「自然写真家 野生へのまなざし・カメラマン前川貴行」~口語短歌と写真で綴る「世界文化紀行」
2022-03-12 07:34:50
「動物写真家 前川 貴行〈まえかわ たかゆき〉」
2月28日BSNHKで前川貴行さんの世界を放送していました。私は彼の動物を撮影する姿勢や写真を見て一瞬のうちに心を奪われました。前川貴行さんは霊長類やクマ、ヒョウなど様々な野生動物を、息づかいを感じるほどの間近で撮った作品で知られています。
正面から向き合う動物たちの視線から、その心のうちまで感じるような作品が特徴です。じっくり時間をかけて相手との信頼関係を作り、距離を詰めていく独自の撮影で、生きものたちの思わぬ素顔が描き出されています。
今回手法は変えずにツキノワグマ、ニホンカモシカ、イノシシの撮影に挑戦されました。文章説明は前川さんの語りで構成されています。
ツキノワグマ
口語短歌
「視線から 向き合う瞬間 撮影は 動物たちの 思わぬ素顔が」
夏から秋にかけて東北地方の沼地で、ツキノワグマの撮影に取り組んだ。写真家として活動しはじめた頃、まず最初にクマの仲間を撮っていこうと決めて、北米や北海道などでずっとクマに接してきた。本州にすむのはツキノワグマだが、ヒグマにくらべてこぢんまりとしているものの、漆黒の毛並みも美しく、僕のお気に入りの生き物だ。クマが鮭を食べている姿はとても面白くて、ずっと見ていたかったですね。
ニホンカモシカ
口語短歌
「カモシカと 間合いを詰めて 見つめ合い シャッター押す 感動の瞬間」
カモシカの撮影では、長い時は5時間くらい密着して山を歩きます。カモシカを見付けたら15メートルほどの間隔を空けて、逃げられないように付かず離れずの距離を保ちながら付いていくんですよ。やぶの中では木の葉や枝などが邪魔になり、シャッターチャンスもあまり多くないので、姿がはっきりと見える「抜け」の良いところが運良くあれば、シャッターを押します。カモシカは、動物写真家としての僕を鍛えてくれる動物です。
口語短歌
「認め合い 素顔に迫る 表情が 命響き合う 対等な存在」
カモシカも僕が付いてきていること、敵ではないことがわかっているから、こちらを見ているような表情が撮れてもおかしくないと思います。カモシカは地域で保護活動がされていて、個体識別のために名前が付いているんです。生まれた子どもは、最初に見付けた人が名付け親になれるんですよ。僕もある子に「パール」と名前を付けさせてもらいました。ある時、地域の人から、「パールの姿が最近見えない」と連絡をもらい、心配していたんですが、現地に行ったら再会できてほっとしました。
イノシシ
口語短歌
「母親の イノシシの姿 両面も 優しさの中に 厳しさもあり」
それぞれの土地で生きられる動物のキャパシティーは決まっていますから、イノシシが増えすぎると、その土地の環境が破壊されてしまいますね。この写真を撮影したのは兵庫県の六甲山という、市街地に近い山の中で、増えすぎたイノシシが街に出てきてしまうことも多いのです。母イノシシの姿からは、厳しさと優しさの両面が感じられますね。子どもの見つけた食べ物を横取りしてしまうこともあれば、子どもを横たわらせてグルーミングしていることもあります。
「前川貴行 プロフィール」
1969年東京都生まれ。エンジニアとしてコンピュータ関連会社に勤務した後、独学で写真を始める。1997年から動物写真家・田中光常氏の助手を務め、2000年からフリーでの活動を開始。世界を舞台に、野生動物の生きる姿をテーマに撮影に取り組み、雑誌、写真集、写真展などで作品を発表している。2008年日本写真協会賞新人賞受賞、2013年第1回日経ナショナル ジオグラフィック写真賞グランプリ受賞。公益社団法人日本写真家協会会員。主な著書に『動物写真家という仕事』など。
参照
https://www.sanyo-chemical.co.jp/magazine/archives/2170
https://finestable.exblog.jp/23193507/
https://www.markinsjapan.com/report/maekawa/
「2021年軽井沢レイクガーデンに咲いた薔薇たち」
「テレトン」2021年10月7日撮影
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