この元日わたしのスマホ宛に、不意にメールがとどいた。
発信者はいずれの方だろう。
スズキとある。
名字だけで、名前が書かれていない。
スズキさん。
その名字をお持ちの方は日本全国津々浦々までかぞえると、
一体どれくらいの方がおられるのだろう。
この疑心暗鬼のご時世である。
一瞬、わたしは詐欺を疑った。
気味がわるくなり、すぐに返信を送らないでいた。
すると、その方は二度三度と追伸メールを送ってくる。
これは異例の事態。
わたしのほうに何らかの落ち度があるやもしれない。
こちらの旧姓をご存じだし、メールの中身はまことにざっ
くばらんなもの。
昔からの知己でなければ、書けない話の内容であった。
ボケが始まったかしらん?
いやいや、待てよ。
度忘れということがある。
一度や二度くらいでは、そうそう悲観することはない。
そう自分を奮い立たせ、じっくり調べてみようと思った。
第一発信者に、こちらの携帯番号を教えたかどうか、定か
でない。
ええい、それじゃと、古いアルバムを押し入れの中から取
り出してきた。
スズキさん名の親しい同級生は、なんと高校時代に存在し
ていた。
(すわっ、おれのド忘れか……)
アルバムのページをめくりだすとすぐに、あるページに小
さなメモがはさまっているのに気づいた。
スズキ何某。
それに付随した記録がわたしの筆跡で記されていた。
わたしはすぐに相手の固定電話のダイアルをまわした。
「やっぱり連絡くれたんか。おまえのことだから、むげな
ことはせえへんと思って待ってたよ」
「ほんと、すっかり忘れていて、ごめん」
「いや、しょうない。おまえもやっぱりアレになってしまっ
たのかってな、ちょっっぴりさびしかったよ」
どうやらスズキくんはわたしのド忘れをぼけのたぐいと解
釈してしまったらしい。
わたしはそれ以上、ああだのこうだのと自己弁護するのは
よした。
相手もこちらも晴れて、後期高齢者の仲間入り。
おぎゃあと産声をあげて、七十五年。
人生を振り返るとそれぞれに思うところがあるわけだ。
折しもほかの筋からも、わたしが今現在どうしているかを
訊ねる連絡が入った。
こちらは大学時代の同窓生からのハガキ。
所属していたクラブのOB・OG会の勧誘だった。
「半世紀ぶりにお会いできませんか」
人生100年時代とは申せ、人さまざまだ。
一寸先は闇が世の常である。
わたしの拙作「若がえる」完了とほぼ同時に、同世代の仲
間から連絡が入るのも、何かのえにしである。
「川の流れのように」
美空さんの歌を、今、かみしめている。
発信者はいずれの方だろう。
スズキとある。
名字だけで、名前が書かれていない。
スズキさん。
その名字をお持ちの方は日本全国津々浦々までかぞえると、
一体どれくらいの方がおられるのだろう。
この疑心暗鬼のご時世である。
一瞬、わたしは詐欺を疑った。
気味がわるくなり、すぐに返信を送らないでいた。
すると、その方は二度三度と追伸メールを送ってくる。
これは異例の事態。
わたしのほうに何らかの落ち度があるやもしれない。
こちらの旧姓をご存じだし、メールの中身はまことにざっ
くばらんなもの。
昔からの知己でなければ、書けない話の内容であった。
ボケが始まったかしらん?
いやいや、待てよ。
度忘れということがある。
一度や二度くらいでは、そうそう悲観することはない。
そう自分を奮い立たせ、じっくり調べてみようと思った。
第一発信者に、こちらの携帯番号を教えたかどうか、定か
でない。
ええい、それじゃと、古いアルバムを押し入れの中から取
り出してきた。
スズキさん名の親しい同級生は、なんと高校時代に存在し
ていた。
(すわっ、おれのド忘れか……)
アルバムのページをめくりだすとすぐに、あるページに小
さなメモがはさまっているのに気づいた。
スズキ何某。
それに付随した記録がわたしの筆跡で記されていた。
わたしはすぐに相手の固定電話のダイアルをまわした。
「やっぱり連絡くれたんか。おまえのことだから、むげな
ことはせえへんと思って待ってたよ」
「ほんと、すっかり忘れていて、ごめん」
「いや、しょうない。おまえもやっぱりアレになってしまっ
たのかってな、ちょっっぴりさびしかったよ」
どうやらスズキくんはわたしのド忘れをぼけのたぐいと解
釈してしまったらしい。
わたしはそれ以上、ああだのこうだのと自己弁護するのは
よした。
相手もこちらも晴れて、後期高齢者の仲間入り。
おぎゃあと産声をあげて、七十五年。
人生を振り返るとそれぞれに思うところがあるわけだ。
折しもほかの筋からも、わたしが今現在どうしているかを
訊ねる連絡が入った。
こちらは大学時代の同窓生からのハガキ。
所属していたクラブのOB・OG会の勧誘だった。
「半世紀ぶりにお会いできませんか」
人生100年時代とは申せ、人さまざまだ。
一寸先は闇が世の常である。
わたしの拙作「若がえる」完了とほぼ同時に、同世代の仲
間から連絡が入るのも、何かのえにしである。
「川の流れのように」
美空さんの歌を、今、かみしめている。
昔のご友人からの連絡、タイミングが重なって届いたのですね。
最初詐欺メールと思われたのも分かります。
今はいろいろ危険な世の中ですから。
でもご友人でほんとによかったですね。
私は卒業アルバムが手元になくて,とても残念です。
いつか見つかったらいいなと思っています。
こんばんは。
タイトルに惹かれて、拝見しました。
私も時々、ハッとヒヤリとすることがあります。先日は、とうとう10年前に読んだことのある本を再購入するという失態を犯しました、、、
まだ50代でボケたら、本当に笑い話にもなりません。
若い頃、同じ時間を共有した仲間というのは良いものだと思いました。
古希を六つも過ぎたわたしの歳まで暮らしてください。そうしたらわかりますよ。わたしがどんなふうに暮らしているか。大学時代の同窓会。それも半世紀以上経っている。うれしくもあり、かなしくもあり。そんな心境です。想い出はそれとして取っておきたい。半分はそんな気持ちでいます。