KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

マラソンを愛する皆様、こんにちは。
2022年は積極的に更新していく心算です。

日本マラソン大賞2020講評 vol.2

2021年01月06日 | 日本マラソン大賞
12月20日の防府読売マラソンまで、2020年のマラソン大賞(最優秀選手賞)は大迫傑にほぼ決めていた。3月の東京マラソン、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、38000人の一般参加ランナーの出場を取り止めさせ(これがどんなに異常な措置であったか、お分かりだろうか?)、男女「エリートの部」のみ約200人の出走で大会を実施。さらには沿道での観戦と応援の自粛という異例と言うより異常な事態の中、レースは好天に恵まれ、優勝タイムが2時間4分15秒、2時間10分切りが28人という稀に見る超高速レースとなった。そんなレースで自らの持つマラソン日本最高記録を21秒更新する2時間5分29秒で4位でゴール。2019年のМGCでは中村匠吾、服部雄馬との優勝争いに敗れての3位。男子の代表選考は「あと1人」の設定記録が女子よりも高く設定されていた。2時間5分49秒以内。大迫が持つマラソン日本最高記録の更新が代表入りの条件だった。

このまま「果報を寝て待つ」という選択肢もあった。しかし、あえて東京マラソンに参戦。そして自らの自己ベストを更新して第3の代表入り内定を決めて「プロランナー」の凄みを見せた。

彼が「マラソン大賞」だろうと思った方も何人かはいただろう。しかし、12月20日の防府読売マラソンで2時間10分26秒で2位。丸山竜也の猛スパートには付けなかったものの、「公務員ランナー」から「プロランナー」に転向後低迷していた川内優輝の「復活」に目を瞠った。

今回で100回目のマラソンサブ20(2時間20分以内)のゴールで、ギネスブックの世界最高記録に申請するという。アイルランドの黒ビール屋の座興を、今回大迫の日本記録更新よりも高く評価する事に決めた。かつては、川内が全国各地の市民マラソンに出場し、コースレコードを大幅に更新し、2位のランナー(たいていは地元の市民ランナー)に大差を付けて優勝を重ねる事を批判的な目で見ていた。ここは地元ランナーに好タイムでの優勝をアシストするために、30kmまでのペーサーに徹するのがベターではないのか?しかし、2017年の我が地元の愛媛マラソンでの2時間9分台の優勝で分かった。いつも全力本気の走りを見せ続けることが、彼の持ち味だった。彼は公務員の頃から高い「プロ意識」を持って走っていた事に気が付いた。そして、それがボストンマラソン優勝という「勲章」につながっていった。そうした一つ一つの「本気
」のレースが積み重なった「世界最高」である。2時間5分29秒の日本最高記録は、この5年以内に更新されるだろう。しかし、100回のサブ20(今後更に増えていく)は永遠に破られない金字塔的な記録として残されていくだろう。

パラリンピック代表のブラインド・ランナー、道下美里も自らの持つ女子ブラインドランナーの世界記録を更新。東京パラリンピックに合わせて、最高の体調を作り上げていたのだろう。小柄な彼女の走る姿を見ていると、なんとかパラリンピックを開催出来ないものだろうかと思ってしまう。

東京五輪1年延長という、史上初の事態となった2020年。本来なら「マラソン大賞」も五輪で好成績を挙げたランナーに授けたかった。2月第4週以降、全国各地のロードレース大会はことごとく中止か延期となった。東京やナゴヤウイメンズ、福岡に防府も規模を縮小してギリギリの開催。そんな数少ない大会の中でランナーたちは自らの力を最大限に発揮した。確かに厚底カーボンシューズも力を与えていただろう。しかし、あの円谷幸吉を歌った「一人の道」のフレーズ、

大きな夢はただ一つ
五つの色の五つの輪
日本のためのメダルじゃない
走る力の糧なんだ

ランナーたちに大きな走る力の糧となった東京五輪、それが失われた2020年。毎週のように日本のどこかで開催されていたロードレースも無くなった2020年。そんな1年の「マラソン大賞」にふさわしいのは、これまで毎月のようにマラソンを走り続けた男が作り上げた金字塔だと思い、彼が走り続けた世界中のロードに多数のランナーが戻る日が1日も早く訪れる事を祈り、川内優輝に2020年のマラソン大賞を授与する事とした。

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