傑作だと思います。
 そして、風俗嬢を欲しながら軽蔑して、その矛盾に完全に鈍感でいる男性たちへの分析と批判は、「実際に体験した」という事実と、徹底した「自分の内面との照らし合わせ」によって、とても力強いものになっています。

 「まえがき」にちょっと面白いエピソードが書かれていましたので、引用してしまいます。
北野武は、私の○リヘル体験(注:ヘンな検索にひっかからないように、伏字にしました。)について意見を求められた時に、「○ンポの裏筋○めたとか書いてんの?そんなの作家の仕事じゃないよ。体験レポーターの仕事だろ?」とコメントしたが、そんなら私はべつに「作家」じゃなくてもいい。体験レポーターで、一向に構わない。

 やっぱり北野武って、おっさんですね、ちょっとアタマいいだけの。
 「体験レポーターより作家のほうが上」というのを無邪気に信じて疑うことのない人が「暴力表現」だなんだって、ちゃんちゃらおかしいです。あの人の言う暴力って、ヤクザのカッコよさとかそういうたぐいのもので、何も「破壊」することなんかできないじゃないのかな~。

  
( 「Delivery Health」・・・これなら検索にはひっかかりませんね。)


サイコーな翻訳

2008年05月27日 23時38分22秒 | 本の話

 久しぶりの「おすすめボン!」は、「プーシキン詩集」です。
 初版が1953年、2008年4月に第26刷発行、訳者は金子幸彦という方なのですが、この方の訳文がすばらし~い!
 ものやわらかで美しく、翻訳とは思えないなめらかさです。そして見事に自然な感じの古語の使い方。ホント、最高だと思います。(私にはロシア語の翻訳の正しさなどは分かりませんので、そちらの方面から見たら最高かどうかは分かりませんけど。)

 「何十年も前に読んだプーシキンの童話で白鳥がでてくるやつ、泣けたな~、また読んでみたいな~、同じ金子さんの訳だったのかな~」などといろいろ思い出しつつ、「ご一緒に鑑賞しましょう」というおせっかいな気分で、私が気に入った詩をまるまる一つ、ここに書き写してみることにします。(死後50年が1887年なので、著作権の問題はないですね。)

    エレジー

 もの狂おしき年つきの 消えはてた喜びは
にごれる宿酔いに似て こころを重くおしつける。
すぎた日々の悲しみは こころのなかで
酒のように ときのたつほどつよくなる。
わが道はくらく わがゆくさきの荒海は
くるしみを また悲しみを約束する。

 だが友よ 死を私はのぞまない。
わたしは生きたい ものを思い苦しむために。
かなしみ わずらい 愁いのなかにも
なぐさめの日のあることを忘れない。
ときにはふたたびたえなる調べに身をゆだね
こしらえごとに なみだを流すこともあろう。
わがいのちのたそがれを 愛が別かれの
ほほ笑みで照らしてくれることもあろう。


 ・・・・・1830年、プーシキンが31歳の時の作品です。
 「わたしは生きたい ものを思い苦しむために。」・・・か。
 この間、江ノ電の車内広告で「気持ちのいいアート」というキャッチコピーを見かけて、なんとも変な感じがしたのを思い出しました。

 
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