kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

チャッピー

2015年06月07日 | ★★★☆☆
日時:6月6日
映画館:バルト11
パンフレット:A4版変形820円。監督から出演者までテキスト情報満載。中央部にはフェイク新聞「ヨハネスブルグ ニュース」が閉じ込んである粋な構成。MNUが広告を出していたりする。(笑)

第9地区」がムチャクチャ面白かった南アのニール・ブロムカンプの最新作。公開開始から何かと立て込んでいたが、前評判も高い本作を外すわけにもいかず、とうかさん前のゆかた姿で鑑賞となった。

2016年ヨハネスブルグ、高い犯罪発生率に手を焼いた警察はAI搭載のロボット警官「スカウト」を採用し、治安回復に成果を上げる。一方、借金返済のために一山当てることを目論んだストリートギャング一味は「スカウト」をストップさせるために、開発技術者の誘拐を画策。
誘拐は成功するが、技術者は独自に開発した自律型AIを搭載したスカウトを社外に持ち出しており、そのスカウトはギャングの手に・・・

【以下ネタばれあり】
OPは関係者のインタビュー映像でスタートし、舞台もヨハネスブルグとあって、全体に雰囲気は良くも悪くも「第9地区」に似ている。(ただ「第9地区」のテンポの良過ぎる編集は鳴りをひそめている。)

最初、スカウトのデザインを見たとき、「これって、アレじゃん。」と日本人なら誰しも思うワケだが、そのリアルな動きにCGなどの特殊効果ではなく実機が動いているとしか思えない。スカウトを盾にして突入するなんていいなあ。この「隣りにあるリアルさ」がブロムカンプの持ち味だ。

「チャッピー」と名づけられたスカウトはストリートギャングにヤンキー教育をゼロから施されるが、ヤンキーパパとヤンキーママ、開発技術者の教育方針が違い、チャッピーも悩みながらAIとして成長していく。その過程でヤンキーママに愛情が芽生えていく。ここに機材の損傷が原因で、チャッピーのバッテリーの寿命が5日間しかないという伏線が活きてくる。

「第9地区」は誰もかしこも自分勝手で感情移入できる人物がいないのが持ち味だったが、こちらはみんな愛すべき人たち。ストリートギャングの借金返済作戦は実に頭の悪い行き当たりバッタリ作戦なのだが、貧しくダメなりにも前向きに生きていくキャラクターに好感が持てる。シガニー・ウィーバーは腹黒い黒幕と思わせて、実は普通のCEO。そんな中、ヒュー・ジャックマンのダメな悪役ぶりがよくって、散々にセコい悪事を重ねた挙句、最後にしばき倒される情けなさが最高にいい。新しい局面が開けたかのよう。

関係者の思惑が錯綜して三つ巴になる展開も「第9地区」に似ており、そこまで似ている必要があるかな・・・といった感じ。ラストの情無用の大銃撃戦もよく似ているのだが、ここで悪役の警察ロボットがすがすがしいくらいの大暴れ。たかがギャング相手にチェーンガン、グレネードランチャー、クラスター弾の大盤振る舞い。(言うまでもなく「ロボコップ」のEDや「戦闘メカザブングル」のウォーカーマシンに似ている。)ここでママがスパッスパッと銃弾を食らって、あっさり死ぬシーンは泣かずにはいられなかった。

意識がマシンに移行できるというクライマックスは言うまでもなく「攻殻機動隊」だが、射殺されたママの意識のオチでは再び涙が止まらなかった。SF映画で泣く事になるとは。

一方で面白いテーマなだけにもっと書き込みがあっても良かったかなと思う。チャッピーの成長プロセスが早過ぎるのは置いておいたとしても、警察のロボ警官出動を一企業(というか一握りの職員)が独占していることに説明が欲しかったし、エンディングからどのようにOPのインタビューに繋がるのかあえて説明されない。

また、「第9地区」だけでなく、過去の多くのSF映画・アニメへのオマージュが盛り込まれ、デジャヴ感がぎっしり。新鮮味が乏しくなってしまったのは残念なところ。

もっと掘り下げられるテーマなだけに、TVシリーズなんかになると面白いかも知れない。神とは?人間とは?って「バトルスターギャラクティカ」みたいだな。






題名:チャッピー
原題:CHAPPiE
監督:ニール・ブロムカンプ
出演:シャールト・コプリー、デーヴ・パテール、ヒュー・ジャックマン、シガニー・ウィーバー

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