油屋種吉の独り言

オリジナルの小説や随筆をのせます。

被災者の心を、我が心に。

2013-09-24 19:39:59 | 日記

 久しぶりに、お隣さんと話をした。
 連休もあってか、一週間くらい、気仙沼に戻って
おられた。

 ゴミの片付けの真っ最中だった。
 同い年だ、ということもあって、話がはずむ。

 お昼すぎのことで、陽射しが強い。
 じりじりと頭が焼かれるようだった。
 もう、十月になるのにな。
 いったい、今年は、どうなってるんだろう。
 話しながら、思う。

 話題は、当然、被災地のことに及ぶ。

 「お年寄りが、難儀してるね」
 「そうでしょうとも」
 慣れない仮設暮らしで、体調をくずされる方が多い、
と聞いていた。
 ひどい場合は、亡くなる方も、出ている。

 「私は、恵まれてたから、こうして、家を買えたが、
県営住宅が当たらないか、と願っている人が多いよ。建
てる土地が思うように手に入らないらしく、希望者に比
べて、戸数がまったく足りない。冬になる前に、ちゃん
としたところに入りたいもんだよ」
 わたしは、はあと言ったきり、口を開けたままだ。

 東北の寒さを、経験したことがない。
 大震災の日は、三月十一日だった。
 空から、降るものと言えば、みぞれや雪だった。
 マキストーブで、被災された人々が、暖をとっていた。

 話が、ぐんぐん深刻になっていく。 
 「一番、困っていることは、何でしょうね」
 「うん、まあ、何だね。働ける場所かな。家族持ちは、
つらいところだよ。漁業ばかりじゃないからね」

 「復旧工事が、恩恵を与えないですか」
 「うん、うん。なんだね。大手の土木企業が、重機を
使って、やってるのが目立つよ。ダンプを見ても、県外
ナンバーが多いし」
 「そうですか」

 「もっと、地元の小さな土建屋さんにも、仕事が行き
わたってほしいもんだね。そうでないと、地元住民の仕
事がないことになる」 
 「まったくですね」  

 お国言葉がまじって、訊きとりにくいが、必死に耳を
傾ける。
 「そうですね。分かります」

 うんうんと相づちを打つしかない。
 一度も、被災地に、足を運んでいない私だ。
 みじめな気持になってしまう。
 気遅れしそうになるが、懸命に考える。

 「お忙しいのに、お邪魔して」
 と、その場を辞した。 
 有意義な時間を、過ごせたと思った。

 自分が、やれることといったら、何だろう。
 震災直後に思ったことを、もう一度、考えてみた。



  
  
  
 にほんブログ村 純文学小説

 http://novel.blogmura.com/novel-literary/
 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする