アニメOPのアレ

　アニコナのOPが変わりましたね。初代のOPをリメイクという、まあ良くある手法ですが大切なのはこの際そっちではなくて映像の方ですよ。

　アニメのOPにおいて大事なのは「どれだけそのアニメを語れるか」だと常々思っているんですが、そういう意味では今回のOPは様々なドラマが描かれていて良いと思います。特に新一と蘭が志保さんの乗った車とすれ違うシーンに私の灰原フィルターが全力で反応していますよ。これはとても深いシーンで、もしかしたら哀ちゃんかもしれないし、過去かも知れないし未来かもしれいという色々な想像ができて実にすばらしいと思います。


　というわけで以下はコナンのOP妄想小話です。


　喧騒の中を静かに進む黒いセダンの中で志保は見るとは無しに手にした書類に目を落としていた。先ほど渡されたその紙の束に書かれたアルファベットと数字の列を目で追うが、頭には全く入ってこない。その代りに先ほどから繰り返し聞こえるのは、このデータを手渡しながら薄ら笑いを浮かべたジンの冷酷な声だった。

　「ほらよ。」
　「……何？」
　薄暗い部屋でジンから投げ渡された書類を胡乱な目を向けると、志保はそこに書かれている内容に目を見開いた。読みす進むうちに震えはじめる手を自分で制御することはできなかった。そんな志保の様子を満足げに眺めながらジンはゆっくりと紫煙を吐き出した。
　「できそこないの名探偵の実験結果だ」
　「ま、まさか…あれを人体に投与したの？」
　「ああ。お前がいつまで経っても実験を始めないから、オレがかわりに使ってやったのさ」
　「…あれは、まだ未完成だと何度も言ったじゃない！」
　震える声で詰問する志保に帰ってきたのは嘲笑だった。
　「ふん。APTXとしては未完成だが、毒薬としては良い出来だったぜ」
　「！…あれは毒薬なんかじゃ」
　怒りに燃える目を向ける志保に、さらにジンが言葉を重ねる。
　「忘れるな。お前の作った薬で人が死んだ。そしてあの毒薬を作ったのはお前だ。もうお前は姉貴とは違うんだよ」
　「……」
　びくりと体を震わせる志保に面白そうに唇をゆがませるとジンは
　「じゃあな。『シェリー』」
　とことさらにコードネームを呼ぶと部屋を後にした。　

　
　体に振動を感じてふと志保は顔を上げる。先ほどまで止まっていた信号が変わり、再び車が動き始めたようだった。ふと車の窓に目をやるとサッカーボールを持った制服の少年と空手の道着をぶら下げた少女が楽しそうに笑いあって歩いているのが見えた。
　（私と同じ年くらいね。どんな日常を送っているのかしら…）
　姉から何度か聞いた高校生活の様子を思い出すが、その様子は自分が知っている「学校」の様子とは程遠く、上手く想像することができなかった。再び少年たちに目を向けようとした時に
　『シェリー』
　ジンに呼ばれたコードネームが耳の奥に木霊したのを振り払うように、志保は静かに視界を閉ざした。