サイクルリキシャーは、自転車の後ろに人が乗るスペースがある簡易タクシー。
明治後期にアジア各国へ日本の人力車が輸出され、「リキシャ」の名前が根付いていたもの。
バングラデシュでは、奇麗に装飾されたものを多く見かける。
サイクルリキシャーは「生活の糧」であると同時に、仕事をしていることの「誇り」であることを象徴しているように思える。
バングラデシュは、世界で最も人口密度が高いアジアの最貧国。
人口は世界第8位(1億6千万人)。
イギリスからの独立後、東西パキスタンが分離成立したが、
印パ戦争を経て、東パキスタンがバングラデシュとして独立(1971年)した。
バングラデシュはベンガル語で「ベンガル人の国」を意味する。
近年、豊富で低廉な労働力が注目され、製造業が多く進出し、新興国としての期待が高い。
ベンガル湾に注ぐガンジス川を有し、豊富な水資源と肥沃な土地が魅力。
バングラデシュの国旗は赤が昇る太陽、緑が豊かな大地を表している。
この地域は、熱帯性モンスーン気候に属し、6月から9月にかけて雨季が到来する。
洪水との引き換えに肥沃な土地を手にしていると言いつつも、デルタ地帯の生活は過酷だ。
バングラデシュ全体でも、激しい雨により国土の3分の1に及ぶ浸水被害が出るという。
この地域に足を踏み入れると、高床式の住居を目にする。
燃料に使う牛糞の日干しも生活の中に溶け込んでいる。
流行の言葉でいえばバイオマス燃料といった所だが・・・
自然の猛威に立ち向かわず、その恩恵に感謝しつつ、ともに暮らす。
こんな言葉を当てはめるのが精一杯だ。
カワウソ漁は、日本の鵜飼に通じる所があり興味深い。
クルーズ船に乗ると淡水に生息するカワイルカが飛び跳ねるのを見ることが出来る。
街は、人・人・人で溢れている。
どうしてこんなに人がいるのかと考えてしまう。
よく見ると、仕事をしている訳でもなさそうな人達を多く見かける。
空き地には市場がたつ。
列車の線路の上でも平気だ。
いつ来るとも分からないが、来たら退けば良いと位にしか考えていないようだ。
この活気がバングラデシュの潜在能力なのだろうか。
この迫力は、世界の都市の中では特異な部類に属するのではと思い巡らす。
この国には、マイクロファイナンスという制度が定着している。
家畜の仕入れやサイクルリキシャーの調達など、
チョッとした商売を始めるための資金を無担保で貸し付けている。
誰でもが働く機会を作り出す仕組みが用意されている。
特に、債権回収の仕組みがユニークだ。
隣組のような組織が構成されており、所属員の返済状況を皆で見守る仕組みである。
これによって信用が担保されている。
少しばかり居心地が良くないと感じる気もするが、財産が何もない所からでもスタートできるのだから、致し方ないのかも知れない。
バングラデシュへの旅は、人の多さを体感するために思いついたものだが、
テラコッタの遺跡・建築群は想像以上のものであった。
タラコッタはイタリア語の「焼いた (cotta) 土 (terra)」に由来する。
プティアの大ゴヴィンダ寺院は、バングラデシュに残る数少ないヒンズー教寺院。
ラーマーヤナの説話や民衆の日常生活などが描かれている。
バーゲルハットのサイト・グンバズ・モスクは、ムガル帝国期以前のバングラデシュ最大のイスラム都市遺跡。
モスクの名称は、60のドームを持つモスクという意味。
パハルプールの大塔は、ベンガル地方に栄えたパーラ王朝が8世紀末に創建した仏教寺院の中央施設。
大塔の周りには、多くの僧坊が囲み、基壇には神々や動物の像により装飾されている。
道すがらレンガ工場(作業場?!)に立ち寄った。
素焼きレンガに適した土壌が採取できる場所に、
採掘、水との調合、日干し、素焼き、保管・出荷をレイアウトし、
周辺の労働者を集めて製造しているようだ。
機械と言えるようなものは一切なく、ただひたすらに、
単純作業を繰り返しているようだ。
レンガの型に嵌めて乾かす作業は、一日中やっても数百円程度とか。
近い将来、バングラデシュの潜在能力が開花し、未知の可能性が具現化することを期待したい。