愛しあふ男女 7
すぎ去つた風景はとりもどすことは出来ない
お前はふりむいてはいけない
お前の目の上をすぎ去るものを私の見るにまかせて
二人の人生が崩れるのを待つばかりだ
二人の人生がもし崩れないでいつまでもつづくのならば
風は たえず お前の髪をなぜてゐるだらう
青い空の下で並木と建物の窓とが
私たちをむかへさうして私たちを見送つてゐるのであらう
お前のほほゑみのうしろにかくされた深いもの
つかれたやりきれないさびしさとそのほかのものがすぎ去り
何も二人のうしろには残らないのではないか
遠い空の方から色のついたテープがからまりあひながら
長く落ちてくる 確実なものはないのだから
その中をすぎても 二人は抱きあふだけであらう