メイキング・オブ・マイマイ新子

映画「マイマイ新子と千年の魔法」の監督・片渕須直が語る作品の裏側。

マイマイ台湾リポート by 岡田こずえ

2010年04月06日 10時46分37秒 | 日記
今回は台湾の映画祭に赴いた岡田音楽プロデューサーから、さらに詳しい現地報告をいただきました。
「監督、届いてますよ!」がうれしいです。

―・―・―・―・―・―

片渕監督がBlack Lagoonの追い込みで日本を離れられないので、mookiに代わってもらえないか。
プロデューサーと配給元からの依頼。私もmookiもBLのスタッフでもあるから、勿論二つ返事でお引き受け。
とはいえ、「海外で歌を歌う」ということの大変さを、彼らは想像すらしてないだろうなぁ。
「引き受けた」ということは、「背負わねばならぬ」ということなので、私とmookiは、「最後は素歌(すうた=伴奏もマイクも無い状態の歌)だね」と笑って“お引き受け”したのでした。

『マイマイ新子と千年の魔法』が、2010台湾国際児童フィルム祭(Taiwan International Children’s Film Festival)でオープニング上映作品に選ばれ、Minako"mooki"Obataが、映画祭より正式招待を受けて、映画祭主催の記者会見とオープニング上映後にパフォーマンスを披露しました。
http://www.ticff.org.tw/
台湾国際児童フィルム祭とはアジアで児童のために初めて設立された、映画・テレビ番組の映画祭。
2004年に初開催以降、毎回約20ヶ国から集まった約300作品が上映されています。

配給元の担当者と台湾側のコーディネーターの間でのメールのやり取りを見たとたん、軽いメマイに襲われました。通常の舞台挨拶は、マイクから音が拾えれば、なんとかなりますが、歌を歌うのは、それなりの準備が必要な訳でして。映画の関係者が、音楽のシステムを理解しているはずもなく。
「すいません。これだと歌えないので、こんな感じで機材をご用意頂けないでしょうか。」
私が絵を描いて説明して、それを台湾側にメールで伝えて、返事が来て、訂正して…。
「音源もマイクもケーブルも変換プラグも、全部東京から持参します。」
とはいえ、異業種の方たちが、一生懸命準備をして下さって、なんだかそれだけで、ありがたくなっちゃって。
「大丈夫。最後は現場処理しますから。」

3/30成田→台北
成田エクスプレスがディレイして、中華航空がディレイして、空港から市内への道路が渋滞して、とにかく大幅に遅れてホテルにチェックイン。
妙に寒い東京から、日が暮れても20度はある台北への移動。流石、南国。
台北市。台湾北部の台北盆地にあり、亜熱帯気候。人口は約262万人。京都府くらいの感じ。
コーディネーターのマイク君、若干33歳。日本語が堪能。
台湾では、中国語は北京語。小学校から英語は習うそうだが、「私は英語は苦手なんです。」とのこと。
彼は、大学で日本語を学び、日本のアニメの仕事もしているそうです。
台湾には、英語検定ならぬ日本語検定があるそうです。びっくり。
「なぜ、英語の名前をつけるの?マイクさんの中国語名は何とおっしゃるの?」
「ユと言います。中国語の発音は、難しいのでビジネス上の芸名みたいなものです。」
確かに。“ユ”の発音は、微妙に難しい。でも、北京語は、以前にレコーディングで訪れた香港の広東語よりも、ずっと穏やかで美しい響きがします。
歩くスピードも心なしかのんびり。穏やかなお国柄のご様子。夜遅くなっても女性が一人で歩ける治安の良さ。
mooki曰く「金沢っぽい。」小京都な感じ。

3/31マスコミ試写&記者会見
台北の繁華街の一つ、西門町のシネコン「今日秀泰影城」でのマスコミ試写。その後、mookiのパフォーマンスと記者会見が行われました。

台湾側の手配した歌手の陳珊妮さん(Sandyさん)とご挨拶。日本の映画宣伝などで、外タレに花束を渡す有名人、みたいな感じ。彼女の歌が使われた「Monga」という台湾映画が大ヒットしたのだそうです。
台湾の映画事情は、ちょっと前の日本と似ています。
最も強いのはハリウッド映画。ご多分に漏れずアバターは大ヒットだったそうです。台湾映画は、ここのところ押され気味で、「Monga」は久々の大ヒットだった、とのこと。日本のアニメも人気はあるそうですが、TVシリーズの映画化じゃないと上手くいかないそうです。
その中での「マイマイ新子」なので、配給会社も頑張って宣伝したいとのこと。この日は、台北市内でハリウッド映画と台湾映画のマスコミ試写が重なっているので、集まりが心配だとか。

試写の開始前にmookiと陳さんは、客席にちょっとだけご挨拶。おっ、満席だ。
試写中に、会見場所でサウンドチェック。機材のセッティングを終え、音が…出た!
PAエンジニアとのやり取りは、日本語・北京語・英語が混ざるもの。でも、これが通じる。技術的なことは、大体一緒なんですよね。
勿論、決して歌い易い環境ではありません。でもmookiは「音が出るだけありがたい。」と。実力波のヴォーカリストは、頼りになります。

映画祭のプログラムディレクター王さんの司会で記者会見が始まります。
新聞、雑誌、ネットメディアの他、台湾公共電視のカメラも入っての盛況振りです。30名以上いました。
京都の規模で考えたら、立派なものでしょう。注目を集めているようで、嬉しくなります。
ますはmookiのパフォーマンス。モニターコンディションが悪いはずだし、物凄い近距離でフラッシュたかれているのに、微動だにしない。素晴らしい。ありがとねmooki。大きな拍手に、私も嬉しかった。
陳さんと、東京から持参した「マイマイ新子」のサントラCDと、「Monga」のサントラCDを交換してから、映画祭のキャラクター寶寶(pao pao)が紹介され、撮影タイム。その後、ステージ上でmookiの音楽性や、今回の映画音楽作りの話題と、映画祭や台湾での公開に関してのインタビュー。
カメラが撤収されて、「平面文字記者訪談」。囲みの共同取材、といった所。

あっそうか、このままだと映画の感想が聞けない…。記者さんたちに、最後に逆インタビューをしました。
「映画をご覧になった感想を教えて下さい。日本のスタッフに伝えなければならないのです。」
記者さんたちからは、「懐かしい風景と子供の心情が丁寧に描かれており、自分が子供の頃を思い出した。」「後半の新子がバーカリフォルニアに行った後は、胸が熱くなった。」「前半は宮崎アニメのようだと思ったが、中盤以後の独自性に引き込まれた。」など。
あれ、日本での感想と変わらない。国が違っても届くんだ。
監督、届いてますよ!

4/1映画祭オープニング上映
オープニング上映は、台北一の繁華街、信義ショッピングエリアにある、「信義威秀影城」というスクリーン数が20以上あるシネコンで上映されました。

まずは、会場でセッティングとサウンドチェック。
あれ、スクリーンの下にボードの張り出しが…。「マイマイ新子」は北京語の字幕上映になります。が、国際映画祭なので、その下に英語の字幕も映写されます。張り出しは、英語字幕用。なるほどです。
で、機材が増えてる。昨日と違って、300名入る大きなスペースだから、フットモニターを増やしてくれていたのです。言葉が違っても伝わっているみたいです。東京にいれば、当たり前のように「転がし用意して」なんですが。

上映後の段取りを相談している時に、台湾側のスタッフと問題が。
台湾では、エンドロールを見る習慣が無いそうで、観客が帰ってしまう。なので、「エンドロールが始まったら、マイクセッティングを始めて、エンドマークが出たら、すぐにでも歌って欲しい。」と。
「ちょっとまって。mookiが歌うことを上映前にアナウンスして、エンドロールが上がりきるまで、映画の邪魔をしないように出来ないでしょうか。黒味に文字が上がる訳じゃないのです。最後まで観て頂きたいのですが。」
そこから、結論が出るまで、北京語の長い長い相談。
「わかりました。映画が終了してからセッティングしましょう。観客に最後までイメージを伝えられるように。」
ホッ。伝わった。

さあ、開場です。お客様は、少数のメディアと海外の方を含む映画祭関係者の他は、チケットを購入された一般の観客。ちなみに一般用のチケットは売り切れ。ロビーは、多くの親子連れで賑わっていました。

終了間近、劇場そでに待機。エンドロールが始まると、扉を開けて出てくる方が…。帰らないで!
どうしよう、と思っていたら…大きな拍手が!凄い凄い、たくさん残ってくれているじゃありませんか。
観客の中には、大粒の涙を流したオジサンも。
mookiは上映後、パフォーマンスとご挨拶。残ってくれた親子連れが、熱心に聞き入る姿が印象的でした。
終了後、mookiは親子連れや、海外のゲストなどに囲まれて、なかなか外に出られません。
ロビーに出たら、今度は観客の子供達に囲まれてサインを求められ、身動き取れなくなりました。
mookiに「おもしろかった?」と訊ねられた子供達は、皆恥ずかしそうに「おもしろかった。」と。
シャイな国民性で、外国人に直接話しかけるのは、とても勇気がいる事なのだそうです。
台湾の映画関係者からも「素晴らしい作品だ」と絶賛されました。
監督、ちゃんと届いてましたよ!

「日本では、こういう舞台挨拶をよくやるんですか?」という質問がマイク君から。
「いいえ、とんでもない。こんなこと出来るのmookiだけですよ。」

台湾では、4月23日から劇場公開されます。 たくさんのお客様に観て頂けると良いのですが。
最後に、慣れないイベントにご協力頂いた、日台両国のスタッフ・関係者の皆様に心から御礼を。
謝謝。再見(さいちぇん)
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