今Gyaoで配信中の「セクレタリー」、おすすめです。
宣伝文句を読むと、「調教」がどーのこ-のでウッシッシ♪・・・というジュンイチセンセイの小説のようですが、そんなチャチな映画ではありません。S男君とM子さんの純愛物語です。
精神病院から退院した自傷癖のある純情な女の子(リー)が、タイピングの訓練を受けて法律事務所の秘書になります。彼女の雇主(Mr.グレイ)が「S」で、彼女のお尻をバシバシひっぱたくのですが、これには「もっと仕事しろ」とせかせる意味合いはありません。
極端に従順で潜在的に「M」のリーは、Mr.グレイの変則的な「愛の行為」によって「M」を自覚していくにつれ、自傷癖がなくなっていきます。そしてある日母親(家中の刃物を隠している)に「もう隠さなくてもいいわ」と告げるのです。涙を流して喜ぶママは、娘の自傷癖を癒してくれた「プレイ」のことは何も知りません。
ところが、サディスティックな自分の性癖を恥じているMr.グレイは、突然リーを解雇してしまいます。
アル中の父親の入院などいろいろあった後で、リーは仮縫いのウエディングドレスを着たまま婚約者のもとから逃げ出し、「愛している」と告げるためにグレイの元へ走って行くのですが、グレイは彼女に「そこで待っていろ」と命じただけで、出て行ってしまいます。
「いついつまでも、あなたを待ち続けます」というのは、歌の文句の中ではごく気軽に言われている言葉ですが、M嬢がそれを実践すると・・・・。
三日三晩飲まず食わずは当然で、その上タレ流し状態。イスから立ち上がりもせず、ひたすら彼の言ったとおりに・・・じゃなくて「命じた」通りに待ち続け、衰弱しきっても恍惚の表情を浮かべています。
それが人々の知るところとなり、うわさのハンストを一目見ようと、グレイの家には野次馬がたくさん集まって来て、もうどんどん勝手に盛り上がってしまいます。
そんなリーの姿を見て自分が彼女を愛していることに気がついたグレイは、群衆の中へ、ただ黙って彼女を迎えに行きます。オシッコまみれの花嫁を抱え、少しだけ誇らしげに、参列者ならぬ野次馬の群れの前に出て行くS男君。けっこう泣かせるシーンでした。
新婚旅行が「山の中」で、木に縛り付けてのキンバク・プレーというのも、ユーモラスでよかったです。
リー役の女優さんは、素朴な女の子の純情と「M」の気配が混ざりあった表情が秀逸。Mr.グレイ役の男優は、サディスティックな性癖と人間性の優しさが同居する孤独な男を見事に演じていました。演出の趣味のよさも、全編に漂うユーモアも、抑えに抑えている感じです。いかにも妖しげなのに後味の明るいトボケたテーマ曲がよく合っていると思いました。
新妻になったリーの幸せ一杯の笑顔が、ふと「M」の表情に移ろっていくところで映画は終ります。
オ・ト・ナ、だな~♪