木のぼり男爵の生涯と意見

いい加減な映画鑑賞術と行き当たりばったりな読書によって導かれる雑多な世界。

《WIN WIN ダメ男とダメ少年の最高の日々》

2013-02-28 13:44:01 | 日記


『WIN WIN ダメ男とダメ少年の最高の日々』(2011年)

弱小レスリング部が、ちょっとだけ熱くなる!!

福祉関係専門の良心的な弁護士マイク。
家庭円満なれど、事務所は壊れかけ、閑古鳥の鳴く日々。
監督する高校レスリング部は、やる気なし根性なしで連敗続き。
そして、こんな時に壊れるなよ、トイレにパソコ~ン。
爆発の秒読みに聞こえる日増しに大きくなるボイラーの音。
修理代に、コピー機レンタル代に、生活費に…
金欠甚だしいマイク。
痴呆老人レオの後見人になれば貰える月額報酬の誘惑が…

ひょっこり現れ、マイクの家に居候するレオの孫カイル。
実はかなりな腕前のレスリング選手だった事が判明し、
監督、コーチ、チームがにわかに熱気を帯びてくる。

お互いがお互いに、とても良い影響を及ぼしていくという、
実にいいお話。
悩める中年男を演じたら、ピカイチなポール・ジアマッティ。
ちょっとした一言が妙にリアル。
好戦的。でも、良い妻ジャッキーのかち気さが可笑しい。
離婚に未練タラタラで裕福な親友テリー。
テリーの単純さ、軽率さがかなり笑え、映画の雰囲気にプラスに貢献。
ご老人レオが、これまたいい味出してます。
ある意味、名演だと思うが。
テンション低めで言葉数の少ないカイル。
ほのかに漂う好青年ぶりが好い感じ。
ワガママでだらしない母シンディ。
問題有りな女をメラニー・リンスキーがそつなく演じる。
出演者のアンサンブルが映画の世界観を存分に体現。
さすが、トム・マッカーシー監督!!
明確な雰囲気づくり。

誰だって間違いは犯すし、失敗もする。
やり直す為の二度目のチャンスの大切さ。
必要とされる事、必要とする事の充足感。
一歩前に進む─たとえ小さな一歩でも大きな意味を持つ。
その意味を知っているという幸せ。

『WIN WIN ダメ男とダメ少年の最高の日々』(2011年)
監督・原案・脚本:トム・マッカーシー、原案:ジョー・ティボーニ
出演:ポール・ジアマッティ、エイミー・ライアン、ボビー・カナヴェイル、ジェフリー・タンバー、
バート・ヤング、メラニー・リンスキー、アレックス・シェイファー、デヴィッド・トンプソン

『スカーフェイス』

2013-02-25 21:34:07 | 日記


「スカーフェイス」ポール・モネット

壮絶。凶暴。自滅。

キューバから難民としてマイアミへ上陸したトニー・モンタナ。
カリスマ性と凶暴さで麻薬王へとのし上がり、
‘黒いアメリカン・ドリーム’を手にする男。

映画『スカーフェイス』(1983年)のノベライゼーション。
映画の脚本はオリヴァー・ストーンが担当。
『スカーフェイス』は映画『暗黒街の顔役』(1932年)のリメイク。
って…誰が何の権利持ってんのか頭痛くなる状況ですけど。

凄まじい生きざま。

カストロ政権下のキューバ。
十二歳の頃にはすでに、盗みやひったくりで稼ぎ。
十六歳で、縄張りを持ちマリファナを捌く。
軍人の妻の愛人となり…ばれる!!
怒り狂った軍人にナイフで切りつけられ、スカーフェイスに。
ここで終わらないのがトニー・モンタナ。
復讐あるのみ。
軍人を射殺。

結局捕まり、強制労働六年。
アフリカで戦闘に参加。
そして脱走。
またしても捕まり、キューバに強制送還。
懲役二十年…

時は1980年代。
人権政策の一環で、カーター大統領が
社会主義国キューバより亡命を希望する者を受け入れると発言。
政治犯も犯罪者もぜ~んぶ一緒くたにして送りつけるカストロ首相。

そんな訳で、トニー・モンタナがマイアミに上陸。
その後は、殺人、強盗となんでもござれでのし上がる。
コカイン王となり、美人の妻を手に入れ。
持て余す程の金に囲まれる日々。
野望に燃えた男の早すぎる成功。

軽蔑していたコカインに自ら溺れ。
歯止めのきかない暴走を始めるトニー。
派手な展開では有るものの。
薬のせいで無茶する人間は、あまり魅力的とは言えず。
小説としては、残念ながらちょっとつまらない終盤。

とは言え、燃え尽きる姿は凄まじいの一言。
誰ひとり幸せに出来なかった男の悲しい最期。


『カムバック・ヒーロー』

2013-02-22 23:59:09 | 日記


「カムバック・ヒーロー」ハーラン・コーベン


『唇を閉ざせ』(2006年フランス)の原作者がハーラン・コーベン。
という事で、気になる作家リストに浮上。
とりあえず、アメリカ探偵作家クラブ賞を受賞した本作をば読む。

っていきなりシリーズ3作目でした~。
主人公マイロンがFBIに協力したという過去。
彼女との別れ話。
相棒ウィンとの今にいたる活躍、等。
1・2作目で色々あったらしい…
まぁ、いいや。読んじゃえ。

怪我によりプロバスケ選手の道を絶たれたマイロン。
現在はスポーツ・エージェントとして活躍する彼。
スター選手の失踪を解決するよう依頼される。
なんと選手としてチームに参加。
チームメイトから諸々の情報を引出そうとするが…

まず、主人公のマイロン。
ロー・スクール出身の黒帯を持つスポーツ・エージェント。
なんともアメリカ的な設定。
相棒はジャガーを乗り回す超エリート証券マンのウィン。
って、あり得んだろ。
このキャラ…
さらに、マイロンの秘書は元女子プロレスの選手だったり、と。
サービス精神あふれるキャラ設定。
アメリカ以外では、無さそうな人物たち。

失踪した選手の元妻がマイロンの元彼女だったり。
ギャングやら過激派が登場したり。
殺人、ギャンブル、恐喝、とよりどりみどり。
警察を巻き込み、記者と協力し。
思いつく限りの事を詰め込む大胆さ。
さすが、アメリカ。
エンタメの国。

マイロンの軽口、減らず口で会話が楽しい。
複雑揉みくちゃな展開でも、終わってみればスッキリ。
なんだか、ビデオ・ムービーな匂い。
軽~い読み物。
気分転換には最適な一冊。
にしても、この表紙、タイトルはどうかと思うぞ。









《アイアン・スカイ》

2013-02-21 01:36:17 | 日記


『アイアン・スカイ』(2012年フィンランド/ドイツ/オーストラリア)

荒唐無稽のスペース・ナチ・オデッセイかと思いきや。
現在の国際関係を皮肉いっぱいに描くというワザありな映画。

2018年。
久しぶりに月に飛行士を送ったアメリカ。
月に降り立った彼らが見たものは…
ナチスの要塞だった。。。
月の裏側で地球征服を計画中のナチス。
捕らえた飛行士を案内役に、PCを調達しに地球へと向かうが…

ナチスの子供達の名前が
ジークフリートやブリュンヒルデだったり。
旗艦の名前が“神々の黄昏”号だったり。
ほどほどにしとけ、な帝国主義ぶりが可笑しい。

宇宙飛行士が、黒人だった為。
マッド・サイエンティストにアーリア人化されちゃうという…
実にリスクを伴うネタなれど。
彼が飛行士として選ばれた理由やら、
地球へ帰還してからの境遇やら、
その後の活躍やら。
何もかも申し分なく描かれ、
しかも笑えるというスゴさ。

ナチを迎え撃つアメリカの大統領がペイリン女史にクリソツだったり。
セリフに真実味が有り過ぎて、キワドイほど。
“一期目で戦争した大統領は再選されるのよ。
どこと戦争しようかと思ってたけど
(ナチなら)願ったりかなったりね。
アメリカがまともに倒したのはナチだけだもの”
ドひゃー。
こんなセリフ書けるなんて!
というか恐ろしくて書こうと思わんよ、普通。
ちなみに彼女のキャンペーン・フレーズは、
YES, SHE CAN.
この徹底ぶり。
痒いとこに手が届いてますな。

大統領のイメージ戦略を担当するヴィヴィアン。
このキャラの迫力が素晴らしい。
口汚くののしりまくりなセクシー美女。
お見事。

パイパー・ペラーボ似のユリア・ディーツェ(レナーテ役)。
パトリック・スウェイジが蘇ったよなゲッツ・オットー(アドラー准将)
ゼタ=ジョーンズとマギー・Q足したようなペータ・サージェント(ヴィヴィアン役)
第二のダニー・グローヴァーか?なクリストファー・カービイ(ジェームズ・ワシントン役)
ペイリン女史に程よく似せてるステファニー・ポール(アメリカ合衆国大統領)
そして、この人!マニア心をくすぐるウド・キア(総統)
出演者全員、ナイス。

国際会議での各国の発言。
これがまた、すこぶる良く出来てます。
更に“宇宙平和条約”なるものの実態が明らかになったり。
各国が醜態をさらす事態に陥ったりと…
建前と本音をかくも上手に、皮肉に、面白く暴く実力。

映像も申し分なく。
セットもCGもきちんと作ってあるし。
レトロなナチのマニュファクチュア船も楽しい。

まさかこの皮肉に気付かない人とか居ないよな?
通じない人も存在しそうなのが、恐ろしい。
下手に薦められない作品ではあるな。。。
観る人によっては、
30%しか楽しめない人や
50%しか楽しめない人が居るだしょう。
ただ、100%楽しめる人にとっては、
文句なくホントに100%キッチリと楽しめます。

制作費の10パーセント以上を一般の人から募ったという事で。
エンドクレジットは長~いよ。
ちゃんと全員の名前が載ってるらしい。。。

『アイアン・スカイ』(2012年フィンランド/ドイツ/オーストラリア)
監督:ティモ・ヴオレンソラ、脚本:マイケル・カレスニコ、ティモ・ヴオレンソラ、原案:ヨハンナ・シニサロ
撮影:ミカ・オラスマー、プロダクションデザイン:ウルリカ・フォン・フィーゲザク
出演:ユリア・ディーツェ、ゲッツ・オットー、クリストファー・カービイ、ペータ・サージェント
ステファニー・ポール、ウド・キア

《ロック・オブ・エイジズ》

2013-02-20 23:54:03 | 日記


『ロック・オブ・エイジズ』(2012年)

シナリオがアホらし過ぎますぜ。
そしてミスったキャスティングが追い討ちをかける。。。
脚本が悪いと、全員マヌケに見える事が多いが。
今回は更に、下手に見えるというオマケつき。
って見えるんじゃなくて、実際下手なのかぁい?

無意味なカット割による編集。
歌も、みんなで歌いすぎと違う?
フィニッシュ感がまったく無いんですけど…
ちなみに盛り上がりも…あったっけ?
なんか流れ過ぎ、流し過ぎ。
メリハリが無く、生気に欠ける。
そして、熱気が遠いな~。


田舎から出てきた歌手志望のシェリー。
憧れのライブハウス“バーボン・ルーム”でドリューと運命の出会い。
伝説のロック歌手ステイシー・ジャックスのライブの夜。
大きな変化が、それぞれに訪れる。
80年代ロックを歌いまくるミュージカルの映画化。

シェリー役のジュリアン・ハフが自分の良さを発揮。
ひとり勝ちとは言え、もっと実力あるだろうに。

キャサリン・ゼタ=ジョーンズは、
大抵は思い切りのいい演技が気持ちいいんだけど。
今回は微妙。これは演出の悪さが大きい。

ブライアン・クランストンが出番が少ないながらも、
とても良かったが。ま、歌わない役だしなぁ…

トム・クルーズにいたっては、
頼むから止めてくれ状態。
演技力を求めちゃいかんのは、分かっとるが。
これは、酷い。
完全に外してますがな。

メアリー・J・ブライジが居てくれて、助かったというところ。
アレック・ボールドウィンは、やりにくそうだし。
ポール・ジアマッティも、しっくりこないし。
マリン・アッカーマンは、こんなんじゃもったいないし。
ラッセル・ブランドは、演技してないしなぁ…

ドリュー役のディエゴ・ボネータも、
注目する程ではないしな。
というか、ほんとバカに見える。
この脚本じゃ。

誰の魅力も引き出してないという…
呪われた映画。

これじゃ、曲が気の毒ですがな。
舞台だとパーっと楽しめるのかも知らんが。
映画化で、この脚本は無いだろ~。
誰か気づけ。
誰でもいいから、待ったかけようよ。。。


『ロック・オブ・エイジズ』(2012年)
監督:アダム・シャンクマン、脚本:ジャスティン・セロー、クリス・ダリエンツォ、アラン・ローブ
オリジナル脚本:クリス・ダリエンツォ
出演:ジュリアン・ハフ、ディエゴ・ボネータ、アレック・ボールドウィン、トム・クルーズ、ラッセル・ブランド
キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、ポール・ジアマッティ、マリン・アッカーマン、メアリー・J・ブライジ
ブライアン・クランストン

『グローバリズム出づる処の殺人者より』

2013-02-19 23:57:10 | 日記



「グローバリズム出づる処の殺人者より」アラヴィンド・アディガ

インドの使用人事情がまる分かり。
副題を付けるとしたら、
~いかにして私は主人を裏切り、企業家として成功したか?~
ってとこか?


とある金持ちの坊ちゃんに運転手として雇われたムンナ。
とは言え、雑用係もかねアゴでこき使われる日々。
しかし、屋根のあるとこで寝られ、給料がもらえるだけでも、おんの字。
ビンボー家族の中では、もっとも出世したと言えるムンナ。
雇い主の坊ちゃんだって、その父や兄よりもずっと優しく思いやりのある人。
そう、これ以上望んではいけない程恵まれているムンナ。
ところが、ある事件がきっかけで、金持ちの冷酷さ、自分の存在の軽さを思い知る。
このままで終わっていい訳がない!
あとは決断と行動あるのみ…

中国の首相に宛てた手紙という設定で綴られる告白。
貧乏な大家族。
村を牛耳る金持ち。
賄賂を受け取る政治家や警察。
言いなりになるしかない使用人たち。

貧富の差の激しさが生む徹底した主従関係。
インド的家族のあり方、これがまた脅威。
まるで小さな独裁国家のようなファミリー。
主人の踏みつけにされるか、家族に餌食にされるか。
犠牲にされてたまるか!なサバイバル・ゲーム。

インドの田舎の様子、都会の様子。
金持ちとビンボー人の暮らしぶり。
運転手の日常がポイントをおさえて描かれてます。
詰め込まれているのに、とても要領よくさばかれてて読みやすい。
どのシーンも情景が目に浮かびますな。
決して清潔とは言えない環境が眼前に現れるのには、参りますが。
所変われば、で仕方ないですな。

面白いけど、ちょっと疲れるブッカー賞受賞作。



《皆殺しのジャンゴ》

2013-02-18 00:42:51 | 日記


『皆殺しのジャンゴ』(1968年イタリア)

マカロニ、きた~!!
というか、くる~!!
タランティーノのジャンゴ観る前に、
いっちょう他のジャンゴをチェックしとくか。
なんとも安直な映画鑑賞術。
気にしない、気にしない。
とは言え、久々のマカロニ。
期待し過ぎ厳禁、と自分に言い聞かせつつ…
厳かに鑑賞。

始まるやいなや、
あっけなくもイッキにマカロニ気分。
オープニング・クレジットからして、GOOD。
いかにもな歌にテンション上昇。
申し分の無いマカロニ・ウエスタンに酔う。
マカロニ・ワールドにどっぷり。
いい湯だな、アハハ~ン状態。

ジャンゴ役のテレンス・ヒルは普通に見映えが良く整った顔立ち。
悪役も粒ぞろい。
ニヒルな悪役顔が有りがたや。
そして、バカに出来ない脚本。
しびれるセリフ。
心得た音楽の使い方。
実力作!!


金(ゴールド)を輸送中に強盗団に襲われ、
銃撃で妻を亡くしたジャンゴ。
それから、五年─。
絞首刑執行人として働くジャンゴは、秘かに仲間を集めていた。
復讐の時を待つジャンゴに、ついに機会が訪れるが…

基本的に裏切りありき、な展開。
オウムに話しかける素朴な男、ジャンゴ。
野心あふれる政治家デイヴィッドの抜け目無さ。
ギャングのボス、ルーカスの荒々しさ。
苦労人ガルシアの欲に目が眩んだ姿。
それを悲しく受け入れる妻。
なんだかんだ言ってジャンゴに協力する郵便局のオヤジ。
どの役も見所が有るという見事さ。

やり過ぎない演技に過剰な事態がなんとも魅力。
過剰な事態!これこそがマカロニのマカロニたる証し。
二言目にはビンタが飛び、
鞭がしなり、炎が燃え上がり、
銃の腕前やら性能無視で展開する銃撃戦。
マカロニ魂、炸裂~!!

ここでジャンゴのせりふをば少し。
“俺に分かるのは1つ。お前は俺を裏切った─”
“五年間に渡る強盗と殺人。その罪は重い。俺からの助言だ─償え”
どーゆー顔して言ったらいいんすか~?こんなセリフ!
底なしの単純バカに見える危険度高し。
聞いてるこっちが、こっぱずかしいわぃ!なストレートさ。
色んな意味で痺れる~。

仲間の集め方がワザ有り。
そして、ピストルを渡すの時の驚きの小ワザ。
ラストの驚愕の大ワザ。
泣く子も黙る…というかそれどころじゃなくなる皆殺しジャンゴ!!

充実のマカロニ体験。

しかも、
イタリア語と英語を収録。
言葉が違うと雰囲気がガラリと変わり、これまた楽しいのさ。


『皆殺しのジャンゴ』(1968年イタリア)
監督・脚本:フェルディナンド・バルディ、脚本:フランコ・ロゼッティ、音楽:ジャンフランコ・レヴェルベリ
出演:テレンス・ヒル、ホルスト・フランク、ジョージ・イーストマン、ホセ・トーレス
挿入歌:"You'd Better Smile" Nicola Di Bari(ニコラ・ディ・バリ)

《MAD探偵 7人の容疑者》

2013-02-17 19:10:53 | 日記


『MAD探偵 7人の容疑者』(2007年)

画家ゴッホが刑事だったら?というアイデアから生まれた作品。
MADな要素の一つに、確かにゴッホが!
そして特殊能力。
持っててもちっとも嬉しくない能力ではあるが…
なんせ、多重人格者の全ての人格が見えるという才能。
要らんな、こんなパワー。
まるで悪夢のようなスキルは、
犯人も自分も追い詰めてしまうという…
それじゃプラマイ・ゼロだがや。。。な状況。
更に追い討ちをかけるような奇妙な捜査方法。
犯人や被害者と同じ状況、同じ気持ちになるという手法。
階段から転がり落ちたり、土に埋まってみたり。
容疑者と同じメニューを延々と、
何かを見出すまで繰り返し食べ続ける…
無茶だしょー。
無理でしょー。
な訳でMAD探偵。

エキセントリックな捜査で有名だったバン刑事。
異常な行動が原因で職を失った彼の元に、ホー刑事が尋ねてくる。
ある刑事が失踪し、彼の銃が犯罪に使われているという一連の事件。
解決に協力して欲しいと依頼されたバンは、捜査を開始。
失踪した刑事の相棒コウ刑事を探りだすが、
なんと彼には+7人の人格が…


愛した女の中に見出す人格。
切なく悲しいラブ・ストーリー。
本来の人格が森に置き去りにされる無力感が寂しいコウ刑事。
ホー刑事は、捜査に行き詰まり不安と恐怖で少年の人格が…
人の内面が、見たくなくても見えてしまう不幸を背負った男。
生き抜く為に、他の人格を生み出してしまうハード・ライフ。

欲を言えば。
映像がも~っとスタイリッシュだったらなぁーというとこか。
美しさとまでは言わんが…
それか、サントラに力をいれるとか?
まぁ、お洒落さは求めんが…
ある程度のクールさは欲しいところ。
デヴィッド・フィンチャーとかがリメイクしたりしない?

映像特典のインタビューが充実。
内容が濃く、聞き応えあり。

『MAD探偵 7人の容疑者』(2007年)
製作・監督:ジョニー・トー、ワイ・カーファイ、脚本:オー・キンイー、ワイ・カーファイ
出演:ラウ・チンワン、ラム・カートン、ケリー・リン、アンディ・オン

『二重人格』

2013-02-16 23:53:52 | 日記


「二重人格─ペテルブルク史詩─」ドストエフスキー

ドッペルゲンガー!!

政府の役人ヤーコフ・ペトローヴィッチ・ゴリャートキンにドッペルゲンガー現る。

内気で人付き合いの超下手な男。
大勢の前で赤っ恥をかき、自己嫌悪。
自分そっくりの男が現れライバルになる…

こんな本書いてたんだ、ドストエフスキー。
本人は自信満々な出来だったらしいが、評判悪かったそう。
しまいには、失敗作呼ばわりされたらしい。

イジイジ、ウジウジしっぱなしの気弱さを延々と読まされる苦痛はあるものの。
妙なユーモア(もちろんブラック)有り。
旧ゴリャートキン氏と新ゴリャートキン氏と表記されたり。
作者が楽しんで書いてる様子。
悪ノリが過ぎるぜぃ。

劣等感から社交的な自分を生み出しちゃうのが悲しいが。
自分のドッペルゲンガーに足蹴にされるのが、更に涙を誘う。
誰からも疎まれる主人公って…悲惨度、高すぎ。

なんとなく分裂気味で、ちょっと様子がおかしい状態から、
ついに別人格というか、別人物がハッキリと現れる展開。
スリリングと言えなくも無いが。。。
なんとなく、描かれきれてない部分も有るのも事実。
まぁ、実録物では無いのでいいんですけど。

分裂というか、挙動不審ですな。


映画化中らしいが、案の定コメディにされてる様子。
ジェシー・アイゼンバーグ、ミア・ワシコウスカ出演。
リチャード・アイオアディ監督・脚本。
今のところタイトルは『The Double』(2013年) で、編集中らしいぞ。


《ムーンライズ・キングダム》

2013-02-14 19:17:35 | 日記


『ムーンライズ・キングダム』(2012年)

『ファンタスティック Mr.FOX』(2009年)を、そのまま人間に置き換えたような作品。
セット、ファッション、小道具と全て揃って幸せ~な画面作り。
どこを切っても、どのシーンも全てポストカードになりそう。
捨てるトコ無しの、ませガキ・トレジャー・ボックス。

一匹狼のサムはボーイスカウトを脱走し、
猟奇的なガールフレンド、スージーと合流。
問題児扱いされる事に嫌気がさしたふたりは、逃亡。
キャンプしながら(ボーイスカウト・スキル、フル活用!)の駆け落ち。
警察、ボーイスカウト、保護者、福祉局を巻き込み島は大騒ぎ。
時同じくして、かつてない大規模ハリケーンが島に迫っていた…

独特のテンポでおくるウェス・アンダーソン監督ワールド炸裂。
最初から最後まで、面白いとも言えるし、
ちっとも面白くならない、とも言える。
ちょっと面白い事が、興味深く展開するというべきか。
風変わりなまったり感。
1テンポ外したのんびり感。
心地好いと感じる人、面白いと感じる人、真綿で首を絞められてると感じる人。
観る人によって、かなり受け止め方は違うはず。
良い悪いではなく、感覚の違いですな。

映画としては、監督のベスト作品では無いものの。
個人的には、(もしDVD買ったとしたら)流しっぱなしにしときたい映画。
画面の幸福度、高し。


『ムーンライズ・キングダム』(2012年)
監督・製作・脚本:ウェス・アンダーソン、脚本:ロマン・コッポラ、プロダクションデザイン:アダム・ストックハウゼン
出演:ブルース・ウィリス、エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、フランシス・マクドーマンド
ティルダ・スウィントン、ジャレッド・ギルマン、カーラ・ヘイワード、ジェイソン・シュワルツマン