kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

ノマドランド

2021年04月08日 | 年間ベスト3
日時:4月3日
映画館:サロンシネマ

2008年、アメリカの石膏メーカーが倒産し、企業城下町も消滅。そこに暮らしていた主人公、フランセス・マクドーマンドは夫を病気で失ったこともあり、バンの車中に居を構えながら中西部の町々で短期雇用の仕事を転々とするノマドとして生活していた。

実話に基づく映画化でアカデミー賞レースにもがっつり食い込んでいるようなのだが、ワタシの関心は話の主題よりフランセス・マクドーマンド。「ファーゴ」以来、あの口元が好きだし、近年の図太いオバハン役も好きです。

バンやトレーラーハウスの集まるキャンプサイトを転々としながら、クリスマスシーズンにはアマゾンでバイトし、その他のシーズンは自然公園や農場で働く彼女は自分のことを「ホームレス」ではなく「ハウスレス」だという。

車中生活でその日暮らしを続けるというと日本人の感覚では否定的に取られるところだが、家や家財道具に縛られることなく美しい自然を目の前にしながら、同じ生活スタイルの人たちと交流し、情報交換し、そして別れていく姿を淡々と描いている。こういう生き方をちゃんと商業映画に乗っけられるのが、米映画界の懐の深いところ。

キャンプサイトやガソリンスタンドで出会う人たちはみんな心優しい。互いの境遇を思いやりながら、お互い必要に応じて助け合いながらも、過度な干渉はしない。劇中でノマドを演じているのは、基本本人たち、つまり素人なのだが、醸し出す空気感がとてもいい。

さらに中西部の果てしない平原を捉えた寒々とした撮影も素晴らしい。何もない平原を延々とバンで走って、たどり着いた先で生活するなんて、憧れるよな。「ジェシー・ジェームズの暗殺」とか「わたしに会うまでの1600キロ」とかが好きなもんだから、こういう風景はたまらない。

映画として大きな事件も起きないまま1年が経過する。ただ、そんな中でも2回ほど彼女が物に固執する場面があり、その辺は自分ならそこで切り捨てられるかと考えさせられる。

フランセス・マクドーマンド主演ってとこを抜きにしても、それぞれの人の人生は素晴らしいと思わせる映画。







題名:ノマドランド
原題:NOMADLAND
監督:クロエ・ジャオ
出演:フランセス・マクドーマンド、デビッド・ストラザーン

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