終わらない演奏会

不惑の道を歩みながらも未だ惑いっぱなしの筋肉おばはん帯の、ヘヴィーでメタルでどうでしょうな日常です。

都会の童話

2006-05-19 21:21:32 | 
先日、こちらの記事大泉洋さんがドラマで演じるリリー・フランキーさん原作の『東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン~』について書きました。

ドラマを見る前に原作を読むか、ドラマを見てから原作を読むかで迷っているという話題で書いたのですが、いろんな方のブログ記事を拝見したり、コメントを拝見したりしているうちに、原作を読んで内容を理解した上で、大泉洋さん演じるドラマを見たいと思うようになり、先日読み終えたところです。

やはり、先に読んでよかったかな・・と思っています。

子供から大人になっていく段階において少しずつ距離をとりはじめる親子が、その後子供が成熟した大人になり親が少しずつ老化していくにつれて、また少しずつ距離を縮めていく過程が克明に描かれていました。

最大のテーマは母親の病気ということなのですが、それだけをあからさまに書いているのではなく、それに絡めながら母親という人物を自分の母親として、また一人の女性として、一人の人間として客観的に見た視点や、若いときには理解しづらかったであろう父親に対する感情の変化など、いろいろな人間関係や感情が過不足なく書かれていたように思います。

はたして、ドラマでそこまで深く掘り下げるかどうかは解らないですが、ひとつの家族の長い歴史や感情の流れがベースにあるということを理解した上で見ることができたなら、ひとつの台詞、ひとつの演技者の表情の奥にあるものを少しでも深く感じることができるかもしれないと思うのです。

息子が母親を引き取って看取るという、ちょっと聞けば美談のようなこの話の奥にある、きれいなだけでは済まない辛い部分とか、肉親に対する感情・・・
表面だけたどればただの童話でしかないグリム童話の奥にも、隠されたいろんなどろどろしたものがあるように、現代社会を都会で暮らしていく上にあるいろんなものが見え隠れして、自分自身の感情が波立つのを感じます。

誰にでも必ず訪れる、親を失う瞬間。

それが少しずつ確実に近づいている以上、考えたくないことをも今からきちんと考えて、その時を少しでも後悔の少ないように迎えるために、そういうことを考えるきっかけを与えてくれたというだけで、ドラマうんぬんに関係なく、読んで良かったと思わせてくれました。




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東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~

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