プロペラ機の「音」好きだ。
そして僕は「珍機」が好きだ。
「今」を凌ごうと考えに考え、実際作って、やっぱり失敗だった、とか頑張ってこんなん出来ました、でも完成した時にはすでに時代遅れでした、とかね。
そういう事で旧日本海軍が開発した「震電」。世界でも珍しい「推進式(プッシャ)」レシプロ機だ。
アメリカのB52による大規模都市空爆に対して、超高空域(高度14000M)から一気に降下してB52を撃墜するという為の局地型。
対空戦闘機だけど、対都市空爆機要撃ってのが、もう日本の首都上空で、って事じゃない。
それだけ切羽詰まってたんだなあ・・・・・と。切ないね。
単純に考えて、プロペラを後ろに持ってくればパワー効率は高いだろう。
だから日本だけでなく各国でプッシャの試作は行われた。
プッシャの最大のメリットは機体をコンパクトに設計出来る点だ。が、それを補って余りあるデメリットも多い。例えば牽引式(プロペラが機体前方にある。トラクタ式と呼ばれる)のようにプロペラでエンジンを冷却出来ないというデメリットも生まれる。エンジンの冷却問題だけに留まらず、メリット・デメリットを相殺して、結局実績のあるトラクタがプロペラ機でのメジャーになった。
更に戦争末期、「超高速域」に対しレシプロエンジンはジェットエンジンに駆逐されていった。
「震電」は何とか完成に漕ぎ付け、何度かの試験飛行を繰り返すうちに、終戦を迎え、
完成機はこの国の国民によって破壊された。残る1機分の部品はアメリカに接収され、
スペアパーツ、設計図、資料全般が焼却処分された。
・・・・・もし震電が実用に耐えるものだったとしても、戦争がひっくり返ったとは僕には思えない。
悲運と言えば悲運と言える。が、「震電」だってただの「人殺しの機械」だ。
でも「桜花」のような悲しい飛行機に比べたら、それでもちゃんと着陸する事が考えられていたなら、何だかそれだけで、やはり人間の命について考えさせられるものがあるな、と思う。