杉原 桂@多摩ガーデンクリニック小児科ブログ

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情報から孤立した被災地

2011-03-28 | クリニック通信
私がJMATとして参加した石巻赤十字の活動について、記事があったので許可をえずに転載.
これはすでに古い情報になっている.
時々刻々と状況が変化しているのが被災地だ.
こうと決めつけてかかると、足下をすくわれる.


■from MRIC

  □ 情報から孤立した被災地


   ■  植田信策:石巻赤十字病院

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 ■from MRIC
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 宮城県石巻市は津波による水が引き、自衛隊による幹線道路の復旧が徐々に進んで
います。3月11日の地震と津波の後、石巻市がおかれた状況は情報からの孤立でした。

 仙台空港が津波に襲われる映像がTVで繰り返し流されたため、全国から集まってき
たDMATは仙台近辺の被害が大きいと考え仙台入りしました。しかし、県内の他の被災
地域の情報がなく、すぐに戻った隊もあったそうです。この時点で石巻から南三陸沿
岸にかけての被災情報が仙台にはあまり入っていなかったようです。

 石巻市から県の対策本部へ被災状況が伝わっていなかったのでしょうか。もっとも、
石巻市役所は水没し、停電と固定電話・携帯電話の不通などにより市役所に被害情報
が集約されなかったことが、県への正しい情報伝達を妨げたのだと思います。このた
め、石巻市立病院の被災情報を市が知ったのは2日後のことでした。

 石巻市立病院は海岸に立地していたため、津波により周囲が海とつながって完全に
孤立しました。水没のため自家発電も使えず、医療スタッフ、患者は押し寄せる水と
断続的な余震のなか、長時間の恐怖に晒されていました。同院の医師が自力で脱出し
て市役所に直接知らせ、それからやっと自衛隊ヘリによる患者救出が始まりました。

 避難所への搬送も情報不足に苦しみました。石巻赤十字病院にヘリや救急車で運び
込まれ治療を終えた傷病者や家族は、避難所への交通手段と避難所の受け入れ状況が
わからなかったため、被災後72時間経過した時点で院内に約500人留まることになり
ました。市が辛うじて手配してくれた地元観光会社のマイクロバス2~3台が市内の避
難所を回り、受け入れ可能な人数を下ろして次の避難所を探すといったものでしたの
で、病院から出たバスが戻ってくるのに長い時間を要し、院内の避難者はなかなか減
らない状態でした。避難所への搬送を県や自衛隊に直接交渉しましたが、そんな情報
は上がってきていないと、まともな対処はされませんでした。院内も救急対応で人手
が足りないため3人のスタッフでこれだけの人数に対処しなければなりませんでした。
彼女たちは、避難所搬送が進まないことに怒り、情報の少なさに絶望的な気分でロビ
ーで夜明かしせざるをえなかった被災者達に、夜遅くまで対応していました。その職
員の中には家族の安否もわからないまま職務を続けていた者もいました。

 避難所の情報も市が把握できず、食料や水などの救援物資が3日間以上届かない避
難所がありました。市が指定した避難所では収容しきれず、その何倍もの避難所が存
在していましたが、通信手段がないため情報が市に伝わらなかったようです。

 避難所搬送での問題点は、受け入れ拒否となる対象者の存在でした。津波で流され
て救助された被災者は家族同伴であるわけがなく、自力歩行できない被災者・傷病者
や、寝たきりの高齢者、一人身の認知症の高齢者を受け入れる避難所がないため、介
護や医療のスタッフがいる避難所ができるまで、院内に留まらざるを得ませんでした。
また、週3回の透析が必要な被災者も、避難所との間の交通手段がないため院内に留
まることになりました。在宅酸素療法が必要な被災者も停電により酸素濃縮器が使え
ないため当院に収容され、院内の各所に留まることになりました(約70名)。彼らは
入院ではなく、当院は避難所でもないため食料も水も供給できませんでした。

 透析患者を収容する避難所が設定され、市と交渉のすえシャトルバスを運行してく
れるようになったのは地震後約1週間のことでした。

 現在の喫緊の問題は避難所への支援です。食料の配給は、おにぎり1個、パン1個、
それに果物類が加わるだけという分量です。これが1日量です。ボランティアや自衛
隊による炊き出しが行われている避難所でなければ、極めて厳しい内容です。市では
これらの配給さえ厳しい状況で、支援物資が届かなければすぐにでも倉庫の底をつい
てしまうとのことでした。また、衛生面も悪く1000人の避難者に対し、仮設トイレが
6基のみという避難所や、飲料水が足りない避難所など、感染症対策、エコノミーク
ラス症候群対策の実施には程遠い環境と言えるでしょう。

 現在、避難所の情報収集は市と赤十字救護班で行っています。その結果をもとに必
要な物資の供給を県に依頼しています。しかし、十分な支援物資は届いていません。
避難所には約2.5万人、食料の配給を必要としている住民も約4.5万人います。合わせ
て7万人分の食料供給が必要です。食料が届かないために略奪がおこっていることも
被災者から聞きました。新潟中越地震や阪神淡路大震災でも震災後の関連死が多数あ
ったことを考えると、これから起こるであろう悲劇を最小限に食い止められるかどう
かの分岐点に今、さしかかっています。支援物資が比較的豊かな仙台市から車で1時
間の距離なのにその格差は大きいのです。

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