木のぼり男爵の生涯と意見

いい加減な映画鑑賞術と行き当たりばったりな読書によって導かれる雑多な世界。

《リミットレス》

2013-01-31 01:20:56 | 日記


『リミットレス』(2011年)

濃縮。
そして、冴えてる映画。


作家志望の冴えない男が、魔法(もちろん違法)の薬で才能開花!

通常20%しか使用されていない人間の脳。
それを100%の稼動にするという錠剤を手に入れた事で、
コンピューター並みの脳みそに。
過去のあらゆる記憶、知識が一瞬で蘇る。
脳の回線が凄いことになってます。
ミラクルな手腕で、出世も金もあっという間にゲット。
彼女とも復縁。
しかし、最近たびたび記憶が飛ぶ…
まさか、副作用…?


脳の活性化を映像で表現。
これが上手い。
目新しくは無いものの、実に賢いCGの使い方。
スピーディな展開。サクサクの編集。
見事なお手並み。

なんせチョー頭が良くなってるもんで。
この設定だと、常に相手の上をいかないとダメ。
先を読んで行動してくれないと、観てる方は納得出来ない。
実に難しい課題。
思わず青ざめるようなお題ですが。
隙のない脚本で、賢さをキッチリ描くという手腕を発揮。
ずる賢く立ち回る主人公が、とにかく映画を面白くする。


彼はどこまで逃げ切れるのか?
どういう行動に出るのか?
こんなに気になる主人公は、久しぶり。
ってブラッドリー・クーパーだから?


『リミットレス』(2011年)
監督:ニール・バーガー、脚本:レスリー・ディクソン、原作:アラン・グリン、撮影:ジョー・ウィレムズ
出演:ブラッドリー・クーパー、ロバート・デ・ニーロ、アビー・コーニッシュ、アンナ・フリエル、アンドリュー・ハワード

『ノーラ ジェイムズ・ジョイスの妻となった女』

2013-01-30 00:51:12 | 日記


『ノーラ ジェイムズ・ジョイスの妻となった女』ブレンダ・マドクス


天才作家に見合わない妻、と言われ続けていたノーラ。
教養が無く、人前でも平気で夫をからかう彼女。
ジョイス崇拝者を失望させていたらしいが…


二十歳の時にアイルランドからジョイスと駆け落ち。
ジョイスの教会嫌いで、結婚はせず。
教会行かんでも、役所に届けるだけで良いと思うけどなぁ?
結婚制度に疑問を感じ否定的にしか考えられん、そうですが。
恐れてたのは、むしろ離婚じゃないの?と言いたいところ。
とは言え、結婚拒否症のジョイスと共に生きる決心をするノーラ。
結婚しないから、って言われてもついてくノーラは凄いぞ。
なんせ1904年頃だからねぇ。
世間は許しちゃくれませんがな。

作家になる前のジョイスは学校の先生。
なかなか人気があったらしい…マジで?

一男一女に恵まれるも、金欠状態。
ジョイスの弟を呼び寄せ、給料を家計に入れさせる。
容赦なく弟を利用する2人の息の合い方が恐ろしい!

この時期、ジョイスは他の女性に興味を持ったりと、
浮気心を楽しんでたらしい。
まだまだ余裕なジョイス。

しかし、旅行でノーラと離れ離れになった途端。
ノーラ恋しさに気も狂わんばかり。
そうだ!エッチな手紙でも書こう!
(どういう思考回路じゃ?)
で結局、官能レターのやり取り。
ノーラも頑張りを見せる、この一連の恋文。
これが、二人の絆を不動のものにするきっかけに…。
(どういう夫婦じゃ?)
ま、人それぞれですな。

実際、旅行から帰ってきてからのジョイスは、
ホントにノーラに夢中に。
ジョイスの妄想に付き合うノーラは凄いぞ。
しつこく男性遍歴を問いただすジョイスに我慢するノーラは凄いぞ。
寝取られ男願望を抱くジョイスを満足させるノーラは凄いぞ。

パリでの華やかな生活。
散財ぶりよりも、周りの支援者の献身さに驚き。
そして、子供たち。
息子を溺愛するノーラ。
ジョイスは息子に嫉妬し、ノーラは娘に嫉妬する。

国から国へと移住し。
次から次へとホテル暮らしと賃貸を繰り返す家庭。
ジョイスとノーラの結束は固い。
子供たちにはいい環境とは言えないが…。

時々、思い出したように、
出て行きます!とジョイスを脅すノーラが可笑しい。
あの手この手で、気を変えさせるジョイス。
これがまた、可笑しい。

ゴシップ好きで毒舌だったノーラ。
ノーラのきつ~い一言も、ジョイスは大いに楽しんでいた。
彼女が喋るのを、嫌がったり、止めようとした事は無いらしい。
これは凄い。

ジョイスの作品の全てにノーラがチラホラと存在する事実。

生命力に溢れ、堂々として明るく前向きな女。
偏執的で、病弱で妙な被害者意識と願望のある作家。
離れられないふたり。


読みやすく、人物像が把握しやすい。
活き活きと描かれる当時の暮らしぶり。
時に、写真や手紙の抜粋で人柄が露わに。
ジョイス作品の文章からも引用があり、
ノーラとジョイス文学の密接さが刺激的。
パリでの交友関係も興味がつきない。
ノーラの魅力を存分に描いているが、
この本自体が実に魅力的。
人間の強さと弱さが織り成す、一族の辿った道。

『心臓抜き』

2013-01-28 23:43:05 | 日記


『心臓抜き』ボリス・ヴィアン

気持ち悪い描写が多くて辟易。
吐き気をもようしますがな。
最初の方は普通なのになぁ。

精神科医ジャックモールが迷い込んだ屋敷。
三つ子を出産するクレマンチーヌ。
妻に憎まれ、無視されるアンジェル。

老人、子供、動物、弱さを蔑む村人たち。
虐待、暴力を平気で行うためには、
恥は小川に捨てればいい。
恥を引き揚げ、村中の良心の呵責を引き受ける男。
村の野蛮人どもには、宗教は贅沢だと言う司祭。

うつろな魂は、毒を吐き、毒を求め広がっていく。
汚染は屋敷にも入り込み、狂気じみた行動が増えていく。

想像力は全て不健全にしか使われなくなり。
悪しき夢は、更なる不幸を歓迎する。

過保護という虐待に走る母親。
同化を強要される子供達。
阻止出来ない無力感と、同化出来ない弱さを抱える男。
彼に出来る事は、一つしか残されていない…


掘り下げるべきものを持たない精神。
純粋な悪意、行為としての性欲。
分析する術がない人々に囲まれ、
精神科医は自らの存在理由を持たない。
という恐ろしいお話。

更に、村の異様なおぞましさ。
完璧なおぞましさが圧倒的で、不気味さを通り越している。
優れた文章力で村を作り上げてます。
完成度は高いが、ちっとも嬉しくない。
あぁ、気持ち悪い。

《唇を閉ざせ》

2013-01-26 10:01:06 | 日記


『唇を閉ざせ』(2006年フランス)

じ~つ~に、サスペンスフル。
錚々たる俳優陣が送るフレンチ・ミステリー。
とは言え、原作はアメリカ産。

今は夫婦となった、幼なじみのアレックスとマルゴ。
なんせラブラブなふたり。
夜中に、湖で裸で泳いじゃうもんね。
ところが、2人は暴漢に襲われ、アレックスは重症を負い、
マルゴは行方不明、数日後に惨殺死体となって発見される。
一緒に過ごした年月、人生のほとんどを2人で歩んできた─
それが一瞬にして、過去のものとなってしまう。

それから8年、
アレックスは未だに喪失感から立ち直る術が分からない…
ある日、メールを受け取り、マルゴらしき人物の動画を発見する。
誰が何のために?
マルゴは生きている?
微かな希望がアレックスを突き動かす。
彼は独自に事件の調査を開始する。
しか~し、彼自身が警察に追われる身となってしまう…

そこからは、怒涛の展開。

逃げる、調べる、走る、逃げる、調べる、走る。
ここで捕まるわけには、いかんのじゃ~!!
逃亡劇としてのハラハラ感+真相に迫る興奮が同時進行。
周囲の人々を巻き込み、とある組織に狙われ、
思わぬ人の助けを借り、事態はどんどん大きくなっていく。
そして、次々と明るみに出る事実。
二転三転する真相。


我が子可愛さ、で決断する父親たち。
生かす為の戦いと殺す為の戦い。
愛情ゆえの行動とは言え、やり過ぎだしょう…
暴力が暴力を呼び、更に上塗りされる暴力。

自分可愛さで口を閉ざす人々。
自分の為、相手の為の嘘。

お金と権力がある場合、
復讐はシャレにならん。

多少、無理やりな展開を感じさせるも、
エンターテイメントとして充分楽しめる作品。
ギョーム・カネに監督の才能があったとは、驚き。


『この愛のために撃て』(2010年)で誘拐された妻の為に走りまくるジル・ルルーシュ。
『スリーデイズ』(2010年)で刑務所から妻を救う為に無我夢中なラッセル・クロウ。
クライムサスペンスとは言え、胸が熱くなる必死さ。
愛の為に東奔西走する姿は、
主演男優をこれ以上無いほどカッコ良く見せるという…絶大なる効果を発揮。
ラブコメどころの騒ぎじゃないロマンチックさをかもしだす愛の物語。

『唇を閉ざせ』(2006年フランス)
監督・脚本:ギョーム・カネ、脚本:フィリップ・ルフェーヴル、原作:ハーラン・コーベン
出演:フランソワ・クリュゼ、マリ=ジョゼ・クローズ、アンドレ・デュソリエ、
クリスティン・スコット・トーマス、フランソワ・ベルレアン、ナタリー・バイ、
ジャン・ロシュフォール、マリナ・ハンズ、ジル・ルルーシュ

《LOOPER/ルーパー》

2013-01-25 00:11:57 | 日記


『LOOPER/ルーパー』(2012年)

奪うこと。奪われること。
を巧みに描いたSFアクションムービー。


犯罪組織がタイムマシーンを悪用する近未来。
邪魔者を過去へ送り込み、容赦なく始末。
送った先、過去に居る掃除屋が通称ルーパー。
欲望のまま、刹那的に生きるルーパーたち。
彼らには、最後の仕事と向き合う日が待っていた─。
全ての証拠を隠滅する為、
送られてきた30年後の自分を、始末しなくてはならない。

控えめな近未来ワールド。
ブルース・ウィリス・メイクなゴードン=レヴィット。
(これ、どうにかなりませんかぁ?
笑っていいのか?ウケ狙いなのか?
気になって仕方がないぞぅ。。。
寛大な心でもって、受け入れるべし。)
ものすご~くアメリカ人なエミリー・ブラント。
未来系ヒッピーか?なジェフ・ダニエルズ。
妙なテンポのポール・ダノ。
え?これだけ?なパイパー・ペラーボ。
有りがち過ぎるキャラ、ノア・セガン。
ブルース・ウィリスなブルース・ウィリス。


ストーリー展開は素晴らしい。
思い切ったオチも、大変よろしい。
まったく、先が読めない起承転結。
唐突なラブシーン、突然なシーン転換は、
監督の好みか?編集のクセか?まぁしゃーないとして。
それでも随所に工夫が見られ、飽きさせない仕上がり。
ただ、キャラがパッとしないのが残念。
ありきたりなキャラが多いのが、なんとももったいない。
もっと煮詰めてたら、もーっと面白くなったろうに。
あとは、中盤ダレてしまうのが、惜しい。

『12モンキーズ』よりは何十倍も良く出来とるが、
クリストファー・ノーラン監督作ほどの壮大さには欠けるも、
『バタフライ・エフェクト』な切なさを持つSF映画。


『LOOPER/ルーパー』(2012年)
監督・脚本:ライアン・ジョンソン
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ブルース・ウィリス、エミリー・ブラント、
ジェフ・ダニエルズ、ポール・ダノ、パイパー・ペラーボ、ノア・セガン


『暗闇へのワルツ』

2013-01-24 22:11:20 | 日記


『暗闇へのワルツ』 ウイリアム・アイリッシュ

イッキ読み。
ダークなラブストーリー。

文通で結婚を決めた裕福なルイス。
しかし、やって来たジュリアは、写真とは別人だった。


22歳の時の悲恋から立ち直れぬまま、37歳となったルイス。
突如として、自らの孤独に恐怖する姿。
恋を求める必死の叫びが痛々しい。

フィアンセを待ちわびる喜び。
というか、はしゃぎっぷり。

しかし、彼女は船から降りてこなかった。
ガビ~ン。。。
絶望。打ちひしがれるルイス。
そこに現れるジュリアと名乗る若き美女。
写真と違う、というか写真の100倍美しい乙女。
たちまち恋に落ちるルイス。

結局、写真とは別人のジュリアと結婚。
若く美しい妻を持つ幸せに有頂天なルイス。
恋の盲目、恐るべし。
言われるままに、妻の希望をかなえる彼。

そして、ジュリアは忽然と消える。
ルイスの貯金をおろして─。
恋を殺されたルイスは、ジュリアへの復讐を誓う。
衝撃の再会から、逃避行へ。
行き着く先は─。


悪女というべきか、
愛を知らない悲しい女と言うべきか。
子供の頃から苦労してきた彼女には、
お金以上に価値のある物が無い。
スリルと誘惑の中でこそ、生きる実感が持てる性分。
何よりも贅沢が好きで、その為なら何でもする。

彼女の誘惑に屈していくルイス。
その美しさを拒否出来ない。
彼女の道徳観の無さ、無慈悲ぶりに驚愕しながらも、
新婚の頃の幸せが忘れられない彼。
抵抗力が無くなり、現実逃避が増すばかり。
彼の恐怖は、彼女を失うこと。

悪事に慣れないルイスはボロボロになり。
図太い神経のジュリアはイライラする。
2人の幸せは別々のところに有るという事実。

最後の最後まで、
落ち着かない展開の究極の愛の物語。
これほどタイトルに偽りない本もめずらしい。。。
クライムサスペンスであり、メロドラマでもある。
愛ゆえの盲目を、とことん描いた名作。


もうすでに何度か映像化されてますけど。

改めて映画化するんだったら。
ジュリア役は…冷酷なブロンドの天使という事で、
リュディヴィーヌ・サニエだったら、とても上手に演じてくれそう。
ダコタ・ファニング、エミリー・ブラウニングあたりが候補か?

ルイス役には、長身で影のある黒髪の男という事で、
トム・ヒドルストン、クリスチャン・ベイルあたりか?
イーサン・ホークも有りな気がする。。。


『彼の個人的な運命』

2013-01-23 13:05:00 | 日記


『彼の個人的な運命』フレッド・ヴァルガス

お久しぶりのボロ館。
歴史オタク3人+オヤジの同居生活。
中世専門の歴史学者マルク。
先史時代専門の歴史学者マティアス。
第一次大戦専門の歴史学者リュシアン。
元刑事でマルクの伯父ヴァンドスレール。
まったく華は無いものの…
個性溢れる4人が暮らす、ビンボーくさいボロ館。

ペットのヒキガエルと再び登場の、ケルヴェレール。
ポケットに入れて持ち歩くのは、どうかと思うぞ。


出だしは、若干じれったい。
というのも、トロくさいキャラ、クレマンのせい。
うっクゥ~と我慢しながら読み進めるも、そのうち慣れてきます。
それに、他のキャラが登場するので、テンポ・アップ。
とは言え、決してスピーディーにはなりません。
それがこのシリーズの魅力のひとつ。


連続殺人事件の容疑者をボロ館に匿うハメになるマルク。
特に疑問も不満もなく、皆でやりくりして見張る日々。
ヒキガエルを連れ、マルクの助けを借り、捜査を開始するケルヴェレール。
ちなみにマルクは家事手伝いのバイトを始めたばかり。
その選択肢が、ちょっと可愛いマルク。
知能は高いが、突拍子もないリュシアンの考察で、
事件は新たに混乱へと突き進む。


決して現代を感じさせない雰囲気。
どこか、懐かしい感じのパリ。
登場人物も、ほどよく不器用な印象。
小市民が織り成す人情味と、
ボロ館の、のんびり屋さん達がかもし出す親しみ。
このままであって欲しい、このままで居て欲しい、
愛すべきボロ館ファミリー。
彼らの活躍は、実に嬉しいかぎり。
トリックが凄いとか、サスペンスで興奮するとか、
それは他の本に求めてくださいまし。
登場人物と土地の雰囲気を楽しむシリーズ。


《マイラ -むかし、マイラは男だった-》

2013-01-21 20:23:29 | 日記


『マイラ -むかし、マイラは男だった-』(1970年)

映画史上、語り継がれるワースト映画の一本。

あれ~?楽しいぞうぅぅ。。。
そう、趣味は悪いが!それなりに楽しめる作品。
人によっては、かなり楽しめる作品。


クラシック映画が大好きな映画評論家のマイロン。
こっそりコペンハーゲンで性転換手術を受ける。
ダイナマイト美女マイラへと華麗に変身!
って変身し過ぎだよ、マイロ~ン!
ちなみに。
言っときますけど、
マイロン役は実際に映画評論家のレックス・リード。

マイロンとマイラ。
2人、一組、2人で一人なハチャメチャな物語が始まる。
シャーリー・テンプルの歌う“いつもS・M・I・L・E”にあわせて、
街なかでも踊っちゃうマイロンとマイラ。
言っときますけど、マイラ役はラクエル・ウェルチ。
ウェルチ姉さんのお美しいこと!
しかも、ありとあらゆる衣装で登場。
中でも、白衣脱いだら、アメリカ国旗ビキニ!は秀逸。

伯父のバック・ローナーを叩き潰しにハリウッドへ。
マイラは彼の経営する妙な演劇学校に乗り込む。
不慮の事故で亡くなったマイロンの妻だと名乗るマイラ。
あの手この手で財産を要求。
渡してなるものかと、のらくらかわす伯父。
だったら、ここで講師として働きます!と伯父に宣戦布告。
言っときますけど、伯父役はジョン・ヒューストン。
「マルタの鷹」「黄金」「アフリカの女王」の大監督。

奇妙な演劇学校で、やりたい放題なマイラ。
そんな彼女には、ちょっと気になる生徒がふたり。
ハンサムなラスティとその恋人メアリー・アン。
言っときますけど、メアリー・アン役はファラ・フォーセット。
かッ、可愛い~。マジで可愛いぞ。

芸能エージェントの女社長レティシア・バン・アレンが登場。
所属する男優全員と関係を持つという豪傑!?
“見た目は悪くないけど、ベッドではどうなの?”
“そっちも得意です”
最初の生け贄役は、
言っときますけど、トム・セレック。
デビュー当時の若々しさ。

そして、声を大にして言っときますけど、
レティシア役は元祖ヴァンプ女優のメイ・ウェスト。
18歳で‘ベイビー・ヴァンプ’を生み出し。
舞台、映画で活躍、脚本も執筆、歌だって歌うマルチな才能。
コカ・コーラボトルの流線型にインスピレーションを与えたという、
迫力ボディの持ち主。
実は、身長は155センチと小柄。 なんなの、この迫力…
1893年生まれ。ハリウッド・レジェンドのひとり。

演劇学校では、
狙った獲物ラスティを、呼び出してはいたぶるマイラ。
性悪過ぎるぜ、マイラ!
‘男らしさ’にこだわるラスティ。
‘男の尊厳’を嘲笑するマイラ。
ついに、マイラはラスティに襲い掛かる。
お、襲い…?この表現で合ってます。
まさに、‘ひゃっほー’なマイラ。

そして次なる獲物は…メアリー・アン。

そんな時、伯父に雇われた弁護士が現れ、
マイロンの死亡証明書が存在しないと通告。
告白の時がやってきたのだった…
友人の歯科精神分析医?に
“一丁、ぶちかましてやれ。”と激励されるマイラ。
早速、机上に駆け上がり、パンてぃを脱ぐ彼女であった…
ワイルドだぜぃ、マイラ~。

スッキリしたマイラの次なる目標は?
メアリー・アンとの関係を進めること!
ラスティを襲っておきながら、そ知らぬふり。
(どんだけ性格悪いの~?マイラ~)
メアリー・アンを(下心あって)優しくいたわるマイラだったが。。。


随所に挿入される数々の映像が、楽しい。
30年代~40年代のクラシック映画が中心。
ディートリッヒ、ローレル&ハーディ、リチャード・ウィドマーク、モンローなど。
これだけでも、おつりがくるぐらいだぞ。
特にクラシック映画ファンにとっては。

さらに、使用される曲の面白さ。
“リンゴの味が甘いかどうかは、かじってみなきゃわからない~”
と意味深な歌詞。
メイ・ウェストが歌う、“味わいなさい 全ての果実を~”や、
“気をつけて、私は手ごわい女だから~”など。
これがまた、かっこいいんだな。見事な歌いっぷり。
グレン・ミラーの名曲チャタヌーガ・チュー・チュー。
‘きらきらぼし’を使うシーンにも注目。このセンス、あっぱれ。

言っときますけど、監督・脚本はマイク・サーン。
そうあの『ジョアンナ』の監督。
ジュヌヴィエーヴ・ウエイトも歯医者の患者役でチラリ出演。

さらに原作はベストセラー「マイラ・ブレッキンリッジ」
言っときますけど、
作者はゴア元副大統領のいとこ、ゴア・ヴィダル。

ついでに言っときますけど、
メイ・ウェストの衣装はイデス・ヘッド。
アカデミー衣裳デザイン賞8回受賞。
ノミネートは35回…ひいいぃいい働きもの~


性の混乱と、誘惑、欲望。
全てが吹っ切れてる映画。
奇想天外なのもうなづけるオチになってます。

そうそう、言っときますけど、
ウェルチ姉さんとファラ・フォーセットが
ベッドで寄り添って眠ってるシーンは、
お宝ですな。。。


『マイラ -むかし、マイラは男だった-』(1970年)
監督・脚本:マイク・サーン、原作:ゴア・ヴィダル、脚本:デヴィッド・ガイラー、音楽:ジョン・フィリップス
出演:ラクエル・ウェルチ、メイ・ウェスト、レックス・リード、ファラ・フォーセット、
ジョン・ヒューストン、ロジャー・ハーレン、トム・セレック、ジュヌヴィエーヴ・ウエイト、
カルヴィン・ロックハート



《エイリアンVSヴァネッサ・パラディ》

2013-01-20 14:15:38 | 日記


『エイリアンVSヴァネッサ・パラディ』(2004年仏・独・英)

オープニングは『ミクロの決死圏』か?
ちょっとだけSFな始まり。

灼熱の町、というか村、スコットレット。
町を牛耳るボスコ親分。
呼ばれて参上、スタントマン、ジェームスがやってくる。
明日は、町のコンテスト。
ジェームスがバイクで華麗にドラム缶を飛び越え、ド派手に開催を祝う手はず。

到着早々、ジェームスとコンチャ、運命の出会い。
冒険野郎ジェームス、キュートなコンチャにひとめボレ。
“私はメスライオン~ボンネットに座ってるの~”と歌うコンチャ。
こんなにセクシーでキュートなのに、ボスコの娘!

とまぁ、なんとなく西部劇っぽい設定。
クギに足をひっぱられ、いや、バイクをひっぱられ、
あえなくスタント失敗。
あっけなく投獄。
刑期133年とか、宣告されるジェームス。
はい?ひゃ、ひゃく…
コンチャと一緒に居たいんじゃあ~
と脱獄するジェームス。

とまぁ、ここまでもやっぱり西部劇チック。

そんな時、町の郊外に宇宙から何かがドスンと飛来。
どうやら、地球侵略の序章らしい…

そんな中、今年もコンテストが開催されるのだった。

間の抜けた軽快な音楽と共に登場する地球外生命体。
ヒトデ?
タコ足付き脳みそ?
ブンブンブブブブブ…と襲撃開始。
ヒトデ&タコ足付き脳みそによる殺戮。

今こそ、戦うのだ!
と張り切るケルゾ教授。
なんせ、この時を30年間待ってたらしい。
異次元からやってきたらしい。
テレポーテーションしてきたらしい。
あ、これ全部自己申告ね。

たまたま通りかかった音楽プロデューサー。
たまたま、タコ足にお尻をグサリ。
たまたまにも、ほどがあるぞ。
案の定、宇宙人化。
特撮ヒーローものに出てくる怪物状態。

後半は、昔のSF映画色の強いものに。
かと言って、『マーズ・アタック』とは全然違う印象。
ラストは『猿の惑星』の変化球で決める。


ヴァネッサのセクシー&キュートな魅力が全開。
って、なんでこんな映画で全開してるのか謎といえば、謎。
歌姫ぶりも発揮して、何曲も披露。
ロックでポップ、耳に残るなかなかの名曲揃い。

な~ぜ~か~、アニマトロニクスな犬が登場したり。
サイコ状態なおばあちゃんが出てきたり。
ヨーデル歌手にしか見えないメキシコ民謡を歌う双子とか。
奇妙な味わいに満ちてます。
コーエン兄弟作のような、陰気さは無し。

ヒトデは手裏剣状態なので、多少の残虐性は有り。
割合的には、控えめ。
でもやっぱりスプラッターな部分有り。

特にチープさを狙ってるふうでも無し。
でも、1800円払って観たら…
お気持ち、お察しいたします。。。

映画自体は、決して褒められたもんでは無いが。
独特の味がある作品。
個人的には、登場人物の名前がお気に入り。
何をどうして欲しいか聞かれても、答えようが無い、
実にポワロー兄弟ワールドな映画。

『エイリアンVSヴァネッサ・パラディ』(2004年仏・独・英)
監督・脚本:ディディエ・ポワロー、ティエリー・ポワロー、
脚本:ジャ=フィリップ・デュガン、マリー・ガレル・ウェス、ヴァンサン・タヴィエ、
音楽:ザ・リトル・ラビッツ
出演:ヴァネッサ・パラディ、ジェイソン・フレミング、ブノワ・ポールヴールド、ジャン=ピエール・マリエール


監督・脚本のポワロー兄弟。
時に一緒に、個別にもCM、ミュージック・ビデオ、ショートフィルム、俳優、彫刻や特殊効果と幅広く活躍。
(ティエリーが監督したOPTUSのゾウが出てくるCM、好きだけど、ね。)
興味がある方は、こちらのサイトで映像が見られます。

http://www.independ.net/directors/thierry-poiraud/

http://www.didier-poiraud.com/



《ブリット》

2013-01-16 01:06:24 | 日記


『ブリット』(1968年)

刑事アクションのお手本のような映画。
見るのは、3回目。
やっぱり、よく出来てる。

サンフランシスコの刑事フランク・ブリット。
大物議員チャーマースから直々に証人保護を依頼される。
ところが、証人をホテルで撃たれてしまう。
ブリットの責任だ!と、カンカンな議員。
同僚も撃たれ、憤るブリット。

証人は病院へと運ばれ大手術。
生かしておくものか、と殺し屋がやってくる…

とことんリアリティを追求した本作。
全編ロケ。
病院も、設計事務所も本物。
確かに、病院のシーンもリアル。
医者や看護婦もほとんど本物だってさ。
設計事務所には、みんなが働いてる時に
どやどや押しかけて機材をセットし撮影したらしい。
マックィーンとジャクリーン・ビセットが来るんなら、
喜んで提供するよな、ロケ場所。

オープニングクレジットのカッコよさ。
ジャジーな音楽の使い方もクール。
レストランでは、フルートが参加なジャズ。
やたらと音楽を使わないとこが、これまたいい。
生音かと思うような、必要最低限の音。
これがかえって、緊張感を増す。

そして、編集。
アングルの切り替え、テンポ。
実に優秀。
音楽の使い方と相まって、すこぶるクール。
リアルでクール。
なかなか難しい組み合わせ。

マックィーンの飾り気の無さ。
ロバート・ヴォーンの、そつの無さ。
(偉そげ~に、依頼したり、脅したりするさまが、実に自然。)
そして、
黒いリボンがお似合いなジャクリーン・ビセットの美しさ。

カーチェイスが有名とはいえ。
病院内での鬼ごっこ状態の追跡劇。
空港での、やっぱり鬼ごっこ状態な追跡劇。
ロビーだけでなく、滑走路も登場する緊迫のチェイス。
もち、時速160キロで走るムスタングは大迫力。
シスコを爆走(坂とかバコンバコン飛び跳ねーの)。
郊外へと移動(車体攻撃でバっコンバっコンしーの)。
車、煙はいてますねぇ。
なんか外れて転がっていきましたけど?

市内のカーチェイス撮影では、
50人を配置し、通行人有無のチェックをして撮影。
そうなるわな。

あのシーンって、この映画だったっけ?
と思うほど、追跡劇が詰め込まれてます。
なのに、シンプル。
大騒ぎ感がない、潔さ。

ラストシーンの選び方、描き方が
これまた、クーっとくるカッコよさ。
甘すぎず、辛すぎず、やり過ぎず。
刑事という仕事の全てが語られているようなラスト。

作品に対する誠実さが、クールな映画。

『ブリット』(1968年)
監督:ピーター・イエーツ、脚本:アラン・R・トラストマン、ハリー・クライナー
原作:ロバート・L・パイク、音楽:ラロ・シフリン
出演:スティーヴ・マックィーン、ジャクリーン・ビセット、ロバート・ヴォーン