映画「アンジェントルメン」
日時:4月6日
映画館:イオンシネマ広島
日時:4月6日
映画館:イオンシネマ広島

イアン・フレミングの007原作「死ぬのは奴らだ」でこんな描写がある。
ボンドが敵の船に水中から磁力吸着の爆雷を取り付けるようとするが、思いがけないその磁力の強さに体を持っていかれないよう、爆雷を持つ腕に力を込める。
これを読んだとき、現場感あふれる描写にフレミング自身か身近な誰かの経験談と感じた。
さて、ガイ・リッチーの新作は第二次世界大戦中、政府も存在を認めなかった特殊部隊の実話に基づくアクション映画。
フランス降伏後、バトル・オブ・ブリテンでドイツ軍と交戦中のイギリスだったが、大西洋で貨物船を攻撃するUボートのため、物資輸送もままならない状況だった。Uボートに魚雷他補給するのはイタリアの貨物船で、中立国スペインの領土であるアフリカ、ギニアのフェルナンド・ポー港を拠点に活動していた。
イギリスはフェルナンド・ポー港に停泊中の貨物船を破壊し、Uボートへの補給を絶とうとする。しかし、中立国スペイン領での正規軍による軍事活動が発覚すれば国際問題化し、スペインを枢軸国側に付かせることにもなりかねないことから、チャーチル首相は非公式部隊を結成しこの任に当たらせる。
ガイ・リッチー自身、戦争映画が大好きと公言しており、本作は1960年代の特殊部隊コマンドものを強く意識した作品となっている。ワタシもガイ・リッチーと1歳しか違わないので、その辺の感覚がよく分かる。はみだし者だが有能な軍人が似たような仲間を集めて、少人数の特攻まがいの作戦を任されるのは映画タイトルを出すのも面倒くさいくらい60年代戦争映画の王道なのだが、実話ベースとなっている。
元々、英軍のSAS発足自体が少人数の奇襲部隊をベースとしているし、「オペレーション・ミンスミート」のように不利な戦況だったイギリスがあの手この手の奇策を打つ実話はなかなか面白い。イアン・フレミングも当時こういった作戦に関与していたらしい。ちなみにドイツ軍に各種偽装作戦を仕掛ける手品師マジックギャングを描いたノンフィクション「スエズ運河を消せ」も映画にならんかと思うし、MI6の当事者が書いた「二重スパイ化作戦」では真面目かつ生々しいリアルな内幕が読める。
ただ映画の方は完全にフィクションで、オープニングから派手な爆破シーンが拝める。ちょっとやそっとのことで、そんな大爆発はしない(笑)
悪いナチはいくら殺しても良いとばかりに、いつの時代の表現かと思うような大殺戮ショー。中でもデンマーク人を演じる「リーチャー」の大男、アラン・リッチソンの力まかせの殺人技は大げさすぎて笑うしかない。ガイ・リッチーはナイフとか斧とか刃物を使った殺しが昔から大好き。
ナチ側もアフリカの片隅にある施設にそんなに兵士や装備を置いておく余裕などなかろうに、かなりの重装備。(笑)
何度か派手な銃撃戦をしつつも、基本、奇襲作戦なので武力行使の全面対決とはならないが、思いがけないことから作戦成功が危ぶまれる。
主人公のはみだし軍人を演じるのはヘンリー・カヴィル。007の候補になったり、ナポレオン・ソロを演じたり、ミッション・インポッシブルで敵役になったりと忙しい人だ。
その他、得意分野を持つメンバーが揃うが、各人の描写は抑え気味。逆に女性メンバーが活躍どころか主導権まで握るあたり、今風だ。
ガイ・リッチーと言えばマカロニウエスタンも大好きと公言しており、過去作でもマカロニな描写やマカロニウエスタンのサントラを盛り込んで楽しませてくれた。
今回も音楽が完全にマカロニ仕様。クリス・ベンステッドのオリジナル曲だが、メインタイトルは後期のマカロニウエスタンにそのまま使えそうだし、他にも「新・夕陽のガンマン」のフレーズがそのまんま使われている。
ただ、ワタシにとって面白いのは、ガイ・リッチーが懐かしの第二次世界大戦コマンドものを撮ってくれたという点で、映画そのものとしては平均点な仕上がり。
むしろ本質的に面白かったのは、敵だけでなく味方にも隠密で作戦を進めたってところなので、水面下で作戦を進めるコンゲーム的な描写がもっとあったほうが、史実はともかく映画としては面白くなったのではないかと思わせる。
ということで評価は
★★★☆☆
ところで、主人公がナチの革コートにこだわるのは「戦略大作戦」のドナルド・サザーランドへのオマージュなのかな。
題名:アンジェントルメン
原題:THE MINISTRY OF UNGENTLEMANRY WARFARE
監督:ガイ・リッチー
出演:ヘンリー・カヴィル、アラン・リッチソン、エイザ・ゴンザレス、バブス・オルサンモクン、ティル・シュヴァイガー
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます