木のぼり男爵の生涯と意見

いい加減な映画鑑賞術と行き当たりばったりな読書によって導かれる雑多な世界。

《さすらいの女神(ディーバ)たち》《クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち》

2012-12-14 21:07:37 | 日記


早稲田松竹にて映画鑑賞。

「クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち」(2011年)
ドキュメンタリーの巨匠フレデリック・ワイズマン監督作。

これでもかというお尻の嵐。
いや、確かに皆さん美尻ですけど。
お尻ばかり見てるとなんか妙な気分。
だんだん、ただの物体としてしか見えなくなってきます。
世界に誇るお尻のカーブも、工業用デザインの感覚になってくる始末。

照明の効果が素晴らしく、まさにイリュージョンといったところ。
ヌードショーの合間に影絵や、タップダンスも楽しめるらしい。
実際、お客さん達、ものすごい嬉しそう。楽しそう。
客にも自信を与えるという一流クラブのなせる業か。

スタッフ会議にもカメラが潜入。
“ショーを続けながら、新作を作るのは無理。店を閉めて新作に専念したい。”
と言い張る演出家。
“株主が承知しないわ。”という支配人。
裸の踊り子の影に、株主有りき。
なんか現実に引き戻される、瞬間。
現場の一同曰く“あれもこれもやれ、なんて無理。”
世の中、どこも状況は同じらしい。

裏側も見せますが、ショー自体の映像も多く様々なダンスを堪能。
たまに、尻ばっか映さず、全体を映しておくれよぉと泣きたくなったりもしましたが。
まぁ、これはこれで。

クレイジー・ホースを熱く語る男の広報ぶりが可笑しい。
オーディション、リハーサル、衣装部、楽屋、スタッフ会議。
ショービジネスの世界が浮き上がる。


「さすらいの女神(ディーバ)たち」(2010年)
監督・脚本・出演マチュー・アマルリック、脚本ラファエル・ヴァルブリュンヌ

アメリカの踊り子を連れて、フランスを巡業するお話。
登場する踊り子、全員が現役の“ニュー・バーレスク”ダンサーという充実ぶり。
皆さん、迫力ボディというか貫禄の体形。
突き進む先は、エンターテイメント。
とにかくお客を楽しませ、自分も楽しむ。
個性を活かした出し物の数々。
ユーモラスだったり、元気いっぱいだったり。
サービス精神溢れるショーは、ホントに楽しくて面白い。
決してモデル体系でもなく、プレイメイト体系でも無いが。
事実として、彼女達は輝いている。
彼女たちが自らの体形や個性を愛しているからこそ、観客も彼女達を愛するのがよく解る。

アマルリック氏にこんな才能があったとは。
丁寧にエピソードを繋げ、それぞれの魅力を映し。
人生まできちんと垣間見せる。
ショーのシーンの映し方、編集の仕方も上手い。
時に辛らつなセリフは在っても、全体の温かみは失わず。
恋愛に持ち込む展開も、心憎いほどの柔らかさ。
登場人物が少ない訳でもなく、ロケ地も多い。
そして、2時間以内に収めるというワザ。
この手腕。
アルノー・デプレシャン監督作での役者としての経験も活きてるのかも。

やたら感傷的になりすぎず、悲惨さをアピールせず。
不必要な衝撃も無く、妙にてらう事も無く。
ラストシーンも相まって、なんかカッコイイ気がしてきた、この人。