稚拙小説練習第一回 「はしご」01

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　僕は梯子を登っている。長い長い梯子。一体いつから登っているのか全くわからない。いきつく当てもなくひたすらに登り続けている。
　梯子はどこに立てかけられているわけでも吊ら下がっているわけでもない。ただ頭上の暗闇から足元の暗闇へ消えているだけ。そう、暗闇。明かりという明かりが何もなくそれでいて少しだけ先が見える。だから一応手探りでなく自分の目で段を確かめて登っている。
　手触りは鉄。錆びてはいないけども塗料にむらがあって少しだけでこぼこしている。塗り方がなんとなく小学校のころ校庭に置いてあった雲悌を思い出させる。かたちは違えど中身は同じという感じだ。
　周りを見回す。何度となく見た風景が視界に入る。できれば視界に入れたくない光景だ。むしろ真っ暗闇のほうがいい。
　まず目に入るのは石の壁。次にガラスの窓。また石の壁。またガラスの窓。たぶんどこかのビルの吹き抜けにいるのだと思う。どうしてこんな形になっているかは理解できない。登り続けで疲れているというのに頭まで疲れさせたいとは思わない。
　実を言えばもう何日も何ヶ月も登り続けている。登るのは慣れっこでもう懸垂の状態で休むことができるくらいだ。しかし睡眠のほうは少しきびしい。梯子は直角に伸びているわけでもないらしく、時々曲がったり折れたりして睡眠が取れそうな平面が見つかる時がある。ごつごつしてて安眠できる場所ではないものの眠れないよりましというもの。徹夜で寝床を探した経験は幾度となくある。
　一番気になるのは食事だ。梯子以外になんにもないはずの空間に突然遠くから木が伸びているところがある。ビルの吹き抜けの中だけにとても不思議だ。しかもその木には必ず果実が実っているのだ。それはリンゴであったりモモであったりとその時々で違う。知らない実が生っていることも多く、なんだか真っ黒な皮に包まれた黄緑色の実が生っていたときは食べるのに戸惑った。結局空腹に負け、見た目どおりに青臭く、それでいて果物のくせにあぶらっぽいその実をむさぼったものだ。
　それと寝床になりそうな平面にときどき箱がおいてあるときがある。というか隙間に引っかかっているような感じにだ。中には僕にとってうれしいものが入っていることが多い。例えば代えの服。ビタミン剤のボトル。たまにパンとかカレーのレトルトパックなんかが入っていて喜んで食べた。
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とりあえず今日はここまでです。
続きをお楽しみに。
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