メイキング・オブ・マイマイ新子

映画「マイマイ新子と千年の魔法」の監督・片渕須直が語る作品の裏側。

ラピュタ阿佐ヶ谷・シネ・ヌーヴォ上映終了

2010年02月20日 03時55分10秒 | 日記
 2月19日。
 上映終了となる東京と大阪の映画館。
 大阪のシネ・ヌーヴォには顔を出せなくて申し訳ありませんでした。

 ラピュタ阿佐ヶ谷は、21時からの上映を前に、18時台に補助席まで満席。今日もたくさんのお客様を積み残してしまった格好になって、これも申し訳ありません。

 上映終了後の舞台上から御礼を申し上げ、観客の皆さんを送り出した客席では、補助席の片づけが始まります。折りたたみ椅子を片付けながら、石井紫(ゆかり)支配人が泣いておられます。
 さびしいのはこちらも同じです。

 何組も去りがたくホールに残るお客様がおられます。そうした方々もすべて帰られると、撤収作業です。
 ラピュタ阿佐ヶ谷のホールの展示物はすべて片付けられました。みんなで楽しく遊んで部屋中に散らかった玩具箱の中身を片付ける気分です。
 観客のおひとりが自作して持ち込んでくださったキャラクターのスタンプは、マッドハウスの丸山正雄プロデューサーが、大事に預かります、と持って帰りました。
 同じく、赤い紙切れと、メンコ、ベーゴマは片渕が預かっています。
 何回にもわたる上映延長のシールが貼られたポスターには、みんなで寄せ書きをしました。これはラピュタ阿佐ヶ谷で保管されます。いつの日か「おかえりなさい新子ちゃん上映」をする日のために。

 フランスで映画館のネットワークを作ってイマージュ・パル・イマージュ映画祭を行うイーブさんからお土産に持たされたワインをここで開けて、最後の乾杯をしました。実は12月19日の初日を満席で迎えられたときにも、ここで劇場スタッフの皆さんとわれわれとで乾杯しました。
 あれからのべ50日間の上映で、座席定数48席のラピュタ阿佐ヶ谷で、合計のべ2463名の観客を迎えることが出来ました。

 最終日、満席になったあとの電話問い合わせに、申し訳ありませんとお断りを告げる劇場スタッフに、
「ずっと長いあいだ上映してくださってありがとうございました」
 と、ねぎらいの声が寄せられていたそうです。
 それも何名もの方から。断わられて映画を見ることが出来ないはずなのに。
 こうしたたくさんの優しい心を見出すことができたのが、この映画を通じての最大の幸せなのです。

 打ち上げの席上、エイベックスの高谷さんに肩をマッサージされてしまいました。
「監督、いけませんよ。完全に固まってますよ」
 と、何十分も。
 チーフプロデューサーにあんなことさせて申し訳ないです。
 だけど、あったかいよね、こういうの。身に染みました。

 高谷さんとはじめて出会ったのは2007年、最初のロケハンの山口での宿だったのだけど、あのとき、僕はずっと宿屋のマッサージ椅子に何時間も浸りこんでいました。
 今、高谷さんはご自分の手で、ガチガチに凝り固まった監督の肩を解きほぐそうとしてくださっている。
 別れ際も、高谷さんは、車のところまで見送っていただいて、
「明日からもまたよろしくお願いします」
 と。

 ええ。
 明日からも、まだまだがんばりますので。
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