kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

アイリッシュマン

2019年11月16日 | 年間ベスト3
日時:11月16日
映画館:イオンシネマ広島

ROMA/ローマ」に引き続いて、NETFLIXのオスカー対策公開。今回の劇場公開は予想していただけに身構えていたけど、それでも公開のお知らせは直前。油断も隙もない。

スコセッシにデ・ニーロ、ペシの顔合わせで「グッドフェローズ」「カジノ」路線の実録ギャング映画。実在のギャング(かな)フランク・シーランの半生を描く。セルフ・リメイク的位置づけかと思いきや、シーラン本人が今回の事件を告白した書籍が出版されたのが2004年だったそうなので、新ネタといえば新ネタ。原作も早速読まねばなるまい。
(ちなみに先の2作品の原作者、ニコラス・ピレッジは本作のエグゼクティブ・プロデューサーを務めている。)

デ・ニーロ扮するシーランはトラック運転手だったが、ひょんなことからギャングのボス、ラッセル(ペシ)と知り合い、裏社会の仕事に手を染めていく。やがて、当時アメリカで強大な権力を持つ全米トラック運転手組合の委員長、ジミー・ホッファにも近づくことになる。

ジャック・ニコルソンが扮したこともあるホッファを演じるのはアル・パチーノ。まあ、アクが強い(笑)
他にもハーベイ・カイテルだの、スティーブン・グレハムだの、ジェシー・プレモンズだの、現代ギャング映画のオールスター映画みたい。

上映時間3時間半ととにかく長いのだが、映画そのものも1950年代から2000年頃までのアメリカ裏社会を総覧させてくれる。劇中時間も3つの世代を行き来し、最初、シワシワのペシが出たときには不安がよぎったが、1950年代パートではILMの特殊効果で見事に若返って登場する。色々言っているスコセッシ、ここはいいんだ(笑)

パブリシティでは殺し屋のように紹介されているシーランだが、映画の半分以上はマフィア組織と組合との間で右往左往している。この辺は「グッドフェローズ」のレイ・リオッタみたいだ。(とは言え、もちろん人もたくさん殺す。)

時代的にキューバ革命、ケネディの大統領選出、ピッグス湾事件、ケネディ暗殺などなど派手な事件が続き、登場人物たちもそれらの事件に何らかの形で翻弄される。先の2作だったら、背景にガンガンに当時の音楽やロックが流れるところだが、今回はその辺はおとなしめ。

その分、マフィアと組合の組織をじっくりと描き、全くダレることがなく、「すぐ誰かが死体になる」異様な緊張感が続く。

だが、今回印象的なのは組織と個人の関わりを丹念に描いたところだと思う。そう思うと、やはり先の2作はその点が突っ込み切れていなかったと思わされる。
もちろん、映画の上映時間もあってのことだと思うが、シーランが組織のしがらみと友情の狭間で逡巡するくだりや暴力的な仕事を嫌う娘との確執など、これまでスコセッシが描きたかったものがキッチリ描かれているように思う。
デ・ニーロが半生を振り返って改悛するエピローグなど、ある意味、スコセッシの集大成的なシーンかも知れない。

オールスターなキャスティングが鼻につくところはあるが、しっかり楽しめる3時間半。







題名:アイリッシュマン
原題:THE IRISHMAN
監督:マーティン・スコセッシ
出演:ロバート・デ・ニーロ、ジョー・ペシ、アル・パチーノ、ハーヴェイ・カイテル


最新の画像もっと見る

コメントを投稿